雲ひとつない空に太陽が昇り始めました。
今日も一日が始まります。
「ゆ~・・・」
藁の上でぐっすりと眠っているまりさとぱちゅりーの家族のすぐそば、枯葉の詰まれた中から声が聞こえます。
しばらくすると、枯葉ががさがさと動き、中から一匹のれいむが現れました。
れいむは眠そうな顔を体を振って覚まし、外に
ゆっくりと張っていきます。
れいむの這っていく先には湧き水が溜まった小さな湖がありました。
「ゆゆ、ちゅべちゃい・・・」
れいむは水が湧いている場所から離れた場所で体を洗います。
その後れいむは地面から湧き上がったばかりの冷たい水を口に含み、また巣へと這って行きます。
そして、大きな窪みのある石のところに行くと水をその中に流し込みました。
一度に運べる量では窪みを満たすことは出来ないのでまた湖に汲みに行くことを数回繰り返します。
何とか水をいっぱいにすることが出来るころ、まず親ぱちゅりーが目を覚ましました。
「むきゅー、今日も間に合ったようね。」
「ゆっ!おはよーございます!」
「私は今から食事の準備をするわ。子供とまりさを起こしたら貴方も妹達と一緒にご飯を食べなさい。」
「ゆゆっ?きょうはおそうじしなくていいの?」
「今日は特別よ。貴方の妹達にもしっかりとご飯を食べさせて良いわ。」
「ゆゆゆ!」
れいむは、今までの扱いからは考えられないような破格の扱いを受けて喜びます。
すぐに妹たちの所に向かいたかったのですが、言われたことをやらないとなかったことにされるかもしれません。
「ゆゆ、まりさとぱちゅりー!もうあさだよ!」
「ゆ~・・・」
れいむは子まりさと子ぱちゅりーを起こしてから親まりさを起こします。
起きたゆっくりはれいむの用意した水で顔や体を洗って体をきれいにします。
そして先に起きていたぱちゅりーの用意した食べ物を仲良く食べ始めました。
「おかーさん、きょうはなにをするの?」
「きのーいっていたとくべつじゅぎょうって?」
「今日はありすの危険な習性を教えるわ。」
「ありす?」
「まりさたちと同じゆっくりの一つだぜ。」
「じゃあいっしょにゆっくりできるわね。」
「そうじゃないからおしえるんだぜ!」
「ゆ~?」
親まりさとぱちゅりーが危険と言うありすがどんなゆっくりか子ゆっくりには分かりません。
子まりさと子ぱちゅりーは前に見せてもらった人間やゆっくりゃより怖いのだろうかと、様々な想像を話し合います。
そんな様子を見て微笑むまりさとぱちゅりーと、このゆっくり一家はとてもゆっくりとした一家でした。
先ほどのれいむはまりさとぱちゅりーから離れて、れいむは石の積まれた壁にやってきます。
そして積まれた石の中から、ぱちゅりーの言った取っても大丈夫な石を外していきます。
「ゆゆ!いもーとたちでてきてね!」
「ゆゆっ!」
れいむの掛け声の後、しばらくしてからぞろぞろと穴からゆっくりが這い出て来ました。
「わかるよー、ごはんなんだねー。」
「おねーしゃんおなかしゅいたよ!」
「はやくたべちゃいよ!」
汚れが目立ち、れいむより一回り小さい子ゆっくりはれいむと同じ親から生まれたゆっくりです。
まりさとぱちゅりーによってれいむ以外の子ゆっくりはこの石の壁の中に閉じ込められていました。
そして、狩りの練習や毒物の授業で一匹ずつ出されてモルモットにされていました。
普段は石の壁の中であまり動けず、這っているだけなので生まれた時期はほとんど変わらないにもかかわらず、大きさに差が出ていました。
れいむは妹達を見回します。
数は子れいむのほうが多くいました。
狩りの授業の方が多かったからです。
「ゆっ!きょうはいっぱいたべていいよ!」
「ほんちょ!?」
「おねーしゃんだいちゅきー!」
「むーしゃ、むーしゃ、しあわちぇええええええ!」
れいむが食糧庫から食べ物を持ってきます。
いっぱい食べて良いよと言っていたぱちゅりーですが、食糧庫には余り食べ物は残っていませんでした。
食糧庫だけでなく、普段掃除しているいろいろなものも見当たりません。
まるで、引越し前のようです。
しかし、今は妹達に食べ物を上げるのを優先したれいむは、そのことを気にしませんでした。
少ないといっても普段食べていた量の倍は軽くあります。
「おねーしゃん、あまいものは?」
「ゆゆっ、れいむあのあまいものをたべちゃいよ!」
「わかるよー、ここにはないみたいだよー。」
「ゆ・・・それはいまはないみたいだよ!またこんどね!」
「ゆ~、あれがいっぱいたべちゃいのに・・・」
狩りや授業で死んだ子ゆっくりは生きている妹たちの食料になっていました。
それを知っているのは子ゆっくりの中ではれいむだけです。
れいむはそれを教えるつもりはありませんでした。
「まりさ、ありすはまだいた?」
「ああ、まだいたんだぜ!でももうすぐ近くの群れに行くはずなんだぜ!」
「じゃあ、今日授業が出来てよかったわ。」
「まったくだぜ!これを逃すとまりさたちも群れに合流できなくなるんだぜ!」
ありすの巣を物陰から見ていたぱちゅりーと、ありすを見に行っていたまりさが合流します。
子まりさと子ぱちゅりーは巣に置いてきていました。
狩りの練習のおかげか、最近では親まりさと近場の食べ物を取りに行ったり、身を守る方法をしっかり教えていたので大丈夫と判断したのです。
子れいむや子ちぇんは食べ物に夢中でしたし、食べ終わったら寝てしまうだろうと判断から何もしてきませんでした。
「大丈夫だとは思うけど、子供達が心配だわ。」
「さっさと始めるかだぜ!」
「じゃあ親ありすは一匹なのね?私が引き付けるわ。」
「任せたんだぜ!」
作戦を確認しあったぱちゅりーとまりさは互いの役割を遂行するために分かれました。
「むきゅきゅ、ゆっくりしていってね!」
ありすの巣にぱちゅりーが挨拶します。
しばらくすると、中からありすらしき声が複数聞こえました。
「「「「ゆっくりしていってね!」」」」
「あら、ぱちゅりーじゃないの?」
「おはよう、ありす。」
「ぱちゅりーもはやくしないと冬を越せなくなるわよ?」
「ええ、そうね。それでちょっと道を聞きたくて。」
「それなら都会派のありすに任せなさい!」
「おかーしゃん、どこかにいくの?」
「ゆふふ、ちょっとぱちゅりーに道を教えてくるわ。」
「おかーしゃんがんばっちぇ!」
「ちゃんとゆっくりしてるのよー!」
親ありすとぱちゅりーは巣を離れていきます。
子ありす達は巣の中に戻ろうとしました。
そこへ、黒い帽子を被ったゆっくりが近づきます。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくちちちぇいっちぇね!」
いきなりかけられた声に反射的に反応する子ありす達。
「ゆゆ!?おいししょうなきのこ!」
「おかーさんありがちょー!」
声がした方向を向くと、地面にキノコが置かれていました。
親ありすが用意してくれていたと勘違いした子ありす達はキノコをもぐもぐと齧っていきます。
子ありすがゆっくりと食べている間、一匹のゆっくりが巣の中を見回して中に子ゆっくりが残っていないかを確認していました。
しかし、キノコに夢中なありすたちは手馴れた動きのゆっくりに気付きません。
やがて、キノコを食べた子ゆっくりが眠り始めます。
「ゆ~、さっきまでいっぱいねちゃのに・・・」
「ねみゅくなっちぇきた・・・」
そんなことを言いながらぐっすりと眠り始める子ありすたち。
巣を覗いていたゆっくりはそんな子ありすを頭の上に乗せてどこかに去っていきました。
「むきゅー。助かったわ!」
「むふん!困ったときはおたがいさまよ!」
「これで、私達も群れを見つけれるわ。」
「でも、少し遠いところに行くのね。ありすたちはもっと近い場所に行くわよ?」
「むきゅー。冬を越したらまた別の場所に行くつもりなのよ。」
「なるほど、ならあの群れならいろんなところからゆっくりが来るから、情報を集めやすいわね!」
「本当は信用してなかったんだけどね。でも貴方が言うなら本当ね。」
「ええ、もちろん!」
やがて二匹はありすの巣の近くに戻ってきます。
「じゃあ私は巣に戻るわ。」
「貴方の巣はどこなのかしら?」
「もういなくなるんだから、知らなくても良いと思うわ。」
「それもそうね。じゃあまた春に会えたらいいわね!」
そういってぱちゅりーとありすは分かれました。
ぱちゅりーが巣に戻っている時、ありすの巣の方から悲鳴が聞こえました。
ぱちゅりーは特に驚かず、巣に戻っていきました。
「いまもどったわ!」
「おかーさん、おかえりなさい!」
ぱちゅりーの帰還に子ゆっくりは遊ぶのをやめてぱちゅりーに向かっていきます。
「まりさは?」
「おとーさんは、おくちになにかいれておくにいっちゃったよ!」
「そう、ありがとう。」
ぱちゅりーはまりさの下に向かいます。
まりさはぐっすり寝ているありすを足元に置いて、身支度をしていました。
「もどったわ。」
「おう、お帰りなんだぜ!」
「れいむ達はどうしたの?」
「向こうでぐっすり寝てるんだぜ!」
「一匹も逃げてないの?」
「ああ、ぱちゅりーの言っていた数いるぜ!」
ぱちゅりーはれいむ達の数を数えます。
本当に一匹も逃げていませんでした。
「ばかねぇ、動けるんだから這ってでも逃げればいいのに。」
「ゆっへっへっへ、それだと面倒だから助かったんだぜ。」
「じゃあ、さっさと始めましょうか。」
「分かったんだぜ。」
まりさはありすとれいむとちぇんを運んでいきます。
ぱちゅりーは子まりさと子ぱちゅりーを集めました。
「準備は出来た?じゃあ、授業を始めるわよ。」
「はーい!」
「まりさ、準備はいい?」
「いつでも良いぜ!」
「じゃあ始めてちょうだい。」
子まりさと子ぱちゅりーの見守る中、まりさは眠った子ありすを揺すり始めました。
「ゆゆ、なにしてるんだろう?」
「もう少しで分かるわ。」
まりさが丁寧にありすを揺すっていくと、やがてありすの表情が微妙に変化していきます。
息も荒く、顔が紅潮して涎をたらし始めています。
まりさは子ありす全員を同じような状態にしてその場を離れました。
「おっと、忘れ物なんだぜ。」
まりさはそういって、れいむを咥えてぱちゅりーの元に向かいました。
「まりさ、そいつは連れて行くの?」
「ああ、子育てには必要なんだぜ!」
「なるほどね・・・」
れいむはまりさに踏まれています。
苦しそうな顔をしているのでやがて目を覚ますでしょう。
「ありすたちがそろそろ起きるんだぜ!」
「みんな私達から離れちゃダメよ。」
子まりさとぱちゅりーは言われたとおり親まりさとぱちゅりーの周りに集まります。
そして、ありすが目を覚ましました。
「ゆっゆっ・・・」
血走った目で周りを見回します。
一匹のありすが最初に目に入れたのはいまだ寝ていた子れいむ。
「れ、れ、れいむううううううううううう!」
ありすは一目散にれいむに跳ねていき、その体をれいむにこすりつけ始めました。
その違和感に子れいむも目を覚まします。
「ゆゆっ?なにがへんだよおおおおおおおお!」
「れいむうううううううううう!」
「いやああああああああああ、あり゙ずううううううううう!」
子ゆっくりはありすのことは知っていたようです。
ありすが近くに住んでいたのでありすの習性を見たことがあるのかもしれません。
見たことがあるならどうなるかも分かったのでしょう。
必死に逃げようともがきます。
しかし、這うことしか出来ない子れいむは逃げれるはずがありません。
「やめぢぇええええええええええええええええ!」
「ゆ?」
子れいむの悲鳴に他の子ゆっくりも目を覚まします。
そして、眼の前には発情したありすが。
「ぢぇええええええええええん!」
「わ゙がら゙な゙い゙よ゜おおおおおおおおおおおおお!」
「ぬほおおおおおおおおお!」
「いじゃあああああああああああ!」
やがて、最初に襲われたれいむはすっきりさせられ、頭から芽が出ます。
それは直ぐに伸びてゆっくりを実らせました。
それと同時に子れいむは黒ずんでいきます。
「も゙、も゙っどゆ゙っぐり゙じだがっだ・・・」
断末魔を叫びながら子れいむが完全に黒ずむと実には子れいむが数匹実っていました。
まもなく、枝から落ちて赤れいむが誕生するでしょう。
赤ありすがいないのは直ぐに発情するありすが生まれすぎないように、ありすが雌側でしかありすが生まれないように進化した結果でした。
子れいむが黒ずんでいる間に、他の子れいむがすっきりさせられています。
最初に狙われたのはれいむばかりだったので、ちぇんは逃げることが出来ました。
れいむよりはちぇんの方が這う速度が速かったので捕まっていくのは子れいむばかりです。
子まりさと子ぱちゅりーはそんな光景をぱちゅりーに説明させられながら見ています。
いくら親がいても本能で怖いのでしょう。
どの子ゆっくりも震えています。
「わかったかしら。これがありすよ。」
「ゆー、わかったよ!ありすはきをつけるよ!」
「次からはありす対策も教えていくからしっかり聞くのよ。」
「はい!」
ぱちゅりーに向かって元気よく返事をする子ゆっくり。
「よし、じゃあそろそろ行くんだぜ。」
「分かったわ。」
数匹とゆっくりし、落ち着いたありすを見て、まりさはぱちゅりーに授業のおわりを告げます。
ぱちゅりーと子ゆっくりは外に出て行きます。
「さて、おいれいむ。起きてるのは知ってるんだぜ。」
まりさは足元のれいむに話しかけます。
れいむは最初の子れいむがすっきりした時に起きました。
そして、まりさに踏まれて子れいむ達を助けることが出来ず、黒ずんでいくれいむ達を涙を流しながら見ているしか出来ませんでした。
「どおじでごんなごどずるのおおおおおおおお!」
「お、そろそろ赤ゆっくりが生まれるんだぜ!」
れいむの叫びを無視し、まりさは実った赤ゆっくりの元に向かいます。
ありすと生き残った子ちぇんとれいむは疲れて眠っているかのようにぐったりしています。
子れいむは、助けれなかった妹たちの赤ゆっくりを守るため、まりさの元に向かいました。
「やめちぇね!あかちゃんはゆるしてあげてね!」
「ゆゆん?安心するんだぜ!赤ちゃんとおまえは助けてやるんだぜ!」
「ゆゆ?」
てっきり殺されてしまうと思っていたれいむは体をひねります。
まりさは枝から落ちていく赤ゆっくりを受け止め、れいむの元に置いていきます。
「ゆーむ、ちょっと多いんだぜ。」
「かわいーあかちゃんだよ!」
れいむは赤ちゃんに頬ずりして可愛がっていました。
「そうだだぜ!れいむその赤ちゃんをまりさの帽子に載せるんだぜ!」
「ゆゆ、あぶないよ!」
「お前も乗れば良いんだぜ。数が多いから、ダメなら置いていくんだぜ!」
「ゆぎゅ・・・」
れいむは仕方なく赤れいむを落ちないようにまりさのリボンに引っ掛けていきます。
まりさは動いているれいむを落とさないように慎重に赤ゆっくりを回収していきました。
「ゆぅ、これで全部なんだぜ!」
「まだ、いもーとたちがいるよ!」
「あいつらはもう親に返してやるんだぜ。」
「うそだ!そういってほかのいもーとたちはころされちゃよ!」
「今回は本当に親が来るんだぜ。」
まりさはそういって赤れいむと子れいむを連れて巣を出ました。
外ではぱちゅりーと子供達がまりさがやってくるのを待っていました。
「むきゅ、結構いたわね。」
「ああ、まぁこのれいむがちゃんと面倒見るはずなんだぜ。」
そう言ってまりさは食糧を乗せた葉の上にれいむ達を乗せていきます。
まず、れいむを乗せて、口の中の赤ちゃんを渡して行きます。
その後帽子の上にいた赤れいむを乗せました。
「よし、じゃあ出発だぜ!」
まりさと数匹の子まりさが食糧の乗せられた葉で出来た台車を引っ張っていきます。
その周りをぱちゅりー達がゆっくりと飛び跳ねています。
台車の上では赤ゆっくりとれいむが歌を歌っていました。
れいむは巣に置いてきた妹達が心配でしたが、親がきっと助けてくれると思いました。
そして、赤ちゃんゆっくりが育ったら、私達も親に会いに行こうと考えました。
そのために、しっかりとした子に育てないと、と自分に言い聞かせます。
子まりさや子ぱちゅりーの世話をしていたれいむは小さいながらに母性は充分にありました。
生まれたばかりでいろんなものに興味津々な赤ちゃんは直ぐに台車から落ちそうになります。
れいむは赤ちゃんが落ちないかと不安でしたが、顔は笑顔でした。
最終更新:2008年10月10日 08:05