「むきゅ~~♪ きょうもすばらしいおてんきね♪」
突然だが、自分はぱちゅりぃを飼っている。
最初は越冬前に打ちに入り込んできたのだが、仕方なく家に置いてやり、あれよあれよという間に一年が過ぎようとしていた。
そして今、天気はどんよりとした曇り空。
それなのに、何が嬉しいのかぱちゅりぃはきゃっきゃと喜んでいる。
「今日は、街に言ってくるから、お前は大留守番してろよ」
「むきゅ~~♪ ごほんをかってきてね!!」
はいはいと、適当に返事をして家を出る。
どうせそこら辺で紙を貰ってくればそれで満足するだろう。
この前は本屋のカード型カレンダーを百科事典といって喜んでいたからな……。
そんな事を考えながら、俺は家を出発した。
電車にゆられる事数十分。
目的地である某電気街に着いた俺は、さっそく色々と物色し始める。
「むっきゅ~~♪ ぱちゅりぃにもそのけんきゅ^しりょ~をみせてね♪」
……。
……なぜここにパチュリーがいるのだろう。
同人誌を眺めていた俺に話しかけて来たのは、一匹のぱちゅりぃだった。
その格好を見ると、どうやら俺の家に住んでいるものとは違うようだが、確かにぱちゅりぃだった。
「むきゅ♪ はやくみせてね!!」
「……ああ。 はいはい」
読んでいた本を手渡す。
初めのうちは得意顔で読んでいたぱちゅりぃだったが、だんだんと目が泳いでゆき、最後には後ろに倒れこんでしまった。
「おいおい。どうしたんだ?」
「むきゅ~~……。なんかいなほんだったからすこしつかれたのよ」
難解ね……。
俺は新しいそれをレジに持っていった。
表紙には、独逸っ娘擬人化大辞典と書かれていたその本を。
「むきゅ~~♪ まつのよ!!」
店を出ようとすると、どうやられいのぱちゅりぃも回復したようで、得意げに俺に話しかけてきた。
「なんだ?」
「おにいさんは、なかなかはくしきながくしゃのようね!! しかたがないから、ぱちゅりぃもどうこうしてあげるわ!!」
……なっじゃそりゃ?
また変なのに付きまとわれたものだ。
どうせ勝手についてくるだけ出し、仕方がないからそのまま放って見る事にした。
「むきゅ!! まつのよ!! もっと
ゆっくりしてね!!」
腹が減ったので昼飯を食べる事にした俺は、近くのラーメン屋に入る。
入り口で買った食券を出し、出来上がるまでしばし待つ。
「むきゅ♪ ぱちゅりぃはおせちりょうりのなみ♪ 汁ダクね♪」
隣を見ると、プルプルと腕を震わせながらぱちゅりぃが必死に話しかけてきた。
しかし店員もなれたもの、スルースキル完璧で受け流し、まったく相手にしない。
「むきゅ……!! むっきゅーー!!」
とうとう力尽き、地面にしりもちをつくぱちゅりぃ。
なんていうか、滑稽だ。
「むっきゅーー!! ぱっちゅりぃの!! ぱっちゅりぃの!!」
その後も、テーブルの先々で必死になっているぱちゅりぃを眺めながらの昼食を取る。
ここのカツどんハンバーグカレーセットは絶品である。
「むっきゅ♪ これはぱちゅりぃのよ!!」
どうやら返却棚を見つけたらしいぱちゅりぃが、必死によじ登って食べようとしているらしい。
「むっきゅ~~♪ いっただっきま~す♪」
そのまま手づかみで一つの皿に手を突っ込んだ。
「むっぎゅーー!!! いだいーー!!」
同時に挙がる絶叫l。
そりゃそうだ、ステーキセットの鉄板に手を入れたら熱いだろう。
ものの見事に転げまわるぱちゅりぃを尻目に、お盆は洗い場へと流れていった。
「むっきゅ~~!! まっで~~!!」
まだ付いてくるのか……。
店を出た俺に未だについてくるぱちゅりぃ。
正直言ってウザイのだが、無理に引き離すのも忍びない。
「よし。お前ちょっと来い」
「むきゅ♪」
仕方がないので、ぱちゅりぃを引きつれ駅の中へ。
そうして、一番安い切符を買ってやりぱちゅりぃにくれてやる。
「ほら、これやるから付いてくるなよ」
「むっきゅ~~♪ ぶらっくか~どだわ♪ むっきゅ~~♪」
この上ない喜びを感じていただけたようで、俺も満足して改札をくぐる。
「むっきゅ~~♪ こうこ~~ね♪」
なぜかぱちゅりぃもくぐる。
しかし、ここまでは想定内である。
俺は迫り来る人ごみに紛れ、電車に乗り込み、目的の駅で下車した。
そこに、ぱちゅりぃの姿はなかった。
~~~~~~~~~
「むきゅ? ここはどこ? むきゅ!!」
男とはぐれたぱちゅりぃは、人並みに揉まれるままに電車に乗り、そして降りた。
付いたのは、来た事もないような駅であった。
「むきゅ!! まっでえぇ!! まっでぇーー!!」
不安を覚えたぱちゅりぃは、でんしゃに戻ろうとしたが時既に遅し。
走り去ってゆく電車を追いかけ、そして転んだ。
「むっぎゅーー!! むぎゅーー!!」
ホームで泣き叫ぶぱちゅりぃであったが、何時までもそうしている事は出来なかった。
先ほどと同様に人ごみに押され、ホームを去り、駅構内へ。
「むきゅ? むきゅきゅ?」
そこはゆっくりが知覚するには余りにも広いものであった。
その光景に、手に持った切符を握り締めたままぱちゅりぃは呆然としていた。
が、それは次の瞬間には押さえ込まれていた。
「むきゅ!! こんなところ、ぱちゅりぃにかかればあっというまね!!」
「かんたんよ!! はやくおうちにかえって、きょうのれぽーとをかかなくっちゃ♪」
すばらしいポジティブ思考。
しかし、それも次の瞬間には消え去ってしまった。
「むぎゅ!! どーじであがないの!!」
「むぎゅ!! いだいーー!!」
「むきゅ? もとにもどってぇーー!!」
改札。
エスカレーター。
エレベーター。
色々なものにことごとくぶつかってゆくぱちゅりぃ。
一日そうした事を繰り返すうちに、すでに帰るということはきっぱり忘れてしまったようである。
しかし、ここでしぶとく生きていくうちに、また新たな人間が違う土地に運んでくのだろう。
~~~~~~~~~
「お~~い。帰ったぞ~~」
家に帰ると、ぱちゅりぃの声は聞こえなかった。
変わりに聞こえるのは、泣き声である。
「むぎゅーー!! むぎゅーー!!」
「おいおい。どうしたんだ?」
予想通り、泣き叫んでいたぱちゅりぃに声をかける。
「むぎゅ!! ぱじゅりぃのごほんがーー!!」
「本が?」
「どろっどろになっじゃたのーー!!」
……。
泣き叫んでいるぱちゅりぃの手には、グチャグチャになったノリが握られていた。
大方。またどこかに隠していたのであろう。
しょうがない、お仕置き決定だ。
「おい。こっちに来い。代わりの本を持ってきてやる」
「むぎゅーー!! ありがどぉーー!!」
俺が手にしたのはjavaの参考書。
これから二時間。たっぷりとぱちゅりぃに教育してやろう。
最終更新:2008年10月27日 01:43