最近一人で虐待していると色々と手間がかかって面倒な事が多くなってきた。
だからと言って他の虐待お兄さんと共同で虐待しては互いの虐待方針などの関係で結局旨味が減ってしまう。
普通の人間はそもそも虐待なんぞに興味を示さない。
動物は意思疎通の関係で問題外。
そういう訳で俺は
ゆっくりを虐待の相棒として迎え入れることにした。
ゆっくり達は自分がゆっくりである以上、ゆっくりの限界などを知っているからだ。
ついでに意思疎通も動物より出来て、口で使える範囲であれば道具も使えるという点もプラス評価だ。
という訳で俺は虐待のパートナーを手に入れるために森へと入っていくのであった。
「ざぐやー!ざぐやー!!」
「うー!ゆっくりしね!!しね!!しね!しね!しね!」
最初に出会ったのはれみりゃ(身体付き)とふらん(身体付き)だ。
2匹とも捕食種であり、美味しく食べる為にゆっくりを虐待する性質を持つ。
身体がついているので人間の道具もフルに使えるのもメリットになるだろう。
だが……
「調教に手間がかかるからな……チェンジだ」
「げべっ!?」
「じねっ!?」
2匹ともかなり頭が悪い上、れみりゃは普通のゆっくりよりも厚かましく、ふらんは見境無く攻撃を仕掛けてくる。
餡子を増量するなりして教育を施せば対ゆっくり戦闘力も高い優秀な助手になるらしいが、それには相当な手間暇と費用がかかるという。
別にそこまでしてこの2匹を助手にしたい訳でもない。
ついでに捕食種である為、ゆっくりがこいつらを見かけただけで逃げてしまうのもマイナスだ。
という事で2体の頭を同時に掴んで木の幹に叩きつけて静かにさせた後、俺は次のゆっくりを探すことにした。
「げっへっへ、くずめーりんはゆっくりしないでしぬんだぜ! まりささまのてにかかってしぬのをこうえいにおもうんだぜ!」
「じゃおーん!じゃおーん!!」
次に出会ったのはまりさ種……それも言動からすればゲスまりさと呼ばれる類のものとめーりんだ。
ゲスまりさはゆっくりの中でも裏切り・共食いなどゆっくりの悪徳を寄せ集めたような性格が特徴だ。
他のゆっくりより多少身体能力が高く、ゆっくりを甚振るのに抵抗がないのが利点だろうか。
一方めーりんは言葉を喋れないためか普通のゆっくりに嫌われており、見つかるとすぐにいじめられている。
だがめーりんがいるだけでゆっくりが寄ってくるため、虐待用のゆっくりを集めるのに困らず、
ゆっくりにしては硬い表皮のせいか中々にタフだ。タフすぎて損はない。
更にゆっくりにしては聞き分けが良く温厚、余り人に害をなさず懐きやすいのも特徴といえるだろう。
だが……
「そもそも相棒にするのに向いてないわな、チェンジ」
「げばらっ!?」
「じゃお……?」
ゲスまりさはそもそもゆっくりの悪徳を集めたような性格であるためか、こっちの話を聞かない上に調子にのる。
話を聞かせるためには調教する必要があるが、こいつを調教して助手にするぐらいならさっきの2匹を調教した方がまだ早い。
一方のめーりんは温厚な気性のせいで、自分をいじめていたゆっくりが死んでさえ心を痛めるのでそもそも虐待の相棒には向かない。
飼いゆっくりにするには十分なんだがね。
という事で俺はゲスまりさを蹴飛ばして餡子の山にすると、めーりんの悲しそうな泣き声が響く中を後にした。
「まりざぁぁぁぁぁどごぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!? どがいはのありずどいっじょにずっぎりじまじょぉぉぉぉぉぉ!!」
次に出会ったのはありす種……の中でも発情している状態のものだ。
発情しているありすはゆっくり(特にまりさ種)に対する嗅覚が極めて高く、獲物を執拗に追う。
更に発情しているせいで色々とリミッターが外れているのか普通のゆっくりどころか場合によっては捕食種であるれみりゃやふらんでさえすっきりー!させて殺してしまうという。
だが……
「そもそも見苦しい、チェンジ」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ、ありずのべにべにがぁぁぁぁぁぁぁっ゛!?」
その醜態はお子様には見せられない程見苦しい。というかゆっくりの中でも屁を放ってるれみりゃと同じぐらい殺したくなる。
ついでに言えばすっきりー!させてゆっくりをあっさり殺してしまうのもマイナスだし、何より発情ありすなんてそこらへんに転がってる。
という事で俺はありすの顎の下から飛び出ていた突起を踏み潰して役に立たなくしてから、そこを立ち去った。
「ゆっくりくろまく~」
「あたいってゆっくりね!!」
次に見かけたのは人の背丈ほどもある巨大なゆっくり……ゆっくりと、その傍らにいる青いゆっくり……ちるのだ。
れてぃは捕食種でありながら他のゆっくりと行動を共にすることの多い珍しいゆっくりだ。
ドスに次ぐ体格がゆっくりたちに安心感をもたらすらしく、れてぃのそばにはよくゆっくりがいる。
ちるのは馬鹿だ。馬鹿だが畑を荒らすなどの行為はしないというよくわからないゆっくりである。
オリジナル同様凍気を纏っており、ゆっくりを凍らせてしまうため、同じゆっくりとの喧嘩には極めて強い。
どちらもゆっくりの苦手な冬でも余裕で活動する面白いゆっくりではある。
だが……
「ゆっくりく~ろ~ま~く~」
「あたいってゆっくりねぇぇぇぇぇぇっ!?」
「やっぱりこうなるよな……チェンジ」
れてぃはやっぱり捕食種なので同じゆっくりを食べる。ついでに体格に見合うだけよく食べる。
飼うにしても虐待するにしても食費が凄まじいことになるのでそもそもこういうのに向かない。
それを無視しても、虐待するためのゆっくりを食べられては元も子もない。
ちるのはちるので、凍気のせいで思いがけないところで凍傷を負ったりするため人間との生活するのに向かないのだ。
という事で俺はれてぃに食べられるちるのの絶叫を耳にしつつ森の奥へと入っていった。
「おぉ、見つけた見つけた」
「……きめぇ丸か」
「なにかお探しのようで」
目の前で顔を高速でシェイクさせている体つきゆっくりはきめぇ丸というゆっくりだ。
ゆっくりらしからぬ速さで動き、ゆっくりらしからぬ知性を持ち、ゆっくりする事が嫌いで他のゆっくりをゆっくりできなくすることが生き甲斐という極めてゆっくりらしからぬゆっくりである。
身体付きなので道具を扱うのも問題なく、当初の希望を全て満たしているゆっくりだが……。
「いや、特に探しちゃいないぞ。チェンジ」
「おぉ、がっくりがっくり」
余りにも満たしすぎていてむしろどうかとも思う。
風の噂では既にきめぇ丸と一緒に虐待している虐待お兄さんもいるらしいしな。
残念そうな声音で飛び去るきめぇ丸を見つつ、俺は次のゆっくりを探し始めた。
「やめじぇぇぇぇぇぇ!?」
「まりじゃじにだぐないぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
「うるとらじょうずにやけましたー!!」
次に会ったのは地面に熱した石と油煮え滾る鍋を置いて串に刺したゆっくりを揚げている体つきのゆっくり、ゆっくりおりんだ。
最近現れたゆっくりであり、体つきと体なしとでは生態が随分と違うゆっくりである。
体なしは死んだゆっくりを生き返らせることができる。
といっても所謂生きた屍なので腐って不衛生この上なく、ゆっくりたちにも人間たちにも嫌われている。
一方体つきはそれなりの知性を有しており、ゆっくりたちを揚げることに執念を上げる。
揚げたゆっくりは自分で食べる他、通りがかった人間に振舞われることもあり、これによって命が助かった遭難者もいるという。
これだけ見れば中々虐待の相棒としては優れているのだが……。
「じゃじゃーん、おにーさん! たべない?」
「お腹が減ってないから良いよ。仕事頑張ってな」
「わかったよ! おにーさんもがんばってね!!」
何分、おりんにとってはゆっくりを揚げることは“しごと”らしく、ゆっくりを揚げることに執着している。
相棒にしても多種多様な虐待には対応できないだろう。
ついでに火を使うので俺がいない時の火事が怖い。今のところおりんが元で山火事が起こったって話は聞かないが。
という事で俺は楽しそうなおりんの声と揚げられるゆっくりたちの悲鳴を聞きつつ更に奥へと分け入った。
「よぉ、ゆうか。元気してるか?」
「……む、おにいさん」
次に出会ったのは如雨露を口に咥えた緑色の髪をしたゆうかだ。
ゆうか種はゆっくりとしては極めて珍しいことに農耕の概念を理解しており、生涯を花や野菜を育てることに捧げる。
その上他のゆっくりを畑を荒らすものとして蛇蝎のように嫌っており、捕食種であるためか腕っ節も強い。
世の中には更に体つきの最早妖精に近い存在となった“ゆうかりん”とやらも存在しているらしいが、体なしでも虐待の相棒としての要件はかなり満たしているといえよう。
しかし……
「虐待の相棒を探しててな……ならないか?」
「ゆうかにはこのはたけがあるから……」
「さよか」
何分おりん同様、ゆうかも農耕を“しごと”と捉えており、自分の耕している畑に執着している。
片手間で虐待も出来るかもしれないが、本業に傾注している以上は片手間程度でしかない。
それではちょいと困るのだ。
ついでにいえばゆうか種は全般的に警戒心が強いため、人間に関わることを避ける傾向が強い。
このゆうかと俺が気軽に話を出来るのは偶然長い付き合いになったためだからだ。
なのであんまり期待していなかったのだが。
「んじゃ寒くなってきたし元気でな」
「うん、おにいさんもげんきでね」
という事で畑に水を撒き始めたゆうかと別れ、俺は来た道を戻ることにした。
「……結局ゆっくりが相棒ってのは無理があるのかねぇ」
結局相棒となるゆっくりは見つからなかった。
普通のゆっくりに近いのは根本的にダメだったり、それなりの知性を持つのは他に性分があったり、どうにもうまくない。
やはりゆっくりをゆっくりに虐待させるのは無理があるのか……って
「おぉ、まんねりまんねり」
「……またお前か。というか何が言いたい」
目の前に高速シェイクをかますきめぇ丸が現れた。しかしマンネリとはどういう事だ。
「虐待のあいぼうを探しておられるようで」
「出歯亀とは趣味が悪いな」
「おぉ、しぇいしぇいしぇいしぇい」
「中国語かよっ!? つーか謝ってるのなら首を縦横無尽に振るな!?」
「まぁ話を元にもどしますと」
「反らしたのお前だろ!?」
ツッコミに次ぐツッコミで少し苛々してきた所できめぇ丸のシェイクが止まる。
「マンネリこそしじょうと言いたいわけでして」
「それは要するに」
「私じゃだめですか、ということです」
きめぇ丸が虐待の助手や相棒に使われているのを承知で、自分を相棒にしないかと言っている訳か。
「ふむ……」
確かにきめぇ丸はさっきも考えた通り理想的な相棒だろう。
さっき止めようと思ったのも他と同じのが嫌だったからに過ぎない。
しかし見つからなかった以上はこいつにしてしまうのが良いだろう。
だが……
「だが断る!」
「えぇっ!?」
「ぶっちゃけ自分で売り込みに来たのが気にくわない!!」
「なんとっ、私は自分で自分の道をたってしまったということですか!」
「その通り……あの時俺に遭った時点でお前は既に負けていたんだ」
「おぉ、しょっくしょっく……ですが私は諦めない! いずれ第二第三の私があなたのあいぼうになるために現れるでしょう!それまでさらばさらば」
それを捨て台詞にしてきめぇ丸は夕焼け空に飛び去っていった。
それを無言で見送る俺。
やっちゃった気がしないでもないが、ちょっとすっきりした。
だが最後に一つだけツッコミたい。
「……第二第三のお前って……それってお前じゃん」
そうして俺は今日も一人でゆっくりたちを虐待している。
最終更新:2008年10月31日 01:48