ゆっくり達を飼い始めてどれくらいになるだろうか。
最近私が教育していたゆっくりに変化が訪れた。
私が育てているのはれいむ種が2匹、まりさ種が2匹、ありすが1匹、みょんが1匹。
それぞれ違う部屋で、別々に教育を施した。
人間に対して元より持つ野性的な行動を取らせない事が第一の教育方針。
これはどの種にも行い、それをしっかり身に着けさせるには骨が折れた。
しかし今回この場で話すのはそんなストレスがマッハになるような事例では無い。
この、各ゆっくりに対する育て方の違いで―この謎の生命体は驚くべき変化を遂げたのだ。
1つ目のれいむの部屋に入る。
「おにーさん、おかえりなさい!」
小さい畳を敷き、ミニチュアな鳥居と賽銭箱を備えた透明ケースから声を上げるれいむ。
「ただいまれいむ。今日もれいむのゆっくりぽいんとでゆっくりしてたんだね」
「ええ、ゆっくりしてたわ。でもちょっとくらいなにかおこらないの?」
れいむは部屋に一緒に住まわせていた亀の上に乗りにこやかに話す。
このれいむ、リボンには変化が無いものの、髪の毛が綺麗な紫色となっているのだ。
こんな感じになったのは―ここに住まわせて1ヶ月位経った頃だろうか。
ゆっくりと他の動物を一緒に住まわせたらどうなるか試した所、偶然にもこのような変化をもたらしたのだ。
「そんなれいむの為に、今日はこんなのを用意してみたよ」
そう言って私は捕まえてきていた野生のれいむをケースの中に入れる。
「ゆ!ここはとてもゆっくりできるよ!!!ここをれいむのゆっくりぷれいすにするよ!!!」
何と言うか、お約束の一言。
よくもまぁこんな言葉をすらすら言える本能を持っているものである。
「ゆゆ、へんなれいむがいるよ、かみのいろがへんなれいむはゆっくりでていって…ゆべっ!?」
「ひとさまのいえにきて、よくもまぁそんなくちがたたけるわね」
紫髪のれいむに対して暴言―おっと、本能の言葉だった―を吐きつけるれいむに対してのしかかる紫髪れいむ。
「どぼじでごん゛な゛ごどずる゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」
「あなたが、みのほどをしらないからよ」
「ゆびぃっ」
泣き喚くれいむに上からのしかかり、息も絶え絶えになったれいむに冷たい言葉を放つ紫髪れいむ。
そしてそのままとどめを刺さずに放置。
「ふぅ、これでいへんかいけつね。おにーさん、すてきなできごとありがとね」
髪の毛が紫になったれいむは以前に比べ好戦的になり、いつもと違う事が起きるとそれを解決するようになった、ようだ。
それじゃまたね、と紫髪れいむに挨拶をし、私は次の部屋へ向かった。
「あ、おにいさん!ゆっくりしていってくださいね」
ミニチュア鳥居にミニチュア神社、渡り石などを広げたケースから丁寧な声が聞こえてきた。
ここは、もう一匹のれいむを育てていた場所である。
「きょうもかみさまのはなしをきかせてくださいますか?」
「それはもう少し後でいいか? 今は皆の所を順番に回っているんだ」
ここではれいむに対して神様のお話を毎日欠かさずしていた。
これもまた1ヶ月位していたのだが、段々とリボンが小さくなり、れいむのかみのけが緑色になり…
そして今では立派な"ゆっくりさなえ"に姿を変えていたのである。
「そうだったのですか」
「ああ、もう少ししたら皆に会わせてあげるよ」
これが元々れいむ種だったと誰が思うだろうか。
礼儀正しくてとても懐いてくれる、躾の行き届いたゆっくりである。
「もし私を悪く言うゆっくりが来たら、さなえはどうする?」
「そのわるいゆっくりをこらしめます!」
うんうん、さなえも私に対する信頼度は高いみたいだ。
野良ゆっくりに対しても紫髪れいむとまではいかないが攻撃を仕掛けるだろう。
「うふふ、おにいさんきょうもきてくれたのね」
魔法陣っぽい絵柄の書いてある地面にゆっくり用の本や何やらを用意したケースから笑い声と共にまりさが迎えてくれた。
「お、まりさ。今日も勉強してるのか?」
「ええ、どすとやらはふしぎなわざがだせるんでしょ?わたしもまけてられないわ」
躾ついでに本を読ませて勉強させてみた所、このまりさは帽子が紫色に、髪が赤色に変わった。
オマケに口調まで変わったときたものだ。
基本、まりさ種がうふふと笑うのは酷い虐待を受けて頭の中がイカレた時にしか言わないと考えていたのだが。
どうやら違う条件でもうふふと言うようになる、それの手段の一つなのかもしれない。
「うふふ、もっと強くなるわよ、うふ、うふ、うふふふふ・・・・・・」
自分の世界に入りながらも勉強する姿を見て、私は次の部屋に向かう。
「わぁっ!!!」
「うわぁ!?」
「ふふふ、おどろいたかい?」
薄暗い部屋のなか、ちょっと廃墟っぽいイメージを施したケースを覗き込んだ途端、後ろからした声にびっくりしてしまった。
元々はまりさ種を飼っていたのだが・・・・・・驚かせて、悔しかったら私を驚かせてみなと挑発したの結果なのだろうか。
"ゆっくりみま"、と言うらしいゆっくりになってしまった(本人がみまと名乗った)。
帽子もとんがり帽子となり、透明ケースをすり抜けられるようにまでなってしまった。うーん。
「今日は油断してしまったな、こいつは一本取られたよ」
「ふふ、でもまだまだおどろかせたりないからねぇ、だんだんといままでのぶんかえさせてもらうよ」
「言ってな、次はそう簡単に驚かないさ」
まぁ、こんな面白いゆっくりが出来るとは思わなかった。
「おにーさん、もっとじゅぎょうしてくれるの?」
綺麗に整頓した本にトランプ兵隊のミニチュア等を置いたケースから優しい声が聞こえてくる。
「ありす、今は授業の時間じゃないからね」
「ざんねん」
「大丈夫、ありすはいつも全力で頑張ってくれるじゃないか」
「えへへ、おにーさんありがと」
まりさは勉強を自主的にさせたのに対し、ありすには自分でみっちりと教え込む形にした。
レイパーになる危険性のある種だけに、細心の注意をしただけ、のはずだったのだが。
カチューシャがいつのまにか青色のリボンに変わり、心なしかサイズも小さめになっている。
すぐそばにはお気に入りの本が1冊あり、いつも持ち運んでいる。
「いざというときにぜんりょくでがんばれるようにならなきゃ」
「きっとありすならなれるさ、保障するよ」
「ありがとおにーさん」
レイパーとは似ても似つかないその姿に、正直ちょっと感動してしまった自分がいる。
いい子に育ってくれるだろうと思いつつ、次の部屋に足を運んだ。
「おお、お兄さんではないか」
畳に掛け軸、いかにも和風な部屋。
どうにかしてぺにすぺにすちーんぽなのを何とか喋らせようと頑張ってみた。
ついでに剣術も面白半分で覚えさせてみた所。
「本当に変わったなぁ」
「なに、昔は若気の至りが過ぎたんじゃよ、しかし殆どの者がああだとは嘆かわしい」
立派な髭を生やし、貫禄も十分。
縁側で一緒にお茶を飲むとすごくゆっくりできそうである。
"ゆっくりようき"だそうだ。
「こうして育ててくれた事には感謝しておる」
「まぁ、飼うと決めたからなぁ」
「あの姿のまま一生を送るなど、今の私には考えられぬ。本当に御主人様にはここまでして頂いた恩義をいつか返さねば」
まぁ、何と言うか。
凄く穏やかでゆっくりしているとはこういうのをいうのだろうか。
しかし私より貫禄あるかもしれないような姿になるとは思いもしなかった・・・・・・
ともあれ。
どうやら私の育てたゆっくりは『進化』したらしい。
もしくは『変異』したのだろうか?
しかも野生のゆっくりに対し立ち向かったりする位だ。
ひょっとしたら昨今の被害に対するいい対抗策になるかもしれない。
ここまで立派に育ったんだ、試しにこの6人を顔合わせした後、わざと家の玄関を開けて外出しよう。
帰ってきた時が楽しみだ。
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あとがき
ゆっくりがずっとあのままの姿でしかも主にいる面々だけ…とは限らないかなと。
何らかの要因で姿が変わる事くらいあってもいいんじゃないかなと思いました。
今まで書いたもの
博麗神社にて。
炎のゆっくり
最終更新:2008年11月08日 11:44