仕事を終えて家路についていると一匹の
ゆっくりまりさが飛び出してきた。
「まりささまにおかしをよこすんだぜ!さっさとしないといたいめにあうんだぜ!」
なんと!野伏せりだ。
「なんだお前急に・・・。おれはお菓子なんて持ってないぞ?」
「うそついてもだめだぜ!そのふくろのなかにはおかしがあるんだぜ!ころされたいのかだぜ!?」
「これはお菓子じゃなくてDVDだけど・・・お前さっきから凄く強気だな?」
「まりさはむれでいちばんつよいんだぜ!おまえなんかいちげきだぜ!!」
「え、まさかお前人間より強いとか思っちゃってんの?」
「とうぜんだぜ!にんげんがゆっくりにかてるとおもってるの!?ばかなの?しぬの?」
思っているようだ。
この饅頭は、万物の霊長を名乗りあらゆる生き物を押しのけこの地球の覇者となった人類に挑もうというのか。
他の生物から見れば自殺に等しい行動だがこのまりさにとっては違うらしい。
今まで人間との接触が無かったのだろう。
食物連鎖の頂点に立つ者としてこの下克上は見逃せない。お前の挑戦受けて立つぞ!!
「分かった。お前が本当に人間より強いかどうか試してみよう。でもその前にコンディションを整えなければな。まずは俺の家でゆっくりしていくがいい。」
「ゆ!まりさにしょうぶをいどむなんてほんとうににんげんはばかなんだぜ!でもしかたがないからそのしょうぶをうけてやるんだぜ!
だからさっさとばかなおじさんのいえにつれていくんだぜ!そしてゆっくりしんでね!」
もう勝った気でいやがる。
ここで潰してもいいがそれじゃつまらん。それに丁度借りてきたDVDを使えるチャンスだしな。
「じゃあおにいさんのいえにいこうね!」
まりさはほくそ笑んでいた。
この人間は馬鹿だ。あのみょんより強い群れで最強の自分にたかだか人間如きが勝てるハズがないのに。
この人間を本気の半分も出さずに遊んで力の差を見せ付けてから殺してやろう。
そして人間のゆっくりぷれいすを自分のものにし、最終的には人間を全て殺し自分はゆっくりの王になろう。
まりさはそう考えていた。
しかし現実はまりさの幸せな妄想のように甘くはない。
「ここがお兄さんのお家だよ。」
「ゆっへっへ。やっぱりにんげんはばかだぜ!このゆっくりぷれいすはまりさのものだぜ!いまでていけばいのちはとらないであげるんだぜ?」
「はいはい、それじゃあ戦う前に面白いものを見せてあげるよ。」
「にがしてあげるっていってるのにじぶんからしをえらぶなんてそこぬけのばかだね!でもおもしろいものはみてあげるからさっさとだすんだぜ!あとさっさとおかしをよこすんだぜ!」
TATSUYAで借りてきたDVDをデッキに入れ再生ボタンを押すと、そこにはふてぶてしい顔のゆっくりまりさが映った。
そして次の瞬間
ビチャッ!!
人間の足が伸びてきて、画面の中のまりさは粉々になった。
「ゆ!?にんげんのぶんざいでゆっくりになんてことするんだぜ!!まりささまがころしてやるんだぜ!!」
「まぁまぁ落ち着いて。まだオープニングだよ?」
画面には『ドキュメント〜ゆっくりとの戦い〜』と映し出された。
このDVDは突如として出現してからというもの絶えず起こり続けるゆっくりの害を防ぎ、対処するハンター達の姿を追ったものだ。
まずハンターへのインタビュー。この鷹のように鋭い眼をした初老の男が今回の主人公である大五郎だ。
そして次に大量のゆっくり共が畑を荒らす映像だ。畑を荒らされてオロオロする人間を見てまりさはニヤニヤしていた。
しかし笑っていられたのはそこまでだった。
ハンターは語る。ここまで組織化した畑荒らしを止めるには群れごと排除するしかないと。
大五郎は取材班を引きつれゆっくり達のコロニーに向かった。
そして周りに柵をして逃げなくするとゆっくりの巣に爆竹を次々と投げ込んでいった。
驚いて飛び出てきたゆっくり達を手に持った丸太のような棍棒で潰していく。いいぞ!もっとやれ!
あっという間にそこはゆっくり達の悲鳴と断末魔に包まれた。
画面が変わった時、既にゆっくりの姿は無く大量の餡子と帽子が散らばっているだけだった。
返り餡子だらけになった大五郎にさっそくインタビューする取材班。
淡々と答える大五郎は息を乱してさえいなかった。
「ええ、ゆっくりは力も知能も貧弱ですからね。逃がさないようにさえすれば簡単に駆除できます。
しかし一匹でも逃がせばすぐに増えて何の学習も無くまた害を出しますから全部駆除することが大事なんです。」
次に映し出されたのは3mにもなる巨大なドスまりさ。
これが人間にどう考えても不利と思われる条約を突きつけてきたのだ。
駆除するにもドスともなれば力も強い。下手をすれば死人が出るかもしれない・・・。
そこで大五郎の出番だ。
大五郎は夜ゆっくりが寝静まったであろう時間にドスの群れへ侵入すると「ゆ〜ゆ〜」と寝息を立てるドスのまぶたの上に得物である丸太を叩き付けた!
悲鳴をあげるドス、状況が理解できないドスに大五郎は流れ作業でもするように棍棒を叩き込み息の根を止めた。
あっという間だ。そしてドスの悲鳴に起きてきた群れを一匹残らず駆除した。
そんな映像が延々90分続いた。
そしてまりさはというと・・・
最初の群れが駆除された時、まりさは信じられない思いだった。
なぜ自分達より弱いはずの人間が1つの群れをたった一人で全滅させるのか。
もしかしたら人間はゆっくりより強いのではないのだろうか?
そんな思いがこみ上げてきて、まりさは青年のほうをチラチラと見ていた。
しかしドスまりさが出てきた時、まりさは安心した。
この巨大なゆっくりならあんな人間簡単に殺してしまうだろう。
自分ほどではないかもしれないが一目置いてやってもいい。
しかしそのドスまりさは人間に抵抗することもできずに殺されてしまった。
この時まりさは口の中でグチャグチャと咀嚼していたクッキーをポロポロとこぼしながら青くなっていた。
そしてDVDが終わる頃にまりさはようやく理解した。
人間は自分達なんかより遥かに強い。勝てる訳が無い。戦えば必ず死ぬ、と。
終わったDVDをデッキから取り出している間まりさは俺の方を目を見開いて見ながらガクガクと震えていた。
どうやら理解したようだ・・・
「さて、面白かっただろう?それじゃあ、この家をかけてお兄さんと戦おうか。」
「・・・・・・」
「ん?どうした?ここをまりさの家にするんだろ?俺を殺してさ。」
「いりませんんんんんんん!!!!ここはおにいさんのおうちですううう!!!!まりさはかとうなゆっくりにふさわしいいえにかえりますううう!!!!
だからゆるしてくださいいいいいい!!!!!!」
「ん?なんで謝るんだ?ゆっくりは人間より強いんだろ?」
「よわいですううううう!!!!ゆっくりはたくさんいてもにんげんひとりにもかてないざこなんですううう!!!!」
「おいおいさっきと言ってること全然違うぞ?じゃあ俺とは戦わないのか?」
「おにいさんとたたかったらまりさしんじゃいますううう!!!!まりさしにたくないんですうううう!!!!」
「あ、そ。じゃあいいや。さっさと出て行けよ。」
「ありがとうございますううううううう!!!!もうにどとにんげんにかてるなんていいませんんんんん!!!!」
「そうだな。俺もそれが良いと思うぞ。長生きしたければな。」
「すいませんでしたぁぁぁ!!!!それじゃあしつれいしますうううう!!!!」
まりさは心底ほっとした。
なんとか死なずにすんだ。もう二度と人間には関わらないでおこう。自分達が弱いと知ったのだから。
すごすごと退散しようとしたまりさ。しかしお兄さんはそれを呼び止めた。
「おい、まりさ」
「はいっ!!!!なんでしょうかっっっ!?」
「人間様、だろ?」
「にんげんさまですぅぅぅ!!!!ごべんなざぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
泣き叫びながら一目散に飛び出していった。
本当はムカつく態度を取ったから殺そうと思っていたが思いのほかおもしろい反応が見れたので見逃してやることにした。
それに必死に謝るまりさを見ていると哀れになってきたしな。
しかしあのまりさのビビりようを見ると人間みんながあの屈強なハンターのように強いと思ったのだろうか。
俺はあんな鬼神の如き強さは無い。それでも普通のゆっくりくらいなら踏み潰すだけなのだが。
あのまりさは長生きするだろう。ゆっくりは身の程さえ弁えればそれなりに長生きできる。
食物連鎖の最下層に位置するという身の程さえ弁えれば。
最終更新:2008年12月09日 19:54