ゆっくりいじめ系1978 僕はこうして助かりました

注意

  • 過去作品『僕はこうして生まれました』と『僕はこうして学びました』の登場人物が登場



家に一通の手紙が届いた
差出人は『ゆっくりレイプ同好会』 内容は『伝えたい内容があるから、指定する場所に来て欲しい』とのこと

その手紙を握り締めて。二人は豪邸と呼んで差し支えない屋敷の前に立っていた

「レイプ同好会の関係でここには何度かお邪魔したことがある。ここの家主が生粋のレイパーなんだ」
「日本のレイパー人口多すぎない?」
「『太っている人が100人いたら、太っているのが好きな人も100人いる』と統計学の偉い人が言ってる。つまり、ゆっくりが1000匹いたら、ゆっくりをレイプしたい人も…」
「その理屈はおかしい。いや、今はそんなことより」

その家の門に掛かる大きな看板に目をやる。○○組と大きく表記されていた
縦列駐車されているベンツの列
塀の中から聞こえるドーベルマンの鳴き声

「ここってさ、どこからどう見ても・・・・」

暴力団。そんな露骨過ぎるネーミングが彼の頭に浮かんだ

「昔大学の海外旅行でロンドンに行った時に友達と宮殿の近衛兵を笑わせようと挑んだことはあるが、ここの黒いスーツを着た人たちを笑わせたいとは思わない」
「初めて父さんからまともなセリフ聞いた」



息子:学生
ゆっくりと人間のハーフ。ゆっくりのサガか、災難に遭うことが多い

父:会社員
ゆっくりレイパー。新しい体位の開発に余念がない。レイプ業界では相当な有名人らしい

会長:???
ゆっくりレイプ同好会の会長。その素性は幹部ですら知らず謎に包まれている



「お二方、どうぞこちらへ。お嬢がお待ちです」

いかつい男に引率される二人

男は和室の前で止まり、正座してその襖を開ける
「お嬢。お客人を連れてきました」
「ご苦労様です」
「へい」
男は頭を一度深く下げて去っていった
部屋にはその声の主である若い女性が一人。和室には似つかわしくない清楚な印象を受ける洋服を着て二人を待っていた
着物じゃないのは胸元がキツいせいか、と下世話なことを考えながら敷かれた座布団の上に座る


「ご多忙の中、わざわざお越し頂きありがとうございます」
(あれこの人・・・?)
息子は彼女に見覚えがあった
「この方は同好会の会長の秘書さんだ、ここの家主のお孫さんでもある」
(秘書・・・・さん?)
父が紹介した彼女の肩書きと、息子の思っていた彼女の肩書きは違っていた
「お茶とお菓子をご用意しますね。その間しばらく御くつろぎ下さい」
そう言うと彼女は部屋から出て行った

彼女の足音が完全に遠ざかったのを確認して父は立ち上がる

「父さんはしばらく席を外す。だからあの子の用件を代わりに聞いておいてくれ」
足早に部屋を出て行こうとする父の腕を掴む
「ちょっとなんで? いきなり席を外すとか失礼だろ」
「父さんあの子が苦手なんだよ・・・・なんというか、その、クレイジーだ」
「はぁ?」
お前も十分クレイジーだろうが、というツッコミはとりあえず置いておき、その理由を尋ねる
「あの子はゆっくりをはじめとしてキモいものを愛でる変わった性癖がある。この前、お歳暮でゆっくりれいむが送られてきだろ?」
「覚えてる、ふーちゃんがすごく怖がってた」
この前、後頭部が異常に盛り上がったれいむがクール便で届いた
なんでもアマゾンの奥地で発見した新種らしい
他にもアフリカの民族の群れで飼育されていた、ガングロで唇に大鳥の骨の装飾を刺したれいむも一緒に梱包されていた
可燃ごみの日に捨てた
流石にあんな得体の知れないものを食べる勇気は無かった
ちなみにその日は不思議とゴミ捨て場にカラスが一匹も寄ってこなかった

「あれを送ってきたのが、彼女だ」
「マジで?」
「とりあえず用件を聞いて帰ろう。いいな?」

息子の手を半ば強引に振り払い、逃げるように部屋から出ていった

そのやりとりから一分もしない内に彼女が戻ってきた
「お待たせしました・・・あの、先生は?」
「お腹の具合が悪いと言って、お手洗いに。代わりに僕が話しを聞いておくようにと」
「そうですか…」

少し残念そうな顔をしてテーブルに二人分のカップを並べる
お盆に乗った茶にも菓子にも別段変わったところは見られない

一人分の湯のみをお盆に残したまま。彼女は用件を切り出した

「実はこの度アメリカで世界大会が行なわれることになりました。その大会についてどうしても先生に口頭でお知らせしたいことがありまして」
「その大会って、まさか・・・・」
嫌な予感しかしない
「はい。性なる祭典。YRWG【ゆっくり・レイプ・世界・グランプリ】です」
(うわ〜〜〜〜)
思わず天井を仰いだ。変態の考えることはわからないとつくづく痛感する
「海外の様々な出資者の協力を得て、めでたく二回目の開催に漕ぎ付くことができました」
「二回目なんですか?」
出資した人間がいるということにも驚いたが、前に一度行なわれていることにもっと驚いた
「何を仰っているのですか? その前回の優勝者があの先生ではありませんか」
「えっ!!」
知りたくなかった新事実
「そもそも先生がギネス(正確には裏ギネス)の本に載るきっかけになった大会じゃないですか。お弟子さんだから、てっきりご存知かと」
「弟子じゃないです!」
かと言って、息子ですとも言いたくはなかった


それから数分後
大まかな話の内容を聞き、あとは父親待ちの状態になったが、肝心のその父親がいつまで経っても戻ってこなかった

「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」

気まずい沈黙が流れる

口を開いたのは彼女からだった

「私達どこかでお会いしましたよね?」
彼女は彼のことを何処で会ったか忘れていた
「同好会の定期会合の後に」
彼女を覚えていた彼がすこしだけ補足すると
「ああ。はい。思い出しました! その節はどうも」
得心したと言わんばかりに手を叩いた
以前、同好会の定期会合に(半ば無理矢理)参加して、理由あって会の貴重品を運ばなければならなくなった時。その荷物の受け取り役が彼女だった

この際なので彼も尋ねることにした

「いきなりこんな事を聞くのは変かもしれませんけど、もしかしてレイプ同好会の会長さんはあなたですか?」
「あはははは、まさかそんな・・・」
空になった湯のみに急須を注ぐ彼女の手が動揺で異常に震えていた
「『さしすせそ』って言って下さい」
「さししゅしぇしょ・・・・・・・・これがなにか?」
「やっぱり会長さんですね。確信しました」
「一体なぜ何故バレたのでしょう・・・?」
「いい加減。気付いてください」
言い逃れ出来ないと判断したのか、彼女は一度俯いた
「口外しないと誓えますか?」
顔を上げた彼女の顔つきは真剣だった。頬の肉がキッと締まっていた
それを見て彼も崩していた足を正座に戻した

「そうです、会長の秘書という肩書きは嘘です・・・・・私が同好会の二代目会長です。前の会合を取り仕切っていたのも私です」
「二代目? ということは初代は?」
「私のお爺様です」
「そうなんですか・・・・・」
その事実を知り、彼は軽く引いた
「お爺様はゆっくりをレイプするのに若きころより情熱を燃やしていました。そして気付いたら国内でも指折りのヤ○ザになっていました」
「関連性無いよね? ゆっくりレイプと○クザは」
「ですが長年の無理がたたり、腰痛で去年引退しました。今は組を若い方に任せハワイで一等地を買って、レイプ用のゆっくりを自家栽培する隠居生活を送っています」
(網走刑務所にでも永住すればいいのに)
聞こえないように心の中でぼやいた

「お爺様には孤児だった私を育ててくれたご恩があります。それに報いるためにも、私は会を継ぐことを決めました」
言っていることは立派だが、継いだモノがモノなため素直に尊敬できない
「それはあなたの意思ですか? 無理して継いでいませんか?」
父が自分にレイパーになれと強要したように、彼女も半ば無理矢理継がされたのではないかと不安になった
「私は孤児院にいたとき、友達もろくに出来ず毎日飼われていたゆっくりと遊んでいました。それである日ムラムラっとして気がついたらその子たちと・・・」
(変態幼女!?)
「その頃です。お爺様と出会ったのは。今思えばあの出会いは必然だったような気がします」
(なんで僕の知り合いはまともな人がいないんだろう)
レイパーの人口が多いのではなく、自分の周りにレイパーが多いのだと気付いた。『レイパー同士は惹かれあう』と父が言ったことを思い出す
(でも僕別にレイパーじゃないし。父さんと一緒にいるからか?)
「ここまで知られたのなら話さねばなりませんね。どういう経緯でこの会が出来たのかを。あれは戦後…」
「いや別に話さなくていいです・・・・・・『そんな』という顔をしないでください。なんか僕が酷いこと言ったみたいじゃないですか」

再びの沈黙。父が戻ってくるまでの時間つぶしで始めた雑談なのだがこれ以上会話が続く気配はない

「時間つぶしに何か映画でも見ますか?」
「いいですね。どんなのがありますか?」
彼女がその部屋にある棚を開ける
「うっ・・・!」
そこにはグロテスクな姿の人形がずらりと並んでいた
「あ、これなんてどうです?」
取り出した映画はもちろん、その類のもので
彼がお腹が痛いと仮病を使うのは必然であった



その頃の父

廊下で見つけたゆっくりてんこ(胴つき)に声をかけていた

「お嬢さん、今お暇かな?」
「そうやって、てんこにしろいこなをはこばせるきだな、きたない、さすがやく○。きたない」
「お嬢さんにそんな物騒な真似をさせないよ」
腕を優しく掴み、やんわりと引っ張り背後に回りこみ。後ろから抱きしめてその耳元で囁く
「まあ白い粉じゃなくて白い液体を運んでもらうことになるが」
てんこのお尻に固いモノがあたる
父の背中にも固いモノがあたる
「そこまでだ」
背後からドスの利いた声がした
「で、出来心なんです・・・・」
両手を上げて、捕縛したてんこを解放する
父の手から解放されたてんこは父を一瞥して舌打ちした後、廊下の向こうへ消えていった

「いくらお客人といえど、お嬢のペットに手を出したとあっては」
「ふー…」
父は一呼吸間を置いてから。大きく息を吸い
「ゆっくりしていってね!」
おもむろにそんな言葉を吐いた
「ゆ、ゆっくりしていってね! ・・・・・・あ、しまった」
背後にいた者も同じ言葉を返した
「なんだ。やっぱりお前か。渋い声出して誤魔化したつもりだろうが、普段の声とあんまり変わんないぞ」
振り向くと思ったとおり息子がいた
「その癖まだ治ってなかったのか?」
「こればっかりは本能みたいなもんで・・・・・ボールがいきなり飛んできたら、誰だってとっさに体が動くでしょ? それと同じだよ」
説明しながら背中に押し当てていた携帯電話をポケットにしまう

「あの子との話はどうした?」
「大体済んだ、後は父さん待ち」
「そうか。じゃあさっさと用事すませて帰るぞ」
「でも戻る前にさっきのてんこを探して謝ろうよ。この事をこの家の人に知られたらどうなるか」

逃げていったてんこを探すために、廊下を見渡す

「ここかな?」

廊下を進む途中で【飼育室】と書かれた部屋を見つけた
ドアは頑丈な鉄製で、左右にスライドさせて開くタイプになっていた

「待て!」
開けようとする手を慌てて父が制した
「なに」
「プレデターが居たらどうするんだ。お前責任取れるのか? 『つまらない物ですが』なんて挨拶してれみりゃの頭部渡すつもりか?」
「どうしてそうなるんだよ。いるわけないだろ」
「あのお嬢さんの趣味なら絶対に何かUMAを飼ってる」
「飼ってるわけないだろ。いくら未確認生物が好きだからって」
「あの外道くんスーツ(前回参照)を考案したのも彼女だぞ。好きなモビルスーツがザクフリッパーだぞ。ゆっくりがいるんだからチェストバスターが実在してたって不思議じゃないぞ」
それを聞き、彼はしばらく考え込んだ
「まあ一万歩譲ってせめて居るとしてもE.Tじゃない?」
「E.Tってお前・・・・それこそどうするんだよ。家の自転車のカゴにはせいぜいマルチーズが限界だぞ」
「どこに連れてく気だよ」
人差し指を立てて息子に向ける
「“ト・モ・ダ・チ”(E.Tの名シーン)の練習だ!」
「ケンジ君?」
「そのトモダチじゃない。確かに指立ててるけど。いいから指を出せ」
「え・・・う、うん」
言われるがままに指を出して、父の指に近づける

パチッ

「いたッ」「いつッ」

二人の指の間を静電気が走った

「・・・・・」「・・・・・」

二人は数秒、無言で赤面していた

「さて、練習はこれくらいにして。開けるぞ」
(何しているんだろう僕たちは……)

ドアを僅かにスライドさせて、そこから様子を覗き込むと、父は高速でドアを閉めた

「ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ」
「どうしたの? 何が見えたの?」
父は異常なまでに驚いていた。両耳を手で覆って「やばい」を繰り返す
「ジャバ様がいた」
「ジャバってあのジャバ・ザ・ハット(スターウォーズの宇宙ギャングのボス。太っちょ)?」
「ああ、間違い無い。きっとこの組のボスだ。ここは組長室だったんだ。なんてこった地球はもう・・・・・・」
「映画ネタはもういいから。さすがに飽きてきた」

彼もドアをスライドさせて小さなスキマをつくり、中の様子を伺う

「ジャバだ・・・・・・絶対にジャバ様だ・・・・」
「んなわけないだろ。良く見なよ」

ドアを全開にする
部屋は本来道場として使われるはずだったのか、天井は高く、床は頑丈な板張りになっていた。隅には畳みが積まれており
【食物連鎖】と書かれた大きな板が壁に掛かっていた

その部屋の中央にずっしりと構える大きな丸が一つ
最近、見かけなくなった『ゆっくりれてぃ』がそこにいた
今は眠っており、静かに寝息を立てている

「でかいなぁ」
「そうか? 父さんが若い頃に出会ったのはもっと大きかった。当然おいしくいただいたが」
かつて山でドスまりさと遭遇したことがあるが、このれてぃはそれよりも一回りも二回りも大きかった
「おい」
「何その手?」
「モンスターボールを貸してくれ。眠っている時は捕獲率が上がる」
「れてぃはポケモンじゃない」
「ピカチュー、カイリュー、ヤドラン、れてぃだろ?」
「ピジョンだろそこは」
「いいからモンスターボールだ。生憎父さんの持ち物は金の玉が2個とすごいつりざおだけなんだ・・・・・まぁ釣竿の方は不思議とコイキングしか釣れませんが」
「シモネタで自虐かよ・・・・・・ってうわっ!」

気付いたられてぃの長い舌が迫っていて、それが彼に巻きつき彼を捕獲した
二人の会話でれてぃは目を覚ましていた

「その年で触手なんてマニアックなプレイ、父さんは許さんぞ」
「言ってる場合じゃないだろ!」

宙吊りにされた彼はれてぃに頬擦りされる

「まぁ大丈夫だろ、お前はゆっくりにだけはモテるから…」

パクリ

息子が目の前でれてぃの口に放りこまれた
体が半分ゆっくりの彼は“食べ物”にカテゴライズされてしまっていた

「その年でスカプレイとか、お前どんだけ凝ってるんだよ」
「お願いだから見てないで助け……ア゛ーーーーーーーー!!!」

口から一瞬だけ顔を出したが、れてぃがのどを鳴らすと同時に彼の姿が完全に見えなくなった

「もしかして、これ相当にヤバイ?」

洒落にならない状況に陥り。事態は一刻を争うのだと理解する

「やむおえん。レイプ真拳を使わせてもらおう」

―――― レイプ真拳 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

相手に“快楽”と“苦痛”を与えるレイプ技術の“苦痛”の部分だけを特化・先鋭化させた対ゆっくり拳法。
「ただの暴力では?」という声も一部であるが、レイプ自体ただの暴力なので気にしてはいけない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「あの、どうかなされましたか?」
構えようとしたその時、声がしたので振り向くと彼女(会長)がいた
二人が余りにも遅いので心配になって様子を見に来ていた
「実は・・・」

事情を説明する

「本当なのれてぃ?」
「ゆふぅ?」

わざとらしい程にしらばっくれた表情をする

「『知らない』という顔をしていますが?」
「『食ったけどそれがどうした?』という顔にしか見えないんだが」

その直後

「ゆぺっ!」

れてぃが口から何かを吐き出す
吐き出された物は床にぶつかりペキリと壊れる音がした
息子の携帯電話だった
それを見て彼女の顔色が変わったのは言うまでもなかった

「あなたなんてことを!! 彼は大事なお客様よ!! 餌以外のものは食べちゃ駄目だってあれほど」
「ゆっふふふふふふふふふふ♪」
慌てふためく彼女などお構いなしに、にやりと不敵な笑みを見せた
明らかに二人を挑発している
「餌だって毎日ちゃんとあげているでしょう!? お願い、彼を吐き出して! いい子だから。ね?」
なんとか説得しようと、れてぃのすぐ近くまで近づく
「くーーろーーまーーくーー!!」
「きゃっ!」
誠意を持って近づいた彼女をれてぃは舌で容赦なく叩いた

「大丈夫ですか!? 早く手当てを…」
倒れた彼女を抱き起こす
「私のことはいいから彼を・・・」
「しかし…」
「いいから」
「ですが…」
「いいから」
「はい」

最後に言った「いいから」の声のトーンがあまりにも低くて、背筋に冷たいものを感じた
この人に逆らってはいけない。なぜかそんな気がした

「私。凄んでみようと思います。この子は組員の人の言うことはよく聞くんです。この子たぶん恫喝されるのは苦手なんですよ」
「凄むっていうと、あの借金取立ての人とかがやる怖いアレですか? 無茶だ、あなたそういう稼業とは関わらないように育てられているでしょう?」
「でも、組の人が啖呵を切るのを小さい時から見てるので、もしかしたら・・・・」

――――なら最初から組員の人呼んで来・・・あ、やばい手足の感覚なくなってきた
れてぃの中からそんな声が聞こえたような気がしたが、二人の耳には届かなかった


息を吐いて、目を閉じて想像する
過去に目撃した組員の怒鳴る姿を、祖父が吼える勇姿を
今の自分は極道の人間だと強くイメージする

目を開けた彼女の雰囲気は先程とは僅かばかり違っていた
今まで彼女を取りましていた、柔らかな雰囲気が無くなっていた

長い髪を面倒くさそうな手つきで一度だけ、掻きあげた
首をコキコキと鳴らしながら、ずいっとれてぃの顔を覗き込むように睨みつける
「なぁオイ?」
劇団の女優のように、彼女は完全にヤクになりきっていた
「・・・・・・」
彼女から顔を背けるようにれてぃ体を回す。彼女の目をまともに見ることが出来なかった
「オイッ!」
「ゆ゛っ」
横を向いたれてぃの頬を平手で叩いた
「オイッ!!」
また叩いた。今度は手首のスナップを利かせて威力を上げた
「オイッっつてんだろうが!!」
「ゆぐッ!」
声を荒げると同時に頬の下部をつま先で蹴った。つま先は深々とれてぃにめり込んだ

「こっち向けよカスが!!」

れてぃの頬の上部を乱暴掴み抉り取る寸前まで引っ張る
「ぐ・・・く゛ろ゛ま゛く゛うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
ようやく彼女の方に目を向けた。その目の表面は涙で一杯だった
「・・・・ゆぐぐ」
痛みで口をキッと結ぶ
「『ゆぐぐ』じゃねぇよ!! 数が貴重だからって飼ってやったら調子コキやがって!! 」
膝で何度も突く。突く。突く。聞いているだけで体の痛覚を刺激される音が響く
「ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛・・・・・・・ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」
れてぃの目蓋が小刻みに痙攣して、体全体から汗のように砂糖水が吹き出ていた
「クンニもろくにできねぇヤツなんざぁ何時でも捨てられんだよ!!! そんなに埋立地に貢献してぇのか!?」
否定するように首を小さく振る。れてぃの戦意は完全に失われていた
「ゆ・・・ゆゆゆ、ゆ゛ぶっ」
れてぃの顎の中心を力いっぱい蹴り上げる。抓る手も緩めない
「今更弱った声出してんじゃねぇよ!! 飲んだガキを吐くのか、 吐かねぇのか!? 簡単な二択だろうが!!」
しかし彼女は止まらない
「応えろやぁ!!」
「ゆぐっ!!!!!!!」
掴み、引っ張っていた頬の皮を爪を立ててミリミリと引き千切った。千切った部分を床に捨てて踏み潰す

面倒くさそうに乱れた髪を掻き毟る

「いいやもぉ、ガキとか吐かなくていいから死ね、な?」

「ゆぺぇ・・・うっぷ・・・・ゲ、ゲ・・・ゲポロロロロロロロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

まるでその一言が引き金になったように
井戸を汲み上げるポンプごとく、れてぃは体の内容物を吐き出した
朝食べたゆっくりまりさ16匹が混ざり合ったものと。昼食べたれいむ19匹の残骸に混じり
灰色の液体と赤のリボンにまみれながら息子も流れ出た

れてぃは目をグルグルと回して顔をうつ伏せにするような体勢で前に沈み込んだ

五体満足な彼の姿を見て安心したのか、彼女はペタリと力なく床に座り込む
「あはははは・・・若い衆の方の口真似をしてみたのですが・・・・なかなか上手く出来ませんね・・・」
緊張が解けると手は振るえ、座ってもなお膝が笑っていた。遅れてやってきた恐怖で彼女の腰は抜けていた
(いや、あれはパーフェクト過ぎるだろ。お嬢、あんたアッチでも食ってけるわ)
たった10数秒の間のやり取りであったが、聞いている側にはその時間が異様に長く感じられた


「う゛う゛・・・・死ぬかと思った」
「今日から貴様の名はシンバルだ」

「・・・・・」「・・・・・」「・・・・・」

吐き出された息子を見て、父は渾身のギャグを放ったが誰にもウけなかった

「大丈夫ですか?」
「ひぃっ!」
彼女が這って近づくと彼は身を強張らせた
「可哀想に、こんなにも震えて。れてぃの中がよっぽど怖かったんですね」
彼の震える理由は絶対にそれだけではないことを父は知っていた

「おじょうのおそろしさには、わたしのきょうふしんがまっは」
「ん?」

入り口のドアに体を半分隠して、先程のてんこがこちらを覗き込んでいた
父の視線を受けたてんこは脱兎のごとく駆け出して、あっという間に姿を消した
「あの子変わっているでしょう? 布団の中だと積極的で甘えんぼなんですが、普段は人見知りが激しくて」
(もうやだこの人…)

彼のトラウマがまた新たに一つ増えたのは言うまでもない







「その姿では気持ち悪いでしょう? 浴室をお使いください。着替えを持ってまいりますから」
「すみません。おい、立てるか?」
「なんとか」

父の手を貸りてなんとか立ち上がる

(なんだろう・・・あたまがぼけぼけする・・・)

立っているはずなのに、地に足がついた感覚がしなかった


 どうした?
 だいじょうぶですか? つらいならよこになっていても

(ふたりがなにかいってるけど、よくわかんない)

 どうした?かおいろがわるいぞ、
 おいしゃさまをおよびしましょうか?

(ゆっくりできない・・・・)


彼の意識はそこで切れた











いったん最寄の病院に搬送された後、かつて自身が出生後に関わった大学病院に移されていた
3日間昏睡状態で。目覚めた四日目から様子見で入院していた

そして一週間目の朝を迎える

「おはようございます」
「おはよう。良く寝むれたか? いきなりで悪いが朝の採血とるからそこに」
「はい」
老齢の医者に促されるまま椅子に座る
「少しチクッとするぞ」
「ん・・・・」

採取した血液を液体の入った試験管の中に数滴垂らし、特殊な機械に入れる

「結果が出るまで数分かかる、その間に簡易検査をしておこう」

視力検査と簡単な問診の後。机の上に二枚の写真が並べられる

「右が人間の女の子で、左がれみりゃ?」
「よし。ちゃんと見分けがつくようになったな。半年前はどっちがどっちかわからなかったのに」
「今でもたまに間違えます」
「進歩してるのは事実だ、今度はちょっと難しいぞ」

また新たに二枚の写真を置く

「右がクリス・タッカーで、左がエディ・マーフィー?」
「正解だ。成長したじゃないか」
「この二人は関係なくないですか?」
「お? 機械での成分結果が出たようだ」
「誤魔化さないでください」

プリントアウトされた用紙に医者が目を通す

「これを見るとつくづく君が稀な存在だと再認識するよ。血液にこれだけの糖分を保有する生物なんて地球初じゃないか?」
「褒めてるんですかそれ?」
「しかし、上手いこと体が出来ておる。血小板が存在しない代わりに糖が傷口を塞ぐ役割を担っているとは」
「・・・・・」

もしかしたら、自身が思っているよりも自分の体はクリーチャーなのかもしれない



この医者こそが、生まれたての彼を最初に(言い方はやや悪いが)研究し、ゆっくりと人間の『ハーフ』と決定づけた人物だった
それなりの権威で。この人が方々に手を尽くしてくれたお陰で、彼は世間の見世物になることなく人間の身なりで生活を送れている
彼にとって両親に次ぐ恩人だった

二人の出会いは半年前、彼が父から自分が人間とゆっくりのハーフだと知らされて家出をした時
自身の出生の詳細を知るために、父から渡されたカルテの主治医の名前を頼りに自らの足で会いに行ったのが始まりだった

「れてぃの消化液も体から完全に抜けているみたいだし、もう退院できるな」
「そうなんですか。じゃあ着替えたら荷物まとめて帰ります。お世話になりました」
「怪我をしたらいつでも来なさい。まあ最も君の場合、指くらいなら千切れても砂糖水と小麦粉で簡単にくっつくから必要ないと思うが」
「どんだけ滅茶苦茶な体してんですか僕は?」

聞きたくも無い新事実を胸に彼は病院を後にした



「あれ? 鍵が掛かってる」
家に帰ると誰も居らず、合鍵を使い玄関を開ける
「二人して出かけてるのか・・・・ん?」
「リビングの電話が鳴っているので慌てて出た

「もしもし?」
『お、やっと繋がった』
父の声だった
「父さん? 一回もお見舞いにこないで何処行ってたんだよ」
『それはこっちの台詞だ。携帯は壊れてるから繋がらんし。病院にかけても「いない」って言われるし』
「途中で先生の大学病院に移ったんだよ。知らされてないの?」
『あの糞ジジイのところに居たのかお前。どうりで連絡がとれないわけだ』
父とあの医者は仲は理由あって険悪だった
「それよりも今どこ?」
『亜米利加・・・・時差ぼけが酷くてマジ眠い』
「アメリカァ!!?」
受話器の向こうの父の耳が痛くなるくらいに、素っ頓狂な声をあげた
『大会はまだ先だが下見もかねて早めに現地いりした。コネでお前も補欠選手に組み込んでおいたから来なさい』
「行くわけないだろ、お土産よろしく」
『さてはお前、父さんがいないのをいいことにエロビデオ三昧の日々を送る気だな。この思春期め。エロゆっくりが』
「ちげーよ馬鹿。とにかく、なんと言われようと絶対に行かないから」
『突然ですがクイズです』
「?」
『ふーちゃんは今、何処にいるでしょうか?』
「まさか・・・・・」
受話器を違う者が握る音がした
『おまえげんきしてたか? さいきんぜんぜんあって・・ガチャ・・・・おっとここまでだ・・・お前も来たほうがいいんじゃないか?』
「・・・この外道」
レイパーが集う場所にゆっくりを連れて行くなど、阪神の応援スタンドに巨人のユニフォームを着て試合を観戦するようなものである
ただではすまない
『開催場所の地図と、飛行機のチケットとパスポート、その他諸々の資料と旅費は戸棚に入れてある。父さん秘蔵の裏ビデオもあるが絶対に見るなよ』
「見ないから・・・でも。海外行ったことない僕が一人で目的地に着くのはちょっと無理が」
飛行機の手続き方法さえまだ良く知らない少年が、言葉や文化が違う異国で旅をするなど無謀に等しい
『その点は抜かり無い。窓の外を見ていろ』
「窓?」
言われた通り見てみる
「Hey,boy〜」
『紹介しよう。アメリカまでの心強い案内人、ボブだ』
生垣よりも背の高い黒人が彼に手を振っていた

「もしもし警察ですか? 下半身をバッキバッキに膨らませた怪しい黒人が、家の前に」
「チョ! マッテ!! ポリスメンハ、カンベンシテ!!」

心強い(?)同行人を得て、彼はアメリカの会場に向かうことになった


続く

present by ゆっくりレイパー

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最終更新:2009年01月17日 18:34
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