永琳×ゆっくり系27 忘れもの

「ゆ・・・ゆ・・・ゆ・・・」
一定のリズムで鳴くゆっくりありす。
頭頂部は大きく窪み、カチューシャはまるで渓谷にかかる橋のように窪みを横断している。
思考は奪われ何も考える事が出来ない。それは傍から見れば、とてもゆっくりしていた。
思い出したかのようにもぞもぞと動くが、それは些細な事だった。花が風に吹かれるようなものだ。

「で、性欲減退の為の措置がこれですか?」
因幡てゐは一定のリズムで鳴くありすを指差す。
「ええ、そうなんだけど・・・」
八意永琳はそう答える。
「性欲以外にもいろいろ減退してません。主に思考とか」

『ゆっくり治るお部屋』と可愛らしい文字で書かれた部屋、そこに永琳とてゐはいる。
ここは実験によってゆっくりを治療する部屋。
ありすは別の部屋で行われていた性欲減退実験でロボトミーに似た処置を行われ、思考に欠損が出たゆっくりだ。
永琳の指示でこの実験室に移され治療を受ける事になった。

「運悪く採取した中身は分析に回してしまったから、思考の復元は無理だけれど」
失敗とは言え、ゆっくりの思考を司る部分を的確に切除したのだ。それがどれ程研究価値のあるものか、
人間の脳などはある場所が決まっているのだから取得する事は簡単だ。
だが、ゆっくりの場合、中身が全て餡やクリームの為、どこが何を司っているのかが分からない。
あの兎のやった失敗は素晴らしい物だ。人間で言い替えるなら心を抽出したようなものだ。

永琳はこのありすの思考を取り除いた中身で補う気はなかった。そんな事してしまっては折角の研究材料が台無しになってしまう。
処置をした兎はミスの罪悪感からここへの移送を希望したが、無論、修復など施されるわけがない。
思考が壊されてなお生きる個体は抽出された思考と同じほどの価値を持つ。
食事をとる事ができないので、カスタードクリームを別に作り注射器で注入する。
思考の巡るゆっくりと違い空腹で文句を言う事もないが、注意を怠り空腹に気付かなければ、おそらくこのありすは死ぬだろう。
注意深く観察され、死なぬように保たれる。哀れむ者などいるものか、自分でさえ自分の状況を把握できていないのだから。

実験の一環としてこのありすを妊娠させる事になった。
「このありすが正常に妊娠するかどうかを調べるわ。健康的な・・・まりさ種を用意して」
「れいむ種の方が母親に向くのではないでしょうか?」
「あまりできた子どもに執着されても困るのよ。でも、性格の良い個体を選びなさい」

兎達は永琳の希望に沿うゆっくりまりさを探してきた。
繁殖場にいた童貞のゆっくりまりさ、性格も良く、このままいけば繁殖場で正常なゆっくりと恋に落ち、家族を持ち。
子ども達と仲良く暮らせるだろうに。係りの兎に持ち上げられ籠に入れられる。タオルケットの敷かれた心地よいベッドのような籠だ。
慣れているまりさは何の疑いもなく。身体を兎に預ける。疑う事、欺く事をゆっくりまりさは知らない。
餌が豊富にあり、意地悪をする個体などおらず、優しい母たちと気の良い仲間たちに囲まれ暮らしてきた。
この世界に悪などある事も知らぬ。まりさは籠に入れられふわりと浮きあがるのを感じた。

「ゆー、おそらをとんでるみたいだぜ」
はしゃぐまりさ、係りの兎はいつものように笑顔で。きっとこれから楽しい場所に行くのだ。
しかし、兎の笑顔は作られたものだ。不安を与えない為、訓練されたものだ。
繁殖用のゆっくりに負担をかけないように兎はいつもニコニコしていたが、
永琳に言われれば、その笑顔のまま自分の管理するゆっくりを全て皆殺しにできるだろう。ここはそういう場所なのだ。

まりさは初めての部屋に連れてこられる。
照明は明るいが、地面は硬いタイルで、今までいた場所とは全く違う。
優しさ、思いやりというものがこの部屋からは抜け落ちている。
それすら気付かずにまりさは籠から降ろされ、物珍しいそうにキョロキョロと辺りを見回す。
いつの間にか係りの兎はいなくなってしまい。まりさの後ろには永琳と他に数匹の兎が立っていた。
初めての人には挨拶をしなさい。そう教えられたまりさは元気よく挨拶をする。
「おねえさんたち、ゆっくりしていってね!!」

その挨拶は冷たく無視され、永琳は兎達に指示を飛ばす。
「これでいいわ。さ、あれを連れてきて。あなたはタオルケットを何枚か持ってきて」
「ゆ?おねえさん?ゆっくりしていってね!」
こんな冷たくあしらわれた事が今まであっただろうか、

まりさの前にあのありすが用意される。
まりさにとってあのありすは異形だ。まるでそれは死体だ。
動くし、何か鳴き声はするが、ただそれだけだ。気味の悪いものにまりさは顔を歪める。
これほど他者に嫌悪感を持ったのは生まれて初めてだ。悪い事だと分かっていてもその嫌悪感が顔ににじみ出てしまう。
「ゆぅー・・・ゆっくりできるありす?」
確認をする。見てくれが悪いだけかもしれない。しかし、返答はない。
ありすには言葉を理解する事なんてできない。そもそもまりさを認識できているかどうかすら怪しい。

「それではまりさ、そのありすを犯しなさい」
急に投げかけられる言葉、まりさはその言葉の『まりさ』が自分を指すとは夢にも思わなかった。
「あなたよ」
小突かれて初めて自分の事だと分かる。分かるが、言葉の意味が分からない。
ソノアリスヲオカシナサイ。そのありすをおかしなさい。

「そのありすを妊娠させなさい。やり方は分かるでしょ」
できるはずがない。すっきりは大好きなゆっくりとしかしちゃいけないからだ。
しかし、まりさの倫理観など無視し、要求は繰り返される。

「やらないのならば、あなたを生かしておく理由はないわ」
ショックな一言にまりさは身を震わせる。生かしておく理由はない。
つまり、自分はこのありすとすっきりする以外に価値が無いと言われたのだ。
今までのどんな事も否定された気分だ。それでい要求されるのは酷い悪事なのだから、
まりさは声を上げてその言葉を拒否する。

「いやだよ。そんなゆっくりできないことはできないよ!!」
その言葉に返されたのはメスの一振りだった。頬には浅い切り傷が残る。
傷は焼けるように痛く酷くむず痒い。初めての痛みだ。生まれて今までこんなに痛い思いをした事が無い。
まりさは声を上げて泣いた。泣いても言葉は変わらない。そのありすを妊娠させなさい。

「いだぁいよぉお!!」
「しないなら、もっと痛くするわ。もしかしたら死んでしまうかもね。さ、ありすを犯して子どもを育てなさい」
「いやだぁあ・・・もっどゆっぐりじだいぃいい!!」
初めてまりさは心からゆっくりしたいと願った。今まではただ周りの環境を享受しているだけだったが、
今日、この時ほど、強くゆっくりしたいと願った事はない。それと同時に自分のすべき事も理解できてくる。
ありすを確認する。時々、「ゆ、ゆ」と動くだけでこんなのとすっきりするなんてまるで死姦じゃないか、
だが、嫌悪感も倫理観も死の恐怖に押し出されていく。まりさはありすににじり寄り頬をくっ付ける。そして上下に動かす。
気持ち良くはない、気分が乗らないのだから。このままではすっきりに達する事が出来ない。
まりさはやけくそ気味の頬をこすりつけ、何度も気張った。
「ほぉおおお、んほぉおおおお・・・・んほぉおおお!!」
声を出し、自分を興奮させる。相手は動かないのだから自分が何倍も動くほかない。

「んほぉおおおお・・・す、ほぉお!!すっきりほぉおおお!!!」
結局、普通の性交の3倍もの時間をかけ、ようやくまりさは絶頂に達した。
まりさは罪悪感から、部屋の隅の方で小さくなっていた。永琳や兎達はそんなまりさを一切気に留めず、
ありすが妊娠したか否かを調べ始める。
「妊娠しているわ。出産はどうかしらね。そのまりさもここに入れておきなさい。必要になるかもしれないわ」
お互いに健康状態は良い。それ故に妊娠は植物型ではなく、ありすの中に赤ちゃんが宿る動物型だった。
まりさはすぐには母性に目覚めなかった。二日ほどは用意された餌を食べる事もせず、罪悪感に打ちひしがれていた。
しかし、ありすの腹部がふっくらしてくると、まりさの態度は次第に変わってきた。
まりさはありすの中にいる赤ちゃんを気遣うようになり、自分も餌を食べるようになった。

「ゆっくりできるあかちゃんがうまれるとうれしいよ」
生まれてくる赤ちゃんには罪はない、とでも言いたげに。
まりさは赤ちゃんを切望した。赤ちゃんが無事に生まれてくることが今のまりさにとって最高の喜びだった。それしか喜びが無かった。



1ヶ月、もぞもぞとありすの腹部が動き出す。しかし、ありすは出産するという事を知らない。
臨月などとっくに迎えているはずなのに赤ちゃんは一向に生まれない。
帝王切開も検討されたが、永琳の「できないならできないで様子を見守る」の一言で実行されなかった。
「ゆぎ・・・ぎぎ」
自分とほぼ同じサイズのゆっくりを腹部に入れ、ありすは苦しそうにする。
しかし、実際には苦しくないはずである。痛みを感じる事もないのだから、
成長した赤ちゃんが口を圧迫し、上手く声が出ないだけだ。
ついに業を煮やしたまりさがありすの腹部を噛みちぎる。永琳が待っていたのはこの光景だった。
噛み千切った場所から大量のクリームが漏れ出す。
もう、このありすは使い物にならないが、十二分に観察しつくし最期まで研究に貢献してくれた言う事はない。
まりさは必死にありすの皮を破っていく。そして中から赤ちゃんを取り出す。

「ゆぅー・・・?」
母体の片方に思考の欠損があった場合、母体の中身によって体を構成する赤ちゃんゆっくりは母体と同じ疾患が発症する可能性がある。
例え、それは後天的なものであっても同じだった。さらにまりさは強引にすっきりをした為、送り込まれる餡子の量は極端に少なかった。
故に生まれた赤ちゃんゆっくりには知性の欠片がわずかばかりあるだけで、

「ゆぅー?みゃみゃ?ゆふふふふ」
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっきゅりちぇーっちぇね」
生まれたのはゆっくりありす。まりさにとっては愛すべき赤ちゃんだ。
もちろん、まりさは失望した。生まれてきたのはあのありすよりはマシとはいえ。この有様だ。
それでも自分にはこの赤ちゃんしかなかった。
ここにずっといたが、今まで自分がいた場所に変えれる気配はない。
まりさはいつか自分の子ども達と一緒に遊ぶのが夢だった。夢は大きく歪んでしまったが、

「ありす、まりさがままだよ」
「みゃみゃ?みゃみゃ!みゃみゃ!!」
「ままといっしょにゆっくりしようね!」
「ゆっきゅり?ゆっきゅりぃ~!」
大事にしよう。この子は自分の子だから大事にしよう。
そう心に決めるが、どうしても周りの声が入ってきてしまう。

「結局、障害を引き継いだ個体が生まれたわね」
「ああなってはどこが欠損しているのか分かりませんから」
「ええ、死ぬまであのままね。知能が回復する見込みは一切ないわ」
違う違う。まりさの赤ちゃんはそんな悪い子じゃない。ゆっくりできる良い子だ。

「食事は取れるようです。野良なら間引かれているところでしょうが」
「あのまりさが絶望して殺してしまうかもしれないわ」
違う違う。まりさはちゃんとお母さんをやるんだ。赤ちゃんの良いお母さんになるんだ。

だが、その決意も次第に揺らぐ。
知能の低い赤ちゃんありすにはイライラさせられっぱなしだからだ。
つい言葉を荒げてしまう。
「なんどもいわせないでね!!」
「ゆ・・・みゃみゃ、みゃみゃがおこっちゃぁぁあ!!」
すぐに泣きだす赤ちゃんありす。
望まない子などこんなものか、永琳はこの赤ちゃんありすとまた別のゆっくりを交配させ、
次第に思考力を回復させる実験を行おうとしたが、赤ちゃんの成熟よりも前にまりさは赤ちゃんありすを殺してしまった。

兎はひょいとまりさを持ち上げる。まりさは永琳や兎にこんな事を言う。
「つぎはもっとゆっくりできるこをうむよ!!」
無論、次などない。これで実験は終了したのだ。

焼却炉に投げ捨てられる直前までまりさは次の家族への期待を語っていた。
投げ込まれてからは「あづい」と一言、二言騒いだ後、炭化していったので、家族は諦めたようだった。
忘れてはいけないのだ、言われた事を。子を育てろと言われたらどんな子であっても育てなければ自分が死ぬだけだ。




by118

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年03月14日 22:32
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。