ゆっくりいじめ系2507 函の中

※俺設定注意










突然だが俺はゆっくり農場などというものを運営している。
ゆっくりによる管理・運営された農場。偶に人の手は借りるものの、今までに数多くの野菜が生産されてきた。

農場は二つに分けられている。
ひとつは屋内農園。躾を施された所謂善良なゆっくりがゆうか達の指導の下、日夜農作物の世話を頑張っている。

もうひとつは野外農場。こちらは所謂ゲスや無能なゆっくり共によって運営されている。
勿論、こいつらが普通に野菜を栽培できるなんてことはない。そこで考え出されたのが奴隷農耕法だ。
必要な時に必要な仕事を果たし、それが出来なければ仕置きを受ける。当然脱走や野菜のつまみ食いなどは万死に値する。

れいむもそんな屑ゆっくりの一匹だった。
たまたまこいつの属していた班の中のゆっくりが優秀な個体で、その褒美に野菜を取らせたことがあった。
だが何を勘違いしたかこいつは、それからというもの勝手に作物を貪りだしたのだ。

先述のように、つまみ食いは万死に値する。
こいつには相応しい方法で死んでもらう。
丁度スペースも開いていたことだし、今回はアレがいいだろう。










	函の中










れいむは怒っていた。
ここに捕らえられてからというもの、れいむは全く幸せではなかった。
日も昇らないうちに叩き起こされ、馬車馬のように働かされた。少しでも休もうものなら鞭が、
逃げ出そうものならふらんが容赦なく飛んでくる。そして夜は泥のように眠る。

全く冗談ではなかった。こんな生活は欠片もゆっくりしていない。
勝手に生えるはずのお野菜さんの世話なんて何でしなければならないのか。れいむにはそれがとても理不尽に思えた。

そんなある時、お野菜さんを食べられるときがあった。
なんでも頑張ったご褒美らしい。れいむは歓喜した。
ようやくれいむにお野菜さんを食べさせる気になったか。当たり前だ。優秀で可愛いれいむにはその権利がある。
正確にはれいむではなく、同じ班のまりさが優秀だったかられいむにもお情けで野菜が支給されたのだが、餡子脳には知るよしもない。

だがそんな思い込みがいけなかった。
れいむはこれから毎日野菜を食べていいと解釈してしまったのだ。
それからというものれいむは隠れて何度も野菜を盗み食いした。

そして見つかった。
れいむにしてみれば当然の食事は、農場の主達にしてみれば作物を荒らす害虫の所業でしかなかった。
もはやれいむは奴隷ですらない。ただ処分されるのを待つ惨めな害虫。

だがそんなことはれいむは知らない。
だから今、男の腕に抱かれ廊下を歩いているこの状況でもれいむは物怖じせずに怒ることが出来ていた。

「ぷんぷん!おにいさん、れいむにたべものちょうだいね!れいむおなかすいたよ!」

男に腹が減ったと要求するれいむ。
ここまで厚顔無恥になれるのは無知ゆえか、それともこのれいむの本来の気質か。

当然男は答えない。
彼には害虫に言われるまま餌をやるほど人が良くなかった。
無視したまま廊下を歩く。

そんな男の態度に怒りを覚えるれいむ。
何でれいむの言うこと聞いてくれないの。れいむは偉いんだよ。
既に自分が奴隷だったということは頭にない。男の方がれいむの奴隷だと思い込んでいる始末である。
途方もない餡子脳だと言えた。

「おにいさん!れいむのいうこときこえなかったの!れいむおなかがすいたんだよ!」

自分の願いがかなえられて当たり前とも言わんばかりに、れいむは声を張り上げる。
何で奴隷の癖に命令を聞かないのだという立場を弁えない発言にも、男は眉ひとつ動かさない。
このままでは埒が明かないとばかりにれいむが暴れだそうとしても男の腕がそれを阻んでいた。

「ゆぎいいいいいいいいいいいいいい!!!れいむをはなじでえええええええ!!!」

腕の中でびたんびたんとのたくる饅頭に、彼は少しうんざりしていた。
この世全てを舐めきったかのような顔と態度も、喧しい声も、とにかくこのれいむを構成する全てが好みではない。
さっさとこの饅頭を処理するために、目的の場所へ男は歩く。

暗く深い地下に造られた一室。男の目的はそこにあった。

地下室のドアの前で、男は立ち止まる。
手元ではまだれいむがぎゃあぎゃあ喚いていた。

男はそんなれいむをやはり無視し、ドアを開ける。
金属製のドアが、ギィ・・・と少し掠れた音をたてながら開いていく。

例えて言うなら、そこはロッカールームだった。
壁という壁、床と天井以外一面に全て金属製の函が埋め込まれている。

よく耳を凝らせば何か囁くような声が聞こえる。
れいむは知るよしもないが、この函ひとつひとつに何かが入っているのだ。

「確か空いている場所は・・・・・・えーと、ここだな」

ようやく男が口を開いた。
しかしそれは、れいむの要望を叶える為のものではない。ただ空き函を確認しているだけ。

「ゆっ!?おにいさん、れいむにたべもの・・・・・・」

すかさずれいむが食べ物を要求する。
だが聞かない。男にとってれいむの声など雑音そのものだった。

男は空き函を開く。
郵便受けのような投函口がついた扉が開き、30×30×30センチの空間が姿を現す。

すかさずれいむを押し込む。連日の野菜ドロのおかげで少々肥満ぎみのれいむでも、すっぽりとそこに入り込んだ。
そして扉を閉める。これでれいむは出られない。内部からいくら押してもこの函は開かない構造になっている。

「ゆゆ!?おにいさん、なにするの!はやくれいむをここからだしてね!」

自力で出ようともせずに、れいむはここから出せと要求している。
頭がいいかと言われれば違う。ただ単に自分は動きたくないだけだ。

幸い、備え付きの投函口からは外の様子が確認できた。
れいむはそこから男を睨み、狭い空間の中でぷくうと身体を膨らませて威嚇する。

扉越しの威嚇は男には見えない。仮に見えたとしても何の効果もない。
ごそごそと懐の中を漁る男。

「ゆ!れいむにおいしいものくれるんだね!」

男の行動を自分に何か食べ物をくれるものだと思い込み、声を上げるれいむ。
今回に限って言えば、れいむの思い込みは正解だった。

「ほれ」

投函口からなにかを投げ入れる男。ころころとそれはれいむの元に転がってきた。
サイコロほどの大きさの、乾パンがひとつ。

「ゆゆ!とってもおいしそうなたべものだよ!ぱくっ!むーしゃ!むーしゃ!」

すぐさまかぶり付き、咀嚼するれいむ。
その醜悪な顔は扉に遮られ、男はそれを見ずに済んだ。

「むーしゃ!むーしゃ!・・・・・・しあわせー!おにいさん!もっとれいむにたべものちょうだいね!」

もちろん、サイコロ一個ほどの量でこの強欲な饅頭が満足することなどありえない。
あっという間に飲み込み、お代わりを要求するれいむ。

「お前に与える餌は、一日一回それっきりだ」

代わりとでも言うように、男は宣言した。
れいむには男が何を言っているのかわからない。

「ゆ!?なにいってるの!?そんなことどうでもいいかられいむにもっとごはんちょうだいね!!」

言うことは全て言った。
そんな態度で男は部屋から出て行こうとする。

ようやくれいむも今自分の置かれている状況を把握してきていた。
このままではまずいとばかりに、扉に向かって体当たりをするれいむ。

だが開かない。先述の通り、この扉はれいむの力程度では破れない。
ばいんばいんと扉にぶつかり跳ね返り、反対側の壁に頭をぶつける。それの繰り返し。

「ゆうううううううう!!!ゆっくりしてないとびらさんはゆっくりしないでしね!!!」

滑稽なほどに無力な体当たりを続けるれいむを尻目に、男はドアを開け、部屋を後にする。
がちゃりとドアが閉まったときには、もう男の姿はなかった。

「ゆああああああああああ!!!どうじでどびらざんひらがないのおおおおおおおおおお!!!!?」

男が去ったことにも気づかずに、扉に向かって必死に無駄な努力を続けるれいむ。
この根性を農作業の方面で生かせば、こんなことにはならなかっただろうに。

やがて疲れ果てたれいむは、函の中でじっとするようになった。
そして気づく。動かずに、喋らずにいることでようやくわかる息遣い。それが聞こえてくる。

何かがいる。この狭い牢獄の外、部屋中に拵えられた函にれいむと同じように閉じ込められた者がいる。
一つや二つではない。何十、いや何百もの息遣いがそこらじゅうから聞こえてくる。

その息の主はゆっくりだ。この部屋にはれいむ以外に閉じ込められたゆっくりが大勢いた。

「ゆ・・・ゆっくりしていってね!」

扉の向こうにいる見えない相手を確認するかのように、そっと挨拶する。

「・・・・・・ゆっくりしていってね・・・・・・」
「・・・・・・・・・ゆっくり」
「・・・・・・ゆ・・・・・・」

程なくして、ぽつぽつと挨拶が返ってきた。
ようやく自分のほかにも閉じ込められたゆっくりがいることを知るれいむ。

何でこんな事になってるんだろう。れいむはただお野菜を食べてただけなのに。

そのお野菜を食べていたことが原因だとは露も思わずにれいむは憤慨する。
れいむからすれば、いきなり拉致られてこんな狭い場所に押し込められたのだ。怒りもする。

それもこれもあの兄さんのせいだ。奴隷の癖にれいむをこんなところに閉じ込めるなんて、お仕置きしなきゃ。

相も変わらずに自分のやったことに気がつかない。
野生で一体どうやって生きてきたのかが不思議なくらいの楽観主義。

他のゆっくり達は元気がない。お兄さんに何かされたのだろうか。
だったらその分も含めてお仕置きしなきゃね。れいむは偉いんだから。

ひそかな呻き声を聞いて、れいむは思う。
少なくともこの場ではれいむの勘違いを正せるものはいない。だからここまでれいむは増長している。

ここから出たら、まずはお兄さんにお仕置きをしてやろう。
それから美味しいお野菜さんを沢山むーしゃむーしゃするのだ。さっきのご飯は少なすぎる。

出来もしない妄想を浮かべてにやにやする。
れいむは自力で出られない。野菜はれいむのものではない。きっちり先ほどの食事に不満を抱くのも忘れなかった。

「おにいさんはれいむにおしおきされたくなかったら、ごはんちょうだいね!!」

当の男が居ない部屋に、れいむの声が響く。
結局のところこの屑はどこまでも利己的で、欲の強い饅頭なのだ。

自分の欲望を正義の怒りだと思い込めるこの饅頭は世界一幸せな生物なのかもしれない。
自分の置かれた状況も忘れて、れいむは怒りに燃えていた。




















































・・・・・・いったいどれくらい長くこうしていただろう。
空腹で働かぬ頭を必死に回転させながら、れいむは自問する。

もうどうしようもないほど長い時間が過ぎていた。
れいむはこの長い、永い間、ずっとこの箱の中で暮らしている。

既にはしゃぎ回れる体力などなかった。
出来ることは動かず、喋らず、飢えに苛まれながら男がこの部屋に来るまで待つことだけ。

そう、あの男。れいむが奴隷だと信じて疑わなかった、あの男だ。
彼は毎日決まった時間にこの部屋を訪れていた。一日一回、れいむや他の函の中のゆっくりに餌をやるために。

彼がくれるものはサイコロほどの小さな乾パンが、ひとつきり。
あの日の宣言通り、それ以外の何物もれいむに与えられることはなかった。

最初の数日は脅すように喚いた。
早くここから出せ。奴隷の癖に何をしている。ここから出たらお仕置きしてやる。
当然、男は答えなかった。

暫くして、少しずつ声に恐れが滲み出てきた。
もうお兄さんにお仕置きするのはやめるよ。やめるから、ここから出して。
それでも男は答えなかった。

それからは震えるように懇願した。
お願いします。ここから出してください。もうここは嫌なんです。何でも言うこと聞きますから。
やはり、男は答えなかった。

今はもう、言葉も出ない。
ただ黙り込んで餌が投げ込まれるのを待つだけ。

他のゆっくり達も同様だった。
いや、違う。れいむが彼らのようになったのだ。

どんなに叫んでも、どんなに懇願しても男は耳を傾けない。
ならば諦めよう。諦めて、受け取れるものは受け取っておこう。そうすれば、体力の消耗は最低限に抑えられる。
ただ生き延びるためだけに飢えと戦いながら、屍のように生きるだけ。

れいむがこの部屋に入ってきた時から彼らは知っていたのだ。
いずれこの新参のれいむも自分たちのように、ただ騒がずに全てを受け入れるようになると。

今この部屋は静寂が支配している。
ほんのわずかに聞こえるのは弱弱しく聞こえる呼吸音だけだ。

ガチャリ、とドアを開く音。
男がこの部屋にやってきた合図だ。

男が次々と函に餌を投げ入れ始めるのを、無感動に見つめるれいむ。
最早彼が奴隷であるなどといった考えは浮かんでこなかった。

やがてれいむの箱の中にも餌は投げ入れられた。
ずりずりと這い、ゆっくりと餌を口に入れ、もそもそと咀嚼する。

これっぽっちの量では、れいむは勿論赤ゆっくりすら満腹にすることは出来ない。
僅かながらも口に入れたために、かえって更なる飢餓感に苦しむ。

それでも食べることは止められない。食べるのをやめれば死んでしまう。そういう思いがある。
だから食べ続ける。これが更なる飢えを呼ぶのだとしても。

ふとれいむが視線を上げると、そこにはれいむを見つめる男の姿があった。
おかしい。彼は餌を投げ入れればすぐにでもこの部屋を出て行くはずだった。

正確には、男はれいむを見ていない。
見つめる先はれいむの隣の、その函の中。
その函に向かって、手を伸ばす。

ガチャンと音をたてて扉が開く。
中にいたのは一匹のゆっくりまりさ。

そっとまりさを取り出し、抱える。
れいむには男が一体何をしているのかがわからない。

「よし、まりさ。出してやるぞ」

ざわり。
男の声以外に何も聞こえなかったはずの部屋にざわめきが生まれる。

今、なんて言ったのだ?
出す?誰を?そのまりさを?どこから?この牢獄から?何故?

疑問は声となり、ざわめきは少しずつ大きくなる。

そのまま男はこの部屋を出て行こうとする。
ゆっくりと部屋の中を歩き、ドアに手を触れる。

その瞬間、れいむが動いた。
扉に張り付き、あらん限りの大声を張り上げる。

「おにいざあああああああああああああん!!!!れいむも、でいむもだじでえええええええええええええ!!!!」

ピクリと、男は反応する。
ドアを握ったまま動かない。

チャンスだ。れいむはそう思った。
今叫ばねばもう二度と出られない。
そんな思いで必死に声を搾り出す。

「でいむもうあんなごどいいまぜんがらああああああああああああ!!!!おでがいじまずうううううううううう!!!!」

れいむに触発されたのか、他のゆっくり達も叫び始めた。

「ばりざもおおおおおおおお!!!!!ばりざもだじでええええええええええええ!!!!」
「あでぃっ、あでぃずもだじでええええええええええええええ!!!!おでがいじまずうううううううううううう!!!!」
「だじねでえええええええええええええええええ!!!!わがるよおおおおおおおおおおおお!!!!」

叫びは伝播する。
あっという間に静寂に支配されていたはずの部屋は阿鼻叫喚の様相を呈していた。

「おでがいでず!!でいぶを、でいぶをだじでぐだざい!!!」
「そのばりざよりばりざをだじでくだざいいいいいいいいいいいいい!!!!」
「むぎゅうううううううううううううううううう!!!!」
「み゛ょん゛っ!!み゛ょお゛お゛お゛お゛お゛お゛おおおおおおおん゛っ!!」
「あでぃずをだじでええええええええええええええええええ!!!!」
「に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああああ!!!!」

そんな叫びも、男には何一つ届かない。
この部屋中の函に向かって、ゆっくりと口を開く。

「お前らは、まだ駄目だ。まだ頃合じゃない」

この悲鳴の嵐の中でも不思議と通る、男の声。
ゆっくり達は叫びながらも、男の話を聞く。

「もっと時間が経てばここから出してやる。それまで待て」

そう言って、男はドアを開く。

「ああああああっ!!まっでええええええええええええええ!!!!」
「おいでがないでえええええええええええええええ!!!!」

誰も男が抱えているまりさのことに気が付かない。
まりさは動いていない。喋っていない。それどころか、息すらしていない。
まりさは死んでいた。

男が与えるあまりにも少ない餌は、長い時間をかけてまりさを弱らせていった。
一気に飢えさせるより、餌を与えながら十二分に飢えさせた方がより苦しみは大きくなる。
ひたすらに長い間、まりさは飢えと戦った。そしてとうとう、まりさは死んだのだ。
この部屋はそういう目的で造られた。言ってみれば座敷牢のようなものだ。

まりさは死んでからようやく、外に出ることが出来た。
ゆっくりとドアが閉められていく。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああ!!!!」
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「わ゛がら゛な゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛おおおおお!!!!」
「ま゛っでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛えええええええ!!!!!」
「ま゛ら゛っ!!!ま゛ら゛っ!!」
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあ゛あ゛あ゛!!!!」
「ごぼね゛え゛え゛え゛え゛え゛ぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛!!!!!」
「ごごがらだじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛えええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

部屋から男が居なくなってからも、しばらくれいむ達の叫びは止まらなかった。





「もっと時間が経てばここから出してやる」。一体どれほどの時間が必要になるのだろう?
なにしろあのまりさはれいむがこの世に生を受けたときからあの函の中に入っていたのだ。
少なくともれいむもまた、それほどの長い時間を過ごすことになる。

れいむはまだ知らない。自分がこれからどれだけ長い間、あの函の中で暮らすのかを。
ゆっくりにとっては永すぎる時間も、男にとってはたったの数ヶ月。
れいむがあの函の中に入ってからようやく一ヶ月が経過しようとしていた。

先は、まだまだ長い。










麗らかな春の午後。
暖かな日差しが差し込む居間には、ゆうかと俺がふたり。
今は三時。おやつの時間だ。

一本木で拵えられたテーブルの、その中央に置かれた皿の上。
そこにあのまりさがいた。



元々はただの処刑のつもりだった。

昔、畑の野菜を食ったゆっくりを閉じ込めたことがあった。
餌は最低限ともいえない量のゆっくりフードを一粒だけ。それを一日一回与え続けた。

そいつはどんどん痩せていった。
だが死なない。そう簡単にゆっくりは飢え死にすることが無い。

そもそもゆっくりというナマモノは食事の必要性が殆ど無い。
口に入れたものを自分の中身そのものである餡子に変換し、余分な排泄などする必要が無いからだ。

まぁそれでもあにゃる等を持つゆっくりはいるのだが、そいつらは中世の貴族のように食っては出し食っては出しを繰り返す。
決して自身の栄養にはせず、ただ自分の食欲のために食べているだけだ。
そういうことを除けばゆっくりは意外とエコなナマモノなのだ。

そんなエコ饅頭も流石に辛かったのか、半年後、そいつはポックリ逝った。
死因は誰が聞いても解るとおりの餓死。不必要に引き伸ばされた飢えの苦しみを顔中に浮かべて死んでいた。

死体を割ってみて驚いた。
クッキーのようにそいつの身体はサクサクと割れたのだ。

極限の空腹の中、水分さえ手に入らない状況でゆっくりの身体が起こした変化。
とことん水分の抜かれたスカスカの餡は、まるでゆっくり版の八つ橋のようだった。

干しゆっくりとも違う食感に、凝縮された甘み。
これはなかなかいい発見をしたものだ。飢えゆっくりとでも名付けようか。

それから、飢えゆっくりを量産するためにあの部屋を造った。
野菜をつまみ食いする屑奴隷や人里に下りてきて畑を荒らそうとするゆっくりたちを次々に放り込んでいった。



ちなみに、このまりさは4期目の最後の飢えゆっくりとなる。こいつだけ妙に長生きしていたな。
大体十ヶ月もすれば、あの部屋のゆっくり達は全て入れ替わる。
今あの部屋にいるのは自分がこれからどうなるかもわからない饅頭達だけだ。

まりさを2等分し、齧り付く。
サクッとした軽い口当たり。今回も上出来だ。

元は餡子なので緑茶との相性も抜群。お茶もすすむ。
ちょっとがっつきすぎて喉に詰まってしまった。急いでお茶を流し込む。

あっという間に食べ終わってしまった。
ゆうかはまだ半分も食べていない。ちょっと急ぎすぎたな。

この飢えゆっくりは簡単に・・・とは言わないが時間をかければ誰でも出来る。
透明な箱にでもぶち込んで、1日1回ごく少量の餌をやればいいだけだ。
半年間忘れずに餌をやれるなら、挑戦してみて欲しい。










おわり










―――――
名前をいただきました、書き溜めです。
フォアグラってあるじゃないですか、あのアヒルだかガチョウだかの脂肪肝ってやつ。
あれのゆっくり版って無いかなと思ったら、あった。仕方が無いので逆にゆっくりを飢えさせてみました。
イメージでは中身の餡子はパサパサを通り越してカラカラ、クッキーみたいになると思いまして。
ちなみに「うあああああああああ!!」っていってたのはふらんです。肉まんをクッキーにしても美味しくないだろうと。
なんかオチがいまひとつな駄文に仕上がってしまいましたが、ここまで見てくれた方に感謝を。


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最終更新:2009年04月18日 23:31
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