みなさんは日本に昔から伝わる知恵袋をいくつ知っているだろうか?
地域によって色々あるだろうが、今日はこの場でご紹介させて頂く知恵袋は
である。
知っている方はこのまま話を聞いてもいいし、聞かなくてもいい。
知らない人は小粋な話や丁々発止な会話など一切期待せずにちょっとした時間を割いてこの話を
聞いてほしい。間違ってもグーグル先生に聞いてはいけない。
では、とあるゆっくりを例に、この知恵袋の話をしよう。
とある原っぱ。一面が草に覆われたそこは、人間の手が入らない手つかずの自然が残る場所だ。
穏やかな風と暖かな太陽の光がそこに住む動植物全てを癒してくれている。
無論ゆっくりもその恩恵を受けていた。
「ゆゆ~ん♪ゆっゆっゆー♪」
「ゆーゆゆゆー!ゆゆゆゆゆー♪」
「ゆっくり~♪」
「ゆゆー!」
原っぱのど真ん中。そこに二匹のゆっくりがゆっくりしていた。
れいむとまりさだ。
「すーりすーり♪」
「れいむのおはだはとってもすべすべだね!」
「ありがとうまりさ!」
お互いの頬を擦り寄せながら、心地よい風と陽ざしを一身に浴びていた。
ゆっくりにとってゆっくりする時間と場所はとても重要だ。
どれほど恵まれた環境でも、ゆっくりできなければ意味がない。
今この二匹は至高の時間を味わっていた。
「そろそろゆっくりかえるね!」
「じゃあねれいむ!またあしたゆっくりしようね!」
「ゆっくりしようねまりさ!」
数時間ほどゆっくりしていた二匹だが、家に帰る為に別れた。
まりさは一直線に森へと跳ねていく。その背中を見ながられいむは思い出した。
確かおうちに置いてあるごはんが残り少ないことに。
「ごはんがないとゆっくりできないよ!ゆっくりさがすよ!」
れいむは辺りを見回し始めた。
れいむはまりさと違って帽子がない。その為何かを運ぶ時は頭に乗せるか
口の中にため込むしかない。
自分より小さいゆっくりなら頭に乗せただろうが、ごはんを乗せる訳にもいかず
仕方なく口の中にリスの様に食べ物をため込むことにした。
「むーしゃ!むーしゃ!ほぞーん!」
「ゆゆっ!こっちのくささんもほぞーん!するよ。」
美味しい草とそうでない草を選別し口にため込む作業を続ける。
一度口に入れた草は少し咀嚼して溜めこみやすくする。
「もーぐ!もーぐ!やわらかー♪」
爽やかな笑みを浮かべながら草をひたすら咀嚼し、また草を食べる。
ゆっくり自体の動作の遅さもあって、ほっぺがリスのように膨らむまで溜めこんだ頃には
まりさと別れてから既に2時間ほど経過していた。
「ゆっくりかえるよ!」
もう充分だろうと判断したれいむは、やっとおうちに帰ろうとした。
口をしっかり閉じて、帰路への第一歩を踏み出そうとして
ふと、れいむの前を何かが横切った。
それは昆虫だった。
地面スレスレのところをヨロヨロと飛んでいる。
それも結構な大きさの昆虫だ。
(ゆゆー!とってもゆっくりしたこんちゅうさんだよ!)
れいむはその昆虫を捕まえようと、逃げた先へ跳ねだした。
昆虫の動きも遅かったが、れいむもまた溜めこんだごはんのせいで動きは鈍くなっていた。
(まってね!ゆっくりまってね!!!)
口からごはんをこぼさないようにしっかり口にチャックをしながら
昆虫の後を追う。
れいむの頭の中には、今までゆっくりした昆虫をむーしゃむーしゃした時に感じた
とてもゆったりな記憶が光速で巡っていた。
「やっとつかまえたよ!」
れいむは10分にも渡る追いかけっこの末、やっと昆虫の上に圧し掛かることに成功した。
昆虫はれいむの下でジタバタと残り少ない体力を使ってもがいている。
れいむは口から垂れ流している涎を気にせずそのまま昆虫を口の中に入れむーしゃむーしゃした。
(ゆっくりかえるよ!!!)
口を閉じて今度こそ帰ろうとして、違和感に気づいた。
体がジメジメするのだ。
(ゆ?なんだかじめじめするよ?なんでだろう?)
今日のれいむは水に入ったり、水辺の近くに居た記憶がない。
おうちは川の近くにあるが。
(なんだかゆっくりできないからかえるよ。)
そういって跳ねようとしてまた違和感を感じた。
体が重いのだ。それもとても。
それこそ跳ねようとしても跳ねれないほどに。
(ゆぐぅ!どうしてなの!あんよさんゆっくりはねてね!)
何度跳ねようとしても、体が重くてとても無理。
仕方なく、れいむは地面を這うように移動し始めた。
すーりすーりするたびに地面にあんよが擦れる。下が草なのが不幸中の幸いだが
痛いのには変わりない。
れいむは涙目になりながら地面を這って行った。
(どうじであんよざんはねでぐれないのぉお゛お゛……れいむのからだがおもくてゆっくりできないよぉ……)
最初はごはんの取り過ぎも考えたが、この量なら普通である。
何時もと比べて多すぎという訳でもない。
なのに何故か?全くわからない。
(ゆぐぅ……つるつるおはだがべちゃべちゃになってきたよぉ……まりさにほめられたのにぃ……)
れいむの動きは段々と鈍くなってきた。
先ほどから100mも進んでいない。
そしてれいむははたと空を見上げた。気づけば太陽さんが雲に隠れている。
いや、思えば虫さんを追っかけ始めたあたりからだったかもしれない。
そして一つの不安がれいむの頭を過った。
それは現実になった。
「あめさんはゆっくじできないよぉおおおおおお!!!!」
最初はポツポツと、そしてすぐさまザァーと雨が降りだした。
激しい雨粒はその一つ一つが矢となってれいむにぶつかっていく。
そのたびにれいむの皮は一切れずつふやけていく
「あめざんやめてね!ゆっくりできないよ!ゆっくりやんでね!」
最早ごはんなどどうでもいい。れいむは口からごはんをまき散らしつつ
必死に叫び続けた。通るはずもないその願いを。
「どうじでぇ……ゆっくじじだいよぉ……ばりざぁ……」
れいむの体は半分以上が溶けだした。もう手遅れだ。
それでも必至に動こう無駄な足掻きを続ける。
いや、例え無駄でも何かしなければならない。
「ゆがぁああああ……ゆっぐりじだげっががこれだ……よ……」
雨は一層激しさを増した。
次の日。れいむが最後に居た場所には、リボンが一つ落ちていた。
そのリボンをとあるまりさが発見するのはまた別の話。
何?全然わからない?
まだ解説してないから仕方ない。
結論から言えば、れいむの体は湿度が高くなったせいで水分が多くなり
べとべとになったのだ。
水分を吸ったゆっくりがどうなるか。語る必要はあるまい。
同じくれいむの前に現れた昆虫も、自身の羽が重くなったせいで低空飛行していたのだ。
これが『ゆっくりが地面を這うと雨が降る』が生まれた原因である。
如何だっただろうか?どうでもいいよね。俺もそう思う。
【あとがきっしょー】
物理的なつっこみは禁止
「ツバメが低く飛ぶと雨が降る」が元ネタ。
湿度が高くなるとツバメの餌である昆虫の羽根が重くなって高く飛べなくなり
それを餌とするツバメも低空を飛ぶことになるからと言われているらしい。
関係ないが、某スク水ジャスティスの新作を見て
魅魔様のスク水搾乳ならめちゃくちゃ見てみたいと思った。
キャームクサーンからのお題 『ツバメ』
最終更新:2009年04月18日 23:35