ゆっくりいじめ系2511 ぶんぶん

ぶんぶん


ぶんぶんぶん…鈍い羽音を響かせて、弾の如く飛び回る。
軒の下には波紋柄、丸いおうちがモコリと膨らむ。

「蜂なのかー…」



流れる風に夏の香りが入り混じる、そんなうららかな昼下がり。
ゴンゴンと窓を打つ音に目を覚まし、ボンヤリとカーテンを開ける。
そこに居たのは黄色と黒のストライプ、お洒落で大きなあん畜生。
思わぬ不意討ちに肝を冷やし、嫌な汗を流しながら庭へと走る。
見上げる顔がピクリと引きつる。我が家の片隅、そこにはスズメバチの巣が鎮座していた。
それもデカイ、サッカーボールくらいはあるだろうか。
この時期でこのサイズ、末恐ろしい一品である。
まさかのおうち宣言に凍りつくも、早くに気付いたのはせめてもの救いである。
夏も盛ると手に負えない、やるなら今しかない。
しかし指物、相手は蜂界の暴君、キングオブ蜂inジャパンである。
そこで強力な助っ人選手を獲得すべく、契約金片手に町外れへ向かう。


住宅街を抜けると緑の茂る林が広がる。青臭い草木の匂いが鼻を突く。

「「ゆっゆっゆ~」」

道の先には丸い影、下膨れの小憎い餡畜生。
音外れの歌を口ずさみ、転がるように跳ねている。

「ちと失礼」
「「ゆっ!?」」

よいしょと れいむ を抱え上げる。
むにむに・・・・・うん、重さ・大きさ共に理想的だ。

「はなしてよー!!」
「れいむをおろしてー!!」

イヤイヤと腕の中でもがく。ごめん、ごめんと地面に下ろす。

「君達、中々いい体をしているね」
「おにいさん、いったいなんなの?」
「まりさたちに いじわるするの?」

まさか、まさか。大きく手を振り否定する。

「僕はこれから蜂蜜を取りに行くんだ。でも人手が足りなくてね」
「ゆぅ?」
「はちみつさん?」

懐から小瓶を取り出す。中では琥珀色の液体がトロトロと揺れる。

「そう。とっても甘くてゆっくりできるんだ」
「あまあま・・・」
「ゆっくり・・・」

2匹の眼前で瓶を転がす。食いつくほどに見つめている。

「そこで、だ」
「「ゆ!!」」

さっと瓶を持ち上げる。釣られた2匹と視線が交わる。

「よければ一緒に行かないかい?」



「べたべたするよ!!」
「べーた、べーた!!」
「あんま動くなよ・・・と。こんなもんかな」

ペトペトと2匹にトリモチを塗っていく。
当初は体を捻って嫌がっていたが、蜂から身を守るためだと説明するとしぶしぶ納得した。
真っ白になったれいむの揉み上げを摘み、竹竿にきゅきゅっと結びつける。

「うし、それじゃあオサライするぞ」
「「ゆ!!」」

力強く頷く2匹。何とも頼もしい。

「まずれいむ。俺が竹竿で蜂の巣に近づける。お前は蜂をおびき寄せながら、隙を見て巣を落としてくれ」
「ゆっくりわかったよ!!」
「次にまりさ。お前はここで待機。頃合を見て巣を回収してくれ」
「ゆっくりりかいしたよ!!」

「よっしゃ!! それじゃあ・・・プレイボール!!」
「「ゆー!!」」

試合開始だ。目標はコールド。というか表で終わらせる。
竹竿がしなり、ふわりとれいむが宙に浮く。

「おそらをとんでるみたいっ!?」

台詞を言い終わるや否や、その顔面が巣にめり込む。
一方、蜂達は急な来客に血の気立ち、わらわらと穴から溢れ出す。

うおォん・・・

嵐のように呻りを上げて、れいむの体に取り付きかかる。
だがしかし

「ゆゆ!! くすぐったいよ!! はちさん、やめてね!!」

モチに阻まれ針が届かず、あまつさえ其の身を絡め取られていく。
ぺちょり、ぺちょり・・・1匹、また1匹とデコレーションが増えていく。

「れいむいいなー」

笑うれいむを見て、まりさが羨ましげな声を上げる。
これは楽勝かもわからんね。しかし、そんな甘い期待は崩れ去るのが世の常。


ブスリ

「ゆあっー!?」

1匹の蜂が眼の中に飛び込んだのだ。痛みに思わず口を開き

「!!!!!???」

そこへ一斉に雪崩込む。
噛み付き、引っ掻き、刺し回り・・・体の内から焼けるように熱が広がっていく。

「れいむ? どうしたのー? れいむー?」
「・・・まりさ。そろそろ用意しとけよ」
「ゆ!? ゆっくりじゅんびするよ!!」

深呼吸して膨らむまりさ、それを傍目に事の顛末を見届ける。

(想像以上に多いな・・・)

穴からは未だに蜂が出て来ている。その勢いは止まることを知らぬようだ。
どうしたもんか。そう思案していると、蜂達は思いも寄らぬ行動に出た。

「!!! ちょちょちょちょちょちょ!!?」

遂に飽和した蜂がれいむを踏み越え、竹竿を伝って降りて来たのだ。

「タイムタイムタイム!!!」

バシンと竹竿が大きな音を上げ、地面に落ちる。
その刹那、蜂達は大きく膨れ上がった。

「やばっ!! ええい、代打・・・」
「うゆっ!?」
「漢!! まりさあああぁぁぁぁぁ!!!」
「ゆあああぁぁぁぁぁ!!!??」

黒い霧の中に吸い込まれていくまりさ。
それを見送り、そろーりそろーり後ずさる。
カチャリと玄関の扉を静かに閉めた。

「ゆうう・・・ゆゆ!? はちさん、こっちこないでね!!?」

面を上げたまりさの周りには蜂、蜂、蜂。
これには堪らず、逃げんと足に力を込める。


「どおじでうごげないのおおおおおお!!!??」

不運にもモチが接地面まで垂れてしまい、がっちりと根を張ってしまったのだ。

「ゆわあああああぁぁぁ・・・・・」




「うわぁ・・・何だか大変な事になっちゃったぞ・・・」

窓から覗く眼下では、2匹が巨大な胡麻団子になっていく様子が流れ続けていた。
そっと窓を開け、燻穣式の殺虫剤を投下する。

「「!!!??   えほっ  おほっ  ・・・・・」」

何か聞こえた気がしたが気のせいだろう。窓を閉めると部屋の中には静寂だけしか残らなかった。



「・・・ん、もうこんな時間か」

一仕事終えた後の昼寝は格別だ。垂れた涎も気にならない。
のそのそと階段を下り、戦場へと向かう。
そこにあるのは死々累々。丸まり小さく固まった蜂の山だった。
その真ん中にはもはや面影の無い、巨大な蜂玉が2つ転がっていた。
何か動いてる気がしたが気のせいだろう。サクッと竹竿に突き刺した。
穴を掘り、蜂を埋め、住人の消えた巣を落とす。

どっこいしょ・・・蜂玉と巣を背中に、またも市街地を進んでいく。
庭に埋めるには大きすぎる。林に捨てれば、いずれは土に還るだろう。
しばらくうろついた所で手頃な穴を見つけた。
おあつらえ向きだと荷物を降ろす。

「おかーさん、きょうは まりさと おいかけっこしたよ!!」
「れいみゅも!!れいみゅも!!」
「ゆっくりできたね!! あしたはみんなで、おいしいはっぱさん たべにいこうね!!」
「ゆー!!・・・ゆ?」


ゴロン


「「「ゆわああああああああ!!!??」」」
「んお?」

叫び声が上がり、穴からゆっくりが飛び出してきた。
正確には狭い出口で詰まっているようだが。

「おねえちゃん、はやくどいてね!!」
「ちびちゃんこそ ゆっくりしないでね!!」
「ちゅぶれりゅううううう!!」

ぎゅうぎゅうと ひしめき合う一家。
そこへ空かさず、残りのまりさを帽子を掴んで投げ込む。

「ゆぐぐ・・・うわあああああ!!!??」
「ぎもいいいいいいい!!!!!」
「もっちょ・・・ゆっきゅり・・・」

まりさを れいむのおうちに シュートゥ!! 超エキサイティン!!
すっきりしたところで空き巣も突っ込んで帰路につく。今日はゆっくり眠れそうだ。



1時間後

「ゆぅ・・・やっとかたづいたよ・・・」
「こわかったよう・・・」
「きもい・・・きもい・・・」

どうにか蜂玉をおうちの外へ押し出し、へにょりと垂れるれいむ一家。

「これはどうしよう?」
「ゆう・・・なんだかかっこいいね!!」
「これはれいむたちの たからものにしようよ!!」

蜂の巣を囲んで盛り上がる一家。疲れも吹き飛ぶ程の喜びようだ。
この喧騒を他所に、巣の中ではサナギ達が静かに眠っていた。



終わり


作者・ムクドリ



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最終更新:2009年04月18日 23:37
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