注:生き残る
ゆっくりがいます。全滅スキーな方はご注意を…。
とある過去作のキャラが登場します。
本来ゆっくりは人間と相容れない生き物である。
だがその反面ゆっくりはペットとして人気が高く、
ゴールドバッジを付けたゆっくりは高額で取引されている。
だが光あれば闇あり…。
飼いゆっくりがちやほやされている裏側で、野生のゆっくりは日々危うい生活をしている。
特に最近見かけるのが都市部に住み着いたゆっくりたちである。
大きな理由は2つある。
1つは都会はゆっくりできると思い込んだゆっくりが、自ら都市部に来てしまうケースである。
『とかいは』に憧れるありす種や、ありす種に懐柔されたゆっくりがいい例である。
もう1つはいわゆる『元飼いゆっくり』、つまり捨てられたゆっくりである。
いつの世も無責任な人間は存在するもので、様々な理由でゆっくりは捨てられた。
飼われていたゆっくりに森での生活など不可能だ。
生き延びるために都市部での生活を余儀無くされるのである。
また、1度都市部に来た元森のゆっくりたちもすぐに後悔することになる。
都市部での生活はありす種の『とかいは』のイメージを粉々に粉砕する劣悪な環境だからである。
だからと言ってもう森に戻ることはほぼ不可能だ。
何故なら車の排気ガスなどの臭いが染み付いてしまい、
仮に森に戻っても他のゆっくりから敵視されてしまうからである。
そんな都市部での絶望的な環境の中、それでもゆっくりは生きていた。
いつかゆっくりできる日を夢見て…。
だがそんな思いとは裏腹に都市部のゆっくりは日々死の恐怖に晒されている。
今回はそんな明日が来るか分からない都市ゆっくりを見てみよう…。
「ゆ…ゆっくりしていってね…。」
「ゆっくりしていってね…。」
「ゆっきゅりしちぇいっちぇね…。」
朝6時、れいむとまりさ、そして赤れいむが目を覚ました。
このれいむとまりさは元々飼いゆっくりであった。
と言ってもブロンズバッジがやっとの個体であるが…。
無断ですっきりした上赤ゆたちが『おうち宣言』してしまい、
飼い主の逆鱗に触れ捨てられたのだ。
元々赤ゆはもっと沢山いた。
赤れいむ5匹に赤まりさが4匹もいたのだ。
だが今はこの赤れいむ1匹だけ…。
残りは全て都市部の冷たい猛威によって死んだ。
捨てられた当初は自分たちの立場が分かっていなかった。
「おにいさんおなかすいたよ!はやくもどってきてね!!」
「まりさもおなかすいたよ!いいかげんにしてね!!」
最初の3日は捨てられたことにも気付かなかった。
だが空腹も限界に達し、いつもの横柄な態度で食べ物を要求してしまったのだ。
しかも要求した相手は顔に傷のある明らかにヤバそうな人だった…。
「れいむにたべものをちょうだいね!!!」
「ちっ、また野良ゆっくりかよ…。今日で4回目だぞ…。」
「はやくまりさたちにたべものをちょうだいね!」
「ちょーだいね!」
「れーみゅおにゃかしゅいたよ!」
「まりしゃもあみゃあみゃちゃべちゃいよ!」
ゆっくりが人間に物乞いするのは珍しくないが、
偉そうに要求してくるケースは珍しかった。
ヤバそうな男はこのゆっくりたちが捨てられたばかりだと理解した。
野生にしては小奇麗だからだ。ついこの前まで飼われていたのだろう。
「うるせーな…。オレはパチンコで負けてイライラしてんだよっ!!!」
ドカッバキッボコッ! (あまりにエグい音だったので表現を緩和しました。)
案の定ブチギレた男の圧倒的暴力の前にこのゆっくりたちは半殺しにされた。
赤ゆはこの時1匹を残して全滅した。足で潰されて終わりである。
そして現在、捨てられてから5日後、3匹は状況をいまだ理解しないまま何とか生き延びていた。
この期に及んで捨てられたことを理解しない3匹は飼い主を待ち続けていた。
「ゆぅ…。きょうもおにいさんむかえにこないよ…。」
「おなかすいたね、ごはんをとりにいこうね…。」
「ゆぅ~…。あみゃあみゃがちゃべちゃいよぉ…。」
3匹は今まで何も食べていない。もう限界だった。
餌場はゴミ捨て場である。ここしか満足に食べ物が手に入らないのだ。
だがそのゴミ捨て場すら容易には近づけない。
カラスや野良ネコ、人間の監視の目がゆっくりをゆっくりさせてくれなかった…。
ところ変わって3匹が狙っているゴミ捨て場のすぐ近く…。
そこには鋭く目を光らせ食べ物を狙うゆっくりがいた。
「わかるよー…。しんざんものなんだねー…。」
ゆっくりちぇんだ。だがただのちぇんでは無い。
体中に古傷を負い、尻尾は片方千切れて半分ぐらいしかなかった。
このちぇんは都市部ですでに1年近く暮らしているベテランである。
生まれた時からこのちぇんは都市部暮らしだった。
母は人間に捨てられたちぇんで、父はレイパーありすだった。
母は自分や姉妹が産まれた時はすでに黒ずんで死んでいた。
レイパーありすは当然自分たちを捨ててどこかへ行ってしまった。
ちぇんは他のちぇんやありすと協力し頑張ったが、
赤ゆがそう簡単に生き延びられる訳が無く、次々と死んでいった。
ある赤ちぇんはカラスに襲われバラバラにされた。
ある赤ありすはゴミ箱に入ったはいいが出られなくなり、
そのまま業者に回収されてしまった。
他にも横断歩道で人間に踏み潰されたり車に轢かれたりもした…。
気付けばちぇんはたった1匹だけになっていた…。
だがちぇんは死ななかった。
生きる術を身に着け、今日までずっと1匹で生きてきた。
伴侶を欲しいとは思わなかった。自分の食べる分が減ってしまうから。
子供を欲しいとも思わなかった。ただの足手まといにしかならないから。
仲間すらちぇんは求めなかった。失うのが怖いから。
「ここならごはんがあるよ!」
「あみさんとふくろさんじゃまだよ!ゆっくりしないでどいてね!」
「おにゃかしゅいて…ちんじゃうぅ…。」
「あかちゃんまってね!…ゆ!おいしそうなだんごさんがあるよ!」
「ゆぅ~!おいしそうだよ!ゆっくりたべるよ!!」
「む~しゃむ~しゃ!しあわ…ゆげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?」
「ど…どぼじだのぉぉぉぉぉ!!?まりさゆっくりしてぇぇぇぇぇ!!!!」
「おとーしゃぁぁぁぁぁん!!!?」
人間が何の対策もしていないはずが無い。
まりさが食べたダンゴはゆっくり専用毒入りの餌であった。
ゆっくりの被害があまりにも多いので設置されたのだ。
「…にんげんがきたよー…。あのかぞくはもうだめだねー…。」
3匹の叫び声を聞いてゴミ捨て場を管理している人間が来てしまったのだ。
ちぇんは3匹が人間に叩き潰される様子を慣れた様子で眺めていた。
「まりさをたすけっゆべげっ!!!」
「おかーしゃぁぁぁぁぁっゆびゃ…!!」
「ゆげぇぇぇぇぇぇっゆばげびゃっ!!!」
「毎日毎日懲りずにまぁ…。昨日も一昨日もこれだ。何匹いやがるんだ全く…!」
人間はため息を口から垂れ流しながら死骸を掃除し帰っていった…。
「いまがちゃんすだねー。わかるよー。」
ちぇんは人間が見えなくなった直後を狙いゴミ捨て場に接近。
狙いを定めていたゴミ袋を素早く噛みちぎり、中身を口に流し込んだ。
そして再び元の場所に戻り、様子を伺い、巣に帰った。
ちぇんのおうちはダンボール箱を加工して作ったもので、
上は建物の屋根があるので雨にも困らなかった。
「むーしゃむーしゃ…。」
ただ食べる、生きるために…。
味など最早ちぇんにとってどうでも良かった。
…だが今回は当たりの部類だった。
弁当の食べ残しだ。都市ゆっくりの食事の中では豪華な方だ。
ちぇんは今まで多くの死を見てきた。
さっきの3匹のように死んだゆっくりなどすでに星の数ほど見てきた…。
だからちぇんは動じない。悲しまない。だって自分とは無関係だから。
ちぇんは孤独を好んだ。1匹の方が気楽でいい。
もう姉妹を失った時の悲しみを味わいたくない…。
ちぇんは捨てられたゆっくりになら僅かながら同情したが、
自ら都市部に来たゆっくりのことは理解できなかった。
どうして自分から地獄に飛び込むんだろう。
森のことはよく知らないが、少なくともここよりはゆっくりできるはずだ。
以前たまたま知り合ったありすとぱちゅりーの夫婦に尋ねたことがあった…。
「わからないよー。どうしてわざわざここまできたのー?」
「ありすは『とかいは』なせいかつをするためにここまできたのよ!」
「むきゅぅ。ここなられみりゃにおそわれないわ!」
「わからないよー…。」
数日後ちぇんはあの2匹の死骸を発見した…。
2匹ともカラスの群れに襲われたのだろう。
ありすもぱちゅりーも無残な姿で息絶えていた…。
「これが『とかいは』なのー?わからないよー…。」
それ以外にも多くの『とかいは』なありすが自ら都市部に訪れ、そして死んでいった。
ここをゆっくりできる所だと勘違いしているのだろう。
とある日とあるありすに忠告したが、
「そんなはずないわ!しんだこたちはきっといなかものだったのよ!」
と一蹴された。そんな自信満々なありすも2日後、急いでいたサラリーマンに踏まれて死んだ。
捨てゆっくりの中には再び人間に飼ってもらおうと努力する者もいた。
ちぇんには分からなかったが、飼われているゆっくりはとても幸せらしい。
捨てゆっくりもその頃の生活が忘れられず人間に媚びるそうだ。
「ゆ~ゆゆ~ゆ~♪ゆっきゅち~♪」
「とってもじょうずだね!かわいいあかちゃんのおうたでゆっくりしてね!!」
ある家族は人がよく通る道路で歌を歌っていた。
都市ゆっくりが歌を歌う目的は2つ。
1、人間から食べ物(できればあまあま)を貰うため
2、あわよくば人間に気に入られ飼ってもらうため
都市ゆっくりに他人をゆっくりさせる余裕は無い。
『ゆっくりしていってね!!!』が口癖のゆっくりだが、
実際は自分たちがゆっくりすることで頭がいっぱいなのだ。
ちなみに歌っても1や2の目的が達せられることは稀である。
1は人間の気まぐれや同情やその他モロモロで叶うこともあるが、
2は限りなく叶わない。理由は言うまでも無いだろう…。
そう、どうせ飼うならペットショップで購入した方がいいに決まっているからだ。
都市ゆっくりはとにかく汚れており不衛生だ。
それほど余裕が無いということなのだが、人間から見れば不潔の一言で済んでしまう。
悪い菌でも持ってるのではと嫌悪する人間さえいる。
だが都市のゆっくりたちはいつか人間が自分を拾ってくれると信じている。
何故か?簡単だ。実際に拾われたケースがあったからだ。
「やぁ!ゆっくりしていってね!」
「ゆ~♪ゆっきゅち!ゆっきゅちぃ!!」
「おにいさん!ゆっくりしていってね!!!れいむのあかちゃんかわいいでしょ!?」
声を掛けられたゆっくりは皆必死に自分たちの可愛さなどをアピールする。
お兄さんはニコッと微笑み、れいむたちに優しく話しかける。
「れいむだけかい?赤ちゃんまりさがいるけど…?」
「ゆぅ…。まりさは…わるいにんげんさんに…。」
れいむは悲しそうな声で答えた。
まりさが死んだことは事実だが、れいむはそれを利用して同情心を煽ろうとしていた。
「可哀想に…。よし!お兄さんの家においで!お兄さんの家でよければ住んでもいいよ!」
「ゆぅぅぅぅぅ!!?ほんとうに!!?ありがとうおにいさぁぁぁぁぁん!!!!」
「やっちゃ~!ゆっきゅち~♪」
「ゆっきゅりできりゅねぇ♪」
「ああ、ゆっくりゆっくり…くけけけけけけけけけけけけけけけけけけ…っ!」
お兄さんの正体は虐待鬼意山だった。
こういう事例は非常に多い。
そしてこれを見た他のゆっくりが勘違いし真似をするのだ。
まさに悪循環、ゆっくりできないスパイラルである。
あの家族は鬼意山に連れていかれた。
再び幸せな生活ができると信じて…。
「(くくく…。今日はボクシングでストレス解消だ…!!)」
このれいむたちのゆっくりとしてのゆん生は終わった…。
他にもこんなケースがある。
「む~きゅきゅ~♪ぱちゅりーのおうたでゆっくりしてね~♪」
「ぱちゅりーのおうたはさいこうだぜ!あまあまよこすんだぜ!!」
「もしもし…。ああはい、店の前でゆっくりが…お願いします…。」
数十分後…
「むぎゅぅぅぅぅぅぅぅ!!はなじでぇぇぇぇぇぇっげほっ!!!」
「ぱちゅりーになにするんだぜ…ゆぎゃぁぁぁっはなじでぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「ありがとうございます…。」
「いえいえ、これも仕事なんで…。我々はこれで…。」
これは保健所の人に回収されてしまったパターンである。
歌ってる分には普通の人は無視しているが、
店の前で歌われると非常に迷惑だ。
店の店長が雑音に耐えかねて通報したのである。
「ばかなんだねー。わかるよー…。」
ちぇんはそんなゆっくりを見る度にそう思った。
1度捨てた人間にどうしてまた媚びたりするのだろう。
プライドは無いのだろうか。
どうせ拾われたって悲惨な末路を辿ることはちぇんでも分かっていた。
ちぇんは前にペットショップを通りかかったことがある。
外からでも見えるようにケースに入っているゆっくりたちは皆清潔だ。
肌はモチモチでピカピカ、髪もサラサラでキラキラだった。
そんな美ゆっくりに都会で荒んだ生活をしているゆっくりが敵う訳が無い。
わざわざ汚れた都市ゆっくりを拾う裏には何か理由があるはずだ。
ちぇんの予想は大方当たっていた…。
拾われた都市ゆっくりの用途はペットでは無い。
大抵虐待用かれみりゃなどの餌用などである。
そんな扱いができるのも、どうせ誰も気にしないからだ。
都市で歌を歌うことははっきり言って死亡フラグなのである。
とある都内の公園にて…
「あ、ボール転がった…。あったあった…んん?」
「おに…いさん…。ありしゅに…みゃみゃに…たべもにょを…。」
公園のベンチの下で赤ありすが呻いていた。
その後ろには瀕死の重傷を負ったのか、ボロボロの親ありすがうずくまっていた…。
話によると飼い主に『ここで待っててね』と言われてから数日が経過し、
ゴミ漁りをしていたところを目撃され攻撃されたと言う。
生き残った子供は自分だけで、父親のれいむも自分と母ををかばって死んだらしい。
その後何とか逃げ切ったが母が大怪我をしてしまい、こうして身を隠していたのだとか…。
れいむが父親役とは珍しいなと発見したお兄さんは思った。
公園にも結構な数のゆっくりがいる。
人間が多く来るので食べ物をもらえるとでも思っているのだろう。
また、虫も多くいるので飢えたゆっくりが集まるのだろう。
中には滑り台の下やジャングルジムを住み家にしている者もいるが、
そういうゆっくりはだいたい保健所の人に回収されるか、
子供に蹴り飛ばされてしまうかのどちらかだ。
ベンチの下を選んだのは正解だと言わざるを得ない。
「仕方ない…。ほら、強く生きるんだぞ。」
このお兄さんは優しい人だった。
さっき買ったパンを千切ってそっと赤ありすの前に置いたのだ。
「ゆぅぅぅぅぅ!ありがちょぉぉぉぉ!みゃみゃぁぁぁ!やっちょゆっくりできりゅよぉ!!」
赤ありすが大喜びで母にパンを見せている中、
お兄さんはそっとその場から立ち去った…。
何故なら『飼ってくれ』と言われたら困るからだ。
施しを受けたゆっくりの中には勘違いし、
可愛い自分を気に入ってくれたと思いあがる場合がある。
そうなると飼ってくれ飼ってくれと、いつまでもすがり付いてきてしまうのだ。
お兄さんはゆっくりは嫌いでは無いが、特に好きでも無かった。
ちょっと可哀想だと思ったから恵んであげたに過ぎないのだ。
人間の優しさなどこれぐらいが限度である。
ちぇんはそういう光景も腐るほど見てきた。
「ちぇんはほどこしなんてぜったいうけないよー…。」
ちぇんは心の中で人間を偽善者と罵った。
そんなに可哀想なら家に連れ帰って大事に育ててあげればいいじゃないか。
人間がその気になればゆっくりの傷など簡単に治せるだろうに。
汚れた体や髪だってあっという間に綺麗にできるだろうに。
ぽた…ぽた…じゃぁぁぁぁぁぁ…
ああ、雨だ。ゆっくりにとって雨は死神だ。
雨宿りすらできないゆっくりがこの雨で皆死んでいく。
「わかるよー…。おうちにもどれっていいたいんだねー…。」
ちぇんはベンチの下の2匹をしばらく眺めた後、静かに退散した。
公園は都内でも自然が残されており虫が多く捕まえられる。
捨てゆっくりは虫など口にしないので横取りされる可能性は少ない。
ちぇんは口に虫を入れながら自分の秘密のおうちに戻っていった。
おうちを横取りされるケースは決して珍しくない、
ちぇんはそれも踏まえ人もゆっくりも来なさそうな場所におうちを構えていた。
雨が徐々に強くなる…。ちぇんは大急ぎで帰路についた…。
あの2匹を助けようとは思わなかった。
母は正直言ってもう助からない。赤ありすも母を置いて離れられないだろう。
そっとしてあげることが2匹のためだとちぇんは判断したのだ。
「みゃみゃ!パンしゃんおいちいね!…ゆ?みずしゃんこっちこにゃいでね!!」
満足に動けない母ありすと、母が大好きな赤ありす…。
どうして捨てられたのか?
悪い子だからという訳では無い。
飼い主がペット禁止のアパートに引っ越すから捨てた、それだけだ。
雨が降る降る…。公園の土を湿らせベンチの下にも侵食してくる。
「みゃみゃぁぁぁぁぁぁ!!みゃみゃのきゃらだがちょけてるよぉぉぉぉぉぉ!!!?
ゆっくりしにゃいでぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「ゆ…ごべ…ん…ね…。あが…ぢゃんだけ…でも…にげ…て…。」
「いやぢゃよぉ!!みゃみゃとはにゃれたくないぃぃぃ!!!!
ずっちょいっちょにいりゅよぉぉぉぉぉ!!!!」
ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…
「みゃみゃ…。ありしゅはとっちぇもしあわしぇだよ…。ありしゅはちょかいはだもん…。」
「…………………………。」
「ありしゅはきょわくにゃいよ…。だっちぇおかーしゃんといっちょだもん…。
きっとおにーしゃんがみゅかえにきちぇくれりゅよ…。」
「………………………。」
「ありしゅ…ねみゅくなっちぇきちゃよ…。みゃみゃ…おやしゅ…み…。」
「…………………。」
「………………………。」
次の日の朝…雨は止んだ…。
ベンチの下には大小2つのカチューシャが寄り添うように残されていた…。
「おっ、こんな所にもゴミが…。公園のゴミはちゃんと捨てないとね…。」
2つのカチューシャは別々のゴミ袋に放り込まれた。
ちぇんは生きていた。屋根のおかげで雨に濡れないで済んだのだ。
だが大切なダンボールがビシャビシャだ。ちぇんは雨を少し恨んだ。
「ごーくごーく…。」
空き缶に溜めておいた水を溢さないように飲んだ。
ゆっくりにだって水は必要である。
こういう時ぐらいしか満足に水を得られないのだ。
「こういうのを『ひにく』っていうんだねー。わかるよー…。」
雨のせいでゆっくりは死に、その雨水でゆっくりは生き長らえる…。
まさに皮肉とはこのことだ。
だがちぇんはこの生活に不満は無かった。
住めば都、ちぇんはここでずっと生き続けるつもりだった。
多くのゆっくりの生と死を見つめながら…。
いつ自分が死ぬかはちぇんだって分からない。
明日かもしれないし、ひょっとしたら何年も生きられるかもしれない。
ちぇんはすでにゆっくりとしての心を失っていた。
生きる目的はゆっくりすることでは無く、ただ生きることであった。
ちぇんにはもう不幸か幸福かなど関係無い。
本来野生動物が持つべきである本能をちぇんは宿していた。
「ちぇんはいきるよー…。かんたんにはしなないよー…。」
その時、ちぇんの前に人影が…。
「ゆカウターの強力な反応は貴様だったか…。」
「……!!!」
「警戒心、反射神経、その鋭い目つき…。気に入った。
どうだ、我のゆっくり軍に入らないか?」
「れいむとどっちがつよいかな!?ちからくらべしたいよ!!」
「…ちぇんはだれにもたよらないよー。かえってねー。」
「ならこのれいむと戦ってみろ。もし貴様が負けたら我に従うのだ。」
結局ちぇんはれいむに敗れた。
だがその時ちぇんは失っていた何かを思い出した…。
久しぶりに生きる目的ができた気がした。
「…でも…でもちぇんはにんげんにかわれたくないよー…。」
「飼うのでは無い。我は貴様を認めたのだ。
我には貴様の力が必要だ。来てくれるな…?」
「……わかったよー。こうなったらなんでもやるよー。」
これが軍人鬼異惨とちぇんとの出会いだった…。
後にこのちぇんはゆっくり軍の部隊を任せられるほどになるが、
それはまた別のお話…。
「ありすね、とかいにいったらかっこいいおにいさんにひろってもらうわ!」
「まりさもあまあまをもらうよ!」
森では今日も都会に憧れ、期待に胸(?)膨らますゆっくりが後を絶たない。
飼いゆっくりはゆっくりできるという、抽象的な情報だけを鵜呑みにして…。
果たしてこの2匹は都会で生き残れるだろうか…?
…おそらく無理だろう。甘い妄想を抱いている限り…。
「たのしみね!ありすとかいはなゆっくりをめざすわ!!」
「まりさもたのしみだよ!いっしょにむ~しゃむ~しゃしようね!!!」
生きるか死ぬか…それは全て生への執着が握っている。
そして今日も多くのゆっくりが都会を目指し、後悔を重ねるのであった…。
捨てた犬や猫と別れるとき、元飼い主は大抵
『いい人に拾われてね』って言うけど、
実際そんなことは起きないと思う今日この頃…
ペットは責任をもって飼いましょう!!!
最終更新:2011年07月28日 00:21