ゆっくりいじめ系2665 か、かいこん

虐殺分大目

一応制裁

人間がうっかりもの

舞台は現代でもなければ幻想郷でもないところ



人間の住む里から少しだけ離れた場所。
大小さまざまな石が横たわり、草花は我が我がと言わんばかりにその身を伸ばしている。
一目で人の手が加えられることの無かった場所だというのが分かる荒地だ。
人っ子一人寄り付かなさそうな場所に、精悍な顔つきの男が鍬を振るっていた。

どれほどの期間を耕してきたのかは分からないが、
土ごと穿り返された草は根枯れし、石ころも一角に積み上げられ、荒地だった所には小さいながらも家まで建てられていた。

耕すべき土地も残り僅かとなり、男が一息ついていると何処からともなく声がしてきた。
「おじさんはなにしてるにょ?」
男は声のするほうへ向いてみたがそこには誰も居ない。
空耳かと思い、向きを直したが再び聞こえてきた。
「おじさんれいむをむししにゃいで!」
やはり気のせいではない。
振り向きざまに下のほうへ目をやると、そこに一匹のゆっくりが居た。
「お、なんだゆっくりか。なんかようか?」
「ゆゆっ!おじさんがなにをしてるのかしりたいんだよ!」
休憩中だということもあり、男は子ゆっくりのお喋りの相手をしてやる事にしたようだ。
「おにいさんはな、開墾をしているんだよ」
「かいきょん?」
子ゆっくりの頭の上には大きなはてなマークが浮かんでいる。
(…ゆっくりの世界には無い言葉なんだな…)
開墾とはどんなことなのか、男は丁寧に説明をする。
しかしこの男は自分の仕事を誇りたかったのか、ついつい熱の入った解説をしてしまった。
「…でな、ただ穿り返すだけじゃなくて…小石も取り除かないと…」
「ゆ?ゆゆっ?ゆーっ!?」
ゆっくりに人間の会話は情報が多過ぎて処理しきれない。
男も目を回しているゆっくりを見てやっとその事に気づく。
「ありゃ?難しすぎるのか?」
「おじさん!ちゃんとしゃべってね!」
男は一から十まで説明しないで要点だけを教える事にした。
「野菜が育つのに邪魔なものをあっちいけーってやったんだよ」
その言葉に子ゆっくりは’にょきーん’と体を伸ばし、全身で「!」を表現する。
「ゆゆーん!すごーい!もしかしておじさんは『まほーつかい』なの?」
男は子ゆっくりの突拍子も無い発言に驚いた。
(大げさだなぁ…子供らしいっていえばそうだがねえ…)
男も悪い気はしなかったようで、戯れとばかりに乗ってみた。
「ま、そうだな。お前らには使えない魔法かもな」
「ゆっゆゆーん!おじさんすごい!」
子れいむは興奮しながら自分の住処に帰っていった。
男はそれを見送るとやれやれといった表情をし、ふっと軽く息を吐いてからよっこいしょといって腰を上げる。
「町でいろいろ手配しないとな…」
そう呟きながら、男は後片付けをし、子ゆっくりの去った方向とは逆方向へと向かっていった。



森の中のゆっくりの群れ。
ここは先ほど開墾をしていた男と会話をした、あの子れいむが生まれた群れである。
子れいむは群れに帰るなり、興奮した口調で『まほうのはたけ』の話をした。
「ゆ?おちびちゃん、どこいってたの?みんなといっしょにあそんでないから、しんぱいしたのよ!?」
「ごめんね!でもね、れいむすっごいものみつけたんだよ!」
「ゆゆ?すごいもの?」
「あっちのね!おひさまがばいばいするほうのはらっぱがね!はたけになるんだよ!」
群れの成体ゆっくりは子れいむの言葉に何の反応も示さなかった。
あまりにも突拍子も無いことを言ったので、餡子脳が理解の範疇を超えた為にフリーズしていたのだ。
ゆっくりには荒地が畑になるなんて、想像の範囲外であった。
畑になっている場所は、ゆっくりが見つける前に人間が全て独り占めした、と言うのがゆっくりの畑に対する共通認識だったからだ。
新たに畑が作られると言う過程を見届けた事が無いのも一因だろう。
一匹、二匹とフリーズから復帰すると、復帰したものから順に笑い転げていった。
「あっはっはっは」
「ゆっふっふっふっふ」
「ゲラゲラ」
突然笑い出した仲間に子ゆっくりも最初はオロオロしていたが、馬鹿にされているのが分かると怒り出した。
「ほんとだもん!まほーつかいのおじさんがいたんだもん!」
まほーつかい
その言葉を聴いたゆっくり達の笑いのボルテージは最高潮に達した。
「はたけになるって、なるって!ゆあっはっはっは!!」
「ゆっゆっゆ!そのうえ、よりによって『まほーつかい』って!」
「うそをつくのもたいがいにね!ゆはははは!」
全く話を聞いてもらえなくなって、子れいむは涙目になる。
「ほんとーだもん、おじさんはまほーつかいっていったんだもん…」
そんな中、笑い疲れた一匹の成体ゆっくりまりさがこう言い出した。
「そんなにいうならみてきてあげるぜ、その『まほー』をね!」
ゲラゲラゲラゲラ

それから暫く経ったある日、そのゆっくりまりさは群れで騒ぎを起こした子れいむの言った畑へと向かっていた。
群れのゆっくりの生活圏から外れていた場所だったが、成体にはそれほど険しい道のりではなかったので難なくたどり着いた。
「…はたけもなければまほーつかいもいないじゃない」
ゆっくりにとって、畑は野菜が生えている場所、生えていなければ只の土地。
種さえ植えていないこの場所は、ゆっくりにとっては荒地だった。
「まったく!まりさをだますなんてわるいゆっくりだぜ!かえったらおしおきだね!ぷんぷん!」
端から信じていない上に、おちょくるつもりで自分から確かめに行くと言っておきながら騙されたとはあんまりではあるが、
そこはゆっくりであるから仕方が無い。
まりさは群れへ戻ると早速群れのゆっくりを一堂に集め、例の子ゆっくりを糾弾した。
「ゆゆ!そのこはうそつきだよ!ゆっくりおしおきしてね!」
嘘をついた子ゆっくりは、半日逆立ち状態にされる刑に処された。
「ほんとーらもん!うそつきじゃないもん!」
子ゆっくりは、逆さまになりながらも必死になって訴えていたが、他のゆっくりは変な形にひしゃげた子ゆっくりを見て笑うだけで聞く耳を持たない。
笑い飽きたゆっくりから一匹二匹と去っていき、いつの間にか独りぼっちになってしまった。
「ほんとうだもん…あそこにまほーつかいがいたんだもん…」

その日、男は里に居た。
畑に出来る土地は確保したが、そこを囲う柵が出来ていなかったからだ。
「どうすっかなぁ…用心に越したことは無いとは言えねぇ…でも金がなぁ…」
ぶつくさと独り言を呟きながら着いた先は、家を建ててくれた棟梁の家だ。
「ごめんよー、誰かいるかい?」
「おう、お前か!とうとう終わったのかい?」
返事を返したのは縁側に腰を落とし、煙管を咥えた初老の男。
「ああ、後は種やら苗やらを植えれば、準備万端って奴よ」
「そうかいそうかい、それならこっちもとっととおっ始めねぇとな…今なら暇だから立派のものこさえてやるぜ?」
「いやその事なんだがね、金が無いから資材だけ売って欲しいんだよ」
「なんだよ、せっかく暇作ってやったのによ、腕がなまっちまうぜ」
「いずれこの埋め合わせはするからさ、頼むよ」
「そうかい、ならとっとと嫁見つけてよ、家の拡張でもしてくれよな!」
「ははは、俺の嫁になってくれるなんて酔狂な人がそうそう居るかねぇ?」
「俺が見つけやってもいいんだぜ?ああ、それとよ。ゆっくり用の罠はどうするよ?集団で押しかけてこられたら柵がいくらあっても足りないぞ??」
「罠って、皆殺しにするようなやつかい?」
「そんな物騒なもんじゃねえよ、探りをかけてきた奴をとっ捕まえるものさ」
ゆっくりの餌探しは基本単独、若しくは家族単位で行われる。
時折遠出をした者が良い餌場を見つけると、その情報は群れの仲間へ惜しみなく与えられる。
するとゆっくりは、群れの者総出でその餌場へと大挙してやって来る。
ゆっくり用の罠は、少ない手間で大きな効果が得られる偵察駆除タイプが多いのだ。
しかし男は先日会った子ゆっくりの事など気にも留めてなかったので、畑の存在を知られているとは思って居なかった。
「いいよ、あそこでゆっくりなんか見た奴なんていないんだろ?今作ることなんか無いよ。それなりに蓄えが出来たときにお願いするよ」
棟梁は手にしたキセルの火皿を下に向け、縁側の縁にカッと叩きつけてから男の眼を見た。
「そうか、ならいいんだが。…でもよ、一匹でも見かけたら俺に言ってくれよ?」
「ああ、その時はな」



ゆっくりの群れで魔法使い騒動が起きてから数ヵ月後、季節は冬になろうかという頃。
森の中のゆっくりの群れでは、群れ全体が冬篭りへ向けた準備で慌しくなり、ゆっくり達は少しゆっくりしていられなかった。
「…みんな、ゆっくりできそうかだぜ?」
長は群れの皆を集めてから、冬篭り用の餌集めの進行状況を確認した。
しかし殆どのゆっくりは顔を左右に振って、ゆっくりできそうもないといっている。
群れの集会では、沈痛な面持ちをしたゆっくりが、無い知恵を絞って案を出していた。
「おいしくないくさもあつめようか?」
「ふゆごもりだけでもゆっくりできないのに、ごはんもゆっくりできなかったら、ゆっくりできずにえいえんにゆっくりしちゃうよ!?」
「もうたべられるくさもはなも、ないんだぜ!?」
「どこかあたらしいごはんがとれるばしょをみつけに、たびにでるしかないのぜ?」
「おちびちゃんはどうするの!?たびをしているあいだにゆっくりできなくなっちゃうよ!?」
どれもこれも、案としては採用できないものばかりであった。
「…まほーのはたけ…いってみようよ…」
迫り来る冬を前に、絶望の縁に立たされたゆっくり達の中から、幼さの残る声で長に訴えた者がいた。
以前虚偽罪で処罰を受けた、子ゆっくりである。
今はもうすでに成体となり、群れの為に働いている立派なゆっくりだ。
『まほうのはたけ』
昔は誰もが鼻で笑い飛ばしていたこの言葉だが、この緊急時に藁にもすがる思いになっていたのだろう。
長は群れのゆっくりを一同に集め、現状打破の一案として『まほうのはたけ』へ向かう事を命じる。
少しでも働けるものは、それが子ゆっくりだろうと借り出されることになった。
翌朝、群れのゆっくり達は西に向かって歩みだしていた。



「これだけ出来れば…無用な金策に走らなくてもよさそうだな」
男の畑は豊かな実りを湛えていた。
秋の野菜はほぼ収穫がすみ、冬野菜も着実に育ってきている。
大工への支払いには足りないが、過度の天災に見まわれなければ十分やっていけるだろう
今までと違って全てが自己責任の自作農。
人からとやかく言われないが、ミスは全て自分で被る。
だからこそ、成功した事の喜びはひとしおの物なのだろう
男が畑を眺め悦に浸っていると、遠方からなにやら丸いものがぞろぞろとやって来る。
それはゆっくりの一団であった。

(まさか、いきなり集団でやってくるとはなぁ…)
男は自分の見通しの甘さに腹が立った。
棟梁の忠告を受け入れ先手を打っておくべきだったと。
柵も後回しにせざるを得なかったので、ゆっくりの侵入を防げない。
畑を守るためにもどうやってお帰り願おうか、男はあごに手をやり思案を廻らす。
時には害獣扱いもされるゆっくりとはいえ、言葉が通じる以上暴力で解決するのは気が引けるようだ。

人間が居ると思っていないゆっくり達は隠れることも、こそこそする事も無く、ばいんばいんと音を立てながらやってきた。

一同は畑の野菜を見て、歓喜の声をあげていた。
「ゆゆ~ん、これだけあれば、みんなゆっくりできるね!」
「それどころかすっきりー!してもだいじょうぶだよ!」
「あそこはおうちにできるかな?できたらみんなでひっこしだね!」
「おてがらだね!」

騒音饅頭の二つ名を裏付けるが如く、家の男にも聞こえるような大声で喜びの声を上げるゆっくり達。
(何がみんなゆっくり出来るだ畜生め!手前らの為に作った野菜じゃねえんだぞ?)
男はまず、幸せ光線駄々漏れ状態のゆっくり軍団を大声で威嚇して機先を制す。
「おい!その『みんな』の中に俺が入っていないんじゃねぇの!?」

ゆっくり達の視線が野菜から男へ一斉に注がれる。
ゆっくり達は突如現れた人間に驚きを隠せない。
「どうしてにんげんがこのはたけのことをしっているんだぜ!?」
「むかしきいたことがあるよ!にんげんはいっつもおやさいのはえるところをひとりじめするって!」
「ゆゆー!ずるっこのにんげんはゆっくりしねっ!」
この群れは人間に関する知識が乏しかったため、畑に隣接されている家が人間の物だということも分からなかった。
それなので、人間が後からやってきて野菜の独り占めを宣言したのだと思ったのだろう。

ざわめくゆっくりの集団から、一匹のゆっくりの声が突き抜けてきた。
「ゆゆー!『まほーつかい』のおじさんだー!」
ざわめきの質が変わり、ゆっくりの視線も男とゆっくりへ交互に向かう。
「あれがその『まほうつかい』なの?」
「とてもそんなふうにはみえないんだぜ!」
「まほうつかいはやさいをひとりじめしているの?」

『魔法使い』
そう言ったゆっくりの言葉とその姿で、男はあの日のやり取りの事をはっきりと思い出した。
ゆっくり軍団の急襲は自ら撒いた種なんだと。
男は深い悔恨の念にとらわれた。開墾だけに。
だが今は駄洒落を言う時でも、過去の自分を恥じるときでもない。
過去の失態を後悔するよりも、この先後悔を残さないために、悪い芽は摘み取らないといけないのだ。

ゆっくりのざわめきが収まるのを待っていられる程暇じゃない男は拍手を打ち、再度注意を引き寄せる。

「まあ、そこのゆっくりが言ったとおり、俺がその『魔法使い』だ」
自称したことでゆっくり団は再びざわめく。
「俺が作った畑だからな、お前らにくれてやるつもりはこれっぽっちも無い、残念だったな」
独り占め宣言に、ゆっくりの群れは怒号のようなざわめきを発する。
そしてそのざわめきの中から、ゆっくりの群れの長と思われる一匹のゆっくりが前に出てきた。
長としての責任感からか、それとも徒労に終わるのが納得いかないからか、そのゆっくりは男に食って掛かってきた。

「おじさん、これだけおっきなはたけなら、まりさたちにわけてもへいきなはずだぜ!?」
人間の生活は、食べて寝るだけでは成立しないという事をゆっくりは知らない。
ゆっくりには経済の概念が無いのだからしょうがない。
だからと言って、人間がゆっくりの都合に合わせる訳にも行かないのだ。
「今回作った畑はなぁ…俺一人がどうにか生きていける分しか野菜を作れないんだ」
「だったらとっとと『まほー』でつくればいいんだぜ!」
ゆっくりは『魔法』の事を、ゼロもしくは軽い代償で、夢のようなことを現実のものにするものだと思い込んでいる。
「…そんな簡単に言うなよ。『魔法』で野菜を作ろうにも、今からやっても冬には間に合わないんだからな。一日二日で野菜は生えてこないんだぞ」
男は野菜作りの難しさ、大変さをゆっくりにも分かってもらいたかったのだが。
「ゆ!?それはおじさんの『まほー』がしょぼいのがわるいんだぜ!」
いくら言っても人の苦労を理解出来る頭は無いのかと、ついに男は説得を諦めてしまった。
「魔法、魔法ってなぁ、ちょちょいのぱっぱで野菜作れる奴なんざ、この世に居るわけねえんだよ!コラ!」
言い終わると共に、たたらを踏んで大きな音を出す。
それでも暴力は使わない。最後の良心がこの恫喝であった。
「ゆぎぎぎぎ…まりさたちがしんでもいいのかだぜ?はくじょうすぎるんだぜ!?」
そんな男の心のうちも知らず、長まりさはまだ喰らいつく。
「お前らが冬を越せないのは自業自得だろ…とっとと帰って最後の最後まで餌集めでもしてろ!」
男の恫喝にゆっくり達は色を失い、蒼白となって男を見つめていた。
ゆっくり達と男の間に流れた時は、それほど長くは無かったが、沈黙の持つ力はそれを何倍にも感じさせた。

「『えさあつめをしてろ』……なら、そうさせてもらうんだぜ!」
暫く黙っていたまりさは口を開くや否や、一番近くの野菜へ駆け寄り齧り付く。
「むしゃむーしゃしあわせーっ!」
このまりさの暴挙をきっかけに、連れ添ってきたゆっくり達は一斉に野菜に齧り付いたのだ。
「うっめぇ!」
「みゅーちゃみゅーちゃ、ちあわせー!」
「ぱねぇ!これまじぱねぇ!」
男は全身から血の気が引いていくのを感じた。
畑の野菜が無くなり、冬を越す事への不安から来たものではない。
汗を流し、血のにじむ思いで作り上げた畑、手塩にかけた野菜が無残にも失われていく悲しさからからであった。
しかしその悲しさもほんの一瞬。
悲しみは怒りに変わり、その怒りは男の体を鋼鉄へと変化させていた。
男は魔法使いではない、農夫だ。
だが今は農夫でもない。
そこに居るのは一人の戦士だった。

「この饅頭共!一歩もそこを動くなあぁ!」
叫ぶや否や、男の体は縁側から宙を舞い、瞬く間に畑に降り立っていった。
だがこの叫びはゆっくりには届かなかった。
野菜に夢中で気づかないのだ。
一番近くにいたゆっくりに狙いを定め、足を鋭く振りぬく。
「ゆ゛っ!」
弾け飛ぶゆっくりは、まっすぐ他のゆっくりに向かって飛んでいく
「ゆ?ゆっくべ!」
飛来する異物に気がつくも、それが何であるか分からぬまま、二匹のゆっくりは潰れた饅頭を空から眺める事になった。

獲物を求める狂戦士の目に飛び込んだのは、若葉をむさぼるゆっくり一家だ。
四間は離れているだろう距離を、助走も無しで一っ跳び。
大空高く舞うその姿はイカロスの飛翔そのもの。
しかし太陽に近付き過ぎたイカロスは、翼をもがれて大地へ堕ちる。
落ちる先にはむしゃむしゃと、仲良く野菜を貪る子ゆっくり達。
「むーちゃむーちゃっぴゃあ!?」
「こりぇまじぱなっぱぁ!?」
「ゆ?っがああああああ!あがちゃんがあああ!」
大地にボディプレスをかまし、子ゆっくりを巻き添えにする。
鋼鉄の体を持った農夫は、何事も無かったかのようにむくりと立ち上がる。
「ゆっくりできないじじいはゆっくりしね!」
子を殺された怒りで敵意をむき出しにして男に跳びかかる親ゆっくり。
バスケットボールより大きなこの親ゆっくりは、その運動能力も非常に高く、男の顔の高さまで跳び上がる。
しかしどんなに高く速く跳んでも、男の目には止まって見える。
男は両手で挟むようにして、容易に親ゆっくりの突進を受け止めた。
「ゆやあああああああ!いぢゃい、いぢゃい、はなぜ!はなぜぇええええ!!」
それだけではない。
受け止めた手の指十本は、第一関節までゆっくりの体にめり込んでいたのだ。
がっちりとホールドされたゆっくりは、身を捩ろうにも激痛が走り、喚き散らす事しか出来ない。
「はなしぇえええ!あがあああああ!やべてえええ!ぎゃああああ!」
男は苦しむゆっくりを鑑賞している暇は無い。
抱えた両手を少し前に出し、一歩二歩と踏み込んで、両手を離すと共に、右足が前方へ強く振り出された。
ぼすん!と強く鈍い音が立ったと同時に、ゆっくりの体は天高く舞い上がった。
「ゆわああああああ!?おそらをとんでるうううう!?」
五秒間の浮遊体験をした後は、二匹分の命で御代を払った。
「むーしゃむーしゃがばっ!?」
「とんでりゅびゅ!?」

次に狙いを定めたのは、一本の茎を咥え合い、一緒に食べているあつあつカップルゆっくりだ。
男は強く地面を蹴ると、水平方向にすべるように飛んで行く。
目的のゆっくりに近づくと、勢いそのままにスライディングの体制を取る。
「ゆぶっ!」
「ゆゆっ!ありす、どこいったの!?」
スライディングキックで掬い飛ばされたありすは空高く宙へ浮く。
「ゆぎゃ!!あああ…ゆゆ~?おそらをとんでるみたい~」
蹴られたショックから立ち直っても、依然と高い高度を維持しているありすは空を飛んでいると勘違いする。
そのまま自由落下すれば自然と土に還るのだが、男はそのままにはしておかなかった。
「ゆ!ありすをどこへやったの!ゆっくりしないでかえしてね!」
番のれいむを鷲掴みにして、空飛ぶありすへと投げつける。
「ゆゆ~ん、おやさいたべて、おそらをとんだらねむくなっちゃった~」
「ゆわああああ!おそらをとんじゃってるうううう!?」
「「ゆ!?ゆぼらっぱ!!」」
二つの玉は青空をバックに黒と白の大輪の花を咲かせる。




十、二十と黄泉送りにしていくと、さすがにゆっくりも異変に気づき、食べかけの野菜もそのままに脱兎のごとく遁走するものや、
それに巻き込まれて潰される子ゆっくりがいたり、恐慌に煽られてレイパー化したありすがドサクサに紛れてレイプをしていたり。
ゆっくりにとっては阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられていた。

「ゆやああああ!やべちぇええげべっ!?」
「んほおおおお!お゛ぼぼっ!?」
レイプされているゆっくりごと蹴り飛ばすと、動く饅頭は長まりさ一匹のみとなった。
野菜を食べるのに夢中で、他のゆっくりが潰されたり逃げ去って行った事に気がついていないようだ。
背後から忍び寄り、覗き込むように見下ろしてから、男はそっと囁いた。
「やあ、一人ぼっちで野菜を食べるのは楽しいかい?」
はっとしてまりさは辺りを見回した後、振り返って男を見上げる。
「ゆううぅぅぅ!あいつらうらぎったんだぜぇ!?」
男は狼狽するまりさを左手でぐっと鷲づかみにする。
「は…はなすんだぜ!やめるんだぜ!」
「おまえには『食べないでくれ』という野菜の願いを聞いたことはあるか?」
「ば、ばかいうんじゃないんだぜ!やさいはしゃべらないんだぜ!」
「俺には聞こえる、野菜の叫びが。なぜなら俺は『魔法使い』だからなっ!」
言ってて恥ずかしくないのだろうか?
とりあえずまりさをぼこぼこにすればどうでも良いのだろう。
右こぶしに力を込め、まりさ目掛けて一気に振りぬく。
「ゆぁやばらっ!?」
ゆっくりらしからぬ悲鳴を上げて、畑の中を二度三度バウンドしながらぶっ飛んでいった。
飛んで行ったまりさを、ゆっくりと歩いて追っていく。
今の一撃で虫の息のまりさは、一歩も動くことが出来ない。
「やべてくらひゃい…ごめんなひゃい…」
男が近付いてくるのが分かると、弱弱しい声で誤っている。
「ん~?誰に対して謝っているんだ?」
「おやひゃいひゃん…まひょーつかいのおじひゃん…ごめんなひゃい…」
上辺だけの謝罪なのは、この男も分かっている。
野菜の恨みは謝罪だけでは済まないのだ。
「安心しな、お前をぶっ殺したりはしねえよ」
殺しはしないといわれた事で、身の安全が保障されたと思って気が大きくなったのか。
「ゆ!ならとっとどばりさをがいほうするんだぜぇ!げびゃあっは!?!」
まだ生意気な口のきき方をしているのでグーで眉間に一発ぶち込まれた。
「殺しはしねえがてめえの体の餡子、毎日ほじって食ってやるからな!覚悟しろ!」
「ゆばああああ!?やべてえ!」
「食いもんの恨みは恐ろしいって事、餡子の髄まで分からしてやる!」
「やべでぐださい!あんごさんとられだら、ゆっぐりでぎないの!」
「うるせえ!お前のゆっくりより俺のゆっくりの方が大事なんだよ!ゆっくりしないで理解しな!」
「ごめんなさあいいいい!」

その日から、男の家にはゆっくりまりさという同居人、もとい餡子製造機が導入された。
まりさの食事は男の食い残しや、不出来な野菜等である。
「毎日野菜を食べることが出来て、ゆっくり出来るだろ?」
「ゆ!これでじじいがいなかったらもっとゆっくりできるんだぜ!」
相変わらず口の利き方が出来て無いので脳天に拳を落とされるまりさ。
「ゆびゃばあ!?」
「余計な事言うと、餡子を穿る量増やしちまうぞ!」
「あ゛、あ゛、あ゛、あ゛、ごべんなざい…」
両の眼から涙をこぼして誤ってはいるが、こんなことぐらいでは根から素直にはならないだろう。

まりさの食事が終わると同時に男の食事も終わる。
だがこの後にはデザートがある。
それはもちろんまりさの餡子。
「さあ今日も美味しい餡子をいただきますか」
「いやあああ!あんこはとらないでぇ!」
「取るな取るなと言われると、取りたくなるってもんよ」
「ゆ!?じゃあとって!まりさのあんこさんとってよ!」
「そこまで言うならしょうがない、美味しい餡子をいただきますか」
「ゆっぎゃあああ!そうじゃないでしょおおお!」
まりさが男の囚われの身になってからは、おなじみのやり取りになっている。
「ほーじ、ほーじ、しあわせー♪」
「あばべばべばぱぁ!ぱぱああ!へあらぱあら!」
大口を開けて餡子を穿られるまりさの悲鳴は奇妙な音を奏でている。
穿った餡子を平らげると男は満足そうな顔をして、少し膨らんだ腹をぽんぽんと叩く。
「ふぃー、食った食った」
「まりしゃのあんこぉ…もおいや…たべちゃいやぁ…」
「食ったもんが餡子になっちまうって、冷静に考えるととんでもないことだよなぁ…まるで『魔法』だな!おまえ、本当は『魔法使い』かもな!」
「!?ゆうううう!そんな『まほー』いらない!ゆっくりできる『まほー』がほしいよ!」

オワリ

あとがき
最後の二行を書きたかっただけ

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最終更新:2009年05月22日 20:39
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