「ゆ~~~~~♪」
うだるような暑さ。
今年の夏も一段と暑い。
形だけの入道雲が山の向こうに見え隠れする、夕立もなかなか訪れないので、暑さは耐え難いものとなっていた。
ゆっくり達も例外ではない。
この暑さでは、文字通りゆっくりするしかないゆっくり達はそれぞれ日陰に隠れてべたーーっとしている。
「れーむーー。あついねーーー!」
「こーゆーときはゆっくりしてよーーね!」
普段の口調からは程遠い、のんびりした口調で互いに会話をするゆっくり霊夢と魔理沙。
特に魔理沙は、黒い帽子の所為で余計に熱いようだ。
「こんにちは!! ゆっくりしていってね!!!」
「「?」」
そんな中、元気よく挨拶をしてくる男。
「おじさん。きょうはまりさたちはここでゆっくりするよ~」
幾らゆっくりと言えども、この暑さの中で元気にゆっくりする気はない。
「だいじょうぶ!! おじさんもこんな暑い中でげんきにゆっくりできないよ!! 冷たいアイスをもってきたんだよ!!」
「ゆゆ!! あいす!!!」
「おじさん!! それってつめたいの?」
冷たいと聞いてゆっくり達は元気よく飛び上がる。
どこにそんな元気が有るのかは知らないが、暑苦しく男の足元に摺りついてくる。
「うん! ちょっとたべてみるかい?」
そう言って、男はアイスキャンディーを二つに折ってそれぞれの前に捨てた。
「むしゃ? ……!! ゆゆ!! おいしー!! おじさんこれおいしーよ!!」
「うっめ!! めっちゃうめーーーーー!!!」
ひんやりと冷たいアイスにがっつく二匹。
「ゆ~~~~♪ しあわせーーーー!!!!」
あっという間に食べ終わった二匹。
余程美味しかったのか、直ぐにおかわりを要求してくる。
「おじさん!! もっともっとちょうだいね!!!」
「はやくまりさたちにもってきてね!!!」
「はいはい! でも僕は大勢のゆっくりに味わってもらいたいんだ。だから沢山ゆっくりを呼んできてね!!」
そうしたら、もっといっぱいアイスをあげるよ。
男の言葉を聞いて、元気よく森の中へと消えていく。
数刻後、そこには溢れんばかりのゆっくりがひしめき合っていた。
その数およそ100匹。
パチュリー・アリス・さくや。
多くの種類のゆっくりが親子、親友の垣根を越えて駆けつけたのだ。
もっとも、全員が暑さでゆっくりしているが。
「おじさん!! みんなつれてきたよ!!!」
「はやくまりさたちにあいすちょうだいね!!!」
先ほどの二匹が、ラフな格好をした男に駆け寄る。
「うん!! それじゃあ皆の分は家にいっぱいあるから、おじさんのお家まで行こうか」
男は集まったゆっくりに声をかけると、全員を加工場の大型冷凍庫へ運んでいった。
「ゆゆ!! すずしいね!!!」
「ゆっくりできるよ!!」
全員をその中へ入れる。
うだるような暑さの中に居たゆっくり達は自分から中へ入って行った。
それを確認して男は厳重に鍵をかけその場を去っていった。
「ゆ~~♪ ゆゆっゆ~♪」
「おかーしゃんじょ~ず~♪」
「とかいはのありすはこんなすずしいへや、よくはいってるよ!!!」
「むっきゅ~♪ かいてき~♪」
「おぜうさま!! おぜうさま!!!」
アイスのことは忘れて冷凍庫の中でくつろぐゆっくり達。
しかし、強力な冷凍庫はガンガンと中に入っている饅頭を冷やしていく。
「ゆ~、ちゅべたい!! つべたいよーーー!!!」
初めに騒ぎ始めたのは赤ちゃん達だった。
それが次第に年長者、大きいモノへと伝染していく。
「!! つめたい!! ゆっくりあけてね!!!」
「おじさん!! まりさたちをたすけてね!!!」
「とかいはのありすはじゃくれーぼーしゃにはいるよ!!!」
「むいきゅーーーー……」
「「ぱちゅりーーー!!!!!!」」
一番最初に息を引き取ったのはゆっくりパチュリーだった。
「ゆーーーー!! ……」
赤ちゃん達がそれに続く。
こうなるとゆっくりどころではない。
大勢の親ゆっくりや力のあるゆっくりが全員で入り口にタックルを仕掛ける。
「こんなのかんたんだよ!!」
「そうだよ!! おじさんはひとりであけられたもんね!!」
「みんなで力をあわせればかんたんにあくよ!!!」
「「「そーれ!!!」」」
しかし、厳重に施錠されたそのドアは、商品になった冷凍団子を取り出すまで開く事が無かった。