どこまでも晴れ渡った青空のもと、広い草原の上。8匹の
ゆっくり達がゆっくりとした時間を過ごしている。
まだ小さい赤ちゃんゆっくりが6匹、成体の、おそらく赤ちゃんゆっくりの親であろうゆっくりが2匹いる。
赤ん坊は全て霊夢種のゆっくりで、両親の愛情をうけていままでゆっくりと暮らしてきたのだろう。
野生種にしては肌に張りがあり、髪も艶がある。要するにとても健康なのだ。
満面の笑みを浮かべながら、「ゆっ♪ゆっ♪ゆっくり~♪」と跳ねながら歌っている。
子供たちよりも二回り大きい霊夢種と、その霊夢種より少し大きい魔理沙種の両親がそれを見守っている。
見守る親ゆっくりの表情もとてもゆっくりとした良い表情だ。
両親の髪には、昨日我が子が自分達のためにと採ってきてくれたタンポポが刺さっている。
自分の子供たちがゆっくりとしたやさしい子供に育ってくれたことが、彼らにはうれしかった。
「れいむたちのこどもいいこだね!」
目を細めてゆっくり親霊夢が言う。
「まりさたちのこどもゆっくりだね!」
親魔理沙もうれしそうに言う。
両親ともにやはりとても健康だ。
そう、私の娯楽に付き合うのに彼らは完璧だ。
長い間ゆっくりの家族たちを見てきたが、彼らほどお互いのこと思いあっているゆっくりの家族はそういるものではない。
彼らを私の素敵なパーティーに招くためには第一印象が大事だ。
できるだけやさしい声で、彼らに話しかける。
「やあ、ゆっくりしていってね!」
「「「ゆっくりしていってね!!!」」」
種としての本能か、彼らはやはりゆっくりしていってね!!!と返してくる。
この反応で10日前にやった遊びを思い出す。
ふと、どんな状況でも「ゆっくりしていってね! 」と言えば「ゆっくりしていってね! 」と言い返してくれるのか実験してみた。
ゆっくりの足?かどうかはわからないが、底の部分をのこぎりでゆっくり切る。もちろんゆっくりは泣き叫ぶ。
「ゆっくりしていってね!」と言えば、
「つっづゆっづっりじていっべぇねぇ!!!」と、激痛の余りゆがめた口から、泣きながら「ゆっくりしていってね!」らしき言葉を話していた。
そのゆっくり霊夢は元の場所に帰してやったが、おそらくもう死んでいるだろう。
おっと、いかんな。今大事なのは目の前の彼らを私のパーティーに招くことだった。
「おじちゃんゆっくりできるひと?」
「おじさんゆっくりできるひとなの?」
おじさんかぁ…まあいい。私から溢れるダンディーな雰囲気から、お兄さんではいけないと考えたんだろう。
彼らが聞いてくる。驚いたことに、ゆっくりとだが私から距離をとり、まだ小さい子ども達の前に霊夢種と、なんとあの魔理沙種が立っている。
おそらく私が襲いかかってきたときに、子供たちを守り、子供たちを逃がすためだろう。
特に魔理沙種が子供たちを守ろうとする姿勢は私を感動させた。あの親兄弟子供さえ自分のためなら切り捨てる魔理沙種が!
彼らに会えたことを心の底から感謝しなければ!!
「うん、ゆっくりできる人だよ。ところでそこの君達、とてもきれいな髪飾りだね」
「「うんわたしたちのあかちゃんがくれたんだよ!!」」
「「「おかあさんたちにあげたんだよ」」」
親ゆっくりはうれしそうに、子供ゆっくりは誇らしげに私に向かってしゃべる。
髪飾りを褒めただけで警戒を解くところは、やはりゆっくりといったところか…。
「ところで君たち、ご飯を食べないかい? たくさん持っているんだけど一人で食べるには多いからね。一緒に食べよう」
「ゆっ!!ゆっくりちょうだい!」
「ゆっくりまってね!」
子供たちはうれしそうに駆け寄ろうとするが、親ゆっくり達に止められている。
彼らは少し疑わしそうにこちらを見ている。なるほど、毒を警戒しているのか?
ゆっくりにしては賢い。相当修羅場をくぐりぬけてきたのだろうか?
「ははは、毒なんかはいってないから、心配せずに食べてごらん」
ニッコリ笑って風呂敷袋からおにぎりを取り出し咀嚼する、うんおいしい。やはりおにぎりの具は梅干しだ。
「うたがってごめんね!ゆっくりちょうだい!」
信用してくれたようだ、別の風呂敷袋からまた別のおにぎりを取り出す。具は特にない。
そしてなかには無味無臭の睡眠薬が入っている。
それを4個彼らに与える。
「うめぇ!めっちゃうめぇ!」
君達ね、君達の食べているおにぎりを私が食べたわけではないのになぜ毒がないと思うかな?
まぁゆっくりだからしかたないか。
彼らが気に入ってくれたようでよかった。
人生最後の食事、いや饅生最後の食事なのだから、ゆっくり味わってほしいのだが、尋常ではないスピード食べている。
君達全然ゆっくりしてない、ちゃんと味わっているのか?
すぐに彼らは食事を終えた。
親ゆっくりたちが子供の口に付いたご飯粒を取ってあげている、心温まる光景だ。
「おじちゃん!とってもおいちいよ!ありがとね!」
「おじさん!とってもおいしかったよ!ゆっくりしていってね!」
この家族に私は気に入ってもらったようだ、しばらく彼らと遊んだ。
遊ぶといっても、小さいゆっくりを持ち上げて立ってやるだけなのだが、いつもと違った景色にご満悦のようで、
「ゆっ!とってもたかいよ!」と喜んでくれる。
特におそらく末っ子の一番小さいゆっくりはこの遊びを気に入ったらしく、私の掌でとび跳ねながら
「ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪」
と喜んでくれている。
一番ちいさいのでちびゆっくりと呼んでもいいかと聞くと、
「ゆっ♪おじちゃん大好きだからいいよ」
といってくれた。かわいいゆっくりだ。
そうこうしているうちに薬が効いてきたのか、子供ゆっくりが眠そうだ。
「なんだかねむいね…」
それに気づいた親ゆっくり達は、家に帰ることにしたようだ。
「「おじさん!きょうはありがとね!ねむたいしきょうはおうちにかえるね!」」
親ゆっくりも少しは眠そうだ。体が大きい分薬の回りが遅いようだ。
このまま家に返してしまっては彼らをパーティーに呼ぶことができない。
「子供ゆっくりちゃん達も眠そうだし、そのまま帰るのは危ないよ。だからさ、今日は僕の家に来ないかい?
食事もあったかい寝床もあるし、気に入ってもらえるならそのまま君たちの家にしてもらってもいいよ」
「ゆっ!ほんと!」
「おじさんのうちにいくよ!ゆっくりつれてってね!」
すっかり私のことを信用してくれたようだ。
「うん、それじゃあちょっと狭いけどこの籠の中に入ってくれるかな? 家に着いたらたっぷりゆっくりさせてあげるよ」
ゆっくり達は何の疑いも持たずに籠の中に入っていく。
少しの間はゆっくりたちも私に話しかけてきた。
「ゆっくりできるおうちだったら!れいむたちのおうちだね!」
「とくべつにおじちゃんもすんでいいよ!」
しかし数分もすれば全て寝息になっていた。
私は鼻歌を歌いながら自分の家に向かう。