簡単な実験だった。簡単な実験のはずだった
竹林の医者に渡されたパンフレットにはそう書かれていた
実験の記録をつけるだけで、薬などがタダでもらえる。良い儲け話だ
しかし、実験の記録を回収しに来た兎を追い返してしまった
俺は研究にのめり込んで行った
「ゆっきゅり~」
「
ゆっくり・・・していって・・・ね」
俺の部屋のケージではゆっくりれいむの親子が仲良く暮らしている
毎日、餌をあげてとても元気だ
子れいむなんて母れいむの周りを駆け回っている
遊んで欲しいのだ。しかし、この母れいむは子れいむの世話を全くしないクズ母だった
元気良く遊びたいと言ってるのに母れいむは全くそれに答えようとしない
本当にダメな母だ。生かしておく意味がない
しかし、子れいむにとっては唯一の母親だ。俺は母れいむを生かしていた
「おい、エサだぞ」
俺はケージの中に形の悪い野菜をやる
ゆっくりたちにとっては十分すぎるエサだ
子れいむはまだエサをそのまま食べられない
母れいむが租借し、少し餡子に変えてから与えてやるのだ
この時だけ、母れいむは母親としての役割をしていた
俺にはそれがエサを貰う為の演技だと思えて仕方なかった
「ゆっくり・・・たべてね・・・」
租借した餡子を吐き出す。それを子れいむが食べる
「おいちぃ!!ゆっくりたべるね!!!」
「お、おかーさんも・・・たべたいから・・・はやくすませて・・・」
本当にこいつはダメな奴だ。俺は確信を強めていった
それから少し経つ
「おい、お前!なんだ、クソが!!」
恫喝する俺に怯える母れいむ
母れいむは今までやってきた唯一の母親らしい行為を放棄したのだ
子れいむは一生懸命野菜の皮を齧っている
母れいむといえば、苦戦している子を放って勝手に飯を食っている
なんだい、こいつは本当にダメな奴だ
俺は子れいむを取り上げる
「ゆっ!れいむの・・・あかちゃん、かえし・・・てね」
「うるさい、クズ母め!お前に子を育てる事なんてできるものか!!」
俺の大声に母れいむは何も言わなくなった
ふん、こいつはそんな程度しか子を愛していない
親なら殺されたって、俺に食いついてくるものさ
俺は兎から受け取った栄養剤を取り出す
と言っても、これは栄養剤を本に俺が複製したものだが
丁寧に成分表や調合方法まで書かれていた。これぐらいなら簡単に作れるから自作しろという事だろう
子が弱っている時や出産疲れが残っている親に使うようにと書かれている
子が弱っている時、それは未だ。こんなに小さくかわいそうな子れいむ
俺はどんどん栄養剤を与えてやる
二日だ。たった二日で子れいむはバレーボールぐらいの大きさになった
そうだよ。こうだよ。これが正しい育て方だよ
母れいむの奴は育児放棄してたから、育たなかったんだよ
俺はこんなに立派に育てれたぞ
「ゆっくりしていってね。おかあさん、ゆっくりおにいさんとすごしてきたよ!!」
「ゆ?・・・だれです?・・・はじめまして・・・ゆっくり・・・していってね・・・」
ペコリとお辞儀する母れいむ
そうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだ
こいつはこうやって知らないふりをする
事実から目を逸らす、俺の方が親として優秀だという事から目を逸らす
くそ、また失敗だ。どうしてコイツはこれが自分の子だと分からないんだ!!
俺は怒りに任せて、子れいむを壁に投げつける
「おにーさん・・・やめてあげて・・・」
こいつ、こいつ、子が殺されたってのに涙一つ流さない、こいつ
ああ、まただ。失敗だ。また失敗だ。ちくしょう!!
俺は別のケージにはいったゆっくりアリスに母れいむを強姦させる
「次は、次はお前に理解させてやるぞ。人間が、人間がどれほど優秀か」
「こちらです」
人里の長に連れられ八意永琳は男の部屋に入っていく
部屋には可愛らしい文字で書かれた看板は無い
「ご苦労様でした。もう結構です」
「いいえ、例え工場長の紹介であっても妖怪を長く里に入れておくわけには行きません」
永琳の後ろにいる二匹の兎に向かって長は言う
「それなら外でお待ちを。後ろにいる女の子に昔話でも聞かせてもらっていてください。すぐに終わりますから」
紅妹は"あんたほど生きちゃいない"と抗議する
ある日、里の者が"最近見かけない"と心配になって男の家を訪ねると男は死んでいた
飲まず食わずで何かの実験をしていたらしい
テーブルには弱ったゆっくりれいむが、ケージには干からびたゆっくりアリス
それと床にはおびただしい数のゆっくりの死骸があった
その噂を聞きつけ、調査させて欲しいと加工工場経由で八意永琳は願い出たのだ
ちょうど、実験キットを渡したが結果の回収に応じない家をピックアップしていたら
噂に出てくる名前と同じ男から結果を回収できてないのとが判明したのでまたとない機会だと思った
「鈴仙、ノートや資料の類が無いか探して。てゐ、あなたは母れいむが取り上げられたという子れいむを探して」
「はい、師匠」
「はーい」
しばらくして一冊のノートが発見された
「優勢論」と表紙に書かれたノートにはそれまで男がやってきた実験の方法と結果が書き込まれていた
「人間はゆっくりより優秀である・・・か」
ノートに書かれた文字を目で追っていく
結果から言って、男のしていた実験は無駄な行為だった
まず、出産疲れの母れいむに育児をさせることなど無理である
しかし、男は母親の怠慢だと、それを罵っていた
次に、子れいむは母れいむの餡子離れをしなくてはならない
母親が租借して作った餡子では大きくなれない。だから、なるべく早くから普通の食事をさせるのだ
男はそれを知らずに、早々の餡子離れを育児放棄とみなした
「でも、この記述は興味深いわ」
栄養剤で急激に大きくした子れいむを母れいむは自分の子と認識できなかった事だ
「次第に大きくなっていくから認識できるってことかしら?それとも男の人が使っていた栄養剤に細工が?調べる価値がありそうね」
兎達に男の作った栄養剤を回収させ、外に出る
「あの・・・それで死因の方は・・・」
「餓死ですね。ただの」
永琳はそういうと、さっさと帰ってしまう
人里の長はガックリうな垂れる
工場長から月のお医者様に見てもらえば詳しい原因も分かるだろう
そう言われていたからだ。もちろん、男の死因など最初から永琳に調べる気などなかった
~あとがき~
fuku1065見て、それなりに高いオーダー式バイキングに行った後、吉野家の牛丼を美味しく食べれる自分は
とても幸せなお兄さんなんだと思いました
by118
最終更新:2011年07月27日 23:38