「う~、ぷっでぃ~んおいしいど~♪」
「むきゅ!このけんきゅうしりょうはきょうみぶかいわ!」
「むこうであそぶんだぜ!」
「ゆふ~」
好物に舌鼓を打つもの、ただの広告チラシを百科事典と勘違いするもの、家においてある遊具で遊ぶもの、何もせずただぼーっとしているだけのもの。
とある家の一室でみな思い思いの方法でゆっくりしている。
彼女達はこの家の主である青年の飼いゆっくりだ。
しかし普通のゆっくりとは違う部分がある。
それはこのゆっくり達がすべて体つきの固体だからだ
この家の主である青年はゆっくりのコレクターだ。
ただのコレクターではなく、体つきのゆっくり専門とするコレクターである。
「ゆ!おにいさん!まりさもあまあまたべたいよ!もってきてね!」
「はいはい、わかったよ」
体つきまりさの尊大な口調にもニコニコ顔で請け負う青年。
彼はここのゆっくり達がゆっくりする事に関して手間を惜しまない。
それが自らのコレクションを最高品質に保つもっともよい手段だと分かっているからだ。
ましてそれが希少種を通り越して奇形種とまで言えるようなまりさの要求であればなおさらだ。
いそいそと台所に向かう青年。
自慢のコレクションのすばらしさをかみ締めながらプリンを用意した。
「ああそうそう」
「むきゅ?」
青年は読めもしないチラシを見ていたぱちゅりーを抱えると楽園とも呼べるその部屋を後にした。
所変わってここは家の地下室。
ここにも体つきのゆっくり達がいる。
しかしその様は先ほどと同じ家とはとても思えないものだ。
青年はとある特殊な用事のためにその部屋へ足を踏み入れた。
「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」
「ゆ!おじさん!れいむをはなしてね!」
青年が入るなり罵声が飛び交った。
数対の体つきゆっくり達が木でできた簡素なベッドに固定されオレンジジュースをチューブで与えられている。
ここはゆっくり達の養殖場だ。
体つきゆっくりの子は比較的体つきとなる可能性が高いため不要になった体つきゆっくりを養殖用の家畜としてここに置いている。
彼は最も質の高い個体が一種につき一体いればOKという主義だった。
「うああああ~!!!うばでるどおおおおお!!!!」
今まさに一匹のれみりゃが子を産もうとしている。
体つきは動物型にんっしんが多いため時間も手間もかかる。
しかし質のいい固体を生ませるには必要な手間だ。
犬や馬などと同じくゆっくりもやはり優秀な固体からは優秀な子が生まれやすいのだ。
すぽーんとれみりゃの下膨れから赤ゆっくり達が産み落とされる。
「う~…、れみりゃのあかちゃんだどぉ…、かわいいどぉ…」
「う~♪まんまぁ~♪」
「どれどれ。…はあ」
産み落とされた赤れみりゃは早速親に甘えようとしている。
親のれみりゃは出産の消耗で元気が無いものの素直に子供の誕生を喜んでいる。
しかし青年は産み落とされた子を見るなり落胆のため息を漏らした。
勢いよく出てきた時点で分かりきっていたことだがこの赤れみりゃは体無しだ。
「う?うべっ!!!」
それを確認すると青年はその赤れみりゃを勢いよく踏み潰した。
その光景に一瞬何が起きたか分からぬ表情をするれみりゃ。
しかしすぐにその光景の意味するところを悟り大声で騒ぎ出す。
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!!でびりゃのあ゛がぢゃんがあ゛ああ゛う゛う゛っ!!!!!!」
しかしその声も途中で掻き消える、なにせ次の子が生まれようとしているのだ。
結局生まれてきた子はすべて体無しであった。
無論すべて青年によって踏み潰されている。
「あ…ああ…れみりゃのあかちゃん…」
もはや悲しみを叫ぶ気力も無いれみりゃを無視し先ほどから呆然とその光景を見ていたぱちゅりーに振り返る。
ぱちゅりーには分からない。
なぜあの優しい青年がこんな残酷なことをするのか分からない。
なぜ自分がここに連れてこられたのか分からない。
なぜ自分を抱いている青年が他のゆっくり達と同じようなベッドに自分を固定しているのか分からない。
なぜ青年が自分にチューブを突き刺さすのか分からない。
さっきまで天国のような場所にいたのに。
さっきまでごほんを読んでとてもゆっくりしていたのに。
ぱちゅりーが考えているうちに作業は終わった。
もはや他の母体と変わらぬ有様に自分がどういう事態になったのかようやく理解する。
「むぎゅぅ!!!!はなしてぇ!!!!」
大声で懇願するが青年は耳一つ貸さない。
今まで何か言えば必ず聞いてくれた青年が一切話を聞かない。
その事実はぱちゅりーを大きく打ちのめした。
青年はというと先ほどとは別のぱちゅりーの前にいた。
「まったく何度も死産しやがって、もう代わりがいるからお前はいらないよ、この不良品」
「む、むぎゅううううぶべら!!」
青年は騒ぐぱちゅりーを踏み潰す。
加工所に持っていけばそれなりに高く売れるのだが独占してこそのコレクション。
彼は売ってしまうくらいなら自分の手で殺すことこそ愛情であるという考えなのだった。
死体は繁殖用のありすが食べてしまうだろう。
用もなくなったため青年は部屋から出ていく。
「むぎゅうううううううううううううう!!!!!!」
一体のぱちゅりーの悲痛な叫び声を残して。
さて先ほどの青年はまた別の場所を訪れていた。
「むきゅ!おにいさんこんにちは!」
「ぷっでぃ~んをよこすんだどぉ~♪」
「れいみゅはあまあまたべちゃいよ!もっちぇきちぇね!」
ここは子ゆっくりを育てる場だ。
無論すべて体つきである。
この中から青年のお眼鏡にかなったものは晴れてコレクション入り、この家で最高の扱いを受けることとなる。
逆にお眼鏡にかなわなかったものは先ほどの養殖場行きか捕食種達の餌となる。
青年は子ゆっくり達に餌を与えるとコレクション入りを果たしたぱちゅりーを連れて行く。
「むきゅ?みんなごはんたべてるのにどおしてぱちゅりーだけつれていくの?ぱちゅりーもごはんたべたいよ」
「ああすまない、別の場所で食べさせてあげるからご飯は少しまってね」
そう言いながら出口へと向かう。
他の子ゆっくり達は出された餌に群がっている。
最近生まれた連中は質もよくないし落第が多そうだ。
「おにいさんもういっちゃうの?ゆっくりしていってね!」
不意にそんな声がかけられる。
子まりさだ。
この子まりさは性格も温和で髪質も良好、肌も質がよくで順調に育てばすぐにでもコレクション入りを果たすだろう。
「お兄さんはまだやることがあるからね、後また来るよ」
「ゆっくりりかいしたよ!まりさはゆっくりまってるね!」
そんな言葉をかけながら自分も餌の元へ向かう。
数日後この子まりさの代わりに生意気な体つきまりさが天国から地獄へ落とされたのは言うまでもない。
この青年は後に新種のゆっくりの発見で世間をにぎわせることとなる。
それでも変わらず彼は自慢のコレクション達とゆっくりし続けた。
彼は本当にゆっくり達を愛していた。
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過去書いたもの
奇跡のゆっくりプレイス
醜い男
生きるための選択
最終更新:2022年05月21日 23:58