会社員の青年は空港で大きな旅行鞄を持った黒人の青年に手を振った
「君がネバナ州の支社から来た海外技術者研修生のボブ君でいいのかな?」
「ソウデス、ワタシガボブデス。ハジメマシテ。オセワニナリマス」
「あまり畏まらなくても良いよ。僕も今年入ったばっかりの新入社員だから」
新入社員の彼とボブは握手を交わす
「日本語上手だね、勉強したの?」
「オバーチャンカラ、オソワリマシタ。オバーチャンニホンダイスキ」
空港から出て会社の公用車で本社へと向かう二人
「ボブ君、シートは狭くないかな?」
「ダイジョーブデス」
ボブの身長は非常に高かった、軽く見積もっても180、もしかしたら2mあるかもしれない
会社に着くまで一時間は掛かる、それまでお互いに雑談と情報交換をすることにした
「ボブ君の趣味は何かな?」
「ユックリニキョウミガアリマス」
「ゆっくりに?」
NBA選手と見紛う彼からその言葉が出たのは意外だった
「ユックリガアラワレテ、アメリカ、カワリマシタ」
「ゆっくりがアメリカにどんな影響を?」
「スラムガイノ、ハンザイガ、ヘリマシタ」
「犯罪が減るのとゆっくりにどんな関係が?」
「ユックリヲ、タベラレルヨウニナッタカラ、ゴウトウガヘリマシタ」
「そうなんだ」
簡単に手に入り量産できる食料が出現したことで飢えから来る突発的な犯罪が減ったらしい
「セイハンザイモ、ヘリマシタ」
「性犯罪っていうとレイプとかそういった類かな?」
些か下品な話題ではあるが、興味が沸いたので聞いてみた
「イエス。ユックリハ、レイプシテモ、ツカマラナイ」
「は?」
「ユックリノクチ、トテモキモチイイ」
「ぶッ!!」
運転中にも関わらず思わず噴き出してしまった
「ボブ君、その言い方だと『私はゆっくりをレイプしたことがある』って取られちゃうよ?」
「ソウデス」
(そうなのかよ・・・)
「アメリカジン、ユックリレイプスルノダイスキ」
(それは多分君とごく一部の人間だよきっと)
これは困ったと頭をぽりぽりと掻いた
「会社ではあまりその話題は出さない方がいいよ」
「ニホンジン、ユックリレイプシナイ?」
「ん~~多分する人もいるけど、職場にそういった話題は持ち込まないんだよ」
「oh、ニホンジン、トテモマジメネ。サスガ『エロコミックアニマル』ト、ヨバレルダケアリマス」
「それを言うなら『エコノミックアニマル』だよ。それだと日本のサラリーマンみんなエロ漫画好きになっちゃうからね?」
まだ空港を出発して10分も経ってないのにこれでは先が思いやられる
「一つ忠告しておくけど、この国でも下半身露出したら捕まるから。当たり前だけど」
「ソノトキハ『プリズンブレイク』シマス」
「その場で射殺されて『ボーンズ』にならないでね」
こんな話ばかりするのもアレなため、話題を切り替える
「ボブ君は日本に来て見たい物はあるかな?」
「ユックリニンジャ、ユックリサムライガ、ミタイデス」
「ゆっくり侍も忍者はいないなぁ・・・みょんってのはいるけど」
「マジデスカ!? ソレガタノシミデ、サンカシマシタ・・・」
(居ると思ってたんだ)
ボブの首ががっくりとうな垂れた。本気で落ち込んでいた
「アメリカニハ、ユックリマリサガ、テンガロンハットヲ、カブッテイマス。ユックリガンマン」
「凄いなアメリカ」
「シカシ・・・アア、ナントイウコトデショウ。ゲイシャユックリスライナイナンテ」
車内の空気が一気に気まずくなる
「え、えーと他にゆっくりがアメリカに与えた影響はあるかな?」
「イエア! タクサンアリマス!!」
ゆっくりという言葉で彼は再び元気を取り戻した
「ユックリノ、ハリウッドエイガガ、タクサン」
「ゆっくりの映画?」
「『ユパイダーマン』シリマセンカ?」
「いや『スパイダーマン』なら」
「ユックリガ、ケンキュウジョカラ、ニゲタクモニ、タベラレル、ハナシデス」
「噛まれて感染とかじゃなくて? 食われて終わり? 早すぎない?」
彼の映画話は続く
「『ロード・オブ・ザ・ユックリ』ハ?」
「指輪物語なら知ってるけど。特殊な指がはまってしまった主人公がそれを捨てに行くっていう・・・?」
「オナジデス。ダンコンヲ、ユックリニカマレタシュジンコウガ…」
「シモネタ!? 主人公も君と同類!?』
「『ユンビ』トイウノモ」
「ゾンビみたいな?」
「ユックリニ、カマレルト、ソノヒトモ、ユックリニナル」
「確かにホラーだ・・・」
『レッドユックリフ』
「三国志の?」
「アカイユックリガ、オオアバレ。サイゴニシヌ」
「せめて三国志に絡めようよ。で、なんやかんやで結局死ぬんだ」
車が信号で止まるとボブは鞄を開けて書類を取り出した
「パンフレットミマスカ?」
受け取って軽く目を通す
『ゆっくりの惑星』・・・宇宙飛行士が不時着した惑星はなんとゆっくりが文明を作り暮らす星だった。惑星に接近する隕石を核爆弾で破壊したり、ライトセーバーのバトルシーンは圧巻
「いろいろ混ざってるぞ」
『ザ・ユックリ』・・・物質転送装置を作った科学者、実験で自分を転送する際に装置の中にゆっくりが紛れ込んでいた!? ゆっくりと一体化してしまった科学者の運命は!??
「同じカプセルに居るんだから気付けよ。ハエじゃないんだから」
『十二匹の怒れるゆっくり』・・・12匹のゆっくりが二時間延々と怒り続けるのを記録したドキュメンタリー。あなたはこの不快な光景に耐えられるか?
「もはやハリウッドですらない」
『でいぶ ~都会へ行く~ 』・・・牧羊犬ならぬ牧羊ゆっくりのれいむ(通称でいぶ)が都会に行って色々あって最後に食べられる話
「うわぁ・・・」
「ドレモコレモクソデシタ」
「だろうなぁ」
信号が変わったのでパンフレットを返した
「ヨウガクキキマス? CDモッテキマシタ」
「洋楽か、いいね何がある?」
「エート、『ユーリングストーンズ』『ユーファイターズ』『ユートルズ』『レッド・ホット・ユックリ・ペッパー』『エルヴィス・ユックリー』『ザ・グレイトフル・ユックリ』ガ」
「ほんとにそんなアーティストあるの? しかもなんかチョイスが所々ジョジョ臭いなぁ」
「ジョジョナンテ、シリマセンヨ。ファンタジーヤ、メルヘンジャナインデスカラ」
「ボブ絶対にジョジョ知ってるだろ。しかもそのセリフの使い方間違ってる」
「チナミニ、ユックリヲ、レイプスルモノドウシハ、ヒカレアウ、ト・・・」
「いや。間違っても本社にレイパーなんていないから」
こんなのを一週間以上相手にすると思うと頭痛がしてきた
要約本社に着き。荷物を降ろして社内へと入る
「課長。彼が今日からウチで研修することになるボブ君です」
「日本へようこそボブ」
課長と呼ばれた男はデスクから立ち上がり手を出す
「ヨロシクオネガイシマス」
ボブは差し出された手を取る
「「!!?ッ」」
握手した瞬間、二人の間に電流のようなものが走った
「モシカシテ、アナタモデスカ?」
「どうやらそのようだ・・・よもや、海外の同じ趣味を持つ者に出会えるとは」
「 ? 」
だた一人置いてきぼりにされる青年
「課長もボブ君も一体何の話しですか?」
「イッタデショウ。レイパードウシハ、ヒカレアウ、ト」
「おいおいボブ、会社でその話しはNGだ。仕事が終わったらたっぷりと語りあおう。日米レイパー会談と洒落込もうじゃないか。ウチの息子もゆっくりが好きでな、今度紹介しよう」
「oh,good!」
「なんだこの会社!」
彼は頭痛の他に腹痛まで感じはじめた
終わり
最終更新:2022年05月03日 22:17