※なんかよくわかりません。



ゆっくりの能力を得たお兄さん



あるお兄さんが言った。

「僕はゆっくりと同じ能力を得た」

彼は決してゆっくりしているわけでも、お食べなさいで分裂するわけでも、おうち宣言をするわけでも、ぼせい(笑)が強くなったわけでもない。
虐待お兄さんは冗談半分で『虐待される能力か?』と聞いたがそれでもないらしい。
ただそのお兄さんは一言。

「この能力は非常に危険な能力だ…だから誰にも教えられない、ただ村のために使う事だけは約束する」

村人は彼を気味悪がった。
別段ゆっくり特有の不愉快な能力を行使するわけではなさそうだが、村からは嫌われ者のゆっくりと同じ能力と言うのだ。
気分が良いものではない。
しかし彼自身が村に嫌悪されているわけでもなく、その能力も未知のままではあるが、村のために使うと言っているために特に騒ぎにしなかった。


そして事件は起こった。


「ゆゆゆっ、みんなおなかぺーこぺーこだよ、そんちょーさんはすぐにおやさいさんをもってきてね!」

ドゲスが降臨した。
ドゲスは協定を結ぶつもりもなく、ただただ野菜の要求を行った。

「そんな要求は…」
「じゃあしょうがないね!」

ドスは口からスパークを放つ。
その太さは文献で聞いていたものとは全く違い、威力・装填時間・装弾数ともに並みのドスパークの比ではなかった。

「ゆっゆっゆっ、まりさはくんれんのすえにれんしゃどすぱーくをかんせいさせたよ!にんげんさんなんててきじゃないよ」
「ゆっふっふ、どすはつよいよ!ゆっくりしないでしたがってね!」
「そうだぜ、ちなみにまりさたちをゆじち(ゆ質)にしてもむだなんだぜ、なんたってどすのむれはげすなんだぜ?」
「わかるよー、つかまるのろまはみすてるんだねー!げすばんざいだねー!」

すこぶる性質が悪い。
村長以下住民は仕方なく用意できるだけの野菜をゆっくりに提供する。

「じゃあつぎにおひさまがでてくるときには、もっとおねがいね!」

そんな捨て台詞を吐いて帰っていった。



村での会議は壮絶を極める。
  • このままでは要求が増えるのも明確なので村を捨てて逃げる
それほど小さい村でもないので人数が多く、移住先もないため現実的ではない。

  • 討伐する
虐待お兄さんと呼ばれる者も多数いるが、あのドスパークは絶対的な強さを持ち、危険。

  • 妖怪や有力者に依頼する
妖怪は見返りが大きく、食用の人を要求されたら意味がない。
また巫女や好意的な妖怪は近辺にいなく、呼んでくるのに一週間程度かかる。

「八方塞がりじゃな…」
「長!かと言ってこのままじゃ」
「宛てはないが…移住が懸命じゃろうな」
「うちには小さい子供もいるのよ!?宛てもないのにどこに行けって言うのよ!」
「じゃが…」

「…ここは僕に任せてもらえませんか?」
「お主は!?」

ゆっくりと同じ能力を得たと言っていたお兄さんだった。

「…気持ちは嬉しいのじゃが、お主一人であのドスの相手をするのは…」
「大丈夫です、僕なら確実に倒せます」

結局、最後まで能力の説明は行わなかったが、村人にとっては最後の希望とも言える。
移住の準備をしながらも、一握りの希望に村人はすがる事にした。




ゆっくりの住む森




「ここか…」
「案外近いんだな、こりゃゆっくりの足(笑)でも半日で来れるわ」
「虐待お兄さん!?」

一人で戦う覚悟を決めていた彼の隣には、あの虐待お兄さんがいた。

「どうして…あのドスを見ただろう、危険なんてものじゃない」
「バカ言うなよ、虐待お兄さんともあろう俺がゆっくり相手に逃げましたじゃ所属虐待会のメンバーに笑われるわ」
「だけど」
「それにお前の能力次第ではゆっくりである以上、虐待お兄さんとしてはちゃんと虐待しないといけないしな、なんつってー」
「虐待お兄さん…」

そうこうしているうちに、二人はゆっくりの巣に辿り着いた。

「おい、糞饅頭!虐待しに来てやったぞ!」
「相変わらずの挨拶だね」

「「「「ゆゆゆっ!?ゆっくりしていってね!」」」」

洞窟から現れる無数のゆっくり、そしてドス。

「なんなのおにーさんたち、おやさいもってきたの?しぬの?」
「死ぬのはてめぇだ!」
「ゆっゆっゆっ、おにーさんたちがどすにかつつもりなの?ばかなの?ばかだね、ぷくーっをするひつようもないくらいのざこなのに」

「どす、さっさとざこをたおすんだぜ!」
「これでおやさいさんをもらうりゆうがまたふえたね!」
「れいむったらいなかものね、そんなりゆうなくたっておやさいさんはもらうにきまってるでしょ」
「そうだったね!」

「「「「ゆっひゃっひゃっひゃっひゃ!」」」」

「この糞饅頭どもが…って!」
「どすぱーくだよ!ゆっくりきえてね!」

ゆっくり達が馬鹿笑いをしている隙をついて、ドスは自慢のタメなしドスパークを放った。
眩い閃光が二人を包み…

「うぉぉぉぉぉぉ!!………おお?」

二人の目の前で消えていった。

「どす!なにやってるんだぜ!」
「ばかね、どすはてかげんしてあげたのよ」
「さすがどすだね、でもこんどはゆっくりしないでけしてあげてね!」

「ゆ、ゆぅ?」

もちろん手加減などしていないドスは困惑しながらも再度ドスパークを放った。
しかし同じ様にお兄さんの前で光は消えていく。

「ドスパークは僕に当たらないと思い込む、それが僕の能力だよ」
「ゆっゆーん!?」
「はぁ?なんだそれ?」

ドスと虐待お兄さんは目を見開き、お兄さんを見つめる。
周りのゆっくりには何が起こっているのが理解できず、ドスを貶す者もいた。

「ゆっくりの能力は思い込みだ、そもそも思い込まなきゃ饅頭が動くわけないし、消化器官もない饅頭が腹が減るわけがない」
「そう言えばゆっくりは思い込みが強いって聞いた事があるな」
「肺もないのに呼吸が必要なのは息をしないと死ぬと思い込むから、うるさい騒音でしかないおうたも思い込みでいい歌になる」
「ゆ、ゆゆゆ!?」
「実はゆっくりには過ぎた能力だよ、思い込めば何でもできるのだから…ドスパークだってそうさ、魔法使いがキノコで魔法を使ってるからできると思ってるだけ」
「そうなのか!?」
「本来はグリモワールやそれなりの知識、技能があって魔砲になるんだ、口で租借して魔法が使えるわけない。君はキノコを食べてレーザーを吐けるのかい?」
「そりゃそうだ」
「幻想郷を揺るがす程の凄い能力だが、不幸中の幸いかこの能力を持ったのが発想力に乏しい饅頭だったってわけ、しかしそれを人間が持てば?」
「……なんでもできるって事か」
「それが僕が得たゆっくりの能力「思い込む程度の能力」だよ」
「ゆ、ゆっくりしていってね!!」

ドスは再度ドスパークを試みる。
しかしその光もあえなく消えていった。
そしてお兄さんは手をかざし…

「ここのゆっくりはゆっくりできない…そう僕は思い込む」

そう一言つぶやいた、すると。

「ゆぎゃぎゃぎゃぎゃ!ぎもぢばるいんだぜぇぇぇぇ!!」
「ゆっぐりでぎないいいいいいいい!」
「どがいばじゃばいばぁぁぁぁあ!」

洞窟のゆっくり達は一斉に騒ぎ出す。
中にはゆっくりできない理由がわからずに、発狂するゆっくりもいた。

「み、みんなゆっくりしてね!おちついて!こうなったらゆっくりおーらで…ゆぎゃっ!」
「僕は弾幕を放つ事ができると思い込む」

お兄さんの手から弾幕が放たれ、ドスの顔面を貫く。
後に虐待お兄さんはその弾幕を『弾幕ごっこに参加できるような美しく、ゆっくりしたものだった』と話していた。

「すげぇな…」
「ドスが暴れたらゆっくりを虐待できないでしょ?」
「お…おお、そう言う事か、すまんな気をつかわせて」
「いえいえ、どうぞごゆっくり…いや、ゆっくりしていってね!と言ったところかな?」
「はっはっは、ちげぇねぇ!さてっと……ひゃっはぁぁぁぁ!お前ら全員虐待だぁぁぁ!」

「「「「「ゆびぃぃぃぃぃ!!」」」」」




夕刻




「いやぁ、屍累々とはよく言ったもんだ、久しぶりに一汗かいたぜ!まさにすっきりーッ!だな」
「ゆっ、ゆっ、ゆっ、だずげで…」
「もうずっぎりじだぐないわぁぁぁ」
「で、でいぶのあがぢゃんがぁぁ!」
「わから…」

「100はくだらない数のゆっくりを、1匹も殺さずに、かつ生きて行くのが絶望的な状態にするなんて…」
「いやいや、お前の能力には負けるわ」
「ど、どうだろう?」

流石のお兄さんも、虐待お兄さんの本気に引き気味だった。

「さて、こいつらはもう何もできないし、俺達も村に帰るとすっか」
「いや、僕はこのまま出て行くよ」


二人の間を流れる静寂


「な、なんでよ!めっちゃ便利な能力じゃん!」
「便利だよ、便利すぎる能力さ、だからこそこのまま村に戻れば村に迷惑がかかる」
「…なんのこっちゃ?」
「気がつかないかい?さっきからこの辺りの異変に…幻想郷の管理人、隙間妖怪が見張ってるよ」

そう聞くと虐待お兄さんは辺りを見回した。
一見すると何もないようだが、周囲に張り詰めた空気を感じる。

「思えば何でもできる、幻想郷始まって以来の危機だろうからね」
「ど、どうすんだよ」
「好きで得た能力でもないし、反抗したくはないけどむざむざやられるのもねぇ…だから村に迷惑がかからないようにするさ」
「しかしだなぁ」
「悪用するつもりもないし、そもそも村で平凡に暮らしたかっただけなんだけど、あっちはそれを信じてくれないと思うし」
「…そっか」
「じゃあね」



「お前ってさ」
「うん?」
「お前が本当にゆっくりから得た能力って、「ゆっくりしたい」なのかもしれねぇな」
「ははは、そうかもしれないけど、それは生まれた時から持ってる能力だね」
「そうだったな、あはははは」



「もし見逃してもらえそうならまた村に帰ってくるよ」
「そうだな、お前の能力はゆっくりを虐待するのに便利だから手伝って欲しいし」
「なにそれ、君らしいけど」





そうして二人は別れた。
その帰り道。





「思い込む程度の能力ねぇ…」
「ゆっくりしていってね!」

帰り道を行く虐待お兄さんの前に、一匹のゆっくりれいむが現れた。

「おにいさんはゆっくりできるひと?」
「ああん?そうだな…比較的ゆっくりできない人だな、むしろ虐待お兄さんだから全くゆっくりできないな」
「ゆゆっ!?」

れいむは虐待の意味を知っていたため、急いで逃げていった。

「思い込み、ねぇ…」

虐待お兄さんはそのれいむの後ろ姿に向かって手をかざす。

「俺は無数の針があのれいむをでいぶに変える程の地獄の苦痛を味合わせつつも、死なない状態を思い込む!」


静寂…そしてれいむは坂を登りきり、視界から消えてしまった。


「んなわけねぇよな」








『ゆぎゃぁぁぁぁぁぁ!どぼじででいぶのおがおに、ばりざんがざざっでるのぉぉぉぉ!!』

「……まさかな」





あとがき

なに、この、中学生の頃を思い出す嫌な空気は。
そして読み返すと虐待をしていない気がするのはいつも通りなのぜ。




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ゆっくり信仰していってね!
ゆっくり新技術を導入していってね!
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最終更新:2022年05月18日 23:09