オレが気づいた時、まりさはテーブルの上で困惑していた。
「ゆゆっ! こわれないよ! どうして!?」
まりさがありすの入った透明な箱を床から落としたが、今度は割れなかった。
そりゃそうだ、その透明な箱は加工場製の正規品なんだから。そう簡単に壊れてもらっちゃあ困る。
ちなみにれいむを入れた箱も、加工場製ではないがきちんとした工場で作られた正規品だ。
だから高いところから落とそうが強く叩こうが割れるどころか傷一つ付かない。いい仕事してるね。
「どうじてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」
れいむの箱も落したが、効果がないのを見たまりさが叫ぶ。うーん、いい声だ。
まりさが透明な箱を壊そうと、体重を乗せてとび跳ねたり体当たりしたが箱は一向に割れない。
何度か攻撃した後、無理だと悟ったのかまりさは唯一の出入り口であるドアに向かって走り出した。
「まっててね! すぐにたすけをよんでくるよ! みんなでかかればこんなはこいちころだよ!」
いや、ゆっくりが何匹集まろうと壊せる品じゃないし。
まあそれはそうと、助けを呼ぶ前にしなければならないことがあるんだがな。
ごんっ!とドアに体当たりするまりさ。だがドアはびくともしない。
何度も繰り返して突進するが少しも扉が開く気配はない。
このドアは部屋の内側へと開くタイプだ。だから部屋の中から衝撃を与えても開くはずはない。
まあその前にドアノブを回さないと話にならないわけだが、頭しかないゆっくりにできるはずもなく。
「ゆぅぅぅ! あかないよぉぉぉぉ!!!」
ひたすら唯一の出口に体当たりするまりさ。無駄な努力ご苦労さま。
さて、そろそろいいだろう。
ドアノブに手をかけ、そして
「ゆっくりしていってね!」
という言葉と共にバーンと勢いよく扉を開ける。
全力疾走していたまりさは突然開かれたドアに当然対処できるはずもなく、見事にぶつかった。
「ゆ゛ぶぇ!!」
美しく弧を描いてふっとばされるまりさ。あれ? さっきもこんな光景みたような。
その隙に部屋に入り、鍵をかける。
さて、こいつらをどうしてくれようか。
とりあえずれいむとありすが入った透明な箱をテーブルの上に置き直した。
れいむは相変わらず俯いたまま静かにしてるからいいとして、問題はうるさく吠えるありすだ。
せめて話すことぐらいはできるようにと口の部分に余裕が出来るように入れたのだが…仕方ない、口をケースに押さえつけられるように入れ直すか。
と、ありすの箱に手をかけたとき、まりさが再びドアへと向かっていった。もう復活したのか。
もう一度ドアに体当たりするが勿論開かない。今度は鍵をかけてるからなおさらだ。
「おじさん! さっさとこのどあをあけてね!」
自力では無理と判断したのか、まりさが俺に向かって言ってきた。
開けるわけないだろ常識的に考えて。
ありすの前にまりさをどうにかしようとドアの方へ近づいていく。
「もっとゆっくりいそいでね! ありすたちもだしてあげてね!」
「嫌だね。何で弱っちい糞饅頭の言うこと聞かなきゃならんのだ」
「ゆ゛う゛う゛う゛う゛うぅぅぅぅ!!!」
オレの言葉にまりさは眉を吊り上げ、空気を吸い込んでぷくぅーっと体を膨らました。
間抜けな姿だがこれで威嚇してるつもりなのだろうか。おお、こわいこわい。
と、その姿を見ていいことを思いついた。
早速やってみようと部屋の隅の道具箱へと向かう。
背を向けたせいかオレが逃げたと思ったのだろう、背後からまりさのゲラゲラという笑い声が聞こえてきた。
「ぷぷっ! やっぱりおじさんよりまりさのほうがつよいね! ざこなおじさんはゆっくりしんでね!」
とりあえず無視して大きな道具箱を開けた。
さっきは言わなかったがこの中には何に使うかわからない大きめの器具からその辺にある日用品まで様々なものが数多く入っている。
え? 何でこんなものがあるのかって?
正義の心の俺がどれを7つ道具として使おうかと悩んでいた時の候補だったものだ。いわゆる余りものだな。
それを悪の化身となったオレが使っている。
虐待お兄さん777つ道具とでも言おうか。本当にそんなにあるのかは知らないが。
その中からガムテープと大きめのストローを取り出し、ドアの方へと戻った。
「ゲラゲラ! よわっちいおじさん! ようやくどあをあけるきにぶっ!!?」
何やらほざいているゴミクズの口をガムテープで覆う。
しっかり念入りに、空気が漏れないように何重にも貼り付けていく。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ーー! ん゛ーん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ー!」
「うんうん、そうかそうか。何言ってるかわかんねーよカス」
『ん゛ん゛ん゛ん゛』だって! へんな鳴き声だね!
と、呻いているまりさを後頭部がこちら側になるように持ち上げた。
じたばたと逃げようとするが生憎人間様はその程度の力でどうにかできるほど弱くない。
左腕と体でしっかりとまりさを固定し、その後頭部にストローを突き刺した。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!!!!」
苦痛の声を潤滑油にするがごとくズブズブと皮に埋まっていくストロー。
まりさの両目から涙があふれ出していた。
ある程度まで侵入させ、餡子の中心に届くぐらいで止める。
「そんなに膨らむのが好きならお兄さんが膨らましてあげるよ!」
そしてストローから息を吹き込む。
最初は変化がなかったが、何度か息を入れていくとまりさのからだが膨らみ始めた。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!!」
「おお、すげぇ。本当にこんなんで膨らむとは」
面白いのでどんどん息を送る。一度膨らみ始めるとそこからは息を吹き込むたびにまりさの体が膨張する。
ハンドボールぐらいだった元に比べて三倍ぐらいの大きさになっただろうか。
もちもちしていた皮はパンパンに張れ、充血した両目は半分飛び出している。
もう何も言うことが出来ないのか、『ん゛』の悲鳴も聞こえない。
「ま゛りざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
変わり果てた友人の姿にありすが涙を流し、絶叫した。
うるさいったらありゃしない。
恐らくこれが最後だろうと思い、おもいっきりストローから息を吹き込んだ。
すると――。
パァン!
小気味よい音と共に膨れ上がったまりさが爆発した。
皮が粉々に破れて中身の餡子をべちゃべちゃと部屋中にまき散らす。汚ねぇなぁおい。
こうしてゆっくりまりさはこの世のものではなくなった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛まり゛ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その様子を見ていたありすが絶叫した。
れいむは相変わらず俯いたままである。こいつ大丈夫か?
「このゆっぐりごろ゛し! どっととじね゛ぇぇぇぇぇ!!」
「あーはいはい、しぬしぬ」
抵当に相槌を打ちながら壁に付いた餡子を床に落としていく。
ついでにまりさの帽子も回収しておこう。
あらかた餡子を落とし終わり、二匹に向かって言う。
「お兄さんの言うことを聞けばいい子になれるよ」
その言葉に今まで俯いていたれいむが反応した。
「ゆ…ほんとう?」
「ああ、本当だ。だからいい子になりたかったらこれを全部食べてね」
と、部屋の床に飛び散った餡子を指さして言った。
だんだん顔に生気が戻ってくるれいむ。
ああ、なんと単純で愚かな生き物なのだろう。というかそもそも生き物なのか?
元気を出したれいむを箱から出してあげる。
透明な箱の蓋を開けた瞬間、れいむは勢いよく部屋に飛び散っている餡子に食いついた。
「うっめ! これめっちゃうめぇ!」
「れ゛いむ゛や゛め゛でぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! ま゛りさをたべない゛でぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
イライラっとくる声を上げながら餡子をむさぼり食うれいむと、親友が親友の中身を食べる姿を見て泣き叫ぶありす。
なるほど、ありすは一部始終を見ていたから帽子がなくてもあの餡子がまりさの中身だと理解できるのか。
れいむはあすりの言うことなど耳に入っていないのか、どんどんとまりさの残骸を食べ続けている。
どうもこっちは口に入れ続けてる餡子がまりさだと気づいていないようだな。
「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪」
部屋中に飛び散った餡子をほとんど食べ終え、れいむが至福の声を上げる。
そろそろいいかな。
「よし、ちゃんと餡子を食べ終えたな」
「ゆ! れいむはちゃんとおにいさんのいうことをきいたよ! れいむはいいこでしょう!」
希望に満ちた目でオレを見てくる。鬱陶しいったらありゃしない。
「ああ、そうだな。でもな、友達を食べるやつがいい子とは思えないな」
何を言っているのかわからないのか、れいむが首をかしげた。
「ゆ? おにいさんなにいってるの? れいむはともだちなんてたべてないよ?」
まあそうだろうな。れいむにとって、今食べたものはただの餡子だ。
だがこれを見るとどうかな?
と、オレはわずかに残っていた餡子の上にまりさの帽子を置いた。
すると上機嫌だったれいむがどんどん青ざめていく。
「ぞんな゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!! ま゛、ま゛り゛ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ようやく理解したれいむが口から食べた物を吐きだそうとするが出てこない。
さっきのでの明るい表情はどこへ行ったのか、涙を流しながらおえおえ言っている。
「ま゛り゛ざぁぁぁぁぁぁぁごべんねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ふとありすを見ると、般若のように顔を歪めてオレを睨んでいた。
おいおい、とかいは(笑)の顔が台無しだぜ。元々ひどい顔だけど。
「さて、友達を食べるような悪い子にはお仕置きだな」
悪い子、さらにお仕置きと聞いてれいむが震える。その様子に満足し、オレは再び道具箱を開けた。
取り出したるはナイフとスプーン、それとアルコールランプ。
三つの道具を持ち、元の場所まで戻る。
「と、お仕置きの前にお友達を出してあげよう」
透明な箱から怒り顔のありすを引っ張り出す。
アルコールランプに火をつけ、有無を言わさずその上にありすの底面が来るように持っていった。
「あ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁあづいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! れ゛い゛ぶだずげでぇぇぇぇぇ!!」
ゆっくりゆっくりと慎重に足らしい部分を焦がしていく。
辺りにカスタードが焼けるいい匂いが漂い始める。いかん、腹減ってきた。
そして目の前にあるのはその匂いの元。これはもう食べるしかないよね。
「いただきまーす」
ありすを持ち上げ、ガブリと左頬を噛み千切る。
すぐさま口内に広がる濃厚な甘み……って甘っ! 甘すぎる!
思わず口からカスタードを吐きだした。勢いあまってありすにぶっかかっちゃったけど、まいっか。
こいつ、これまで余程ゆっくりしていたんだろうな。ここまで甘い食べ物もそうそう無いぞ。
「あ゛り゛ずのがずだーどがぁぁぁぁぁ!! や゛め゛でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ありすは自分の中身が顔に張り付く恐怖にさらに顔を歪める。
さらにオレが噛み千切った部分からカスタードが漏れ出ているので気が気ではないだろう。
仕方ない、優しいお兄さんが傷口を塞いであげよう。
ありすを持ち、傷口周辺の皮を破れないように引っ張って伸ばし、穴を塞いだ。
その部分の皮を接着するため、未だ火の灯るランプで焼いていく。
「あ゛づいあ゛づい゛ぃぃぃぃぃ!! も゛うひはい゛や゛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「我慢しろ、お前の為なんだ」
完全に皮同士がくっついたのを確認すると床に置き直してやる。
なんということでしょう、匠(オレ)の技によって傷口が綺麗に塞がっています。焦げてるのは気にしない。
勿論、足もすでに真っ黒焦げだ。
「う゛ぅぅぅぅ…いたい…あついよぉ…」
ぽろぽろと涙を流しながら泣くありす。
こいつ泣いてるよ! ありすのくせに生意気だね!
「さて、お待たせしました。次はれいむちゃんの番です」
「ゆ゛っ! や、やめてね! こっちにこないでね!」
れいむは逃げるがここは部屋の中。逃げ道なんて無いのよ。
オレはすぐにれいむを捕まえ、足でがっちりとホールドした。
「さて、友達を食べる悪い子は友達に食べられても文句言えないよね」
「? おにいさんなにいって――」
と、言葉の途中でオレはれいむの額あたりにナイフを突き刺した。
「いぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!! な゛に゛ずるの゛おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」
そのままゆっくりと円を描くようにナイフを滑らせる。
生きたまま頭を切り取られるのは相当痛いのだろう、れいむの口からは止まることなく悲鳴が溢れ出ている。
ナイフが再び額にまで帰って傷を繋ぐと、そこから上がれいむの体と分離した。
その断面からは黒々とした餡子が覗いている。
「では、いってみよう!」
ザクッとその餡子にスプーンを突っ込む。
れいむがまた悲鳴を上げ始めるが気にせず餡子をすくいあげた。
「でいぶの゛あ゛んこぉぉぉぉぉぉぉ!! かえ゛じでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「うん、嫌」
にこにこ笑顔で答え、ありすの方を向く。
「じゃあありす、口を開けてね」
その言葉でこれからオレが何をするのか理解したのだろう、ありすは口を固く真一文字に結んだ。
まだ逆らおうとするとは、見上げた根性だ。
だけどオレは言うことを聞かないゆっくりが大嫌いなのさ。
れいむを足で捕まえたまま、動けないありすの前で再びアルコールランプに火を灯す。
燃える炎を見てありすの顔が歪み、悲鳴を上げた。
「いや゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!! も゛う゛や゛べでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
何もしていないのに泣き叫ぶありす。火がトラウマになったようだ。
「おいありす、焼かれたくなかったらこれを食べろ」
そう言ってスプーンをありすの口元に持っていく。
中々しぶとかったが、火のついたランプを寄せていくとようやく食らいついた。
「あり゛ずやべでぇぇぇれでいぶのあ゛んごだべな゛いでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ごめんね……ごめんね…」
ありすが食べ終えると再びれいむの頭から餡子をかき出し、ありすに食べさせた。
「い゛だい゛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃも゛、も゛うやめ゛、どうじでごんな゛ごどするのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
「ごめんね…ごめんね……」
「おいありす、ゆっくりなんだからたべるときは笑顔で『むーしゃむーしゃしあわせー』だろ?」
泣きながられいむの餡子を食べるありすに言う。
火のせいか今回はすぐ言うことを聞いてくれた。
「む、むーしゃ、むーしゃ…しあわせー」
「そうだ、その調子で頑張れよ」
次々とれいむから餡子を取り出してはありすに食べさせる。
「う゛あ゛…いぎぃぃぃ……い゛だ…ひぐぅぅぅ」
「む、むーしゃむーしゃ、しあわせー」
流石に餡子が少なくなってきたせいかれいむの意識が朦朧とし始めた。
だが餡子を抉られる痛みのため気絶することができないでいるようだ。
何度も繰り返しているうちにとうとうれいむの餡子が残り5分の1ほどになってしまった。
これ以上餡子がなくなると本当に死んでしまう量である。
もう少しいけるかと思い、オレはスプーンで少量の餡子をすくい上げた。
すると。
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
と、れいむが今までで一番大きく悲鳴を上げ、動かなくなってしまった。
ちょっと分量間違えたみたい。オレのおばかさぁん、てへ☆
仕方ないので最後の餡子をありすに食べさせようとしたが反応がない。
「れいむ…ごめんなさい…ごめんなさい…」
自分のせいで殺してしまったと思っているのか、ただ泣きながら俯いてくり返しくり返し同じことを呟いている。
まあこいつはこのまま放っておいても問題ないだろう。
というわけでここでひとつ実験してみようと思う。
とりあえず実験に必要な物を取りに行くため、一旦部屋を出て台所に行く。
確かこの辺に…あったあった。
再び反省室へと戻り、転がっているれいむの死体を足で固定した。
そして頭の断面からほとんど中身の無くなった体へと持ってきた物――『白餡』を詰め込んだ。
内部が満たされ、丸みを取り戻していくれいむの体。
隙間なく完全に白餡を詰め込んだあと、切断されたれいむの額から上の部分を定位置に戻し、小麦粉で傷を塞ぐ。
さて、どうなるか。
結論、何分経っても何も起きなかった。
白目をむいたまま、れいむはピクリとも動き出す気配はない。
どうやら実験は失敗のようです。やっぱり生きてないと効果を確かめようがないか、残念。
無駄な時間を過ごしてしまった、と思うと何だか腹が立ってきた。
仕方ない、このやり場のない怒りはありすにぶつけよう。
何度目かわからないがまた道具箱からあるものを取り出す。
取り出したのはNOKOGIRI。工作とかに使うあれ。ギザギザハートのにくいやつ。
それを持ってありすに近づくと物凄い剣幕で罵倒してきた。
「ごの゛ぐぞじじぃぃぃぃぃ!!! あり゛ずだぢのぜいかつをがえぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
白い部分すべてが充血し、視線だけで殺せるんじゃないかと思わせる鋭い目。
普段のゆっくりからは考えられない目つきである。おお、こわいこわい。全然とかいは(笑)じゃないな。
じゃあその怖い目から殺ってあげよう。
「じね゛ぇぇぇぇ! くぞじじぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
なんとか跳ねようと体をじたばたさせるありす。
もちろん、足を丁寧に焼いてあるので跳ぶどころか這いずることも出来ない。
だから固定するのは楽である。
オレを睨みつけてくるありすの、文字通り目の前にノコギリをセットし、そして――。
ビュン!
と一気にノコギリを引いた。
直後、ありすの顔から勢いよくカスタードが噴き出した。
「おめ゛めがぁぁぁぁぁぁあ゛り゛ずのお゛め゛め゛がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
痛みにのたうちまわることもできず、叫ぶことした出来ない。
「み゛え゛な゛い゛ぃぃ! な゛に゛も゛み゛え゛な゛い゛わ! どうなっでるの゛ぉぉぉぉぉぉ!!」
いや、どうなってるも何も目を切ったらそりゃ何も見えないだろうよ。馬鹿なの? 死ぬの?
死ぬんだけどね。
ノコギリの刃をありすの頬にあてる。
「な゛に゛ぃぃ!? な゛に゛じでるの゛ぉぉぉぉぉぉぉ!?」
暗闇の中、頬に刺さる細かい感触にありすは恐怖する。
さらにそれが前後に動いたならなおさらだ。
ギコギコとノコギリを動かし、ありすの皮を切っていく。
「あ゛あ゛ぁぁぁぁ!! い゛だい゛よ゛ぉぉぉぉぉぉぉ!! ごめ゛んなざい゛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
少し皮が破れ、中身がとろりと滲み出るとノコギリをありすの体から外した。
ありすはえぐえぐと泣いているが刃の感触が無くなったせいか切られている時より落ち着いたようだ。
だがそんな暇は与えん。
今度はありすの頭の頂点に対して垂直に刃をセットする。
再び訪れた細かい感触にありすはビクッと震える。
そしてオレはまたノコギリを前後に動かした。
「い゛や゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!! も゛うやべでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! ごべんな゛ざいごべんな゛ざい゛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
先程と同じようにカスタードが滲み出てくるほどで止める。
その行為を何度も何度もありすの体のありとあらゆるところで繰り返した。
「い゛だい゛ぃぃぃぃぃ! も゛う゛ごろ゛じでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! う゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
…やってしまった。
俺の目の前にあるのはれいむの死体。
まりさは爆散し、ありすは結局細切れにして捨ててしまった。
俺は殺すつもりなんて全くなかったんだけどなぁ。無闇に命を奪うことなどそれこそ畜生にも劣る悪党だ。
とその時、視界の隅で何かが動いた気がした。
「ゆっくりしていってね!」
何と、死んだはずのれいむが起き上がり、動いている。
一体これは…どういうことだ?
「ゆー? ここはどこ? れいむはだれ?」
……? 記憶が無くなっているのだろうか。
俺も俺で何が何だかわからない。
こういう時は我が頭脳明晰な相棒に聞く方がいいだろう。
ドアを開け、二階に向かって叫んだ。
「おーーいぱちぇー! ちょっときてくれー!」
「むきゅー、今行くわー!」
数秒経ち、ポスポスと階段を下りてくる音が聞こえ始める。
それからすぐにぱちぇは反省室へとやって来た。
「むきゅ、悲鳴らしきものが聞こえたからもしやとは思ってたけど…、どうやら微笑んだのは悪魔だったみたいね」
部屋の中を見回して言うぱちぇ。いったい何のことだろう。
「で、一体どうしたの?」
「こいつについてなんだが…」
と、れいむを指さして言う。
蘇ったれいむは同じゆっくりであるぱちぇを見て目を輝かせた。
「ゆ! ぱちゅりーだ! ゆっくりしていってね!」
「ええ、ゆっくりしていってね。このれいむがどうかしたの?」
「実はな…」
俺はこの部屋で起きたことを覚えている限り話した。
特にれいむが死んだあと、白餡を詰めたが何も起きなく、今になって甦り、しかもどうやら記憶が一部無くなっているらしいということを。
「というわけなんだ」
「むきゅー、なるほど…これは興味深いわね」
俺とぱちぇにジロジロ見られてれいむは頭上に?マークを浮かべている。
「おにいさんもぱちゅりーもどうしたの?」
「れいむ、ちょっと質問だ。ここは誰のおうち?」
「ゆ? ここは…おにいさんのおうちなの?」
俺の言葉にれいむは少し考えてから言った。これは驚き、てっきり自分の家と言いだすかと思っていたが。
「そう、ここはお兄さんのお家だよ」
「ゆっ!? そうなの! かってにはいっちゃって、おにいさんごめんね! すぐでていくよ!」
何と、オレの家とちゃんと理解したどころか出ていくとまで言いだした。こいつ本当にゆっくりか?
とりあえず俺はれいむに出ていかなくていいよと言った。
「むきゅ、どうやら中身が白餡になったことで記憶が無くなって性格も変わっちゃったみたいね。
きれいなれいむ、とでも言いましょうか。
でも一度死んでいるのに…仮死状態だったのかしら」
「なるほどな」
ゆっくりにはまだまだ不思議がいっぱいのようだ。
次の日、れいむを森に帰してやることにした。
性格が変わり、素直ないい子になってるのでもう悪いこともしないだろう。
ゆっくり仮面のコスチュームに身を包み、さっそうと玄関を飛び出す。
肩にぱちぇを乗せ、片手で白餡れいむを抱え、俺は森へと走り始めた。
真の敵は己の魂。邪悪なる鬼意山に心を奪われてしまったゆっくり仮面。
だがいつまでも落ち込んではいられない。今日もどこかで罪無き者が泣いている!
今日は東に明日は西、助けを呼ぶ声聞こえたら、一目散に駆けつける!
それいけ! ぼくらのゆっくり仮面! まけるな! ぼくらのゆっくり仮面!
おしまい
あとがき
何だか思っていたより長くなってしまいました。
『お仕置き』を書こうと思っていたらいつのまにか『虐待』になっちゃったよ! おかしいね!
だが私は謝らない。
ちなみにこのお仕置き、いつもこんなことになるわけじゃないんです。7割ぐらいは更生させることに成功してるんです。
たまたま今回は鬼意山が出てきちゃったのです。
最終更新:2022年05月19日 15:16