※もはや虐待ではない何か






ここは没個性なれいむ種にテコ入れするための企画、新しいゆっくりれいむコンテストの会場。
無数のゆっくりれいむが何か優勝商品の“ゆっくりできるもの”目当てで集まっていいる。
審査員は3名、これといった特徴のない男性ばかりがずらりと並んでいた。

「エントリーナンバー1番のれいむさん、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに1と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり…ところで君はどういうれいむなんだい?」
「れいむはまもられいむだよ!」
「守られいむ?具体的にどういう所が新しいかな」
「とってもかわいいからみんながまもってくれるんだよ!おにーさんたちもれいむにめろめろになってね!」
そう言うとれいむはゆっへんと胸を張った。
「もともと守られっぱなしじゃねえか…失格」
「ゆゆっ!どうして?れいむかわい…ゆべっ!?」
何処からともなく現れた大男の玄翁による一撃でまもられいむは物言わぬ饅頭と化した。

「エントリーナンバー2番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに2と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「へえへえ、ゆっくりゆっくり…ところで君はどういうれいむなんだい?」
「れいむはしゃぶれいむ…「ガイシュツなので没!」
「ゆぐっ!?」
没!と男性が言い終える頃には大男の玄翁に新しい餡子がへばりついていた。
「エントリーナンバー3番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに3と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくり…「しゃくれいむか…」
入ってきたれいむは凄くあごがしゃくれていた。
「可愛くない、失格」
しゃくれいむは挨拶する暇さえ与えられずに飛び散った。

「エントリーナンバー4番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに4と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり…で、君はどういうれいむなんだい?」
「れいむはなぐられいむだよ!」
そう言って殴られいむゆっへんと胸を張る。
「具体的にどういうところが新しいのかな?」
「悪い人たちに殴られちゃう可哀想なれいむだよ!」
などとのたまっているれいむの表情はどこか自分の悲劇によっているように見え気持ち悪い。
「そうかそうか…だからそれじゃいつもと変わらねぇっつーの!失格!」
「ゆゆっ!かわいそうなれいむにゆっくりできるも…ゆびぃ!?」
玄翁男が涙ぐんでいる。きっと内心「俺の玄翁はこんなことをするためのものじゃない」とか思っているのだろう。

「エントリーナンバー5番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに5と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくり出来れば良いのですが、世の中そうも上手く行かないものですよ」
「はいはい、ゆっくりゆっ……あー、もしかして悟れいむ?」
審査員の言葉に対して、悟れいむは静かに首肯する。
「そうです。ゆっくり出来るものとは何なのかをこの目で確かめにきました」
「そうか…でも優勝者にしか見せられないから」
「私は個性的ですよ?それに他のゆっくりとも一線を画しています」
悟れいむはゆっくりながら妙な貫禄があるので審査員一同何故かたじろいでしまう。
「そ、そうだな…でも、虐待お兄さんはデリケートだからね…」
「大丈夫ですよ、適当に演技しますから。どほぢでごんなごどずるのおぉぉぉお…こんな感じで?」
「それなら普通のれいむで良いじゃねえか…お兄さん達の精神衛生のためにも失格!」
失格、と言われた瞬間に悟れいむは小さくため息を吐き、頭上から落ちてくる玄翁に身を委ねた。
「げだつっ!?」
そのあまりに堂々とした死に様に玄翁男は涙を流していた。

「エントリーナンバー6番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに6と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっく…あ、足?!」
審査員の目の前にやってきたれいむには何故か2本の足が生えていた。
しかし、胴体付きという訳ではない。ゆっくりの底面から細長い足だけが生えているのだ。
「れいむは走(はし)れいむだよ!」
「…腕まりさみたいなもんか…可愛くないから失格!」
即座に振り下ろされる玄翁は容易くかわされ、会場の床を激しく撃った。
「遅いね。そんなんじゃれいむは倒せないよ!」
続けざまに放たれた玄翁の一撃。が、これも余裕でかわす走れいむ。
「優勝商品が手に入らなかったのは残念だけど、楽しかったよ!」
それだけ言い残してさっさとどこかに走り去っていってしまった。

「…エントリーナンバー7番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに7と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり…で、君はどういうれいむなの?」
「れいむはごれいむだよ!」
「ごれいむ?具体的にどこら辺が新しいんだい?」
「ほわいとごれいむとぶらっくごれいむをよびだしてばしょをこうかんできるんだよ!」
訳の分からないことを口にしたごれいむはゆっへんと胸を張った。
「スペックが高すぎるだろ、常識的に考えて…失格!」
「ゆがーん!?」
即座に振り下ろされた玄翁によって潰されたれいむは白餡をぶちまけた。
「白、餡…?あ、あいつ…ほわいとごれいむで逃げやがったな!?」
立て続けにゆっくりを潰し損ねた玄翁男はがっくりと膝をついてうなだれていた。

「エントリーナンバー8番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに8と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっ……ほわいとごれいむ?」
「ちがうよ!れいむははくれいむさまだよ!まちがうなんてひどいよ、ぷんぷん!」
そう言いながら真っ白な髪のれいむはぷくぅ、と膨らんでみせる。
「……そうか、はくれいむか…既出だからアウト!」
「ゆっ!?こんなかわいいれいむがきしゅつなんておか…ゆぼぅ!?」
飛び散った中身もばっちり白餡だった。ほわいとごれいむとどうやって区別するんだよ…。

「エントリーナンバー⑨番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに⑨と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり…で、君はどういうれいむなんだい?」
「れいむはだじゃれいむだよ!」
「つまり駄洒落を言うんだな?」
「そうだよ、すごいでしょ?」
またしてもゆっへんと胸を張る。何でこうもワンパターンなのだろうか?
「じゃあ…なにか一つ駄洒落を言ってみてくれないか?」
「ゆっくりりかいしたよ!れいむね、きのううーぱっくにのったんだよ!そしたらほかにもちいさいれいむがのってたんだ!
 でね、そのこたちがうーぱっくのなかであばれまわるかられいむいってやったよ!“おそとでゆっくりあそんでね”って!」
「うーぱっくの外って…落ちるじゃねーか!?」
「そうだよ!おそとであそびなさいっていうおかーさんのきまりもんくをうーぱっくのなかでいったんだよ!」
「つまり、暴れるなら外でという常識を閉鎖性において家並みのうーぱっくに適用することで一見まともなようで実は死ねと言っているわけか」
「ゆっへん、すごいでしょ!」
またしてもれいむは胸を張る。が……
「普通に面白かったのが悔しいから失格!そもそも駄洒落じゃないし、⑨なんだから寒くないとダメだろう?」
よく分からない主張を聞かされて首を傾げていたれいむは、最期まで振り下ろされた玄翁に気づかなかった。

「エントリーナンバー10番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに10と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆ、ゆっくりしてあげてもいいのよッ!?」
「はいはい、ツンデれいむね。ありすで事足りるからいらん、失格!」
「ゆべんっ?!」
つんれでいむは瞬く間に玄翁の錆になってしまった。
まあ、しゃくれいむよりはましだったんじゃないだろうか?
「エントリーナンバー11番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに2と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へ転がってくる。
「んーっ!んんーっ!?」
「……多分、縛られいむかな?」
口には猿轡、目にはアイマスクを付けられ、ビニールテープで、それも雑誌を纏めるときの縛り方でがっちり拘束されている。
「デフォルトで縛られていても仕方ないだろ…失格!」
男が玄翁を振りかざす光景を目の当たりにした縛られれいむだったが、拘束されているので逃げることが出来なかった。

「エントリーナンバー12番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに12と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へ…やってこない。
「ゆっくりしていってね!」
が、何処からともなく声が聞こえてきた。
「どこだ!ついでにお前は誰だ!?」
「れいむはかくれいむだよ!どこにいるかわからないでしょ!?」
不思議なことに、何処にも姿が見当たらないのにこの会場の中かられいむの声が聞こえてくるし、気配も感じる。
「……隠れているのか姿が見えないのかどっちだ?!」
「ヒミツだよ!」
「………どっちにしても煩わしいから失格!」
「ゆがーん!」
数十秒後、書くれいむの気配が消えるのを確認した一同は淡々とコンテストを再開した。

「エントリーナンバー13番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに13と書かれたプレートをくっつけた何かが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「う…宇宙人のゆっくり?!」
一同の目の前に現れたのは異様に目の大きな、銀色のゆっくりらしき何かだった。
頭の上に申し訳程度にれいむ種のリボンを乗せているが、それでもれいむ種には見えない。
「ちがうよ!れいむはぐれいむだよ!」
「……そうか、グレイか」
審査員一同予想外すぎる自体に頭を抱え、ため息を吐いた。
「「「失格。気持ち悪いから潰さずに会場の外に弾きとばしてくれ…」」」
「ゆううううううううううううううん!?」
玄翁男はゴルフのショットの要領でグれいむを会場の外へと弾き出した。

「エントリーナンバー14番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに14と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり…で、君はどんなれいむなのかな?」
「れいむはおかされいむだよ!」
「犯されいむってことは、すっきりさせられるのか。いつも通りじゃないか、失格!」
「どほぢでぞんなごどいうの、ゆぎゅ!?」
即座にダメ出しされた犯されいむは涙ながらに抗議しようとするが、一瞬で叩き潰されてしまい、それもかなわなかった。
「エントリーナンバー15番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに15と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり…で、君はどんなれいむなのかな?」
「れいむはむれいむだよ!」
「むれいむむって?」
「いつもみんないっしょなんだよ!なかよしさんなんだよ!」
そう言いながら群れいむはゆっへんと胸を張った。
「だからそれもいつも通りじゃねーか…失格!」
「どほぢ、ゆぼっ!?」
今度は抗議しようとしていたのかさえ判別する暇もなく潰されてしまった。

「エントリーナンバー16番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに16と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり…で、君はどんなれいむなんだい?」
「れいむははぐれいむだよ!かわいいまりさとすっきりしたらむれからおいだされたんだよ!」
「なんだ、ゲスか…失格!」
「なにいってるの!れいむがしっかくのわけな…ゆびぃ!?」
会心の一撃!はぐれいむに293のダメージ!
玄翁男は10050の経験値を手に入れた。

「エントリーナンバー17番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭の大きなリボンに17と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり…で、君はどんなれいむなんだい?」
「れいむはとべれいむだよ!ぱたぱたー!」
自己紹介するや否や飛べれいむはリボンを羽ばたかせて飛翔した。
「おぉ~…!」
「ゆゆっ!おそらをとんでるみたーい!」
高度は10mを超えている。うーぱっくと被ってしまうが、これは中々の個性だと言えそうだ。
「よし、ごうか…」
「ゆっくりつかれたよ!」
羽、もといリボンを休めるべくれいむは羽ばたくのをやめた。10m以上もの上空で。
「ゆゆっ!?」
そして、地面へと叩きつけられて飛び散った。
「「「………次、行ってみようか」」」

「エントリーナンバー18番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに18と書かれたプレートをくっつけた馬鹿でかいれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり…で、君はどんなれいむなんだ?」
「れいむはまんどれいむだよ!ぎゃくたいされたときのひめいでゆっくりできないものをやっつけるんだよ!」
「そうかそうか…論外だな、失格!」
「ゆっふっふ…れいむにこうげきしたら…っ!?」
はぐれいむのおかげでレベルアップしていた男は悲鳴を上げる暇も与えない速度で玄翁を振りぬいた。
会場の床に餡子が今までとは比較にならないほど激しく飛び散った。

「エントリーナンバー19番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに19と書かれたプレートをくっつけた馬鹿でかいれいむが男性達の目の前へやってくる。
『ゆっくりしていってね!』
「り、リオれいむか…はじめて見たよ。でもガイシュツだから失格!」
その言葉を聞くなり、玄翁男はリオれいむに強烈な一撃を見舞う。
『ゆっくりまけないよ!』
が、5mはあろうかという巨体の前ではさしたるダメージにならなかった。
こうして、玄翁男とリオれいむの2時間に渡る死闘が幕を開けた。

「エントリーナンバー20番の方、入って来てください」
その言葉に従って頭のリボンに20と書かれたプレートをくっつけたれいむが男性達の目の前へやってくる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり…で、君はどういうれいむなんだい?」
「れいむはれいむだよ!ゆっくりしていってね!」
そう言って無邪気な笑みを浮かべるれいむ。
その笑顔を見た瞬間、審査員達は自らの過ちを理解した。
「私達は…間違っていたのかもしれませんな…」
テコ入れ?没個性?何を馬鹿な!
ただありのままにあるだけでこんなにも魅力的なのに…。
「れいむ…君が優勝だ…」
審査員達は感動にむせび泣きながら彼女を掴んで天高く掲げた。

「ゆぅ?ねえ、おにーさん…れいむはどうしたらいいの?」
そんな異様な光景を見守る二つの影。
一つはリオれいむに玄翁一本で勝利を収めた男で、もう一つは21番のゆっくりだった。
「さぁ…?ところで、お前は何れいむなんだ」
「れいむはおわれいむだよ!どんなえすえすでもおわらせちゃうんだよ!」
「そうか…なら、ちゃっちゃと締めてくれ」
「ゆっくりりかいしたよ!」
元気良く返事したおわれいむは思いっきり空気を吸い、元気良く叫んだ。

「おわれ!」

‐‐‐あとがき‐‐‐
やっぱり普通が一番だよ

byゆっくりボールマン

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最終更新:2022年05月21日 22:05