※虐待お兄さんがえらい事になります
ゆっくり。それは人間の生首を下膨れにデフォルメした動く饅頭。
彼女らは何故か野原や森に生息し、ある日突然沸いて出たにも関わらず今や世界の一部として当然のように生きている。
他の生物と同様に食事をし、眠り、生殖をする未だに謎めいた存在。
「やあ、僕は虐待お兄さん！」
そして、彼はそんなゆっくりを虐待することに快感を覚える虐待お兄さんである。
固有の名前があるはずなのだが、アンダーグランドな趣味ゆえ大抵は本名を伏せている。
彼は今日もゆっくりを虐待するために野山を駆け回って巣を見つけると、日が暮れる頃に中へ入っていった。
「ゆゆっ！おにーさん、ここはれいむのおうちだよ！」
巣の中でゆっくりしていたのはゆっくりの中でももっともオーソドックスな種であるゆっくりれいむ。
これといった特徴が無いのが特徴で、強いて言うなら人懐っこい、母性が強い、歌が好き辺りが特徴だろうか。
しかし、いくら人懐っこいといっても彼女は野生動物。見知らぬ人間がいきなり巣にやってくれば警戒する。
「おにーさんはゆっくりでていってね！ぷくぅぅぅぅうう！」
れいむは思いっきり空気を吸って頬を膨らませて虐待お兄さんを威嚇する。
これによってバスケットボールサイズ程度の大きさのれいむの直径が1.5倍くらいには膨らんだ。
もっとも、人間相手にはこの程度の威嚇は何の効果もなさないのだが。
「そんなことは良いんだ！れいむ、君を虐待させてね！」
「いやだよ！ぎゃくたいさんはゆっくりできないよ！」
「どうしてもダメかな？」
「あたりまえでしょ！れいむおこるよ、ぷんぷん！」
れいむはプンスカという効果音が似合いそうな表情で怒りをあらわにしている。
が、わざわざ巣を探してまわった虐待お兄さんがこの程度で引き下がるはずが無い。
「そうか、虐待させてくれないと･･･」
「ゆゆっ！？」
虐待お兄さんがそう呟くと突然彼の体が真っ二つに別れ、どさりと地面に倒れる。
そのまま微動だにしない虐待お兄さん。一見すると死んでいるようにも見えるが･･･。
「ゆう･･･ゆっくりー」
しかし、流石のれいむでも「人間は突然半分に割れたりしない」ことくらいは承知している。
だから彼の奇行を前にしてどう対処して良いのかも分からず、巣の中を右往左往していた。
そんなれいむの困惑を他所に、虐待お兄さんはまるで何事も無かったかのように起き上がった。
何処にも異常なところは無く、先ほど真っ二つに割れたのは幻覚ではないかと思えてくる。
何処をどう見ても先ほどとなんら変わりない姿。ただひとつ･･･
「「増えちゃうぞ！」」
「どほぢでふえでるのおおおおおおお！？」
「「れいむ、虐待させてくれよ」」
「いやだっていってるでしょおおおお！」
「「虐待させてくれないと･･･」」
増殖している点を除いては。
2人になった虐待お兄さんは先ほどと同じ言葉を口にするとどちらも2つに、計4つに分かれ倒れる。
「「「「増えちゃうぞ！」」」」
「だがらどほぢでふえぢゃうのおおおおおお！？」
「「「「れいむ、虐待させてくれよ」」」」
「なんどおでがいざれでももいやだっていっでるでしょ！？」
「「「「虐待させてくれないと･･･」」」」
またしても真っ二つになって倒れる虐待お兄さん。
それから当然のように起き上がって･･･
「「「「「「「「増えちゃうぞ！」」」」」」」」
「ゆっぐぢやべでね！ふえちゃうぞはゆっぐぢでぎないよ！？」
「「「「「「「「だったら虐待させてね」」」」」」」」
「ゆ、ゆぅ･･･ちょ、ちょっとだけだよ！？」
「「「「「「「「分かったよ。1発殴らせてくれるだけで良い」」」」」」」」
「ゆ、ゆっくりりかいしたよ･･･ほんとうにいっかいだけだよ！」
「「「「「「「「大丈夫！僕は虐待するのに相手の同意を求めるフェアな虐待お兄さんだから信じていいよ！」」」」」」」」
これから訪れるであろう痛みを想像し、きつく目を瞑ったれいむめがけて8つの拳が殺到した。
「ゆ゛っ･･･どほぢで、たくざんだだぐのぉ！？」
「「「「「「「「たくさん殴ってないよ！約束どおり1発だよ！ひとり1発ずつ！」」」」」」」」
「ゆ゛ぐっ、ぞんなぁ･･･」
「「「「「「「「ところでれいむ。もう一回殴らせてくれないかな？殴らせてくれないと･･･」」」」」」」」
全く同じ姿形の8人の虐待お兄さんは真っ二つになって地面に崩れ落ちた。
「やべでよおおおおおお！ごでぢゃゆっぐぢでぎないよおおおおお！？」
「「「「「「「「「「「「「「「「増えちゃうぞ！」」」」」」」」」」」」」」」」
れいむの悲痛な叫びなどまるで聞こえていないかのような涼しげな笑みを浮かべて16人の虐待お兄さんが起き上がった。
－－－あとがき－－－
おうち宣言を人間がやるのは見かけますが「増えちゃうぞ」は無かった気がしたのでやってみた
最終更新：2022年05月21日 22:07
