編集注:このSSは ゆっくりいじめ系2984 合わせ鏡の奥 1 の続きになります
  • それなり俺設定注意










従来の道具だと赤ゆを貫き、削り殺す可能性があった。
そこで飼い主は改良した機材を用意。
これには親ありすも感動。涙を流しお礼を伝える。

職人の顔付きで、慎重に道具を口に咥える。
先が鋭利に尖る物体。
それで何をするかなんて、聞かなくて理解した。

赤ありすは逃げた。全速力だ。
追って来ない。そこに安心して振り向いたのがいけなかった。
激痛は受けなかった。でも衝撃は受けた。
妹の目玉が穿られている現場を目撃したからだ。


「ゆんやぁぁぁぁぁっ!? いじゃいよぉおぉぉぉっ゛! 」
「ありすが とかいはなこ〜でぃね〜とをしてあげるわっ! 」

慎重に串を動かす。
先が細くなっている為、神経を使うのだ。
深く入れすぎると突き抜ける。
浅く入れすぎると、引っ掛かりが弱くなる。
幸い赤ゆはプルプル震えながら硬直している。
大きく動けない程の激痛で、金縛り状態なのだろう。
生まれて数分でこの苦痛を受けたのだから無理は無い。

目玉を抜き取った。
しかし、赤まりさの口から餡子が吐かれた。
白目で気を失っていた。グッタリと体がしな垂れる。
失敗してしまったのか? もう駄目なのかっ!
諦めかけたその時。飼い主の手が赤ゆに掛かる。

餡子を元に戻す際に、タブレットも押し込む。
そして、飼い主はありすを熱い瞳で見つめる。
親ありすはその眼差しを見て、大丈夫だと伝えられた気がした。
次の道具を口にして赤ゆに突撃する。

「ゆびぇあっ゛!? いじゃい! いじゃいっ! いじゃいぃいぃっ゛!!! 」

ザリザリと削られる。
体中どころか頭頂部まで。

処理の速さを重視して、散髪の工程を同時に行う事を編み出した。
タブレットの力なのだろうか? 薄皮が張ってやり易い。
これなら散髪にも直ぐに取り掛かれそうだ。

赤まりさはコロコロ転がりながら激痛を味わう。
たまに視界に入る鏡の赤まりさ。
右目が無く、体中キズ跡だらけ。髪もボサボサだ。
どこかで見たことが有る姿だ。でも、まりちゃはお帽子がある。
素敵なお帽子が。

素敵なお帽子は、飼い主の指の先で回されていた。
タブレットを口に詰め込んだ後、掠め取ったらしい。
暫らく楽しげに状況を見つめると、親ありすが上を向き、目で合図を送って来た。
それに答えるように、指で回していた帽子を放つ。
ひらひらとケースの中に舞い落ちる。
親ありすは次なる道具を咥えた。


「おぼうち…。かえちちぇね……。」

懸命に舌を伸ばす。だが、届かない。
目の前にある大切なお帽子。
蛍光灯の光を反射しながら、銀色の刃物が突き出てきた。

「ゆっ? …ゆっ!? ゆあぁぁぁぁぁぁぁぁっ゛!!
 やめちぇねっ! まりちゃのすちぇきな おぼうちぎゃぁあぁぁぁぁっ゛!!? 」
「ゆ〜ん。おかあさんと おそろいになったねっ! とってもとかいはだわっ!おちびちゃんっ! 」

都会派になった帽子に、とても満足そうな親ありす。
親まりさは遠くで、「よかったね。おちびちゃん! 」と、感嘆の言葉を漏らす。
当の本人の赤まりさは、絶望で押し潰されていた。目の焦点が定まらない。

「さぁ つぎは あなたよ。」

妹をグチャグチャにして、とてもゆっくりした顔の親達。
虚空を見つめて、動かなくなった妹。辺りに散らばる妹の体の一部と、失禁の後。
床に転がる妹の潰れかけた目玉。それを眼にした時、恐怖で泣き叫んでいた。

「ゆん だいじょうぶだよ おちびちゃん。」

声が枯れる位の音量で叫ぶ。涙が枯渇する量を垂れ流しながら泣いた。
自分はそんな事望んでいない。
そんな事されたらゆっくり出来ない。
でも、親ありすは止まらない。ズルズルと少しずつ接近して来た。
そして、背中に冷たい固い感触がして動きが止まる。
ケースの端に追い詰められた。横に逃げればまだ助かる。
頭ではそう考えてる。だけど、足は後退を繰り返す。それ以上後ろに下がれるスペースは無いのに。
赤ありすは錯乱状態に陥っていた。

「とかいはな こ〜でぃねいとを してあげるわっ!!! 」

嬉しそうな親の顔。
赤ありすは更に悲鳴を大きく上げる。それでも救いは何処からも訪れない。
硬い物が右目に入った感触がして最初の激痛が脳天に響く。
そこから地獄の始まり。体中をボロボロにされた。
それでも死ななかった。いや、死ねなかった。
このまま生きていても、ゆっくりなんて出来ない。だから、死にたかった。
でも、目の前に居るのは生きている自分。
目も,髪も,肌も,飾りもボロボロの化け物。
鏡に写る現在の自分自身を見つめながら、赤ありすは静かに涙する。





赤ありすは心を砕かれていない。
同じケースに存在する親と妹を憎悪で睨み続ける。

美味しいご飯を幸せに食べながら微笑んでる親。
みすぼらしい格好で親まりさに擦り寄る妹。
妹はコーディネートされた後、ずっと泣き続けた暮らしをしていた。
恐怖で親達に近づけず。ケースの端に蹲る日々。
でも、親達は凄く優しくしてくれた。
こんなにゆっくり出来ない姿なのに。可愛いと言ってくれる。
親も、大きな人間さんも。妹はそこで陥落した。

しかし、赤ありすは違う。
どんなに優しくされて褒められても認めなかった。
その捻じ曲がった感覚を。
必ず取り返してやる。あの美しい姿を。
人間さんにお願いしても可愛いと言うだけで、何もしてくれない。
違う方法を考えなければならない。クズは用済みだ。
赤ありすは鏡に背を向けた生活を送る。
醜い自分自身を見るのは嫌だった。とても耐えられない。


飼い主は、そんな赤ありすの生活が気に食わなかった。
この家族の一部にならないなら、新しい環境を用意してあげよう。
そうしないと、面白くない。





「とってもとかいはねっ! 」
「ゆ〜ん! とってもゆっくりできるよ〜っ! 」
「きゃわいくてごみぇんねっ! 」

贈り物をされた親達は歓喜の声で賞賛する。
ゆんゆん言いながら、思うがままポーズをとって微笑む。
親まりさは多少動けるようになった足で、鏡に擦り寄っていく。

「こんにゃの ちょかいはじゃにゃいわぁあぁぁぁぁっ!? 」

赤ありすだけ抗議を口にする。
背を向けて暮らしていた憎い鏡。
今は、どの方角を見ても自分が写る。
それどころか、鏡の更に奥。その更に奥まで。
何処までも自分が存在し、視線を返してくる。
その数は無数に存在していた。

「ゆぐっ…!? えれえれっ゛…。」

耐え切れず吐き出す。
床にカスタードが広がる。
鏡の向こう側でも一斉に吐き出す自分の姿が。
それを見た親達が急いで駆け寄ってくる。
死なせて。くれないのか。
涙を流しながら看護を受ける赤ありす。
そして、自殺が容易に出来ない環境となった。

最初は1面だけが鏡だった。背を向ければ当然鏡を見ることは無い。
綺麗だの可愛いと言って少しでも鏡に向かいさせ洗脳する。
そうすれば思い込みの激しいゆっくり達は、今の自分の姿は美しいと錯覚する。
そういう計画だった。でも、赤ありすだけ自我が強くて洗脳されない。

そこで飼い主は強行策を遂行する。
4面鏡張りにしたのだ。何処を向いても自分の姿を認識出来るように。
合わせ鏡効果でゆっくり達の姿が無数に映し出される。
親と妹はうっとりと、美しいと思ってる自分の姿を眺めて堪能する。
だけど赤ありすは、四方八方に映し出される醜い姿を見る現状は、耐えがたい苦痛。

もう、片目もいらない。
何も見たく無い。
もう片方を抉り出した機材は、人間が回収してこの場所には無い。
鏡に突進して潰そうとしても、足が思うように動かないから勢いが付かなくて、
軽く鏡に触れるだけ。片目の化け物を見ながら涙を流す。
目の前の化け物も悲しみの涙を垂れ流す。

もう。
あきらめた。
でも。
じぶんは。
うつくしくない。

妹は美しいと洗脳されて親達の輪に入った。
でも赤ありすは断固として認めず。
心を完全に閉ざして遠くを見つめながら、ケースの隅で生き続ける。

それを見ていた飼い主は、まぁいいか。の顔をして去っていく。
親達は、素敵なコーディネートされたお部屋に、誰もがご満悦の表情。

『『 ゆっくりしていってねっ!!! 』』

無数に写る美しい自分達に挨拶をして、またポーズを取り始める。





「ゆっふっふっ! あまあまちょうだいねっ!!! 」

サクッと野良を生け捕りにした飼い主。
肌は汚く、髪もボサボサ。飾りも薄汚れている。
典型的な野良の風貌。野生は水浴びなどで、清潔に保つ術が重要となる。
そうしないと、あっという間に腐さるか病気になってしまう。
だが、野良達の大半は汚いゴミ溜めに体ごと突っ込んで餌を狩る。
その腐った匂いがする姿を互いに舐めて綺麗にする。には抵抗がある。
洗浄して貰うなら良いけど、舐めるのはゴメンだよっ!
そして、また更に汚なくなって、どうしようもない状態になると言う悪循環。

そんな典型的な野良れいむ。
流石に汚くて持つのも嫌だったので、ビニール袋に入れてある。
それはゆっくり出来ないよっ。などと主張していたが、
クッキー数枚を袋に放り込んだら、自ら飛び込んできた。
むーし! むーしゃ! しながら次を要求するれいむ。
更にお菓子を追加する。チョコに飴玉。そしてキャラメル。
意地汚く食べて、また更に要求。本当に際限が無い。
今はもう手持ちが無い。そう言うと嫌らしい顔で渋々納得をする。
放り投げたい気持ちが湧き上がるが。ここは我慢だ。


家に到着。
れいむは早速、「ここからだしてねっ! 」と、騒ぎ出す。
そのままケースに向かう飼い主。

「れいむはつよいんだよっ! さからうと いたいめみるよっ!? 」

騒ぎながら、ガサガサと揺れるれいむ。
無力すぎるその哀れなゆっくりを、あるケースの真上に持ち上げる。
今まで上を見ながら抗議していたれいむは、透明な袋から下に移動した飼い主を見下ろす。
そこには飼い主と。仲間達の姿があった。
それも沢山。これだけ大量に居るなら、力を合わせて人間にも勝てる。
強いれいむがリーダーになれば楽勝だ! あのお菓子が食べ放題だよ!
視界の悪い袋から声を掛ける。「きょうりょくしてねっ! 」
だが反応は悪かった。見上げている様だが、誰も返答しない。

「ゆ〜っ? ゆゆっ! 」

れいむは焦る。
仲間に思いが伝わらない。
ゆっくり目を凝らしても、濁った視界しかなくて状況が掴めない。
もどかしく身を捻らしているその時、目の前のビニールが破ける。
横一線の穴が開いて、視界がクリアになった。人間が開けたらしい。
なかなか気の利く人間だよっ! しょうがないから半殺しで許してあげるよっ!
判決を心の中で言い渡して、ゆっくり達に視線を向ける。
共闘して欲しい。
その言葉を伝えることなく、れいむの口から悲鳴が上がる。

「なっ…? なんなのぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ゛!? 」

目を見開き、歯茎を剥き出して叫ぶ。
無数に居るゆっくり達。その全てがゆっくりしていない。
1つの群れに相当する数の化け物。
見ているだけで全身に震えが走る。

「ゆっ! ゆっくりできないゆっくりはっ! しんでねっ!!! 」

れいむは一喝して、ゆっくり出来ない集団を拒絶する。

「おめめがないゆっくりは ゆっくりできないよっ!
 おにいさん! こんなゆっくりできないところはごめんだよっ! 」

半殺しする予定の人間に命令して。この場を急いで離れようとする。
だけど、ブラブラと空を漂っているだけでそこから移動しない。

飼い主はれいむに伝える。
このゆっくり達は美しいだろう? と。
れいむは答える。
頭おかしいの? 馬鹿なの? 死ぬの? と。

訝しげな顔で反論したれいむは、ビリビリ破けた袋の大穴から、
化け物の群れに落ちていく。





「いたいよっ! ここからだしてねっ! 」

とてもゆっくり出来ない異空間に飛び込んだれいむ。
周りは片目がギラギラ光るゆっくりばかり。それもありえない位の数。
先ほど見下ろしてた時は、そんなに広くない感じだったのに!
それが覆される。凄まじい奥行き。何処まで続いているのか解らない。
遠くにも小さな化け物が居る。
れいむは青ざめて飼い主に助けを求める。

「もうやだぁあぁぁぁっ! おうちかえるぅうぅぅぅっ!? 」

泣きながらケース内を跳ねて逃惑うれいむ。
そこで救いが目に映る。まともな同属。
ゆっくりれいむの姿だ。

「ゆっ!? だずげでねっ! ごごがらだじでねっ゛!? 」

涙声でみっともなく懇願する。
あちらも汚い顔で向かって来た。おあいこだと思い、涙を止める事はしなかった。
ピットリとくっ付くれいむ達。
スルスリと頬擦りしながら、ゆっくりと希望の芽を育ませる。これなら助かると。
だけど、早すぎる安堵は更なる深い絶望に繋がるだけ。
れいむは何も解っていなかった。


硬い感触。ベトベトのホッペ。
ゆっくりと暫らく考えて理解した。
それは美しい自分自身だと。
水溜りやガラスに映った姿を見た事はあった。
でも、ここまで綺麗に写った自分をゆっくり視界に入れたのは初めてだ。
美貌に頬が赤くなり、溜息が漏れる。可愛くてゴメンねっ!

その背後にありす。の、様な物が近づく。
れいむは急いで振り返る。その途端吐き出しそうになる。
その醜悪さに嫌悪を抱いた。だが堪える。
あまあまを口にしたばっかりなのだ。勿体無い。

「それいじょう ちかずいてこないでねっ! 」
「れいむはつよいんだよっ!
 ゆっくりできないからだになるよっ! いいのっ!? 」

ありすは微笑んだままだ。
ゆっくりしていってねっ! 声を上げるがれいむは答えない。
訝しげな顔のままだ。ありすは首を傾げる。
その後のれいむの言葉が、

「ありすたちみたいなゆっくりとは ゆっくりできないよっ!
 れいむみたいなかわいいゆっくりなら かんがえてもいいよっ!
 かわいくてごめんねっ!? ゆっくりできないありすたちっ! 」

ありすの美的感覚に触れた。
暗い瞳で静かにれいむを見つめる。
だが、まだ静かに佇む。

ゲラゲラ笑うれいむ。
すると、お腹が空いたのか、笑いを止めて餌皿に向かう。
その餌はとても良い匂いがした。先ほど口にしたお菓子と同じ芳醇な甘い香り。
れいむは、大口を空けて食べ物に被りつく。
美味を堪能しようと租借していたその時、
濃厚な懐かしいゴミの味が、れいむの口一杯に艶やかに広がる。
凄く。苦くて臭い!

「お゛うぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ゛!!? 」

盛大に吐き出す。
嗅覚と味覚のギャップが酷すぎる。
欲を出して頬張りすぎたのが災いした。
れいむはジタバタと転がり続ける。

飼い主を見上げ抗議する。
あまあまを寄越せと。約束が違うと。
でも、飼い主は答える。
それ以外食べさせる気は無いと。

「ごんなぼどだべられるわげないでじょぉおぉぉぉっ゛!? 」

ゴミ臭い口で文句を主張するれいむ。
唾と涙で体が汚れていく。

美味しそうな甘い香りがする原因。
それは、バニラエッセンスを振りかけていた為。
匂いを誤魔化し、警戒無くゴミを口に運ばせる。
以前なら、これでもご馳走だとれいむは感じていたハズだ。
だけど、散々甘いお菓子を口にしたから、舌が肥えてしまった。
飼い主の思惑に見事に嵌ったれいむ。食事は苦痛しか生まなくなった。

「ゆ〜ん? とかいはなおしょくじは きにいらないのかしら? 」
「なにをいっでるのぉおぉっ゛!? あだまおがじいのっ!? 」

「こっちをたべてもいいんだぜっ! とっておきなんだよっ! 」
「ゆがぁあぁぁぁぁっ゛!? ぞれもごみでじょぉおぉぉっ゛!? 」

「きょれはおいちいよっ! おねぇちゃんにあげりゅよっ! 」
「ばなじがげるなぁあぁぁぁっ゛!? ごみぐずぅうぅぅぅっ゛! 」

れいむはキレた。

「おばえらみだいなごみくずとは ゆっぐりでぎないっ!
 ぞれいじょうじがづくなぁあぁぁぁぁっ゛!?
 ばげものどもがぁあぁぁぁぁぁっ゛!!! 」

ありす達の表情が。硬直した。
言い切ったれいむは満足そうにして、再度飼い主にあまあまを要求している。
そして、飼い主は何かを持ってきた。
愚図は嫌いだよっ! でもゆっくり許してあげるよっ!
れいむはお菓子を口一杯に頬張って、ゴミの記憶を消したかった。
でも、置かれたのはよく解らない機材。

「ゆっ? いじわるしないでもってきてねっ! 」

ありすは長い物を口に咥える。

「れいぶはおながずいだんでずぅうぅぅっ゛! 」

ありすは床を張ってれいむに近づく。
親まりさと赤まりさも一緒だ。

「あやばりばずがらっ! あばあばをぐだざいっ! 」

異常に気づいたれいむは、辺りを見渡す。
囲まれていた。化け物共に。

「ぢがづくなっでいっだでじょぉおぉぉっ!? ばけもの…。」
「れいむ。」

硬いものが目に刺さる。
唐突に起こった悲劇に、餡子脳の理解がついていかない。

「ゆっ? 」
「いまからありすたちが。」

頬にザラザラした感触がする。
後頭部にも違和感を感じた。

「ゆあっ!? 」
「とかいはな こ〜でぃねいとをしてあげるわっ! 」

目玉が捻り取られる。
そこで、やっと激痛に身を震わし。絶叫する。

「ゆ゛んぎゃぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ゛!? 」


れいむは身を捩って逃げようと試みる。
だが、それは無駄な抵抗に過ぎない。
一回り大きな相手が2体も居るのだ。まさに手も足も出ない。
体全体が削られていく。痛みが全身を駆け巡る。
涙を流しながら苦痛に耐えている眼前に。プリプリ動く傷跡が残る肌が見えた。
それは、紙ヤスリで一生懸命全身を磨いている親まりさの頬。
れいむは思う。手も足も出ない。でも、口は出せる。

思いっきり噛み付いた。


「ゆぎっ!? 」

親まりさが跳ねる。
親ありすは驚愕に打ち震えた。
なんということだろう。
まりさっ! まりさっ! まりさぁあっ!

「ゆっ…。いだいごとするまりざは じねぇえぇっ……! 」

れいむは悪態を吐く。
多少驚いた親ありすを見て溜飲が下がる。
しかし、その後の言葉は理解できない物となった。


「すてきよぉおぉぉぉっ゛! まりさぁあぁぁぁぁっ!!! 」


自分は頭がおかしくなったのだろうか?
意味不明な親ありすの叫びを耳にした。
赤まりさも「ぴゃぴゃきゃっこいいっ! 」などとほざいている。
親まりさはそんな家族の声に答える様に微笑む。涙を堪えて。

「とっても とかいはなあれんじだわっ! ゆっくりできるよっ! 」

ギラリとれいむを見る。
れいむはその眼差しに、言いようの無い恐怖を感じて、

「ゆっくり あたらしいちょうせんをするよっ!!! 」
「やめてぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ゛!!! 」

涙を流しながら失禁した。


「はがないほうが ゆっくりできるねっ! 」
「もみあげさんも はんぶんいらないねっ! 」
「したさんも すこしけずったほうがいいねっ! 」
「ゆっきゅりあししゃんに はぎゃたをつきぇるよっ! 」
「おちびちゃん! とってもとかいはだわぁあぁぁぁっ! 」
「あかあさんも とってもはながたかいんだぜっ! 」

前歯が抜かれ、もみあげが切られ。舌を削られる。
色々なアレンジを加えられて、視界に居る化け物達以上の、物の怪になっていく自分。
その姿を鏡は映し出す。嫌でも視界に入る。
れいむは、無数に点在する美しい住人の一員となった。




それからのれいむは、生きる屍。何をしても反応が無い。
ありす達が世話をして恩義を感じる事も、
赤まりさがスリスリしながら甘えた声を出すが、それに返す言葉も無い。
ちょっと美味しくなった餌にも、飼い主が褒める言葉にも無関心。
ただそこに居るだけ。

ありすが、「とかいはなあかちゃんつくろねっ! 」と発言しても我関せず。
あっという間に子を宿した。その事が転機を招く。


「ゆっふっ! ゆっふっ! 」
「がんばってれいむ! 」
「がんばるんだぜっ! 」

新たな痛みがれいむを襲う。
出産の激痛。ミリミリと赤ゆが顔を出す。
そのゆっくりした顔を見ながら、れいむは生気が湧いてくるのを感じた。
かわいい赤ちゃんと過ごす日々は、とってもゆっくり出来るに違いない!
そう思うと、この痛みは幸せな物に変わっていく。

スポーンと飛び出す。
用意されているタオルで親ありす達は受け止める。
2体の可愛いれいむが誕生した。
親達は感嘆の声を上げて、家族となる赤ゆを祝福する。
れいむは輝く笑顔を浮かべ。
ありすは可愛いわが子を見て。
まりさは素晴らしいこの日を称えて。

『『『 ゆっくりしていってねっ!!! 』』』

赤ゆが挨拶する前に、フライングで声を掛けた。
その後、帰ってきた言葉が、

「ゆんやぁあぁぁぁぁぁっ!? みゃみゃはどきょぉおぉぉっ゛! 」
「ゆっきゅりできにゃいぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ゛! 」

無数の化け物を目にした赤ゆの正直な観想。
泣き叫び、転がるように逃げる赤ちゃん達。
適当に逃げて、急に「おにゃきゃすいたよっ! 」と目の前の餌を食べる。
お腹一杯になり、辺りを見て思い出したように再度泣き喚く。
なんて世話しない状況なのだろうか? ゆっくりできない。
食後位はゆっくりさせてっ!


れいむは、混乱している可愛い我が子に声を掛ける。

「ゆ〜ん。おちびちゃん! おかあさんのそばにゆっくりきてねっ。」
「おまえなんておかぁしゃんじゃないよっ! ばきぇものっ! 」
「ちきゃずきゃないじぇねっ! りぇいむゅおきょるよっ! 」

幸せの絶頂からどん底へ。
手痛い口撃を食らい、れいむは目の前がぐらつく。

「どぼじでぞんなごどいうのぉおぉぉぉぉっ゛!? 」
「そんにゃんじゃゆっくちできにゃいよっ! りきゃいちぇねっ! 」
「ぷきゅーっ!!! 」

れいむは燃えカスとなった。
腹を痛めて生んだ可愛い赤ちゃん。
生まれて直ぐ親を拒絶したのだ。生きる希望なんぞ無い。
完全に砕け散る。

「ゆっ! きゃわいいゆっくちがいりゅよっ! 」
「ゆゆっ! ほんちょだっ! おちょもだちになっちぇねっ! 」

跳ねて鏡に向かう赤ちゃん達。
目の前に写る自分自身にフリフリと体を動かして、必死にアピールする。

「ばきぇものだりゃけで きょきょはゆっくちできにゃいよ! じぇもりぇいむはきゃわいいねっ! 」
「りぇいむはきゃわいでしょっ! おちょもだちになっちぇねっ! ばきぇもにょはしんじぇねっ! 」
『『 きゃわいくちぇごめんねっ!!! 』』

向こうのれいむも喜んでいる。
これはお友達になってくれると言うことだ。
赤ゆっくり達はそう判断して鏡に近づく。そして、不思議そうな顔で困惑している。
それを遠くから見る親れいむ。涙を流しながら呆けていた。
そこに、ありすとまりさが、何かを口に加えてれいむに囁く。

「とかいはな こ〜でぃねいとをしないとねっ! 」

その言葉に目を見開く。
恐怖が蘇る。世話しなく辺りを見渡した時、れいむは気付いた。
無数にいるゆっくり達の中、あの赤ちゃんだけが違う。
両目,髪,肌,飾り。全てが揃う赤ちゃんは異質に写る。
れいむは虚ろな目でありす達に答る。コーディネートをしてくれと。
そして、赤ゆの声がケースに響き渡った。その声を聞いて満足そうに頷く。

これでれいむと赤ちゃんは、いっしょにゆっくりできるよ。





赤れいむの悲鳴で揺れるケースの中。
子ゆっくりに成長したありすは、今日も隅で蹲る。
子まりさは親ありす達と一緒にコーディネイトを手伝っている。今は自分ひとり。
その地獄絵図を、空虚な瞳で見つめる。
どうでもよかった。どうなっても自分には興味が無い。
美しいとも思わない。醜いとも思わない。子ありすは、全てがどうでもよくなっていた。
目を閉じて昼寝をする。目が覚めた頃には同じ姿のゆっくりが2体増えているハズ。
アレンジ次第では、どうなるかは分からないが。

どちらにせよ、ゆっくり出来る外見とは程遠い姿になる。
順応するか?それとも発狂するのか?それは数日でハッキリする。
もしかしたら、自分の隣で蹲るゆっくりが増えるかもしれない。
でも、それもどうでも良い。
子ありすは鏡に身を寄せて、幸せな夢の世界へと落ちていく。





鏡に無数に映し出されるコーディネートの現風景。
苦痛に歪む顔の赤ゆっくりを、にこやかに切り刻む親ゆっくり。
傍から見ていると、群れがその行為をしているのか? と錯覚を起こす。
酷く凄惨な情景。それが鏡の奥の奥まで、無限に続く。

それを見て飼い主は呟く。
美しいと。
ここには定められた美が確立した。
どんなゆっくりも、その定義に抗う事は出来ない。
小さな箱庭の世界に、美ゆっくりの新しい基準が誕生した。

次は何を入れようか?

世界の拡張を求めて、新規参入者を算段する飼い主。
その顔は、満面の笑みを浮かべていた。


「ゆっ! とかいはになったわっ! 」
「いじゃいよぉおぉぉっ゛!? 」
「どぼぢでぎょんなごじょずるにょおぉっ゛!? 」

ボロボロになった赤れいむ達は涙を流す。
鏡に写る酷い姿を見て、更に涙が溢れ出る。
これが自分? あの可愛いれいむは何処に行った?
嫌だ! こんな化け物れいむなんかじゃないよっ!

「ゆっくりあれんじをするよっ!」
『『 もうやべぢぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ゛!!? 』』

迫り来る3体の影。
足が動かなくて逃げる事も儘なら無い赤ゆ達は、
アレンジを体で受け入れた。一際高く悲鳴が上がる。
それを聞きながら親れいむはゆっくりと言葉を漏らす。

「ゆ〜ん。たのしみだよ〜。
 おちびちゃんたち ゆっくりきれいになってねっ。」

れいむはウキウキと待ち続ける。
美ゆっくりにコーディネイトされた赤ちゃん達を。





 終



「れいむとまほうのいた」「朝ゆっくり」
「金バッチ品質保障証」
「まりさは優秀な劇団員」
「ぬし」
「スィーらいせんす」
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最終更新:2022年05月21日 22:40