ゆ っ く り 昔 話 桃 太 郎
むかしある村に普通のお兄さんがいた。
村での地位も持っている畑の広さも人並みほどなので、それなりに働けばそれなりに食っていける程度の
よくいる村人の一人。
そのような立場の人間であった。
彼の村ではゆっくりの虐待がどうたらこうたらとゆっくりに興味のある人間も多く、加工所も近くの村にあるらしいのだが
彼はそのような無骨な趣味は持ち合わせてはいなかった。ただちょっと宗教くさい一面が普通の人間だ。
「人間は自然から命をもらって生きている。だからこそ自然の結晶である生き物を無闇に殺すべきではない。」
というのが彼の信条であるらしいのだが
それはただ彼の畑が比較的村の中央近くというゆっくりに攻められにくい位置にあり
村の中での〝ゆっくり害防止キャンペーン〟のようなものでの柵が非常に効果があっただけで
彼自身の畑が襲われたのが少なかっただけであるのは言うまでもない。
たまにちらほらと誰かがゆっくりに畑を襲われたとの話を聞くが、虐待派の玩具となるのが関の山なので
さほど気にしていなかった。
誰にでもある利己的な面が少し強いのかもしれない。
そんな人間であった。
これはそんなお兄さんが川に釣りに行った時の話である。
その日は天候も良く毎日の日課である畑仕事が早めにきりがついたので
彼の趣味である釣りにでかけることにしたのだ。
彼の畑の収穫高では一人暮らしの彼にとってまずまずの食生活を送らすことができるのだが
たまには魚も食いたい。
そう思った時によく行く言わば実利を兼ね備えた趣味であるのだ。
釣りをするのもいつものことなので特に感慨深いこともない。
そう思いながら釣り糸を垂らしぼーっとしていると何やら上流の方から奇妙な物がどんぶらこ どんぶらこと流れてくるのが見えた。
「ゆっ! そ、そこのおにいさんれいむをたすけてほしいよ!!」
ゆっくり霊夢である。
巷では「でいぶ」と呼ばれているらしいが、さほどゆっくりに興味もない自分にとってはどちらでもよい。
とりあえず自分の意思で流されているわけではなさそうなので自分の持っている釣り竿でこちらの方へうまく板のような物をひっかけてやる。
「たすかったよ!ゆっくりしていってね!! もう少しでおなかの赤ちゃんにびぇ」
たしかによく見ると下あごのところが他のゆっくりより膨れあがっているような気もする。
しかし自分にとってゆっくりがどうなっていようが興味はない。
いつも私が食料をとっている川で流れてきたので、これはつまりたまには甘い物でも食えとの神からの啓示であろう
ゆっくりは食えると隣人が言っていたはずだ。
そう思いゆっくりの頬をつかみ家まで引っ張っていった。
途中ゆっくりが「ゆっくりできなぃぃぃいいいい」と泣いていたのだが
所詮この世は弱肉強食である。
たいていの人間は妖怪より弱く妖怪に食われ
たいていの動植物は人間に食われる。
ゆっくりもその中の1つであるのだ。
しかも中身が餡子だの生物を馬鹿にしているところがもう食われるために存在するのではないかと疑ってしまう。
そんなわけで家についたのだが正直私はゆっくりの食い方を知らない。
聞く話によるとただの饅頭らしいから普通に食えばいいのだろうか?
そう思い涙でふやけかけてかけているゆっくりを軽く水洗いし
包丁を持つと急にゆっくりが叫び始めた。
「ゆ!赤ちゃんがでてきそうだよ!! やめてね!! もっとゆっくりしてね!!」
命の危険を感じて出産が早まったのだろうか
顎のあたりに穴が開いてもう1匹ゆっくりがでてきそうだ
そういえばゆっくりは出産をするとどうなるのだろう
以前カチューシャをつけたゆっくりが他のゆっくりと交尾して母体の方が黒ずんでいたような気がした。
もしかしたらゆっくりは出産したら死ぬのかもしれない
あのような食欲のわかないような物を食う気にはならない
そう思い手に持った包丁で母体を唐竹割りで二つに切り裂いたのと赤ん坊が生まれたのは同時であった。
「…ゆ? ゆっくちしちぇいってね!」
いつまでも母からの「ゆっくりしていってね!!」がないのに気づくとかまって欲しさ故か自分から言い始めた。
今赤ゆっくりが見える光景は後ろには餡子の塊のようなものが2つ
正面には包丁を持った私がある。
子にせめて恐怖を味あわせたくないという一心で死ぬ間際にもかかわらず一言も叫び声をあげなかったのであろう
隣人たちから聞いていたゆっくりへの評価とは程遠い高潔な魂を持ったものがそこにはたしかに存在した。
これは私にこのゆっくりを育てろという神託なのであろう
と一種の感動をおぼえていると
「ゆっくりしないでれいみゅにごはんをもっちぇきてね!! にょろまはきらいだよ!!」
…嫌いになってきたかもしれない
* * *
数ヶ月後れいむはすっかり成体になっていた。
やはり餌の質が良いかもしれない
魚の残飯に野菜の皮 そして毎日れいむに与えている雑草とりと害虫とりの仕事による
安定した食料の供給が成長を促進したのだ。
宗教じみた考えを持つ家系であるのだが
例え神の使いであろうと働かぬものは食うべからずの原則は変わらない
適度な食事と運動を与えてるので下手な野生よりかは強くなっているはずだと思う
しかし最近ある問題が現れた
年貢の時期となり、食料をれいむに分け与えることが難しくなってきたのだ
今の年貢の取り立ての仕方は一定の税率が決まっている方法である
出来高に合わせる方法とは違い収穫が豊作であろうと凶作であろうと関係ない一定の税率であるのだ
そして今年は凶作の年である
つまり食っていくには口減らしにれいむを野に放つか、食糧自体をどこからか持ってこなければならないのだ
しかし私はできることならば野に放ちたくはない
いや、もしかしたら神の使いだからこそどうにかしてくれるかもしれない
そのような考えが頭の中を駆け巡ったていると…
「ゆ? おにーさん深刻そうな顔をしてどうしたの?」
「いや、食料が足りなくてな… 冬を越せないかもしれないんだ」
「どぼぢでそんなこというのぉおおおお!! ごはんをあつめるのはおにーさんのしごとでしょぉおおお!!」
「人間の世界には年貢というのがあってだな 冬を越せそうな程度に食料を得ることができても上の者に渡さねばならんのだ」
「そしてこの村の上にあたるのが隣の村で、隣の村の」
「つまり隣の村からごはんをとってこればいいんだね!」
そういうとれいむはゆっくりにしてはゆっくりしないで外へ駈け出していった
何にも持ってないけど大丈夫か…? と思いもしたが本当にれいむが神の使いならば食料を手に入れてくれるし
偽物であるのなら口減らしにもなる。
そう思い戸を閉じた。
* * *
こうしてれいむは隣に村へ行くことになった
途中自分がなにも持っていないことに気づいたこともあったが
普段おにいさんの手伝いで雑草なども食べていたので食料には困ることもなかった
しかし…
「かわいいれいむをみつけたぜ! まりさとゆっくりしていかないかだぜ!」
「ゆ! れいむは今からとなりの村にいかないといけないからゆっくりしないよ!」
「じゃあれいむがまりさにごはんをくれるんだったらついていってあげるぜ!!」
「ごめんね! まりさはゆっくり雑草でもたべててね!」
「どぼじでぞんなごとをいうのぉぉおおおお」
という他のゆっくりに会ってもこのようなやり取りばかりでいっこうに仲間は増えることはなかった。
単に自分のエサの取り分を減らしたくなかっただけかもしれないが
しかし案外一匹で行くのは良い選択であったのかもしれない。
仮に仲間が多かったとしてもれいむのいた小さな村でさえゆっくりの対策がしっかりできていたのだ。
加工所のあるような大きな村である隣りの村ができていないわけがない。
ゆっくりの攻撃力では千匹いたとしても人が守る村を落とすことは不可能であるのだが
多ければ畑を荒らしにきたのだと思われ交渉以前に加工所送りになっていたのかもしれないのだ。
隣の町へは人間の足では半日ほどの距離であるのだがゆっくりの足では3日ほどかかるらしい。
だがれいむは歩き続けた。
何も持たないれいむが歩き続けることができたのもお兄さんが舌を肥やさないよう
毎日のように雑草を食べてさせていたことにより悪食の食生活でも耐えれるようになったことと
れいむにはゆっくりには珍しく野心のような物があったからである。
お兄さんのある程度の教育により野生のゆっくりでは安定した食生活などは求められぬこと。
そして栄養のある食生活をしているゆっくりは美ゆっくりとなり、美ゆっくりとしあわせー!になれることを知っていた。
つまりはこのようなところ。
食料を貰い受けることは己がのし上がるためになくてはならぬもの
食料を貰い美ゆっくりを貰い 飼いゆっくりとなっておうちとする
お兄さんの庇護をしゃぶり尽くした上で
そいつを踏み台にして…
天下の美れいむとなる!
野心である
野心がモルヒネのように疲れを麻痺させているのだ
* * *
そんなわけで3日がたった。
隣の村では様々な村から集まってきた年貢を上の方へと届けるために
鬼のような体格をした人がれいむにとって見たこともないようなごはんを
俵や樽などに詰めたり運んだりしていた
野菜、魚、貝などれいむがゴミのようなところしか食べさせてもらえなかったのが
山ほどあるのです。特に加工所も近いことがあってあんこのあまあまの匂いには
れいむもつい飛び出しそうになりました。
しかし多勢に無勢。
れいむは勝つことは叶わぬと悟り夜に倉庫の管理をしている人の家を訪れることにした。
夜…
「今日はよく働いた。これさえ終わればもう年を越すだけだ。」
と言って笑っている男がいた。
少し大きな村といっても農村なのです。
娯楽の少ないところにとって祭りごとは唯一の楽しみであり特に正月といえば
1年の間無事に生きることができたと喜び、来年も無事に生きることができるようにと願うためのものであったが
理屈無しで男は正月の神聖な雰囲気が好きであったのだ。
すると入口をたたく音がしました。
「ゆっくりあけてね! れいむがきてあげたよ!!」
ゆっくりであった。
普通なら無視をするのだが、ふと気まぐれで男は扉を開けてやりました
この村には元々ゆっくり害が多くゆっくりが多いなら加工所を作ればいいじゃないかということで
加工所ができ、加工所を恐れてゆっくりはあまり人前に姿を見せなくなった。
それなのにわざわざ家を訪ねるゆっくりに興味を持ったのだ。
「ゆ! おにーさんは〝ねんぐ〟というものでごはんをいっぱい持っていると聞いたよ!」
「れいむ〝たち〟はこのままじゃ冬をこせないんだよ! ゆっくりちょうだいね!!」
やはりゲスであったと拳を握り潰そうと思うと男の脳裏にふと数日前の事件が脳裏に浮かんだ。
数日前…
ある畑で採れた野菜を食べた一家が急に倒れた。
不幸にも発見が遅れてしまい体の小さかった子供は亡くなってしまった
原因を調べてみると毒によることがわかった。
しかし毒を盛られるようなことはない人物ではなく周りの人のアリバイもあるので当初調査は困難をきわめた。
調査の結果としては野菜を育てるための水 農業用水として使われている井戸に大量の鈴蘭が沈んであったのだ。
鈴蘭の毒は花瓶に入れてある水を飲んだだけでも死に至ってしまう。
それが大量に毒で汚染されている水で食用の野菜を育ててしまったのだ
ゆっくりの加工所に捕獲された仲間の復讐という賢いのか賢くないのかわからない群れが放り込んだことが判明し
その後ゆっくりメディスンを中心にいくつかの群れが捕獲され、その月の利益が10%ほど上がったらしいのだが
人が一人ゆっくりに殺されたのだ
安全のためその家にあった野菜は全て回収され、そして処理するため一時的にその男の倉庫に預けられた。
つまりその野菜が今家にあるのだ。
そして男は「こいつ自分の群れに持っていくといったよな…。人間にも死人がでる毒の強さだからホウ酸団子の代わりになるんじゃね?」
と思うとニッと笑った。
* * *
「ゆ!さすがれいむだよ! れいむにおそれをなしてこんなにわたしてきたよ!」
そこには荷台いっぱいの野菜とそれに紐でつながれたスィーがあった。
れいむの訪れた家のおにいさんは鬼井という名前であった。
こうしてれいむは鬼井さんから宝物を取り返し?家に帰ることになったのだ。
れいむがついでに貰ったスィーはなかなか高性能の物であるらしく
後ろに大量の荷物があるのに人間の走る程度の速度がでた。
この速度であるのなら夜が明ける前には家につくだろう。
通常ゆっくり種は夜に捕食種がでるという理由で外にでないが
それはゆっくり種が鈍足なことが原因なのである。
人間の走った時と同等の速度であれば捕食種でも追いつけることはないのだ。
こうして太陽が昇る同時刻にれいむはお兄さんの家についた。
「ゆっくりかえったよ! 」
「うおっ 朝からうるさいと思ったられいむか この4日間何処に行っていたんだ?」
「ゆっくりしていたよ! それよりおにいさんれいむのうしろにあるのをみてね!」
「まさか…本当に神の使いだったのか? これだけあれば冬もしのげる よしっ今日の朝飯はれいむの好きな野菜を食わせてやるぞ!」
「ゆっくり食べようね!」
おしまい。
- あとがき-----------------------------------
どうも、初投稿なので色々とちゃちな文章が多く設定もあれなところがありますが
読んでくださりありがとうございます。
昔話をモチーフとした作品をあと何作か書いてみようと思いますので
名前の方は〝昔話〟とでもしておきます。
最終更新:2022年05月21日 23:19