徹夜明け筋肉痛のアレな状態で作った作品です…
- 虐待要素、ほぼ0
- しかし虐スレ仕様のゆっくりが出ます。
- 無駄に長いです。
- ザッピングあり。
最近のゆっくり2~最後の砦~
「ゆ…ゆっぐぃ…ぢでいっでね…」
「…おう」
秋姉妹もレティの目覚めを察して山奥に引篭もろうとする頃、虐待志向でも愛護志向でもない、ごく普通のお兄さん宅の庭。
そこに単身入ってきた成体サイズのまりさは、明らかに衰弱していた。
まりさ種の特徴であり、自慢でもある黒い帽子はぼろぼろ。
まりさ自身も致命傷こそない物の、左目を失うなどの負傷を負っていた。
助けを求めてきたのだろうか、とお兄さんが腰を浮かせた時、まりさは胸、いや顎を逸らした。
「おに”ーざん…ここは…まりざのおうぢだよ…ゆっぐぃ…ゆっぐぃでていっでね…」
「…は?」
「だがら…なんどもいわぜないでね…ごこは、まりざのゆっぐぃぶれいずだよ…おじざんはででいっでね……」
「おぃおぃ、ちょっと待てよ」
お兄さんは流石に面食らった。
こんな棺おけに片足突っ込んだような饅頭にまで、おうち宣言を喰らうとは誰も想像するまい。
お兄さんの家は森に近く、これまでもゆっくりの襲撃を受ける事は少なくは無かったが、
その10割が家族連れか、健全かつゲスな奴か、そうでなくても皆健康体だった。
負傷したゆっくりも来る事はあったが、そういうものは皆捕食種に追われてとか、怪我を治して欲しくて来たとかだ。
「おじざんは…ゆっぐぃじだがったら、まりざをなおじでね…ぞれがら、ででいっでね…」
「いや、お前、ちょっと訊いていいか?」
「なに…ゆっぐぃじないでざっざどじでね…」
「お前、そんな状態で人の家乗っ取ろうっていうのか?そんな怪我じゃれみりゃにだって瞬殺されるだろ」
「…まりざは、づよいがらだいじょうぶだよ…れみりゃもにんげんも、いぢごろだよ…」
「…ありえねーよ」
お兄さんは思った。このまりさは正気を失っている、と。
この怪我だ。余程の事に見舞われて家族を失い、その精神的苦痛から逃れる為に理性を放棄してしまったのだろう。
「…なあ、まりさ。以前のお前がどれだけ強かったか知らんが、今のお前はただのぼろぼろの饅頭だ。」
「………」
「れみりゃにだって、まして人間相手に勝てる可能性は全く無い。」
「………」
「まりさ、お前は疲れているんだ。ほら、怪我を治してやるから、こっちに…」
「…わがっでるよ」
「?」
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「…わがっでるよ」
「?」
手を差し伸べてきた目の前の人間さんが、不思議そうに首を傾げた。
そんな人間さんを、まりさは残された眼に涙を浮かべながら見上げた。
「わがっでるよ、ぞんなごと。まりざはよわいいぎものだっでごとぐらい」
「…まりさ?」
「まりざはむれでいぢばんづよがったよ。はつじょうしだありずがら、れいぶをまもっだごどだってあるよ…
ぞれでも…でびりゃにはがなわながったよ…」
「………」
森の中にあったまりさの群れ。集落の場所は人里からも遠く、
長のぱちゅりーとそれを補佐するまりさの父である親まりさが皆に知識を伝えた。
すっきりのし過ぎで子を間引く事も、若い世代が長達に反発する事も無い、平和な群れだった。
まりさはその群れで一番の跳躍力と戦闘のセンスを持ち、喧嘩でも向かう所敵無しだった。
そんなまりさの番には、群れ一番の美ゆっくりのれいむ。
まりさはれいむをとても大事にして、集落の外れの丘に良く一緒に遊びに行った。
れいむの為に花冠を作ろうと離れていた時、偶然通りかかった流れのありすにれいむが襲われたりもした。
しかし、まりさはすぐに駆けつけて、ありすをこてんぱんにした。
まりさは自分の力に自信を持ち、それを誇りに思っていた。しかし…
「まりざはじっでるよ…でびりゃはづよいじ、おおぎぐなっだでびりゃはもっどづよい。
ぞれに、にんげんざんはそれよりももっどもっどづよいっで」
長のパチュリーは何時も言っていた。
にんげんはとてもつよい。つよくてかしこい。おおきなおうちをつくったり、たべものをかんたんにてにいれられる。
れみりゃはとてもつよい。そらをとんできて、かみついてくる。まりさでも、かてるあいてではない。
おおきなれみりゃはとてもつよい。てとあしをもっていて、なぐられたらみんなしんでしまう。
れみりゃに襲われて人間さんの家まで逃げたというちぇんが言っていた。
わかるよー。にんげんさんはいっぱつでれみりゃをたたきおとして、おいはらってくれたんだよー。
けがもなおしてくれたんだよー。ごはんはくれなかったけどねー。
まりさは聞いた事があった。
遠く離れた所で、「れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と叫ぶ声を。それはとても悲しげで、絶望に満ちていた。
駆けつけたまりさは、茂み越しに見た。
身体付きのれみりゃが、狩りに出ていた群れの仲間を守ろうとした、自分の父親から餡子を吸い上げていたのを。
まりさは戦った。父親を守ろうと。
そして、あっさりと返り討ちにあった。その手で叩かれただけで、まりさは痛みの余り餡子を吐き出す程の負傷を負った。
満腹になったのだろう、れみりゃは父まりさを皮だけにすると、そのまま飛び去った。
まりさは泣いた。何も出来なかった自分に不甲斐無さを覚えて。
長パチュリーは、気にする事は無い、勝てるはずが無いのだ、と言っていた。
その言葉は、父の死を受け入れきれないまりさの心を抉った。群れで一番というプライドなど、既に無かった。
「でびりゃはまりざのむれをおぞっで、みんなごろじゃっだよ…
まりざはなにもできながっだよ…」
まりさは絶望した。集落を襲ってきた胴無しれみりゃ達に。
傷の癒えたまりさは、群れの仲間を一匹でも逃がそうと立ち向かった。
だが、れみりゃは一匹が翻弄する様に空からちょっかいをかけてくるばかり。
その間に仲間が襲われる。助けようと駆けつけると、動けなくなった仲間だけを残してれみりゃは逃げていく。
それが繰り返される。何時の間にか、残っていたのはまりさ、そして番のれいむだけだった。
れいむの頭には子の付いた蔓。赤ゆっくりは新鮮な餡子を親から与えられている為、とても美味しい。最後に残すつもりだったのだろう。
まりさは必死に戦った。だが、かなう相手ではない。自由の利かないれいむは、少しずつれみりゃに噛み千切られ、やがて力尽きた。
れいむの餡子を吸い尽くしたれみりゃ達は、赤子を弄る様に突付き回す。
初めて瞳を開けた赤子達は、れみりゃに弄られる絶望の中で食われていった。
まりさは他のれみりゃ達に左目を奪われ、帽子を噛み千切られ、散々に玩ばれ、
最後には逃げようとしたところを崖から転がり落ちてしまった。結果的には、このまりさが唯一の生存者だった。
「まりざばよわいよ…むれでいぢばんづよいげど、よわいゆっぐぃだよ…」
まりさは自問した。自分は何の為に生きてきたのか、と。
強い筈の自分、だが、負けてはいけない戦いで負け続けた。自分はれみりゃよりも弱いのだ。
幸せになるはずだった自分、だが、その幸せは全て失われた。群れも番のれいむも、もう居ない。
何の為に自分は存在するのか?自分は何なのか?ただのだめなゆっくりなのか?
れみりゃの餌にされるだけの生き物なのか?
……そんなのは嫌だ、絶対に嫌だ。
まりさはとても偉いんだ、だからゆっくり出来るはずなんだ。
まりさが今ゆっくりできないのはおかしいんだ、だからゆっくりしに行くんだ。
どこに?…そうだ、人間さんのうちに行こう。そこでゆっくりするんだ…!
「でも…ぞれならなんでばりざだぢばうばれでぎだの!?
ゆっぐぃされなぐなるだめにうばれでぎだの!?」
「まりさ…」
人間さんが、気の毒そうな視線を向けてくる。
その視線がとても苦痛だった。哀れみをかけられるのがとても嫌だった。死ぬほど嫌だった。
「ばりざはゆっぐぃずるんだ!でびりゃもにんげんざんもばりざをゆっぐぃざぜるんだ!
……そう、じんじなぎゃ、づらぐでいぎでいげないんだ!!」
「まりさ」
「ぞんなめでみるな!ゆっぐぃでぎないよ!
もっどばりざをゆっぐぃざぜろ!!」
もうどうでも良かった。
まりさは無我夢中でお兄さんにぶつかって行った。
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「ぞんなめでみるな!ゆっぐぃでぎないよ!
もっどばりざをゆっぐぃざぜろ!!」
突然、まりさが体当たりしてきた。
ぼふん、と力ない音と衝撃を受け止める。最早まりさに、戦う力など微塵もないのだ。
「まりさ、もう止せ」
「ばがにずるな!ゆっぐぃでぎない!ゆっぐげぇ!?!?」
体当たりの衝撃で、まりさの左の眼窩から餡子が飛び出している。
更に、無理に身体を動かしたせいで餡子を吐いてしまった。
それでも、まりさは暴れるのを止めようとしない。
「ゆっぐぃずるんだ!ゆっぐぃざぜろ!!じじぃはざっざどででいげー!!!」
最早跳ねる事も這う事もできない。転がって、玩具をねだる子供のようにじたばたするばかり。
落ち着かせようとお兄さんが抱き上げるが、餡子と悲痛な叫びを吐き出しながら、もがき続けた。
治療しようと台所まで行こうとしたが、間に合う事は無かった。
まりさは最期に、一際多く餡子を吐き出して。
「もっど…ゆっぐぃ……じだがっだ…」
ゆっくりと息を引き取った。
その死に顔は、ゆっくりできているとは言い難い、凄惨な物だった。
「まりさ…」
お兄さんはその死に顔を複雑な顔で見ていた。
ゆっくり達は大抵、自分達がとても優れている、ゆっくりした生き物だと自負する事が多い。
他の生き物は皆、自分達がゆっくりする為にやってくるのだとも思っている。(捕食種やありすは例外として…だが)
子供のゆっくりは人間と同じ様に純真とされているが、親を攻撃する者があればかなう筈もないのにぶつかっていこうとする。
そして、大人になっていくにつれ増長していく。
だが。お兄さんは思った。
その不相応に高いプライドは、四肢も無く、多くの外敵に無力な自分に対する劣等感・コンプレックスを認めたくないがための、
精神を守る手段としての役割も持っているのではないか、と。
捕食種や野犬等の危険な外敵や、四肢を持ち、高速で移動する野生の動物達、そして人間。
皆、基本的スペックが違いすぎる。口でしか物を扱えず、ゆっくりとしか移動する事が出来ない。
餡子と言う、自然では異質な物質で出来ている為か、襲ってこない種も少なくなかったが、襲われれば殆どが餌食となった。
そして、生き残った者は己の無力感と恐怖に苛まされる。
そんな悲劇と苦痛の連鎖を、餡子に眠る記憶として遺伝されてきたゆっくり達は、
自分達が無力な存在である、と言う事を忘れたいが為に、過剰に増長し、思い込みを強めるのではないだろうか?
中には、本気で己が強いと思う者も多いだろう、むしろそれが大半だろう。
だが、初めから自分の分を弁えている者は、それでも自分を押し通す事で己の絶望と戦っているのではないか?
お兄さんには、そんな風にしか思えなくなっていた。
「ゆっくりしていってね!!!」
只管にポジティブで、能天気で、我侭な生き物、ゆっくり。
だが、その心の奥底には、深い闇が覆っている…の、かもしれない。
終
ああ、支離滅裂な気がする。
ゆっくりにもコンプレックスあるんじゃね?むしろコンプレックスの塊じゃね?
そんな事を仕事中に構想して、戻ってから書き上げました。
他の作品にも早く手を付けたい…。
By ゆっくりらいぜーしょん(多分執筆中)の人
最終更新:2022年05月21日 23:27