「れいむのあかちゃんがうごいてるよ。はやくあいたいね」

ゆっくりのつがいがいた。
れいむとまりさ。
不気味に膨れたれいむを見る限り、どうやら胎生型妊娠の真っ最中のようだ。
妊娠中なのに農道で呑気に歌なんか歌っているあたり、殺される気まんまんらしい。

「こりゃアタリを引いたぜぇええっ!!今すぐ赤ちゃんに会わしてや

と、そこまで言いかけて俺は立ち止まった。
こんな大声を出したのに、2匹は気が付いていないらしい。

俺は考えた。
胎生型の妊娠って中身はどうなっているのかと。
あいつらの中身は基本、口の部分を除いて餡子しかない。
………赤ゆっくりはどこにいるのだろう。
皮っぽいもので覆われて、あたかも人間の妊娠のようになっているのだろうか・・・。

だが、思い出す。
この前見つけた胎生妊娠中のまりさに手を突っ込んだら、フツーに赤ゆっくりが握れたことを。
障壁となる皮のようなものもなく、餡子の中に埋まっているような感じだった。

「・・・!」

もしかすると、餡子の中をテキトーに彷徨っているのでは・・・。


「ゆっくりしていってね」

「ゆ?ゆっくりしていってね」
「ゆっくりしていってね!」

声をかけるとようやく振り向いた。
どうやら人間には警戒心がないようだ。

さっそく、れいむの後頭部に耳をつける。

「ゆ!おにいさんも、おチビちゃんの音でゆっくりしたいんだね!ゆっくりきいてあげてね」
「ゆゆ。まりさもおチビちゃんとゆっくりするよ」

まりさはれいむの頬に体を擦り寄せた。
こうやって、れいむ胎内にいる赤ちゃんの胎動を感じるみたいだ。

(モゾ・・・・ゴゾゾ・・・ゴボ・・・)

れいむの呼吸音なのか、それとも中にいる赤ゆっくりの動く音なのかよくわからない音がする。
今度はれいむの後頭部に口をつけた。
ちゅっちゅしてるみたいで気持ち悪いが我慢だ。

『うーうー!れみりあだっどぉー!』

虐待好きとして、れみりあの声真似ならお手の物だ。
しっかり餡子の奥にまで伝わったに違いない。

(モゴ・・・!モゴッ!モゴゴゴッ!)

すると、れいむの奥から低い音が聞こえてきた。
まるで餡子を押しのけて逃げているかのような。

「お、おにいさんやめてね!あかちゃんがこわがっているよ!」
「まりさもびっくりしたよ!ゆっくりやめてね!」

ゆっくりは全身が聴覚器官。
俺のれみりあボイスはれいむにも、そして頬をつけていたまりさにまで届いた。

『あまあまがあるどー!うー!いっぱいたべるんだどぉー!』

(モゴモゴゴッ!モゴモゴッ!モゴン!)

「ゆー!!あかちゃんおちついてね!!れみりあなんていないよ!!」
「あかちゃんゆっくりしていってね!!ゆっくりしないとだめだよ!!」

慌てふためく2匹の親ゆっくり。
俺はガッチリとれいむをホールドして、さらにれみりあボイスで話しかけてあげる。
さぞかし胎教に良いことだろう。

「ゆぐぅううあああ!!やべでぇっ!!あがぢゃんやべでっ!!」
「れ、れいむうぅ!?」

急にれいむが苦しみ出したかと思うと、頭頂部がもぞもぞと動き始めた。

「ん?」

ボコボコとつむじのあたりが波打ち、2つの盛り上がりが出現する。
子供の拳ほどの丸いものが、頭皮の下で震えているようだ。

「れいむ、お前、赤ちゃんは何匹中にいるんだ?」

「ゆぎぃい!!ふたりだよぉお!!おにいざんもうやべであげでねえええ!!」

どうやら、この盛り上がりは胎内の赤ゆっくりらしい。
怖くて頭のほうまで逃げたに違いない。
俺は2つの内の1つに、思い切り平手打ちをした。

「ゆびぃいっ!!?」

パーン、と良い音がする。
2つあった小高い丘が、1つなくなってしまった。

「おー!ぺちゃんこ!」

すっかり元通りになったれいむの頭頂部をナデナデしていると、残りの盛り上がりまで凹んでいった。
ここはゆっくりできないと理解したのだろう。

では次に行く先は・・・?


「んぐぃいぃっ!!あがっ!!ゆ・・・っ!んぎいぃいいっ!!」

れいむが歯を食いしばっている。
親の口内は生まれた赤ゆっくりを守る場所だし、たぶん本能的にそこが一番安心できると思ったのだろう。
それか、さっさと産まれて逃げたいとでも思っているのかもしれない。

『うー!!あまあまはどごにいるんだどぉー!?』

後頭部から追い打ちをかける。
すると、俺の背中に何やら衝撃が。
見なくても分かる。これはゆっくりの体当たりだ。

「おにいさん!もうやめてあげてね!あかちゃんをゆっくりさせてあげてね!」

すっかり存在を忘れていた。
俺の隣に伴侶のまりさがいた。

せっかくなので潰した。

「れいむ。プレゼントだよ」

必死で口を閉じるれいむの目の前に、半分に千切れたまりさを置く。

「んぐぃっ!?ば、ばりざあぁああああああああああ!!!ゆごぼえっ!!」

バカ丸出しで大絶叫をするものだから、口から何かが飛び出す。
ねっとりとした餡子に包まれた、拳ほどの大きさの黒いもの。

「どーれどれ」

枝でつんつんして中身をほじくる。

なんと、そこにはプチトマトほどの未熟ゆっくりが!
餡子まみれで何種かよくわからないけど、リボンっぽい形が見えるので多分れいむ種だろう。

「ゅ・・・・ぃ・・・」

言葉にもならない音を発したのち、そのまま動かなくなってしまった。

「ゆが・・・あ゙・・・・ゆ゙ぁ゙っ・・・・!」

呆然と、元まりさと黒いゴミを見つめるれいむ。
どこにそんなに水分があるのか、じゃぼじゃぼと涙がこぼれている。

「面白かったよ、れいむ。また俺が潰してあげるから頑張って赤ちゃん作ってね」



農道で叫ぶ饅頭を置いて、俺は帰路についた。

「・・・そーいえば、普通に生まれるときって餡子まみれじゃないよなぁ・・・」

ふと疑問が湧く。
あの子れいむ(多分)は餡子まみれだった。
それはそうだ、餡子の海をただよっていたのだから。

「じゃあ・・・どうやって・・・?」

マトモに生まれると、赤ゆっくりに餡子はついていない。
ということは、出産までの間に何か、身を綺麗にするプロセスがあるに違いない。

「出産間近のゆっくりでも解体してみるか・・・」

思い立ったがなんとやら。
俺はその足で森へと向かった。




おわり。

作:ユユー

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最終更新:2022年04月16日 23:14