- 投棄所向けだと思います。
- 以前書いたゆっくりと村と繋がっています。しつこく書きますが虐待お兄さんは酷い目に合います。
冬だ、寒い。山間の村だとその寒さは格別だ。
いつもの年なら村人にも数人の凍死者が出ていたのだが、今年は別の収入もあったので
大規模な防寒対策を行っていた。
今年は凍死者を出さないように努力していきたい。村の皆はそう思っていた。
別の収入――薬草売買を提案した長の息子は気が晴れなかった。
人では通れない道を自分達より軽いゆっくり達に採ってきてもらう、その代わりゆっくり達にはお礼として食物を渡す。
というこのプランはいつかは破綻が来るとしても、数年以上先、という見通しだった。
それくらいあれば村も十分に潤うはずだし、ゆっくり達も次第に人間と触れ合ううちに野菜が人間にとって大事なものである、ということを理解してくれる
はずだった。
「あんの阿呆が……」
一人の男が付いた大嘘で調達役のゆっくりの群れは騎馬めーりんに壊滅させられてしまった。
幸い子供達は無事だが、予想外の速さの今年の冬の到来でろくに食料も集められなかったはずだ。
もし、全滅してたら……
「薬草売買はパァ……またはじめからかなぁ。
………いや、まだだ!」
そう呟くと青年は
「めーりんはいるか!?」
「じゃお?」「お兄さん、どうしたいきなり息巻いてと申しております」
このめーりん、件の大嘘に騙された騎馬めーりんのリーダーである。
嘘を嘘と見抜けなかったという自責の念からすぃーを降り、青年の下に付いた。
まぁ、今は倉庫の門番や人間の子供達の遊び役になってもらっている。
横にいるきめぇ丸はあくまで通訳である。念のためめーりんが子供達に虐められないように監視してもらっている。
めーりんはゆっくりには強いのだが人間には弱いのだ、戦闘テクニックと言語コミュニケイション的な意味で。
「以前言ったよね、後で頼みがあるってさ」
「じゃお」「約束を違えるつもりはない、と申しております」
「じゃあ、森についてきてくれ」
「じゃお?」「どういうことですかね?」
疑問に思いながらも二匹は、青年に付いていった。
一方、森の片隅。
「さむいね……」
「みんながふゆにゆっくりできるじゅうぶんなごはんもたりてないよ………」
「むきゅぅ、せめておかぁさんがいたらなんとかなったかもしれないのに………」
「みょぉん……」
「このままじゃふゆがこせないんだね、わかるよぉ………」
「ちゃむいよぉ……」
「ちびちゃんたちはれいむたちよりおくのほうににいてね……」(注・円陣を組んでいます。)
「わかったよ……」
身を寄せ合っているゆっくり達は皆子供ゆっくりや赤ちゃんゆっくりだけである。
騎馬めーりんは成体ゆっくりは殺すが子供や赤ちゃんは奴隷としてお持ち帰りする習性があった。
そのためこのゆっくり達は殺されることも無く、青年達の救助が間に合ったのだ。
しかし、例年より早い冬の到来でただでさえ子供達では少ししか集められない食べ物をろくに集められないまま冬篭りを迎えてしまった。
もう何匹かが寒さと空腹で命を落としている。
「このままじゃ、あかちゃんたちがしんじゃうよ………」
「こうなったらみんなのなかでいちばんおっきなまりさが『おたべなさい!』をするよ!」
「むきゅぅん、だめよまりさ! まりさがしんじゃったらだれがあかちゃんたちにかりのしかたをおしえるの!?
それに、いまのじょうきょうじゃそれでもたりないわ!」
「ゆぅぅぅ………」
もう駄目だ、皆が正にそう思いかけていたときそれはやってきた。
「じゃおぉぉぉぉぉぉぉん!」
『め、めーりんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
「ちびちゃんたちはれいむのうしろにかくれてね!」
「ま、まりさたちはどぉなってもいいからちびちゃんたちだけはたすけてね!」
「みょんみょんみょみょんみょん!!」
「むきゅぅん、ちびちゃんたちにはてだしさせないわ! げほごほっ」
「い、いまのありすたちはぜんぜんおいしくないわ!」
「い、いまきてもごはんもないよ、わかってねぇ!」
「おぉ、けなげけなげ」
『き、きめぇまるもきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
「まぁ落ち着いてください、若旦那、ちゃんと生きてましたよ」
「ゆ、ゆゆっ?」
「間に合ったぁ……」
「「お、おにいさん!」」
少しホッとした顔をした青年がやってきた。
「お、おにいさん! そこにいるめーりんときめぇまるをやっつけて!」
「安心しなさい、彼らは君達の味方だよ」
「ゆ?」
「ちょっと聞くけどこのなかで台地の苦い草さんを採りに行く手伝いをした子はいるかい?」
「むきゅ、あかちゃんいがいはほとんどみんなやっていたわ」
「場所が何処なのかもキチンとわかるね?」
「「「もちろんだよ!」」」
「じゃあ、問題ないな………、君達この冬はお兄さんの家に来ないかい?」
『ゆっ?』
場所は戻って村長の家。
「父さん、部屋を借りますよ?」
「……息子よ、大量のゆっくりをつれて来たと聞いたが?」
「えぇ例の群の生き残りですよ、それが何か?」
長は深いため息を吐き、
「なぁ息子よ、なぜお前はそうまでしてあのゆっくりを守ろうとする? あ奴に対する当て付けか?」
あ奴と言うのは、絶賛村八分中の大嘘付きのことだ。村の収入源を破壊したことと薬草を運んでくれたゆっくり達を殺したことを咎められたわけである。
「情が移ったわけじゃないですしあの人なんてどうでもいいです」
「では何故だ?」
「長のぱちゅりぃと約束しましたからね、約束を守る限りは虐めないって」
「全く誰に似てこう頑固なのか………」
多分アンタだアンタ。
まぁ、そんなこんなで今年の冬篭りはゆっくり達にとって幸いなものになった。
さすがに沢山の食べ物と暖かい場所と言うわけにもいかないが、青年が用意してくれた藁や枯れ草で自分達なりに暖かいお家を作ることができた。
部屋からは出られないように(これは今後冬篭りをするときに外に出られないことを覚えるため)されていたし、食料も限られた量だったが、
成体ゆっくり換算で持ってきたので、十分な量だった。
普通の冬籠りと違うのはめーりんときめぇ丸、あとお兄さんがたまに子ゆっくりじゃ判らないことを教えに来ることだろうか。
「あかちゃんがねつをだしちゃったよ!」
「じゃおぉん!?」「どうしましょう、と申しております」
「この葉っぱを柔らかくしてから、赤ちゃんに飲ませるんだ!」
「おお、苦い苦い」
噛んで柔らかくした後、きめぇ丸は赤ちゃんをひっ捕まえ、直接口移しをした。
「お、おちびちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
まぁきめぇ丸にいきなりこんなことされたらたまったもんじゃない。
「ゆひぃ……」
普通のゆっくりなら恐怖で逃げ出すだろうが、風邪をひいた赤ゆっくりは逃げれない。大人しく苦い葉っぱを飲み干して気絶した。
「どぉしてこんなことするのぉぉぉぉぉ!?」
「いいかい、君達も大人になったら自分が苦いのも我慢して、そして子供達に我慢させなきゃいけない時がくるんだ」
「ゆっくりわかったよ……」
ということもあれば
「じゃお、じゃおじゃお、じゃおぉぉん!!」「これは、水で洗えば、苦味が取れてとてもおいしいモノだ、と申しております」
「ゆっ! まえにおとーさんがそれをたべてひどいめにあったよ!」
「じゃおぉん!」「それは水で洗っていなかったからだ、と申しております。証拠に私が食べてみせる、とも言ってますね」
「「ゆゆっ!?」」
もちろん酷い目には遭わなかった。
騎馬めーりんと言う種族は獲物に出会わないことも多い、当然保存食や一手間掛ければ食べれないこともないモノも教えられる。
それをめーりんは子ゆっくり達に教えているのだ。きめぇ丸の翻訳付きで。
当初は親の仇であるめーりんに警戒をしていたゆっくり達もいろいろと世話をやいてくれるめーりんを見て少しずつ心を開いていった。
まぁ当然悪さをするゆっくりもいたのでそういったゆっくりには躾をした。仕置きはきめぇ丸の仕事だ。
すぃーに乗ってた頃はともかく、今のめーりんは本来のめーりん種の本能が出ていたためできなかった。
「きゃ、きゃりゃいよぉぉぉぉぉ!!」
「良いですか? 今は貴方達のおうちですがここは元々若旦那のおうちです。
だからこの部屋の物を壊したりしちゃいけませんよ、ゆっくりしないで理解してくださいね?」
「ゆ、ゆっきゅりりかいちたよ……、きゃりゃいぃぃぃぃ!!」
「だから、ゆっくり理解しないで、と言ったじゃないですか。」
因みに再犯はきめぇ丸シェイクだ。辛い物よりこちらの方が効くらしいとか。
これにも意味はある。ここはあくまで一時の避難所、春になったら出て行かねばならない。
ここが楽しいだけでないことを叩きこまねければならない。
「はやくはるににゃらないきゃにゃ……」
「おそとでみんなであそびたいよ……」
「きめぇまるはこわいけどめーりんはやさしいよ……」
「そうだね、おかーさんがいうようにばかじゃないしね……」
そういう風に、いろいろと本来親から教えられることを学びながら春になった。
「おにいさん、いままでありがとう!!」
『ありがとう!!』
「いやいや、君達にも迷惑かけちゃったからね、これはお詫びさ」
「まりさたちはおうちにもどるよ! おかあさんたちがやってたようにくささんをもっていくんだよね?」
「うん、お願いしたい時期にそっちに僕が行くよ」
「ゆっくりわかったよ!」
こうして、子ゆっくり達とお兄さんは森の手前で別れた。
「さて、と………」
背伸びをしてから、お兄さんは森から飛んできたきめぇ丸と森から出てきた若い衆に聞いた。
「罠とか森の途中とかにあったかい?」
「えぇ、かなり。どれもゆっくりレベルの殺傷度でしたが、外してきました」
「はぁ……、どうしてそんなことするのかなぁ、あの人は………」
「逆恨みじゃないでしょうか、この冬にやたら外に出ていて怪しいと思っていましたが……どうするんですか若旦那?」
「どうもこうも………こりゃ今夜の総会で所払いかなぁ………、こんなことしなきゃ春には村八分外せたはずなのに」
そんなこんなでゆっくりと人間の共生関係はしばらく続いた。ドスとは名ばかりの無能ゆっくりがくるまでは、だが。
後書き・
ぜんっぜん虐めてないなこれ……。
なんと言うか、資源が枯渇するまでは人間とうまくやっていく方法もあるんじゃないんだろうか、と。
最終更新:2008年12月09日 19:00