※あの版権キャラがでてくるよ!
「やめてね! あんよこげたらあるけないよ!」
「うるせぇ! 人ん家に無断で入りやがって、ただで済むとおもってんじゃねぇ!」
「ゆっ、やめてやめ……ゆぐうぅぅぅぅっ!」
この青年がやっている事は今更詳しく言う必要もないだろう。夜中に少々コンビニに行っていた間に
ゆっくりの一家が彼の家に入り込んでいたのだ。
散らかっていた室内を片付けた後、制裁代りにまりさの底部を焼いている最中というわけだ。
隣で番いと思われるれいむと2匹の子供が喚いているがそんな事で彼が止める筈もない。
それどころが、彼の逆鱗に触れてしまったらしい。
「ごちゃごちゃ煩いんだよっ! 少しは反省しろ!」
そう言うと、一番近い子ゆっくりを拳で潰した。
「れいむのあかちゃんがぁぁぁぁっ!」
「だから煩いって言ってんだよ!」
「ゆげっ!」
彼は我慢できずに、叫び続けるれいむを思いっきり壁に叩きつけた。そんな時だった。
「ん? 誰だ、こんな時間に」
玄関からチャイムが鳴っている。しかし夜中に来客など珍しい。
そう思いながら彼は制裁を一時中断し部屋を出た。
しかし、玄関を開けた彼は一瞬事態が呑み込めなかった。なぜなら、その人物は絶対にありえる筈がないからだった。
赤い服にマントは茶色。ブーツと手袋は黄色をしている。なにより、その顔は日本人なら子供の頃から知っているヒーロー。
そう、
「えっ、あっ、えっ!?」
「やぁ、僕アンパンマン」
アンパンマンその人だったのだ。
だが、その顔はあのにこやかな笑顔ではなく、少々不機嫌の様子だ。
「今日はちょっと君に話したい事があるんだ。上がってもいいかな?」
「あっ、あぁ。どうぞ」
ひとまず青年はアンパンマンを家に入れた。
とてつもなく不可解な来客だったが、とりあえず青年はアンパンマンを居間に案内した。
馬鹿らしいと思いながら本物かどうか聞いてみたら、顔の上の一部をちぎってくれた。上品な餡子が美味しかった。
座らせた後、飲み物を持ってこようとしたが、アンパンマンに断られた。
「で、話ってなんなんですか?」
「順を追って話すよ。まずさ、君はゆっくりをどう思ってる?」
「どうって……」
その質問に、彼は横の部屋が思わず気になってしまった。あのゆっくり達がいる部屋だ。
「あぁ、その部屋見てもいいかな?」
「あっ、いや。あの部屋は今散らかってて見苦しいだけですから」
青年は思わず示唆してしまっていたらしい。彼の制止も聞かず、アンパンマンは扉を開けた。
もちろんそこには底部が焦げ動けないまりさに、潰された子ゆっくりと壁に餡子をひっつかせたれいむ、それに一匹残った泣きじゃくる子ゆっくりがいた。
「君もこういう人間か」
「いや、こいつらが勝手に家の中を荒らしたんですよ。偶々なんですって」
「偶々、ねぇ」
アンパンマンは席に座り直すと、青年に質問を続けた。
「あのゆっくり達は、窓ガラスを割って入ったのかい?」
「いえ、どこも割れてなかったので、玄関からかと」
「ゆっくりってピッキングなんてできないよね。どうやって玄関から?」
「コンビニに行く時に鍵を閉め忘れたんだと思います。けどあいつ等だって悪いんですよ。饅頭の癖に人の家に入って」
「じゃあさ」
アンパンマンは自分の顔を指差しながら質問した。
「僕の事はどう思う?」
「えっ、あなたですか? 好きですよ。日本人なら皆好きでしょ」
「それは嬉しいけどさ、僕とゆっくりって何処が違う?」
「何処って……」
「饅頭の癖にって言ったけど、僕もアンパンなんだ。君も知ってるだろう。世の中は饅頭が生きているなんで出鱈目な存在だって言うけど、僕も同じ様なものなんだ」
青年は答えられなかった。
「僕が君の家を荒らしたら虐めるのかい? しないだろ? 何がそう隔ててる?」
「それは……」
「結局の所、皆ゆっくりが弱いからやってるんだよね? 違うかい?」
「そんなこと……」
「違わないだろ。僕も餡子と小麦粉で出来てる。ゆっくりと同じなのに君は虐めるとは答えなかった」
最後に彼は、青年にこう切り出してきた。
「君さ、さっき僕の事好きって言ったよね」
「はい。それが?」
「自分で言うのも変だけど、ヒーローってカッコいいよね。毎回悪人を倒したり、困った誰かを助けたり。“弱気を助け、強きを挫く”とはよく言ったものだよ。」
けれど、と言いながら彼は青年を見ながら続けた。
「君、さっき弱い者虐めしてたよね?」
「……」
「正直に言っていいかい。僕そんな人に好きって言われても全然嬉しくない。むしろ吐き気がする」
「……」
「弱い者虐めをするなって子供が教わるよね。親や先生、僕のような絵本やテレビ、なんだっていい」
「……」
「最初に君はゆっくりが勝手に入ったって言ったけど、それは君が鍵を閉めなかった事が原因じゃないかい? 空き巣にあったらたらどうするつもりだったんだい?」
「……」
「家を荒らしたなんて偶々見つけた理由だろ。君は例え他の場合でもゆっくりを虐めていたよ」
そう言いながらアンパンマンは立ち上がり玄関に向かった。去り際に振り返らずにこう言い残した。
「ばいきんまんより駄目な奴だよ。パンチ一発分の価値もないよ君は」
玄関で別れの挨拶をすると、アンパンマンはどこかへと行ってしまった。
しばらくして青年は立ち上がった。彼はゆっくり達のいる部屋の扉を開けて、
言いようのないムカつきを更にゆっくり達にぶつけた。
あとがき
最初に、皆様読者の方々の機嫌を損ねてしまったのでしたら申し訳ありません。
スレを見ていたら、突発的に書きたくなったので。
でも実際、アンパンマンにとってゆっくり虐めってどんな気分なんでしょう。
「アンパンマンの性格が違う」と思われたのなら済みません。よく練られなかったもので。
最終更新:2009年01月03日 06:23