※ぬる虐めあります
※ゲスあります
※舞台は現代です
「おーい、ゆっかり~ん」
「なあに、おかーさん?」
午後4時。そろそろ夕飯の仕度をしなければならない時間だ。
しぶしぶ立ち上がった私、絶賛一人暮らし中の普通の女子大生、は飼い
ゆっくりの一匹のゆっかりんを連れて台所へ。
「お母さん言うな。ところで・・・今夜はカレーの予定なんだけど、手伝ってくれないか?」
「ゆゆっ!おかーさんのたのみなら、ゆっかりんなんでもきくよ!」
「よし、じゃあ死ね」
「どうしてそんなこというの!?ぷんぷん!」
僅か2秒で前言を撤回したゆっかりんは空気を吸ってぷくぅと頬を膨らませている。
が、いまやごくごく平凡なバスケットボールサイズのゆっくりに過ぎないので全く迫力がない。
「鬱陶しいから止めなさい」
「ぷひゅるるるるるるるる~・・・」
頬をつつくと変な効果音を口で再現しながら空気を吐き出した。
うむ、相変わらず弾力のある気持ちの良い頬だ。
「それで、ゆっかりんはなにをすればいいの?」
「取り合えずこの袋の中に入ってくれ」
そう言って適当な大きさの袋にゆっかりんを詰め込むとお湯の張った鍋に放り込んだ。
あとはコンロに火をつけて、お湯が沸騰するまで弱火でゆっくり加熱する。
「ゆゆっ!?あついわ!ゆっかりできないわ!?」
「頑張れ、ゆっかりん」
「ゆゆっ!おかーさんがそういうのなら、がんばるわ!」
お湯の中で普通に喋るなんて器用な奴だ。
さて、ジャンプでも読むか。
「おかーさん、ゆっかりんゆっくりがんばってるよ!」
「そうかそうか。ワンピおもしれー」
ゆっかりんの中身はカレー。しかもカレーまん用の何かじゃなくて正真正銘のカレー。
つまり、こうすることで美味いカレーが出来るはずなのだ。
もっとも、苦痛によって辛くなるのか甘くなるのかは知らないので、その辺はちょっとした賭けではあるが。
それにしても最近のワンピースの面白さは異常である。
「おかーさん、ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり。んお、リボーン最終回・・・なわけないか」
ぴんぽんぴんぽ~ん
ジャンプを読んでいると突然呼び鈴の間抜けな音が鳴り響く。
しぶしぶ受話器を取るとお隣さんの女性の半泣きの声が聞こえてきた。
「ゆっへっへ・・・ここはまりささまのおうちだぜ!」
「ありすがとかいはにこーでねーとするわよ!」
お隣さんによると、家に帰ってらこいつらが居座っていたらしい。
典型的なゲスまりさとタカビーありすのつがいである。
このくらい自分で始末しろよ、とは思うが慣れのない人は蛾なんかと同じくらい怖がるものなので仕方ない。
「で、ゆっくり慣れしてる私に頼みに来たと?」
「は、はい・・・」
私より10cmほど背の低い女性が目に涙を溜めながら頷いた。
とはいえ、幸運にも先ほど入られたばかりらしく、家の中を荒らされた形跡はない。
恐らくゆっくりに対する知識がないから怖かったとかそんなところだろう。
ゆっくりを怖がる人間をはじめて見た気がする。
「なあ、ありす?」
「ゆふん、なにかしら?いなかもののにんげんさん!?」
「最近都会では田舎が流行っているって知ってた?」
「ゆぅ・・・!し、しってるわ、そんなのじょうしきよっ!」
「流石ありす。都会派だ」
そう言いながらふんぞり返るが、明らかに知らなかった様子。
まあ、基本的には嘘だから当然と言えば当然か。
「んで、まりさ?」
「ばかなにんげんさんはごちゃごちゃいってないでごはんを・・・」
「馬鹿な人間さんにまりささまの満足のいくご飯を持ってこれるわけがないと思わない?」
「ゆゆっ!そ、それもそうなんだぜ・・・!」
流石ゆっくり。ゲスのクセに変なところで素直だ。
おだてられたら空でも飛べるんじゃないか、こいつら?
「つまり、人間のところにお前らの望むものはない」
「ゆゆっ!でも、あまあまさんややさいさんをひとりじめ・・・」
「まりさ様や都会派のありす相手にそんな事が出来るわけないだろ?」
「それもそうね!」
そう言いながら玄関へと向かい、扉を開ける。
「早く都会的な住処に戻れ。でないと人間ごときには見つけられないゆっくりが誰かに奪われるぞ?」
「ゆっくりりかいしたわ!」
「ゆっくりりかいしたぜ!」
おだてられて上機嫌になったまりさとありすはぽよんぽよんと跳ねていった。
「ただいま~っと・・・・・・あ」
「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ~・・・!」
まずい。あの後お隣さんと話しこんでいたらゆっかりんのことを完全に忘れてしまっていた。
流石に沸騰したお湯につけられっぱなしだったのが堪えているらしく、ぷるぷると痙攣しながら涙を流している。
「あ~・・・ごめんごめん」
「ゆえーん!ゆっかりん、あついあついはもういやーーーーーっ!」
と、私に泣きつく。
しかし、あの熱湯に長時間つけられていても多少皮が赤くなっている程度な辺り、実にでたらめだ。
流石ゆっくり(あるいは中華まん種だからか?)と言わざるを得ない。
「んじゃ、次は中身を取り出す作業だな・・・」
「ゆぅ?ゆゆっ!ゆべっ!?」
口をお皿に向け、雑巾を絞るようにゆっかりんをぎりぎりと締め上げた。
元々皮がやわらかい上に良く伸びる種だからか、えらく面白い姿になっている。
「ゆーーーーーん!ゆーーーーーんっ!?」
そんなこんなで1分後。
ゆっかりんはエレエレエレっと中身のカレーを吐き出した。
驚くべきことに、信じられないほど具沢山のカレーだった。
「味は美味いが平凡な甘口、か・・・もしかして、苦しめると具沢山になるのか?」
「ゆえぇぇ・・・ゆっかりん、もうおよめにいけない・・・」
そう言って俯きながら、およよよよよ~っと涙を流すゆっかりん。
そんな彼女に構うことなく、私は我が家のゆっくり達の分も用意するべく再びゆっかりんを絞り上げた。
「ゆぁぁぁぁぁぁぉぉぇぅ~・・・・」
こうして久し振りのわりと豪勢な食事が完成した。
こんなに肉のたくさん入ったカレーを食うのは何年ぶりだろうか?
「おーい、ゆっくりども~、飯の時間だぞ~?」
呼ばれた1匹のれいむとすいか、2匹のまりさ、子れいむと子まりさ3匹ずつは我先にと跳ねてきた。
その頃、先ほど彼女に追い返されたありすとまりさは・・・
「ゆっくりかえったわ!」
「ゆっくりしていってね」
「ゆゆっ!しらないれいむがいるんだぜ?!」
促されて帰った巣には娘達の姿はなく、代わりに1匹のゆっくりれいむの姿があった。
右を見ても左を見てもまりさとありすの赤ちゃんの姿はなく、やはりれいむ1匹しかいない。
「れいむはまりさをさがしにきたんだよ」
「ゆぅ?まりさおまえなんかしらないんだぜ!」
「まりさはれいむのすてきなだーりんなんだよ!」
実はこのれいむの言うまりさはこのまりさとは別ゆっくりである。
しかし、れいむは齟齬に気付かず、まりさもまたそのことに気付いていない。
ゆぅ?と首をかしげるまりさだったが、取り合えずこいつを追い出そうと結論付けたその時。
「うわきするいなかものはゆっくりしね!」
勘違いしたつがいのありすに体当たりを食らわされた。
ごろんごろんと転がり壁にぶつかったまりさはその痛みで思わず泣き出しそうになる。
が、そんな暇すら与えられず、ありすがまりさの底部に噛み付いた。
「ゆぎぃ!?」
食いちぎられてみちみちと引き裂かれて行く皮。
傷口からぽとりぽとりと漏れ、こぼれてゆく餡子。
失われてゆく肉体に反比例するように増大してゆく恐怖。
「やべ、やべでぇ!?まりざ、なにもぢでないいいいいい!?」
「あでぃずのおとめごころをもてあそんだまりさはゆっくりしね!」
必死の懇願も弁明も何の意味もなさず、まりさはありすに何度も食いちぎられた。
抵抗しようにも肝心の底部が食いちぎられてしまっていてはどうしようもない。
「もっと・・・ゆっくり、したかったよ・・・」
やがて、大量の餡子を撒き散らしながらまりさは息絶えた。
彼女の死を確認したありすは得意げな表情を浮かべて、ふんぞり返る。
が・・・
「ありすもゆっくりしんでね」
巣にいたれいむに不意打ちをかけられ、まりさと同じように底部を食いちぎられた。
そして、成す術もなく一方的に嬲られるありす。
それでも残された力を振り絞って、ひとつの質問を口にした。
「ゆ、ゆぅ・・・あ、ありすのおぢびぢゃんは・・・?」
「さきにゆっくりしたよ」
最悪の答えに絶望したありすに、れいむのトドメの一撃が加えられた。
---あとがき---
その後、ゆっかりんは100円の板チョコ1枚で完全復活を果たしたそうな
【ゆっかりん】
中身はカレー。カレー臭がする
味は甘口。何をやっても甘口のまま
ただし、苦しめば苦しむほど具沢山になる
何故そうなるかは誰も知らない
それはさて置き、かつて人里へと旅立ったまりさを待ち続けていた一匹のゆっくりれいむ
しかし、待てども待てども帰ってこない伴侶を待ちきれず森を飛び出して人里へ
長く辛い旅は世間知らずで純朴だったれいむの心を黒く塗りつぶしていった
その果てに彼女が見たものは、人間の庇護を受けて人里でゆっくりするまりさの姿
そのゆっくりした姿に、ゆっくり出来なかった自分の境遇に絶望したれいむは・・・
次回「やさぐれいむの襲撃!」
byゆっくりボールマン
最終更新:2009年02月22日 23:31