ゆっくりいじめ小ネタ375 引越し

引越し



「ゆく・・・んゆ」
「ゆきゅきゅきゅ・・・」

箱の中では れいむ と ひな が息苦しそうに天を仰いでいる。酸欠の水槽に放り込まれた金魚のようである。
こいつらが家に来てしばらくになる、体のサイズもピンポン球から野球ボール程に成長した。
今の菓子箱ではそろそろ限界だろうか。



「「ゆ?」」

2匹をガラスのボウルへ移しテーブルに置く。

『じゃっじゃーん!! 良い子のみんなー!! 楽しいお歌がはじまるよー!!』
「「ゆゆ!」」

多少窮屈そうだがテレビに食いついたので大丈夫だろう。
ぐずり出さないうちに新しい寝床をさっさと作ってしまおう。



『れみ☆りあ☆う~♪ きょうは こうまかんの おじょうさまの れみりゃといっしょに おうたを うたうんだど~♪』
「「ゆゆ~♪」」
『きょうの おうたはこれだど~ [どんな色が好き?]  れみりゃは あかが すきなんだどぉ♪』
「れいみゅも! れいみゅも!」
「ひにゃも! ひにゃも!」

頭上のリボンを羽のように ピコピコと上下させる。キラキラと輝く瞳からは星が零れ落ちそうである。

『あかは かりすま~、おじょうさまの いめーじからー なんだど~♪』
「「にゃんでゃどぅ~♪」」
『それじゃあ はじめるんだど~♪ みんな~くるんだど~!!』
『『ゆゆー!!』』

れみりゃが手を上げると 数匹のゆっくり達が画面に現れた。れいむにまりさ、皆が皆にこにこと楽しそうな顔をしている。

「れいみゅもいく!れいみゅもいく!」
「ひにゃも!ひにゃも!」

びっとりとボールに張り付き羨んだ視線を投げつける2匹。
一方テレビの中では、そんな2匹など関係無しにゆっくり達が整列をはじめている。

チャッチャチャラララー♪

BGMが流れ始め体をぽよぽよと揺らしリズムを取りはじめる。

「じゅりゅい! じゅりゅい!」
「ひにゃも! ひにゃも~!」

ボールの中もヒートアップ、精一杯に声を張る。



どんな いろーがすき? あか!

『ぅゆ?』
「「ゆ!?」」

突如として れみりゃが れいむ の りぼん を毟り取り

いちばん さーきに なくなるよ、れいむの おーりぼん♪

『だどぉ♪』

ビリィ


『ゆぎゃああああ!!?』
「「ゆにゃああああ!!?」」

力いっぱいにリボンを引き裂くれみりゃ、一瞬の間を置いてスタジオとボール中に木霊する悲鳴。

『どおじでごんなごどずるのおおおおお!!?』
『うーうー♪ もう2ばんが はじまるんだど~♪』

どんな いろーが すき? くろ!!

『『『ゆ!?』』』
「「ゆ!?」」

いちばん さーきに なくなるよ、まりさの おーぼうし♪

『『『ゆぎゃああああ!!!』』』
「「ゆにゃああああ!!!」」



いーろ、いろ♪ いーろ、いろ♪ いろんな いろが あるうっうー☆
いーろ、いろ♪ いーろ、いろ♪ いろんな いろが あるうー☆

『つぎでさいごだど~♪』
「「ゆ・・・」」

次で最後、ようやくこの地獄のような音楽教室から逃れられる。
2匹は安堵し弱々しい溜息をついた・・・のだが。  

どんな いろーが すき? ぜんぶ!!
ぜんぶの いろが すき!!
みーんな いっしょに なくなるよ
ぜんぶの おまんじゅう
ぜんぶの『おまんじゅう』

『『『ゆ・・・?』』』
「「ゆ・・・?」」


『いっただきまーすだど~♪』


『『『!!!!!』』』
「「!!!!!」」



冬の思い出、みかん箱。
広々な快適空間。保温性にも優れ、タオルケットというゴージャスなオプション付き。
更にはほんのり香る柑橘の芳香が安らぎを提供する。
完成したおニューのハウスはまさに完璧。温州蜜柑に隙は無かった。甘いなさすが温州あまい。


テーブルを見ると、待ち疲れたのか 2匹は仲良く眠りに就いていた。
涎を垂れて白目まで剥くとは 中々の熟睡っぷりだ。春の陽気に当てられたのだろうか。

『つぎは [はみがきじょうずかな] なんだど~♪』





2匹が目覚めるとそこは新世界だった。

「「ゆゆー?」」

最初は戸惑っていた2匹だったが、次第に馴れてきたのかタオルを咥えたり 潜ったりと めいめいに 遊び始めた。
そんな2匹の目にあるものが止まった。竹筒である。
立派な青竹の節を抜いたそれは、さしずめハムスター用のトンネルの様なものであろうか。

「ゆっきゅりー!!」
「ゆっきゅいー!!」
「「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!」」

すっぽりと治まると2匹は頬ずりし、そのまま静かな寝息を立て始めた。



食事を持ってくると2匹の姿がない。
逃げ出したのかとタオルケットを捲ると 転がった竹筒から篭った声が聞こえてきた。

「ゆくくく・・・」
「や、やきゅいわ・・・」

早速遊んでくれるとは入れた甲斐があったというものだ。
筒を持ち上げ傾けると 餅のように伸びた2匹が べとんべとんと垂れ落ちてきた。

「「うゆゆゆ・・・ゆ?」」

ふらふらと目を回していた2匹だったが、食事の匂いを嗅ぎつけたのか途端にしゃっきりする。

「「ゆゆ!! いちゃりゃきましゅ!!」」

はい、どうぞ。
むーちゃ、むーちゃと顔を器にうずめる2匹。
そんな幸せそうな2匹を見ていると こちらまでお腹が一杯になってくる。
思わずパンパンに膨らんだ頬をつついてしまう。

「んゆ!? ゆっきゅりしちぇよー!!」

ご立腹とばかりに ぷんぷんと声をあげる。可愛いなぁ。

「やきゅ!? ゆっきゅい しゃしぇちぇよー!!」

しつこく つつき回していると 遂には泣き出してしまった。
流石にやりすぎたかと 慌てて宥める。だが泣いた顔も可愛いんだから仕方ない。
その後、ようやく泣き止んだ2匹は少し しょっぱくなった食事を平らげた。

「「ごちちょーしゃまでしゅた!!」」

ごちそうさまでした。
きちんと挨拶が言えて偉いなぁ。頭を撫でてやろうと手を伸ばしたら 避けられてしまった。照れ屋さんめ。
ジト目で見上げる2匹を傍目に、空になった器を手にしその場を後にした。




「ゆっきゅり・・・」
「ゆっきゅい・・・」

ポンポンと鞠のように膨らんだお腹で寝転ぶ2匹。食後の一休みはかくも甘美なものである。
うつら うつらと まどろむ意識の中、れいむはふと竹筒のことを思い出した。
あの程よく冷んやりとした感触と 青く爽やかな香り。あれに包まれて眠ればこの上ない幸せが待っていることだろう。
そうと決まれば話は早い、重いお腹を引きずりながら のそのそ と這い寄っていく。

「ゆっきゅりー!!・・・・・うゆ?」

むっちりと肉々しい音を立て つかえるお腹。だが れいむは慌てない。
のぺっと伸びれば進めるだろう、伸縮性に優れた ゆっくりには これくらいどうって事はないのだ。
ただ今回は多少事情が違っていた。

「ゆゆー・・・うゆ!? うゆゆゆ・・・」

腹の中身が邪魔をして 思うように変形出来ないのだ。
更に無理に押し進もうとしたため、れいむの体は完全にはまり込み、行くも帰るも いかなくなってしまった。

「ゆっきゅり しゃしぇちぇよー!!」
「やきゅいわにぇ・・・」

ひなが応えるよう反対の口から除き込む。そこには へちゃむくれた れいむが 涙を流す姿があった。

「ゆーしょ!ゆーしょ!」
「うゆゆゆゆゆ・・・」
「ひにゃー・・・」

何とか引きずり出そうと、れいむの尻を咥えて引っ張ってみる。
しかし れいむの体は抜ける事無く、ずーりずーりと竹筒ごと引きずられていく。
それならば、ひなは反対の口に収まり

「くりゅくりゅー!!」
「うゆぐぐぐぐぐぐぐ!!?」

ひなを中心に円を描くように回転を始めた。遠心力で れいむを すっぽ抜こうという作戦である。

「ひにゃにゃにゃにゃにゃ!!」
「ゆぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!!」

次第に勢いを増していく回転。それに伴いひなは赤く、れいむは青く顔の色が変わっていく。
前鬼後鬼よろしく、それぞれが鬼のような形相になっている。
だが苦労の甲斐もあり、れいむの体は筒から離れようとしていた。
そして遂にその瞬間が訪れた。

「うゆ・・・うえぇぇぇぇぇっ!!!」
「ひ!!? ひにゃああああああ!!!」

回転に耐え切れず、れいむは盛大にリバースしたのだ。
筒内を走る吐瀉物は容赦無く ひなに 襲い掛かり、水鉄砲のように発射された。
青鬼赤鬼とか思った結果が卑小毘沙門天だよ!!
それでも回転は止まらず、れいむの吐瀉物はタオルケットを染めていく。
更に悲劇は続き、遂にはひなも貰いゲロ。喰らいボム発動である。
そうして2匹の弾幕ごっこは幕を閉じた。



数時間後
2匹は元の菓子箱に収められていた。
縮んだ体と箱との隙間、それだけがやたら寂しげだった。

「「・・・やきゅいわにぇ」」



終わり

ムクドリの人

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最終更新:2009年02月24日 22:33
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