ゆっくりいじめ小ネタ502 ゆっくりしていってね!

「ゆっくりしていってね!」
ゆっくりしていっでね!」

散歩中に突然の夕立に襲われた俺が近くの穴ぐらの中に身を隠すと、そこには2匹のゆっくりがいた。
1匹は金髪黒帽子が特徴的なゆっくりまりさと呼ばれるゆっくりで空気を吸い込んで頬を膨らませている。
もう1匹は黒髪赤リボンのゆっくりれいむで、現在出産の真っ只中らしく産道が開いている。

「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりぃ~・・・」

つがいが出産の真っ最中だと言うのにまりさは俺のほうを向いて頬を膨らませている。
一般にこういう自分を大きく見せる行動は威嚇を意味するが、まりさは「ゆっくりしていってね」と言っている。
ならば、愛するパートナーを無視してでも俺に声をかける理由はなんだろうか?

「ああ・・・そうか」
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりぃ~・・・!?」

こいつらにとって誰かをゆっくりさせることは至上命題であると聞いたことがある。
つまり、雨に打たれてゆっくり出来ない俺を見過ごすことが出来ないのだ。
出産の最中にあってなお、俺に「ゆっくりしていってね」とれいむが言ったのが何よりの証拠だろう。

「だったら、ありがたくゆっくりさせてもらうよ」
「ゆっくりしていってね!?」
「ゆっくりぃ~・・・!?」

と言うわけで俺はまりさが膨れている理由を考え、その大きさが座るのに最適であることに気づく。
そして、まりさの厚意に感謝しながら、彼女の帽子を除けて頭に腰掛けた。
なかなかどうして、弾力があって悪くないすわり心地である。

「ゆっくりしていってね!?」
「ゆっく・・・りぃ~!?」
「お、まりさ!もうすぐ産まれるぞ!?」

そう言いながら少しだけ腰を浮かしてまりさの顔をれいむの方に向けさせると再び腰を下ろす。
れいむの「ゆっくりしていってね!」は恐らく「珍しい出産を見ても良いよ」と言うことだろう。
これも厚意を無駄にするわけにはいかないので頬杖を突いて、その様子を見守った。

「ゆっくりー・・・ゆっくりー・・・ゆっ!」
「ゆっくりー!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」
「おお、これが赤ゆっくりなのか~」

すぽんっ!と勢いよく飛び出してきた小ぶりな饅頭がこてんと地面に落ち、転がってゆく。
やがて慣性が失われたところでゆっくりと底部を地に着けて、ぷるぷると小さな体を震わせながら立ち上がる。
れいむ種の彼女はクリッとした大きな瞳を開いてまりさと俺を見つけると、満面の笑みを浮かべた。

「ゆっくりしていってね!」
「さすがゆっくりだな。産まれてすぐでも『ゆっくりしていってね』か」

生まれたてながらも主の本能に則って、しっかりとした言葉遣いで初「ゆっくりしていってね」を済ませた子れいむ。
子ゆっくりを始めてみる俺は思わず彼女をそっと摘んで手のひらの上に乗せると、まじまじと観察をし始めた。
キラキラと輝く双眸でこちらを見つめながらぽよぽよと柔らかい体を動かしつつ、何度も俺にあの言葉を投げかけてくる。

「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」
「れいむ、ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりぃー・・・ゆっくりぃ~・・・!?」

そうして俺が子れいむと戯れている間もれいむとまりさはゆっくりしていってねを連呼していた。
もっとも、れいむの方は途中で2匹目を生む作業に入ったらしく、いささか苦痛交じりの声色だったが。
しかし、そこまで言われてはゆっくりしない訳にも行くまい。

「なあ、おちび? お前はどうゆっくりして欲しいんだ?」
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりぃ~・・・!?」

俺の問いかけに首をかしげながら毎度の言葉を返した子れいむ。
こいつの大きさではまりさのように椅子には出来ないし、れいむのように出産シーンの披露というのも無理だろう。
そこまで考えて、不意にゆっくりが饅頭であることを思い出してしまった。

「お前・・・産まれたばっかなのにそこまで・・・」
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりぃ~!?」「ゆっくりしていってね!」

そのゆっくりとしての氏名を全うせんとする子れいむの覚悟を前にして、俺は深く感動した。
そこまで言うのなら、その想いを無碍にするわけには行かない。
ゴクリとつばを飲み込み、すぅっと息を吸い込んでから、子れいむと目を合わせないように目を瞑ったまま彼女を口に含んだ。

「ゆっくりしていってね!ゆっくり!ゆっくりしていってね!」
「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!?ゆっくりしていってね!?」
「ゆっくりー!ゆっくりしていってね!?」

直後、口の中から子れいむが俺にさあゆっくりしろと言わんばかりに「ゆっくりしていってね!」と声をかけてくる。
その光景を目の当たりにしたれいむもまた、我が子の晴れ姿に感涙しながら「ゆっくりしていってね!」を連呼する。
ただ、まりさはその様子伺うことが出来ない状況にあったためにれいむと比べると反応が薄く、なんとなく気の毒だ。

「まりさ、お前達の赤ちゃん・・・とても美味しかったよ」
「ゆゆっ!?ゆっくりー!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりー!あかちゃん、ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」

俺がまりさの子どもがいかにゆっくりとしての責務を立派に果たしかを伝えると、俺の尻の下で歓喜のあまりにじたばたと暴れ始めた。
一方、れいむはそろそろ2匹目が産まれそうになっているらしく、一生懸命これから産まれるわが子にゆっくりのあり方を説いている。
数十秒後、新たにこの世界に生を受けた子まりさは姉のれいむと同様にゆっくりとしての使命と天命を全うした。

「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」
「おいおい、雨がやんだから仕方ないんだ。分かってくれよ・・・」

気がつけば雨が小降りになっていて、俺が穴ぐらを出ようとすると2匹は柔らかい体を摺り寄せてきた。
どうやらまだ俺と一緒にゆっくりしたいらしい。いじらしい奴らだ。
しかし、小降りになっている間に家に帰るためには急がなければならない。

「そうだ!まりさ、この帽子を傘代わりに借りて行くぞ?」
「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」
「ほら、晴れてるときに返しに来るから!そしたらその時また一緒にゆっくりしよう、な?」

それでもなおも食い下がる2匹を少し乱暴に引っぺがし、俺は家路を急いだ。


それから数日後のある晴れた日、俺が帽子を返しに行くとまたしても熱烈な歓迎を受けた。
どうやら新たに子どもを産んだらしく、5匹ほどの以前のものよりも小さな子ゆっくりの姿があった。
彼女達もまたゆっくりとしての使命に殉じることを至福とするとてもゆっくりした連中ばかり。

「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってねー!ゆっくりしていってねー!」

彼女達の願いを聞き届けて5匹とも食べ終えて家に帰ろうとする俺をまたもや引きとめようとする2匹。
今回はれいむのリボンを再開の約束の証として貰い受け、ゆっくりとした気分で家に帰った。


---あとがき---
いまどき珍しい「ゆっくりしていってね!」しか言えないゆっくり。
このタイプは人間にとってはもっとも都合の良い存在かもしれませんね。


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最終更新:2009年05月30日 23:49
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