「坊ちゃん、あ・な・た だけに、秘密のポケモン、コイキングを、500円で売ってあげるよ~」
…はぁ、何とも情けない現状だ。どうせ私も何も知らない新米トレーナーに買われ、そして…
何故こんな目にあっているのかをお話しよう。
私は、ある小さな島の育て屋で生まれた。主人は私の能力値を調べるなり、
「…使い物にならない能力値だな、ゴミめ。」
もちろん私はショックを受けた。だが、さらに衝撃的だったのは、生まれたばかりの私や、他の生まれて間もない仲間を、逃がそうとしたのだ。
ご存知の通り、私達の体には、殆ど栄養分は無い。しかし、「最弱のポケモン」と呼ばれるように、私達はまともな攻撃手段を持たない。他のポケモンから見れば、格好の獲物、という訳だ。
しかし、私達の主人は逃がそうとした。すぐに死んでしまうと分かっているだろうに。
そこに、一人の中年オヤジがやって来た。
「坊ちゃん、あ・な・た のために、そのポケモン、コイキングを、50円で買ってあげるよ~」
「こんなに沢山いるけど、いいの?」
「もちろんだよ~」
「やった!
ありがとう!」
「やった」と言いたいのはこっちもだ。捨てられるところを助けられたのだから。その時、このオヤジの顔は、仏のように見えた。
そして今、私は500円という値段で売られている。このオヤジは、私達を安値で買い、べらぼうに高い値段で売る、悪魔のような悪徳商人だったのだ。
そして、私達の事を何も知らない新米トレーナー達は、買ってすぐに、水が全く無いこのオツキミ山のポケモンセンターで、仲間を逃がしていく。
仲間の顛末は、どこからともなく漂ってくる腐乱臭が教えてくれた。そして今、私も買われ、仲間と同じ場所へ逝くのだ…。
私を買ったトレーナーは、悲しそうな目で見て、私を手持ちに加えた。
…そして、3年の月日が流れた。
今や吾が輩は、屈強な体を手に入れ、主の為に、波を相手に叩き付け、大地を揺るがし、
水棲のポケモンでありながら、灼熱の火焔を吐き、
そして主と共に、トレーナー界の頂点に君臨する者の前にいる。この者は、主の幼なじみだという。
既に主も相手も、残りはフィールドに出ている一体ずつ。主は吾が輩を、相手はフシギバナを出している。
「フシギバナ、ソーラービーム!」
「これで決めるぞギャラドス!はかいこうせん!」
双方の光線が交差し、同時に当たった。吾が輩は危ないところで耐え、フシギバナは地面に倒れ込んだ。
「…勝った、勝ったぞ!やったぞギャラドス!俺達の勝ちだ!!」
主が吾が輩に抱きついてくる。この時、吾が輩はこう思った。
この人に出会えたのは、奇跡だと。
作 2代目スレ>>666-667
最終更新:2008年10月03日 22:22