「きゃー!この子、可愛い!」
自分のテリトリーを守るため、おっかなびっくりながら飛び出した私を迎えたのは甲高い声。
バトルを経て、私は彼女のポケモンになった。
ひ弱な私を鍛えようと、わざマシンを優先的に与えてくれた。
ポロックで毛並みを整えてくれた。
彼女の期待に応えようと、私も必死に強くなろうとした。
そして、頑張って進化した時の彼女の声は忘れられそうにない。
「怖い!気持ち悪い!!何でこうなるの!?!?!?」
思えば、私と出会った時の彼女の第一声は「可愛い」だった。
可愛くなければ、意味がないの……?
そう問いかけようとするけど、彼女はヒステリックに叫ぶばかりで。
「うるさい、うるさい、うるさーい!!」
進化する前、私のささやくような声を頑張って聞こうとしてくれた彼女と同一人物には思えなかった。
私は、ボックスという所に押し込められた。
他にもポケモンたちがいたけど、彼らの落胆も似たようなものだった。
どれだけ敵を倒し、彼女と仲良くなるか、期待に胸を躍らせていたのに、ちょっとデータを取っただけでここに押し込められたという。
でも、私のように手のひら返しをされたポケモンがいるわけでもなく、それどころか一時は手持ちにいたということで僻むポケモンすらいた。
私の痛みを理解してくれるポケモンはいなかった。
でも、そこで過ごす間にそんな感情は薄れていった。
あまりにも長い時がすぎて、私たちは諦め以外の感情を抱かなくなって、諍いもなくなった。
ある時、急に光の当たる場所に私たちは放り出された。
どれだけ早く6匹の捕まえられるかというゲーム。
追い掛け回すのは、やっぱり彼女くらいのニンゲン。
ああ、私は彼女に捨てられてしまったんだ。
ようやく理解することができた。
馬鹿な私。
いつまでも、何を期待していたんだか。
諦めたつもりでも、いつかは迎えに来てくれるって、心のどこかで思ってた。
私は大人しく新しい主人のボールに収まった。
それがゲームのルールだったし、たとえゲームの賞品でも、野生の感覚が薄れた私には何も知らない土地より何も知らない新しい主人の方が良かった。
「久しぶりだね、ドゴーム」
あれ?
目の前の彼女は、全然知らない人のはずなのに。
でも……もしかして“彼女”なのだろうか?
「虫のいい話だけど……シンオウでやりなおそ?もう絶対、あんなことしないから」
何が起こったのかはわからない。
けれど、私は頷いていた。
「えー!?バクオングなんて連れてるの?可愛くないじゃん」
彼女の友人の無邪気で残酷な問いに、彼女は首を横に振った。
「可愛くないわけないじゃん。ホウエンから連れてきたんだもん。それによく見ると愛嬌ある顔じゃない?」
ただ、気になるのは、ボックスで私と一緒にいたポケモンたち。
彼らも新しい土地でその爪を振るうことが出来たのだろうか?
彼女は私のことは本当に反省していたみたいだけれど、本当に忘れられてしまったポケモンも、いるんじゃないかって……
作 2代目スレ>>669-671
最終更新:2008年10月05日 21:40