「なんで育てたかね~」
小さな女の子は、目の前のパソコンを前にそう言った。好きなポケモンを育てていたら、いつの間にか借りれるボックスは満タン。いつかもらった珍しいポケモンも、今では手入れが全くされてない。
「逃がすのも苦労が水の泡だし。」
ため息をつくと、彼女の肩を叩くやつがいる。
「おはよう。」
「あ、おはよう!」
仲の良いトレーナー仲間。彼女は今まで彼を一方的に利用して来た感がある。しかしそこはずぶとい神経で、今回もボックスについて話を始めた。

「ってわけでさぁ、もう使わないポケモンあげる。そこそこ強いから役に立つと思うよ!」
返事も聞かず、たまたま彼が持っていたボックスの拡張メモリーにポケモンを詰め込んだ。それこそ、ボックス単位で。戦闘用も生まれたばかりも。知らないトレーナーのボックスに集団で閉じ込められた


ため息をついたのは彼の方だ。託児所じゃないのだから。大量のポケモンの扱いに困まり果て、メモリーを放置することにした。


さらに困ったのはポケモンの方だ。知らない場所にきて、日の目すら見れない。以前はバトルタワーで猛威を振るったポケモンも、今やすっかりひなびてしまった。

「このまま死ぬのかなぁ。前の主人に会いたいなぁ。今の主人はどんなポケモン持ってるんだろうなぁ」
かつてバトルタワーで特殊攻撃のメインウェポンだったサーナイトは、隣のマッスグマに話かけた。
「もう外に出られないかなぁ。はらだいこが決まった時にほめてもらえないんだなぁ。」
戦い用に持たされたチイラの実をいつでも大切そうに撫でている。持っていればきっと前の主人が引き取りに来るか、今の主人が使ってくれるかもしれない。淡い期待を込めて、チイラの実を抱えた。


それから数年、マッスグマが寝ているといきなり起こされ、ボールの外に出された。訳が解らず、キョロキョロしている。あのサーナイトも一緒だ。
「ここは?ボックスじゃない?」
いきなり少年が現れ、乱暴にモンスターボールを投げ付ける。抵抗するより、新しい主人に使ってもらえれば。そう思ってマッスグマは捕まった。


「君がくれたマッスグマだけど、良く拾ってくれるよ。」
「ああ、後サーナイトだけど、なんでくれたのか解らないくらいだね。」

狂ったようにポケモンを育てていた彼女は、すっかり大人しくなり、ポケモンセンターで働いている。

「そうなの?むしろ良かったね!トレーナー引退したから、使ってもらえると助かる!」
引退した当時のポケモンは、長い訓練の末、セラピー用のポケモンへ全て送り込んだ。ただ、戦闘用だけは知人、友人へ引き渡していた。

サーナイトもマッスグマも、時たま会える前の主人、使ってくれる今の主人との仲を取り持つことがあるとかないとか。


終わり


作 2代目スレ>>775-776,778

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最終更新:2008年11月05日 21:39