主人は私を育てやと名乗る老夫婦に預けた。
主人のポケモンとなってからすぐの事だった。
私はてっきり主人に育てて貰えるものだとばかり思っていたが、どうやら違うらしい。
「君のあかちゃんがほしいんだ」
と主人は言った。
主人の側にいられないのは悲しいが、自分が母親になるという事は素直に嬉しかった。元気なあかちゃんを産もうと思った。

卵を産んでは主人は卵を引き取りに来た。あかちゃんの側にいられないのは寂しいけれど、主人の下で元気にあかちゃんが育ってくれているのだと思うと不安は無かった。
なんと言っても主人は百戦錬磨の強いトレーナーだ。きっと私のあかちゃん達を強く育ててくれているだろう。
早くあかちゃん達に会いたい。

長い時を経て、ようやく主人の下へ帰る日がやって来た。今までどれだけ卵を産んだだろう。やっと私のあかちゃんをこの手で抱ける日が来たのだ。


主人はポケモンをモンスターボールから出した。私から産まれたポケモンだと言った。
もうあかちゃんとは言えない程立派に逞しく育ったその子を、主人は強くてとても頼りにしていると言った。
嬉しかった。我が子を誇りに思った。
続けて主人は言う。
「他の奴らは弱くて使えそうになかったから捨てた。」
何を言っているか分からなかった。
ス テ タ ?
ナニ ヲ ?
あかちゃん ヲ ?
ワタシ ノ あかちゃん ヲ ?

「ボックスに入りきらないし邪魔だったからな。」

コノヒト ハ ナニ ヲ イッテルノ ?

私は飛び出した。
あかちゃんあかちゃんあかちゃん
私のあかちゃんはどこ?


あぁアあァアあァアァ!!!!

街からそう離れていない草村に私のあかちゃん達はいた。
酷い傷を負っている。息はもう 無い。
沢山の私のあかちゃん。
私のかわいいかわいいあかちゃん。
あかちゃんあかちゃんあかちゃん。
私はくる日もくる日も叫びつづけた。
主人はいつの間にかいなくなっていた。
見かねた誰かが近くの塔に私のあかちゃんを埋葬してくれた。私はそれを見送ると、精魂朽ち果て魂だけの存在になっていた。
これからはずっと側にいるよ。
私のかわいいあかちゃん。


作 2代目スレ>>781-782

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最終更新:2008年11月05日 21:40