俺は、好きなポケモンがいる。フライゴンだ。
だからこそ、他人のフライゴンや強いと言われる他のポケモンにどうしても負けたくなかった。
だから、個体値を厳選し、性格を厳選し、技も遺伝させた。
その過程に孵化させた卵は、もはや数え切れない。
俺の好きなポケモンでも、眼鏡にかなわない子は逃がしていった。
生まれたてで、何をされているのかわからないだろうに、俺はどんどん逃がしていった。
ごめんね、と心の中でつぶやきながら。

その厳選が終わって、ようやく生まれてきた望みの子を育てようと
トロピウスに乗って空を飛んだときだった。
森の中から、何かが見ているような気がした。
気になって空から覗いてみると、木の陰にその「何か」が見えた。
俺が孵化させ、逃がしてきたナックラーたちだった。
空を飛ぶ俺を、そのまま目で追ってきている。
申し訳ないのか、応援してるのか、どうなのか。
遠目からでは何もわからない、何も読めない目が、俺には怖かった。
中には、ここから、この遠くから見てもわかるほどの怪我を負っているのもいた。
ふと眼に思い浮かぶ。
宿のない、食べるもののない、安息のない生活。
そんな地獄にいきなり放り出された彼らは、
全く気にせず孵化させるためにその横をひた走る俺を、どうみていたんだろう。
背筋が寒くなる。
もう一度下を向いたとき、一匹のナックラーと目が合った気がした。
彼は、俺にこういってるように思えた。
その目が、その感情、言葉が、何よりの報復だった。

「本当に好きなら、何で僕らを捨てたの?」
「何で僕らを、先もわからない世界においていったの?」

「ねぇ?何でなの?」


作 初代スレ>>214

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最終更新:2007年10月19日 19:52