いつの世も、ブームの後には流行遅れとなったモノが出てしまう
一人の少女が
森の奥へと進んでいた
その後ろからはミジュマルとポッチャマがとてとてと短い足で必死になってついてきている
ミジュマルはポッチャマを慕い、ポッチャマは優しく手を握って道を先導してあげていた
ミジュマルはまだ幼く小さかったが、ポッチャマはもうすぐ進化しそうなくらい大きくなっていた
そしてきらきらと飾り立てられたミジュマルに対し、ポッチャマは毛並みも悪く飾りもついていない
テレビアニメがきっかけで始まったポッチャマブーム
そして今始まった新しいアニメによって興り始めたミジュマルブーム
その縮図が今ここにあった
即ち
「もう可愛くないし、ダサいし、飽きたし、ミジュマルがいるからポッチャマなんかいらなーい!」
この言葉とともにポッチャマが入っていたモンスターボールが地面に叩きつけられ、砕かれた
駄目押しに足でぐりぐりと踏んづける姿を見て、自分の運命を悟ったポッチャマが泣きだした
「うるさい!媚び売られたって、うざいし邪魔なの!さっさとどっか行ってよ!
…さ、ミジュマルちゃん。おうち帰って一緒に遊ぼうねー」
ミジュマルをポッチャマから引き離し、頬ずりする少女
泣きだしたミジュマルの声の意味なんか考えもしない
ガサッ
彼女の後ろで草むらが揺れた
そこには、とても大きくて立派なラグラージが一匹
「みずたんv」と書かれた、黒く煤汚れた名札がくっついている
少女の悲鳴が辺り一帯に響き渡るが、ここには誰もいない
「わ、私は悪くない、悪くないわよ、だってあなたが流行らなかったから悪いのよ
それに進化したら可愛くなくなるって聞いたから、LV3ですぐ捨てたのも仕方ないじゃない
ね、ね、それに私は『おや』なのよ?ね、だからあっち行ってよ、近づかないで
た、食べるなら私じゃなくてこの二匹の方が美味しいわよ、だから、早くどっか行っでぇぇぇえええ!!」
ラグラージは少女のことなんか見てもいない
ただ、少女の後ろにいる二匹だけを見ている
それにも関らず、少女は誰も聞いていない弁明と命乞いを繰り返す
「も、もも、も、もしかして、チコリータのことまだ怒ってるの?だ、だって、仕方ないじゃない
あの子は可愛かったけど、もう流行遅れになったし進化しちゃったんだもん
だからここで捨てただけじゃない、まさかそのままこの場所で餓死してるなんて思うわけないじゃない!
そんなことでまだ恨んでるなんておかしいわよ、ね、ざっざどどっが行っでよぉ!!」
ラグラージは少女のことなんか目にもくれずに、ポッチャマ達へと手を差し伸べる
ポッチャマはミジュマルをラグラージの肩に乗せてやると、自分も大きな手の上にそっと乗った
そのまま3匹は森の奥へと消えていった
後には
「なんでミジュマルまで行っちゃうのよぉ!!
消えるのはポッチャマとかだけで良いのに!!高かったのに!!」
と喚き散らす少女だけが取り残された
その後のラグラージ達の行方は、誰も知らない
最終更新:2011年07月30日 22:15