蛇足2 弟視点

兄弟たちと別れて数年。俺は立派なハトーボーへと進化していた。
シンボラーと2匹から始まったここでの暮らしは、今では大きな群れへと成長していた。

見回りをしていた息子が何かを見つけたらしく、慌てた様子で飛んでくる。
知らせを受けて駆けつけた俺が見たのは、大勢の幼いマメパト達とワシボン達。

息子にはすぐさま手当のための薬草と木の実を持ってくるように指示を出し、
待っている間に事情を確認する。
予想通り、彼らもまたかつての俺みたいに捨てられたポケモン達らしい。
ワシボン達の方はなんてことない会話を繰り返しているが、
マメパト達の方からかつてよく聞いた言葉混じりの会話…。

平和な国が…』『ハトーボーがいるんだって…』『ここにもハトーボーいるよね?』
『ここってちょっと小さいけど森だよね?』…。

こういう時、俺はいつも陰惨たる気持ちになる。この後の展開が想像できるからだ。

そして。予想通りマメパト達は「平和な国を目指している」と言った。
ハトーボーである俺を見て、ここが平和な国だったんだと喜ぶ彼らに、
「残念ながら違う。俺はハトーボーだが、ここは平和な国ってほどでもないぞ」と言う時ほど辛いものはない。

確かに…自画自賛だがそれなりに良い群だとは思う。同じ境遇のポケモン達を保護してきた結果、
今では鳥ポケモンだけでなく天敵っぽい感じのポケモン、俺より大きなポケモンも大勢いる。
だけどそれで平和かと言うとそうでもなく、もちろん敵や捕食者に襲われることや、
トレーナーと遭遇して命を落とすものだって存在するし、冬になると餌のやりくりすら大変だ。

そのことを伝えた後の反応はそれぞれである。

大体の場合、やっぱりそれでも平和な国を探しに旅立つマメパト達は結構多いのだ。
なんと言っても小さくて弱い俺たち。難しいことが理解できない俺達。
幼いうちに親から引き離され、頼る者もない俺達にとっての数少ない希望の地なのだから。

…俺だって、きっとこの群がなければ、いや、シンボラーに出会っていなければきっとそうしていただろう。
しかしシンボラーは古代からの習性で同じルート以外を飛ぶことはできない。
そして俺は置いて行くことができなかったから、結果としてここにいると言うだけでしかないのだ。

結局俺は平和な国には辿りつけなかった。

だけど。たまごを抱えたシンボラー。息子。娘。大勢の仲間たち。新しく加わったワシボン達とマメパト。
嫌なことや危険なこともたくさんあるけども皆がいる今の生活が。この場所が。
俺自身にとっては確かに何よりも大事なかけがえのない場所なのだ…。

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最終更新:2011年08月01日 17:47