今日もまた、無味乾燥な一日が始まる
もう何日この町から出ていないだろうか?
町を南北に行ったりきたり…
道行く人は皆、自転車で駆ける俺に冷たい視線を投げる
道の真ん中をこんな速度で走っていれば迷惑に違いない
育て家の爺さんは、俺が話しかけると黙って生まれた卵を寄越す
少し前までは散々ポケモンがかわいそうだとか言っていたのに…
きっともう説得は諦めたのだろう
町の住人にも、
育てや夫婦にも煙たがれていることを、俺は知っている
それも慣れてしまえばどうということもない
俺は今、いくつもの卵を孵化させている
少しでも強いポケモンを手に入れるため、育て家に預けている親から吟味した
今孵しているのは
ヒトカゲ…その数もゆうに百を超えている
固体値が一でも足りなければ、まだ目も開かないうちにすぐに捨てた
死んでしまうとわかっていても、俺の良心が咎めることはなかった
…いや、良心なんてものはとっくに失ってしまったのかもしれない
…ふと思い出すのは、故郷を旅立った頃
博士にヒトカゲをもらったときは、俺はまだ固体値や努力地なんて言葉は知らなかった
ただ純粋に、初めてのポケモンに胸を躍らせ、愛情を注いだ
そいつは今俺が簡単に捨ててしまうヒトカゲより、数値的には格段に劣るのだが
リザードンとなって、今もボックスに眠っている
そういえばリーグを制覇したときも、あいつと一緒だった
あいつの顔を、おれはもう何年も見ていない…
…いつから俺はこうなったのだろうか
ポケモンを悪事に使い、その命を尊ばない組織に怒りを感じていたのに
今はただ強さだけを追い求め、ポケモンへの愛情も忘れ、
間接的にではあるが、何千というポケモンを殺した
それでも俺の目から涙はでない
俺の心は痛みを感じない
もう、慣れてしまったから…
いつの間にか俺の心は死に、俺は鬼と化していた
作 初代スレ>>338-339
最終更新:2007年10月19日 20:05