「僕の初めてのポケモンだ!よろしくね、エアームド!」と、
幼い頃の彼は、無邪気な笑顔で私にそう言った。
そして、成長した彼は今、冷たく私に言った。
幼い頃の彼は、初めてのポケモンだったという理由からか、
私をとても気に入ってくれた様だった。
学校に私を連れて行きたいと駄々を捏ね、親に叱られて泣きながら学校へ行ったこともあった。
家に帰ると一番に私に会いに着てくれた。
いつからか、私のこの鎧の様な体と翼は、彼を守る為にあると思っていた。
「へぇ、フカマルっていうんだ、コイツ。」
エアームドのおかげで捕まえられたんだよ、と嬉しそうに言っていたのはついこの間の様な気がする。
そのフカマルは最終進化を遂げ、立派なガブリアスへと成長していた。
そのガブリアスを誇らしそうに見つめたかと思うと、その後に、
「努力値が、個体値が・・・」と、小さく呟き、悲しそうに私を見つめた。
そして、今、
「ばいばい、エアームド。」
信じられなかった。昔から一緒にいたのに、
辛い事も嬉しい事も全て共に分かち合っていた筈なのに、
私が嘗ていた場所にはあのガブリアスがいて、気まずそうに私を見つめている。
彼が「努力値が・・・、個体値・・・性格・・」などと何かを私に説明している・・・?
しかし、何一つ意味が分からなかった。最後に聞こえたのは、
「今日からコイツがエアームドの代わりに俺を守ってくれるから」
彼は、大切な
思い出より、強さを選んだ。
今目の前にいる人は、私の知っている人ではない、そう判断した私は、
その鎧の様な翼を羽ばたかせ、空へと飛び立った。
地上から、私が知っている「彼」は今日姿を消した。
あれから何年も経った。私の鎧のような体と翼はもうボロボロだった。
私は初めて彼と出逢った場所へ住み着いていた。
此処が思い出の場所であろうと、彼が此処へ来ることが無いことを知っていた。
だけど、私は此処を離れることが
いつまでも出来ずにいた。
遠い日のいつか、優しかった頃の彼が迎えに来てくれる様な気が、ずっとして。
作 初代スレ>>772-773
最終更新:2007年10月20日 15:15