何匹逃がしたんだろう。何十…、いや、何百の…
強い奴が生まれてきてさえくれれば良かった。
逃がした奴等のその後のことは、興味が無かったと思う。寧ろ、考えもしなかった。


目の前の敵を見る。またこのポケモンか…
目の前にいる敵、その隣のポケモンを見た後、
自分の隣にいるパートナー、ガブリアスをチラりと見る。
ガブリアスは非常に困ったような顔をしていた。

何故なら、敵の隣にいるのもガブリアスだった。

ギンガ団のアジトに乗り込んだは良いものの、
下っ端も、幹部もガブリアスで勝負を挑んでくる。
フカマルは、生息地の問題なんかもあり、捕まえるのが面倒な面があったりしたはずだが…

「何で?って顔してんな」と、敵は言った。
「ギンガ団の手持ちがガブリアスなのがそんなに不思議か?」
「まぁ、な。おまけに遺伝技…」
「へっ。ラッキーだったぜ。遺伝技を持ったフカマルがそこら中にいたんだからよ。
不思議な話だろ?」

まさか。

「フカマルがいた近くに育て屋があったからな。
大方どっかの無責任なトレーナーが逃がしたりでもしたんだろう。」

その言葉で、全部を理解した。
目の前にいるガブリアス、先程倒した何匹ものガブリアスは、俺の隣にいるガブリアスの、兄弟だ。
俺が、全部逃がした…フカマル達。

気不味そうな顔をして、俺の隣にいるパートナー。
ガブリアスは、きっと最初から分かっていたんだろう。
このアジトへ乗り込んで、敵と戦った時から。
目の前で次々と倒れていくポケモンが、全部自分の兄弟達であることを。


…敵の隣にいるガブリアスを見ると、俺をじっ、と見つめていた。
ガブリアスのその瞳が、「どうして、助けてくれなかったの…」と
静かに語るのを、俺は唯見つめることしか出来なかった。


作 2代目スレ>>188-189

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最終更新:2007年12月07日 18:34