『デラーズ・フリート』



エギーユ・デラーズ中将(0083年時)


【デラーズ・フリート】とは、旧公国軍の大佐エギーユ・デラーズが編成した艦隊であり
宇宙世紀0083年の時点で地球圏に存在する公国軍残党としては最大規模のものであると言われる。
デラーズは、ア・バオア・クーにおける戦闘の最中、崇拝するギレンが政敵であるキシリアに謀殺され
公国軍の全権がキシリアに移行したと知るや、麾下の艦隊を率いて戦線を離脱した。
ギレンとキシリアは、政治的に異なって展望を持っており、それが互いに相いれないものであることは
公国軍の中枢にある将官にとっては周知の事実であったからだ。
デラーズにとって戦争遂行の意義はギレンの理想を貫徹することであって、それ以外の勝利は無意味であった。


戦域から離脱後、デラーズはアクシズ行きを拒む公国軍残党を糾合して艦隊を再編成した。
その後、暗礁宙域に繋留基地「茨の園」を設営し、公国の再興を期していた。
暗礁宙域とは、月と地球の間などに位置する重力の不安定な空間のことで
戦争によって生じたコロニーや宇宙艦艇の残骸などが密集してしまうため、安全な航行が非常に困難な領域である。
そのため、連邦による監視の目も届きにくく、投棄された商船や未登録の小惑星などもあり、潜伏にはうってつけであった。


茨の園は、放棄された資源用小惑星やコロニーの残骸などを利用して設営された。
宇宙艦艇用の港湾や居住施設、そしてMSの生産プラントなどが集積している。
【デラーズ・フリート】は、この茨の園を拠点として、0081年8月15日、ジオン公国国慶節を機にゲリラ活動を開始するのである。


【デラーズ・フリート】は、この潜伏期間中に各地の反地球連邦組織と連携し
袂を分かったアクシズとの共闘も取り付けることで勢力の拡充を計った。
そして0083年。連邦軍が再建計画の一環として実施していた「ガンダム開発計画」の存在を突き止め、一大反抗計画を立案する。


一年戦争から半年あまりが経過した時点で、地球上や、その周辺宙域の公国軍残党のほとんどは武装解除されていた。
しかし、それはあくまでも連邦政府の主観によるもので、資金や物資援助、あるいは市民などの支援などを受けて
多くの公国軍残党が生き延びていた。そして公国軍残党の多くは、ジオン共和国を正当な国家とは認めておらず
ジオン公国が遂行すべき独立戦争は、いまだ継続していると考えていた。
さらに、ギレンが唱えた選民思想をはじめとする主張のすべてを支持するわけではないが
連邦政府の施設や連邦軍の専横に反発する勢力もあった。
そういった活動は、むしろ一年戦争終結後に活発化している。公国軍残党が潜伏するには充分な状況だったのである。


その急先鋒をもって自認する【デラーズ・フリート】は、地球圏の動向を探り、流動する周辺状況を見据え「星の屑作戦」を実行に移した。
0083年10月13日、【デラーズ・フリート】はオーストラリアの連邦軍トリントン基地を襲撃し
搬入されたばかりのガンダム試作2号機、RX-78GP02Aを強奪した。
この機体は、戦術核並の核弾頭を有し、その戦略価値は計り知れない。また、平和の維持と市民の生命財産の守護を標榜する連邦が
自ら南極条約によって使用を禁止したはずの核兵器を使用する機体を製造していたということは、人類に対する重大な背任行為である。


デラーズは、GP02Aの強奪によって、自らの依って立つ大義と行動の正当性を手に入れた。
そして、地球圏に存在する可能な限りのメディアを乗っ取り、民衆に向けてそのことをアピールした。
これが、俗に「デラーズ宣言」と呼ばれるもので、公国軍残党による大規模な反攻作戦としては初めてのケースでもあった。  
この宣言の後、連邦軍が強行した観艦式をGP02Aによって襲撃。装備された核弾頭で参加艦隊の半数以上に甚大な被害を与え
その混乱に乗じて移送中のコロニーを乗っ取り、月への落着軌道に乗せた。
そして、月面都市を狙うと見せかけて連邦の残存艦隊を月軌道上に釘付けした上で標的を地球に変更した。
軌道上に配備された防衛艦隊の抵抗も虚しく、コロニーは地球に落着した。
デラーズは、この作戦の完遂を見届けることなく謀殺されてしまうが、一週間戦争時に動員された部隊とは比較にならないほど
小規模な艦隊によって、ブリティッシュ作戦を再現して見せたのである。

最終更新:2017年08月17日 23:12