「灯台か……」
海沿いに歩き続けた花酒蕨は、岬に立つ灯台を視界に入れていた。
厚底のロングブーツなどという、凡そ運動に適さぬ代物を履いて、太刀を振るっての立ち
回りや跳躍や蹴り技を苦も無く行うだが、流石に厚底ブーツ何ぞで砂浜を歩くのは流石に
苦行ではあった。
周囲を窺う…人影無し。
灯台で休もうかとも思うが場所が悪い。岬に立つ出入り口が一つしか無い建物。要するに
鬼が襲ってきた場合逃げる事が難しい。 最悪の場合、火でも着けられればお終いだ。
視界が広い為鬼の接近に気付きやすく、狭い階段の上に陣取れる為、篭城に向いていると
言えなくも無いが、やはり拠点にすべき場所では無いだろう。
だからこそ…あの灯台に子がいた場合保護して移動させなければならない。
未だに鬼が如何なるものか蕨は知らないが、危険な場所に留まっているのを見過ごす訳に
はいかないだろう。
「力有る者の辛いところよ」
鬼が待ち伏せしている可能性も有るが、最悪のパターンは灯台に侵入した後から鬼が来た
場合だ、戦闘は避けられない。だからといって素通りは出来ない。
短い、呻き声の様なうなり声を出した蕨は、着込んだ防弾ベストの感触を確かめるように
胸をさすると、灯台に向かって歩き出した。
「月夜姫が居ればのう。ここからでも探れるのじゃが」
羽織った白いマントと、兎の耳の様にピンと伸びたリボンを歩く度に揺らしながら、
蕨は灯台へと向かう。
果たして灯台に待ち受けるモノは────?
──────────────────────────────────────
──────────────────────────────────────
擬宝珠檸檬は灯台の上から周囲を眺めていた。
その物言いと振舞いから忘れられてしまいがちだが、まだ幼稚園児でしかない。
知らない内に訳の分からない場所に連れてこられた挙句、身に覚えの無いものを持たされ
て放り出されたとあっては、只恐怖に流されるままに行動して、取り敢えず目に着いた身
を隠せそうな場所に逃げ込むのも無理はなか
った。
こうしていても始まらない。何かしなければならないと頭では解っていても最善の方法な
ど取れないし、そもそも思いつきもしない。
こういう時に必要なものは、精神力や知力よりも、場慣れ…言ってしまえば経験だ。
幼稚園児の檸檬には全く無く、今後の展開になる次第では、永遠に獲得出来ないものだ。
尤も檸檬の知る尤も
頼れる男は、閻魔大王様が鬼威惨に遭遇したゆっくりの如き態度を示
す両津勘吉である為に、檸檬だけいつの間にか元の世界に帰還しているかもしれない。
此処が地獄なら閻魔様が檸檬救出の為にカチコミかけてくるかも知れない。
ともあれそんな事はつゆ知らぬ檸檬は、只々高い所から周囲を見回して他の参加者を探し
続けていた。
「あ、あれは────」
最初に見つけたのは、海沿いに歩いて来る白いマントを羽織った長い金髪の少女。
しかしその頭には、二本の角とも見えるシロモノがピンと伸びていた。
「お、鬼!?」
慌てて視線を巡らすと、大柄な男が、道沿いに灯台へ向かっていた────。
──────────────────────────────────────
ジェイソン・ホーピーズは森を抜けると、真っ直ぐ灯台を目指していた。
灯台を目指し事に特に理由などない。只々目に着いたから向かうだけ。
誰かが居れば鬼であれ子であれ親であれ殺すだけ。
人の形をした殺意は真っ直ぐ灯台を目指して進む。
【I–10(灯台付近の海岸)/01時00分】
【花酒蕨@武装少女マキャヴェリズム】
[役]:親
[状態]健康
[装備]:太刀・棒手裏剣
[道具]:防弾ベスト・閃光弾
[思考・行動]
基本方針:親か子と合流する。鬼がどんなものか確認しておきたい。
1:灯台へ向かう。
その他
※自分の役・各役の勝利条件・制限時間を把握。
ルールの本質に気付きました。
【I–10(灯台)/01時00分】
【擬宝珠 檸檬@こちら葛飾区亀有公園前派出所】
[役]:子
[状態]:健康
[装備]:『お守り』
[道具]: 不明
[思考・行動]
基本方針:生きて帰る。
1:親と合流したい。
2:お、鬼?
その他
※その他・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。
※遠目に見た花酒蕨を鬼と誤認しました
【I–10(灯台付近の道)/01時00分】
【ジェイソン・ボーヒーズ@13日の金曜日シリーズ】
[役]:鬼
[状態]:健康
[装備]:アイスホッケーマスク、マチェット
[道具]:四次元っぽい紙袋、不明支給品3つ
[思考・行動]
基本方針:殺す。見敵必殺。
1:灯台へ向かう
最終更新:2018年06月02日 04:01