「一体何処なんだよ、ここは....!?」
唐突に拉致され、視界を塞がれたままいきなり落下させられた青年、長瀬裕樹はいきなり孤島に身を投げ出されたこの状況に。
つい数か月前まで彼の身に起こった悲劇を思いだし、足を付けた地の上でパニックに陥っていた。


あの、虐殺とも云うべき目を覆いたくなるほどの絶望の惨劇から数か月が過ぎていた。
まだ、あの青年が遺した地獄とも云うべき溶源性アマゾンの悲劇は続いてこそいたが、それを巡る根源と目的がこの世から除去されたからか、徐々にあの地獄はようやく収束を見せ始めていたはずだった。
そして、彼らとともに生きた者で唯一無事に生き残った長瀬も、トラウマを抱えながらも、ようやく訪れた平穏な日々の中で、護れなかった彼等の思いの分まで生きていこうとした矢先だったのだ。

気付けば、あの気味の悪い4Cのような組織に拉致されて、再びあの修羅場と寸分違わぬ戦場に再び駆り出されていた。
しかも、今度は自らの意思で逃げる事すらできない孤島である。これが何を意味するか、最早明白であった。

「.......アイツ等、子を守れとか言ってた....、俺は親、つまり俺も鬼から逃げるか、子を守る....多分、鬼は....」

何とか正常でいようと、奴らから聞かされた事項を必死に唱えていく。
恐らく、「鬼」と呼ばれる連中は自分、いや共にいた少年が今まで狩っていた「化け物」の類だろう。

「...何で、また俺がやんなきゃいけねぇんだよ....!」

この世に殺されていった『彼』と同じく、生き延びるにはどんな相手だろうと戦うしかない。
負ければ、問答無用で死ぬ。誰にも見つけられず、二度と帰れずに朽ち果てていく。
「それって、結局、アイツと同じ事.....うっ」

「おぁ....げっ....がは....っ」
長瀬の脳裏に、あの極限の中で機関銃に撃たれ痛みを叫び続ける少年の姿がフラッシュバックし、激しく嘔吐する。
脳裏に焼き付けられたあの光景。一度平穏に戻されたからこそ、殺し合いに巻き込まれたショックは常人より強烈であった。

「が....っ、はぁ、はぁっ.......」
数分間、一連の思考がどん底にまで落ち切った後、吐く物を無くし、体力を消耗させた長瀬は、生気を搾り取られた虚ろな目で、土で汚れたパラシュートに取り付けられていたデイパックを認識した。
「何だ、これ....そ、そうだ....まだ、ゼロと決まったわけじゃねぇ....」

視界を塞がれて長瀬は気づいていなかったが、奴等は長瀬に物資であるデイパックを支給していたのだ。

恐らく、何か自分をサポートする物があるはずだ。いや、子を守るという「親」の立場上、何か「鬼」に立ち向かうための武器が入っているのかもしれない。

そんな一縷の望みに縋り、長瀬は破くように必死の形相でパックを開いた。

長瀬の掌は、配線が絡み合った基盤のような感触を感じ、それを真っ先に取り出す。

「....何だこれは」

そこには、何世代も前の、時代錯誤とも言える大きいジャンクパーツの塊があった。
....何かの装置か、ひょっとするとダイナマイトかもしれない。そんな薄すぎる期待に任せて、ジャンク装置に挟まれてあった使い方のメモに目を通していく――――




『タコ消しマシン 徹夜続きで完成させました
 タコの形をしたものを一瞬のうちに消してしまう恐ろしいマシンです、たこ焼き屋さんの近所では使わないで下さい
 Apple kid』



「タコの形をした奴ってどんな奴だよ!!!アマゾンでもそんな奴いねぇよ!!!!!」




一気に緊張が怒りに代わっていった。なんなんだこれは、連中はひょっとしてバカなのか。

そんなやり場のない怒りに身を任せ、まだ重みのあるデイパックから二個目の品に触れる―――

ゴト、と長瀬の指が、ひんやりとした鉄のトリガーに触れた。


「....っ!」

長瀬は息を呑む。二個目は恐らく本物の銃器。
デイパックのサイズから考えると、恐らく拳銃か小銃の類だろう。触れた覚えのあるその感覚に、長瀬の空気は一気に殺し合いへと引き戻される。

恐る恐る取り出すと、そこには、見覚えのあるグレネードの弾頭が、ビーコンを発しながら長瀬の眼前を迎えていた。

「......っ!たしか、こいつは4Cが使ってた....」
一度だけ、その異様な形をした銃口に見覚えがあった。

圧裂弾。長瀬は使用する機会を見たことこそ無かったが、アマゾンの少年、千翼を追っていた時に4Cの女性、水澤美月が構えているのを見たことがあった。

4Cの人間がかなり丁重そうに扱っているのを見た所だと、ビーコンの警告音が頷くようにかなり危険な類の武器である事は明らかだった。
恐らく、対アマゾン用の兵器。これなら多少は鬼と交戦はできるかもしれないが、使用経験があるといえ銃器に関してド素人の自分が扱えるのかという疑問、
そして長瀬はその威力がどれ程の物なのかが分からない事に対する不安がよぎり、その引き金を持つ手を震えさせた。

しかもこれに関しては説明書すらない。安全装置の様な物は志藤から教わった要領で何とか外せるとしても、あまりにも訓練のない青年が持つには危険すぎる物なのは明白だ。

...しかし、それでも。

「やるしか、ねぇのかよ」
武器を持っている以上は、戦える。戦う権利は、あるのだ。

例え千翼のように、最早一縷の望みのない状況だったと、しても。

――――生きる為に、狩る。
狩れる為の力は、確かにある。


「――――見てろ。狩り、開始だ」

おぼつかない足取りながらも、絶望の中で必死に生きた少年を想うと、この地獄の中に生きる覚悟は、少しだけできた。
まだ見ぬ「子」を護るために青年はパラシュートを取り外し、僅かづつ、歩き出していった。



【C-02/深夜】
【長瀬裕樹@仮面ライダーアマゾンズ】
[役]:親
[状態]:健康、トラウマによる精神ダメージ、体力消耗(小)
[装備]: 圧裂弾@仮面ライダーアマゾンズ
[道具]: デイパック、タコ消しマシン@MOTHER 2
[思考・行動] 生き延びる為に、鬼を狩る。
基本方針: 圧裂弾の弾倉がある限りは子を護る。武器が欲しい。
1: 狩り、開始だ
2: 子や鬼ってのがどんなのか分からねぇが、とりあえず人と会って情報交換がしたい。
【人物解説】
17歳、不良集団「TEAM X」のリーダー。
親との不和から家を飛び出し、4Cから脱走したアマゾンの少年、千翼をチームに勧誘、千翼の能力を利用したアマゾン狩りの動画を配信してアフィリエイト収入を稼いでいた。
しかし、元同級生で死んだはずの少女、イユに惹かれた千翼が離脱した後、仲間であったタクがウォーターサーバー「aroma ozone」を飲んだ事が原因でアマゾンに変貌、駆除される。
その出来事にショックを受け、元凶である溶原性細胞に強い憎しみを抱くも、終盤に千翼こそが元凶であった事を知ってしまう。
しかし、彼の意思に関係なく理不尽に痛めつけられる千翼を見て、彼を護ろうと奔走していく。
最後はアマゾン駆除組織4Cに乗り込み返り討ちに遭う千翼を庇い、彼を逃がして最後の時間を与える事に成功。
全てが終わった後は不登校だった学校に再び通い始め、千翼とイユのプリクラを彼等の生きた証として大切にしていた。


ちなみに、生身の一般人のはずなのにシグマタイプのアマゾンの制止に成功したり、元アメリカ特殊部隊所属の黒崎のパンチを受けても数秒したら立ち上がって彼を追いかけたり、
千翼が太刀打ちすらできなかったアマゾンアルファに頭部からショットガンを撃ちこみ、千翼を逃がすなどやたら人間離れした身体能力が目立っている。
最終更新:2018年06月30日 23:59