アルシアは無言で周囲を見回す。取り逃がした少年と少女の姿は何処にも見えない。
途中で見つけた道に沿って走ったのが災いして、アルシアは真っ直ぐ西に向かった桐山を完全に見失っていた。
獲物を二人とも逃したのは失態だ、主人が知れば落胆するだろう。

「…………」

失態を挽回する為にアルシアは暫しの間考える。どうすれば獲物を効率よく狩れるのか。
先程の二人の様に、高い戦闘能力を持つ者や、逃げ足の速い者を確実に狩る為にはどうすれば良いか?
アルシアは考えて、紙袋に嘆きの鉈を仕舞い込む。
目立つ武器を隠して無力な振りをして油断させ、接近して一気に仕留めるのだ。
明らかにサイズが小さ過ぎる紙袋に、嘆きの鉈が吸い込まれていく。
アルシアは特に何も思わない。主人が武器を影に変えて、質量も大きさも関係無しに持ち歩いているのと、同じ魔導が使われているのかと思っただけだ。
この紙袋を用いれば大荷物も運ぶことが出来るというなら、さっき戦ったあの少年の死体を持って帰るのも良いだろう。
主人は喜んで操躯兵にするだろうから。

「………………?」

そんな事を考えながら、何処へ行こうか決めあぐねていたアルシアは、遠くから聞こえてくる声に気付いた。



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森を抜けて学校の前に立った今泉慎太郎は周囲を見回す。
エリアを越えたやり取りを経て、互いの位置を確認した今泉は、リクに校舎の何処かに隠れている様に伝えると、D-06に在る学校目指して移動したのだ。
今泉としては怖くて嫌だったのだが、流石に危険人物がうろついている中で、子供を移動させる訳にはいかなかった。
拡声器は襲われた時の用心として手に持っている。鈍器の代わりにはなるだろう。
おっかなびっくり周囲を窺いながら歩き続け、ついに今泉は学校に着いたのだ。
学校に着いたぞ!!と叫びたい気持ちを抑えて校舎へ入ろうとした今泉は、学校へと近づいて来る少女を見つけた。

「と、止まれ!」

パッと見た感じ相手は『子』だが、緊張のあまり裏返った声で叫んでしまった。
相手に要らぬ警戒をさせたか?と、直ぐに後悔して様子を窺うと、相手は全くの無表情で佇んでいた。
じろじろと眺め回しても何の反応も見せない。時折自分と同じ様に周囲を見回す少女は、黒い髪と血の気の無い白い肌に、貫頭衣を纏っただけだ。
あまり見ると変質者扱いされそうなので、目線を外して声を掛けてみる。

「ぼ…ぼくは今泉といいます、警察の者です」

話しかけても無反応。こちらに意識を向けてはいるが返事は返ってこない。

「ど、どうかしましたか?」

只ならぬ様子に問い掛ける、鬼に襲われて命からがら逃げてきたのか。
ひょっとしたら、性的暴行でも受けたのか………?
未だ見ぬ鬼に、今泉の胸中に怒りが湧き起こる。

「………………………」

少女は暫く今泉を無言で見詰めてから。

「さっき聞こえた声は、貴方のもの?」

「え?そうですよ。私達の声を聞いてきたんですか?」

無言で頷いた少女は、今泉が語った『校舎の中に待っている人が居るから一緒に探そう』という提案に「はい」と短く返事した。


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少女────アルシアは今泉の様子を無感情に観察していた。
元々今泉とリクの拡声器を用いた会話ん聞きつけて学校までやって来て今泉と遭遇。ら
拡声器というものを知らないアルシアは、明らかに声が聞こえる筈の無い距離まで声を届かせた今泉を、魔道の技を使う者と認識していた。
迂闊に手を出せば返り討ちに遭うかもしれない。
そこで様子を見ていたのだが、今泉はアルシアに感情が有れば驚くか呆れるほどに隙だらけだ。
即殺そうとしたが、もう一人校舎────この建物の名前らしい────内に居るらしいので、今泉を殺して逃げられたり警戒されたりすると面倒なので、当分は生かしておく事にする。
取り敢えずは二人揃うまで。


【D-06(鎌石小中学校前/01時22分】

【今泉慎太郎@古畑任三郎】
[役]:親
[状態]:健康
[装備]:警察手帳、拡声器@バトルロワイアル
[道具]:デイパック
[思考・行動]
基本方針:可能な限り参加者を生還させる。
1:子を守る。校舎内の桜井リクと合流する
2:親を探す。
3:鬼には出くわしたくない。
*その他
自分の役、各役の勝利条件・制限時間を把握。

※桜井リクご学校にいることを把握
※少女(アルシア)の顔を把握しました。鬼に襲われたものと思っています


【アルシア@白貌の伝道師】
[役]:鬼
[状態]健康 魔力消費(中)
[装備]:嘆きの鉈・群鮫@白貌の伝道師・紐付き柳葉刀@BLACK LAGOON
[道具]:スマートフォン(鬼)
[思考・行動]
基本方針:出逢った全てを殺す
1:桐山を追う。殺したら死体を回収する
2:次からは獲物の脚を最初に潰す
3:校舎内のもう一人と合流したら纏めて殺す
※その他・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。
※桐山の顔を把握しました
※アリス・カータレットの顔を把握しました
※武器は全て4次元紙袋に収納しています。

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「居ないね」

「居ないわね」

交番の周囲を探索するしんのすけと、交番の内部を探索するエスターが声を交わす。
拡声器を通じた桜井リクと『古畑』の遣り取りを聞いた三人はこの交番までやって来たのだが、『古畑』こと今泉は学校に向かって移動していた為に、当然のように行き違いになっていた。
今はしんのすけが交番の周囲を探索し、エスターは交番の内部で武器になるものを物色していた。

(うーん。私の向かった方向からすると、この位置に来るわけが無いんだけれど)

そしてグレーテルは、エスターを横目で監視しながら地図を見ていた。
グレーテルの感覚からすると、現在地に居るわけが無いのだから、気になるのは当然だった。
この地図には交番が記載されていないが、『
古畑』が話していた相手は学校に居る。
つまりは此処は学校にほど近い場所なのだろう。
だがそうすると、グレーテルの感覚と違い、大分北へと動いた事になる。

(まあ、地図を見て走った訳ではないものね)

グレーテルはそう結論を出すと、二人に向かって提案する。

「『古畑』さんは、学校に向かうって言ってたから私達も行ってみましょう」

グレーテルとしては、なるべく多くの人と会いたいのだから、当然の提案である。

「けど、学校の場所が分からないぞ」

しんのすけも他の人、出来れば大人と接触したいので否定しない。

「私達は『古畑』さんを見ていないし、私達の来た方向とは逆の方向に有るんじゃないかしら」

エスターとしては『親』とあう盾が欲しい。

三者三様ではあるが、彼等は他者との接触を望んでいた。

「なるほど、では、向かいますか」

しんのすけが言うと、三人は学校に向かって移動を開始した。


チーム見た目は子供】
【E-06(交番)01時15分】

【グレーテル@BLACK LAGOON】
[役]:子
[状態]軽トラを運転中
[装備]:BAR
[道具]:不明(社務所で凶器として使えそうなものを中心に回収)
[思考・行動]
基本方針:皆殺し
1:取り敢えず学校に行く。
※その他 自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・制限時間は全て未把握
地図(Bルート)を交番で把握しました。

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[役]:子
[状態]:健康
[装備]:『お守り』
[道具]:なし
[思考・行動]
基本方針:ネネちゃん家に行く。
1:みんなで学校に行く。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。

【エスター@エスター】
[役]:親
[状態]:健康
[装備]:ハンマー、青酸カリ@バトルロワイアル
[道具]
[思考・行動]
基本方針:子のふりをして立ち回る。
1:子として親の庇護を受けつつ、参加者の情報を集める。
2:制限時間が近づいたら、親を減らす。
*その他
自分の役、各役の勝利条件、制限時間を把握。
※交番内で武器になりそうなものを入手したかも知れません。
最終更新:2018年08月02日 01:43