「グヌヌヌ...許さん、許さんぞぉ!」


老人は憤慨していた。

大量に蓄えた白髭と頭部を覆う大量の白髪は見るものに賢者を連想させ、その鍛え上げられた肉体は若者よりも精気を溢れさせている。

そんな老人が何故ここまで怒っているのか。
それは、こんな遊戯に招かれてしまったことである。

説明は受けた。自分の役割も知った。見事勝利すれば現世に生還できることも知った。それらを受け入れた上で、彼はこめかみに血管を浮き立たせる。

「このワシを奴隷のように、しかもこんな箱庭に閉じ込めるだとぉ!?ふざけおってゴミ共がぁぁぁ!!」

彼の怒りは正義感によるものなどではなかった。
それもそのはず。
彼の名はDr.ヘル。
世界制服を夢見る邪悪の化身ともいうべき狂科学者なのだから。

彼はその誰よりも優れた天才的な頭脳を有しているが故に、誰よりもプライドが高かった。
そんな彼が、強制的に鬼ごっこに参加させられれば憤慨のひとつや二つもするだろう。

「まあ、ワシが鬼、それがあの三役の中では適役だと判断したことだけは褒めてやろう。今だけは貴様らゴミ共―――いや」

言葉を区切り、深く息を吸い込み、ピタリと止める。

そして

「聞こえておるのだろう兜十蔵ォォォォ~~~~~~~!!!今だけは貴様の悪戯に付き合ってやろう!だが、それが終われば次は貴様の番じゃあああああ!!!」

天高く、爆弾のような怒声が響き渡った。

兜十蔵。
それは、Dr.ヘルの最大にして唯一のライバルである。
ヘルはこのおにごっこのルール説明時に兜十蔵の声や痕跡を捉えたわけではない。
だが確信していた。
死んだはずの者を復活させ拉致しあまつさえ半ば強制的に従わせるなどという覇王染みた行い、それをこのDr.ヘルにできるのは自分とほぼ同等の天才的頭脳を持つあの男をおいて他にいないと。
奴は既に死んでいたはずだが、マジンガーZに殺されたはずの自分がこうして復活した以上、奴も復活していてもなんら不思議ではない。

「貴様は唯一ワシに届きうる頭脳の持ち主であることは認めておる。だが、それはあくまでも可能性の話!貴様がワシの上に立つなど断じて認めんぞぉぉぉ!!」

己が怒りとプライドを振りかざし、屈強な老人は駆ける。
幾つになっても、どんな状況に陥ろうとも、彼の突き進む道はただ一つ。
"世界征服"という漢の覇道、それだけだ。



【C-5/00時11分】
【Dr.ヘル@真マジンガーZERO】
[役]:鬼
[状態]:超健康
[装備]:バードスの杖(ただし現在は機能が停止しているため実質は頑丈な棍棒程度、本人はまだ気がついていない)
[道具]:四次元っぽい紙袋、不明支給品3つ
[思考・行動]
基本方針:戦いに勝利しこの企画の主催にいるであろう兜十蔵をぶち殺す。その後に改めて世界征服に乗り出す
1:鬼として勝利する。
2:従来のルール以外にゲームをクリアする方法があれば、兜十蔵の鼻を明かす為にもそちらを優先したい。



※補足
  • 兜十蔵
天才的科学者にしてDr.ヘルの因縁のライバル。
本当にこの企画に関わっているかは不明。

  • 人物解説
おなじみマジンガーシリーズのボスキャラのマッドサイエンティスト。
野望は世界制服、機械獣を従えているなど基本的には従来のマジンガーシリーズに沿っているが、一番の違いはその肉体での強さ。
老人とは思えぬほど鍛え上げられた肉体で『機械道空手』を駆使し、拳銃を装備したボディーガード程度では何人束になろうが時間稼ぎすらできないほど強い。超強い。
しかも、従来のマジンガーシリーズでも発揮してきた悪魔的な頭脳は衰えることなく健在で、まさに『暴』と『智』を兼ね備えた数多のDr.ヘルの中でも最強のDr.ヘル。
部下のことはそれなりに重宝し、その身と引き換えに手柄をあげた時などには心底褒め称えたりするものの、それはあくまでも『面白いおもちゃは手放したくないなぁ』程度の愛情であり、部下が人質などにされれば一瞬躊躇って容赦なく敵ごと捻りつぶす。
最終更新:2018年04月11日 09:03