「ふむ。鬼ごっこ、か……」

デイパックの中に印刷された文字を読み、風見雄二は独り呟く。
そこに書かれている内容は要するに特殊なルールの鬼ごっこだ。死ぬという物騒な言葉もあるが、荒事に慣れている雄二は狼狽えることなく、今回の鬼ごっこが『そういうもの』だと理解する。
そもそも突然パラシュートで落下させられ、支給されたデイパックに銃器が入っていた時点で、何らかの危険な事に巻き込まれているということは十分に予想出来ていた。
勝利条件を見るに親と子は協力関係を結べるが、鬼は単独でそれらを捕まえるか、もしくは殺害する可能性がある。……それはつまり、鬼がそれほど強いということだろう。

風見雄二は裏の世界で『I-9029』としてその名を恐れられている実力者だが、この鬼ごっこでは『鬼』ではなく『親』に配役されている。バランスブレイカーな存在が親や子にいる場合、鬼が不利になることは黒幕も承知してのことだろう。
であれば鬼には自分以上の化物が居ると考えるのが妥当である。それとも強力な支給品を渡され、戦力を大幅に強化されているのか。はたまた単純に鬼の数が親や子と総合した数よりも多いのか……。
勝利条件や制限時間を教えられただけでは、あまりにも情報が少なすぎる。鬼と遭遇したいとは考えないが、やはり一度は鬼を見て、どのような者が属しているのか確認する必要があるだろう。
しかし鬼を減らすことを優先するつもりはない。雄二が狙う相手は鬼ではなく、この鬼ごっこを仕組んだ主催者だ。

勝利条件を見る限り、親と子が同時に勝つことは有り得ない。そして敗北者の末路も、記されてこそいないが……ある程度の想像は出来る。
ならば親と子が同時に脱出する方法は、主催者を打倒するくらいしかないだろう。万が一に主催者に接触せずに脱出する方法があったとしても、未知の技術でいきなり参加者達を連れ去ることが出来た連中だ。後で何をされるのか、わからない。
それに勝利をすることで無事に帰ることを保証されるかといえば、そうでもない。姿も見せない主催者を信用しろということに無理がある。
情報が一切ない主催者を倒すという道は困難を極めるだろうが、信用出来ない者の掌で踊るよりはまだマシだろう。
もっとも雄二の性格上、親は子を守るというルールには従うことになるだろう。子に限らず、親を守ることになるかもしれない。
一通りの方針を決定して、風見雄二は歩き出す。ただ一つ、心配な事があるというなら。

(俺以外は巻き込まれていなければ良いが……)

脳裏に思い浮かべたのは美浜学園の生徒達。彼女達が巻き込まれていないことを雄二は願うのだった。

【???/00時04分】
【風見雄二@グリザイアシリーズ】
[役]:親
[状態]:健康
[装備]:グロック17@現実
[道具]:デイパック(不明支給品1)
[思考・行動]
基本方針:親と子が共に脱出するために主催者を打倒する
1:他の親や子と接触して、情報を集める
2:単独行動中で鬼に遭遇した場合は、無理に対処せず撤退も視野に入れる
※その他
自分の役・各役の勝利条件・制限時間を把握。

『人物紹介』 
10代前半で家族を相次いで亡くし天涯孤独となった後、テロリストの少年兵育成学校を経てそのテロリストの本部を襲撃・壊滅させ残った雄二を拾った日下部麻子に育てられ裏の世界で生きるようになった。
麻子の後を継ぐ形で「会社」の“掃除人”として活動しており、裏の世界ではエース・ナンバーである「9029」の名で恐れられている。「会社」での階級は特務伍長。ある時「普通の学校に通いたい」と希望したことから、知人かつ美浜学園長である千鶴の縁により、「カナダからの帰国生」という名目で美浜学園の2年生として転入する。
最終更新:2018年04月14日 01:26