「いきなりこんな辺鄙な島に連れてきて、テニスじゃあなく鬼ごっこしろとは舐めたマネしてくれるじゃねーの」
絶望鬼ごっこの会場となる島の端。
その海岸線、波打ち際に当たる場所で右手にテニスラケット、左手にいつの間にかポケットに入っていたお守りを手に、一人の高貴な立ち振る舞いの少年が佇んでいた。
少年の名は、跡部景吾と言った。
跡部王国の国家元首にして、氷帝学園の王(キング)として君臨するテニスプレイヤー。
そんな彼が見つめるのは遥かな水平線の彼方。
突然の拉致に動揺し、故郷である日本に郷愁の念を抱いたのではない。
まず彼はこの怪しげな島が日本からどの程度離れているか、あるいはこの近くに島があるか概算を出そうとしたのだ。
一般的な人の視力でも水平線の三キロから四キロほどの空間なら三平方の定理を用いて距離を割り出せるという。
卓越した彼の眼力(インサイト)を持ってすれば、常人より遥かに広範囲かつ長距離を見渡せる、はずだった。
しかし、
「この俺様の跡部王国(キングダム)でもスケスケにできねェってのはどういう事だ…?」
見えない。
本来なら濃霧程度ではビクともしないはずの跡部王国ですら、視界に広がる霧の果てを暴くことはできなかった。
同時に、今自分の置かれている状況が異常事態である、ということを彼はその聡明な頭脳で理解する。
「成程、一筋縄じゃあいかねーらしいってコトは認めてやろうじゃねーの」
だが、この奇妙なゲームに巻き込まれてなお、跡部は揺るがない。
これぞ正にザ・王(キング)の風格ッ!
冷静に紙袋を引っ掴み、ともすれば亡国の危機に瀕しているかもしれない跡部王国の王(キング)として、打破に動く。
自分を拉致した者たちの尻尾を掴み、事情如何によっては社会的制裁を加えるのだ。
――帝、氷帝、氷帝!氷帝!
そんな彼を讃える凱歌がどこからともなく響き続ける。まるで彼の背中を押すように。
「あーん?」
コールを受けつつ踏み出した跡部は、お守りが入っていたテニスウェアの胸ポケット、
そこに印刷されていた覚えのない『子』の文字とそれに伴った勝利条件を、その美しき眼力(インサイト)で捉えた。
どうやらこの鬼ごっこを開催した主催はこの跡部景吾が無様に逃げ回るさまを期待しているらしい。
(だが、こそこそ逃げ回るのは性に合わねェ…狙うは鬼ごっこそのものの転覆だッ!
そう、鬼ごっこだろうとテニスだろうと――――)
―――氷帝!氷帝!氷帝!氷帝!氷帝!
―――勝つのは氷帝!勝つのは跡部! 負けるの青学!
―――氷帝!氷帝!氷帝!氷帝!氷帝!
「勝つのは―――俺だ」
見果てぬ霧の終端に待つ水平線に勝利を刻むべく―――王(キング)、出陣。
【???/深夜】
【跡部景吾@テニスの王子様】
[役]:子
[状態]:健康
[装備]:『お守り』、テニスラケット
[道具]:なし
[思考・行動]
基本方針:鬼ごっこの転覆
1:まずは他の参加者との接触。可能ならテニスボールが欲しい
※その他
自分の役は把握、その他
ルールについては移動しながら把握予定。
人物解説……氷帝学園中等部3年A組1番。別名「王様(キング)」(本人命名)。
同校の生徒会長にしてテニス部部長であり、そのプレースタイルは卓越した眼力(インサイト)を用い相手の弱点を的確に見抜き上を行く、正に美技と呼ぶにふさわしいもの。
跡部財閥の御曹司ながらそれを鼻にかけることもなく努力に励む努力家であり、スポーツマンとしての仲間意識も強い。
最終更新:2018年04月14日 01:35