「これ絶対ヤバいパターンだよ……あのときみたいにまた鬼ごっこだよ……」
非常灯の明かりの下で水晶と一緒についていた紙を読んだ少年、桜井悠は、無人のシアターで膝を抱えていた。
そう、鬼達が子を捕まえておくためのショッピングモール、その出口から一番遠いアミューズメントフロアにあるシアターにである。
そもそも元来の予定されていた鬼ごっこは悠達三人を確実に絶望させ確実に殺し切るために用意されたものだ。それを大規模・大人数・複雑化させコンセプトの段階から大幅に変更したたものがこの鬼ごっこである。
というわけで、主催者の鬼によって嫌がらせのような――というか100%の嫌がらせで初期地点を最も不利な場所にさせられていた。はっきり言って鬼役へのチュートリアル用の的である。そのことに本人が気づくはずもないがそれはそれとしてマッハで絶望していた。前回は十六人の子供達がいたのに今回はまさかの一人だからだ。
「何なんだよこのクソゲー……だいたい親ってなんだよなんで死ぬんだよどんな原理だよ……ていうかなんで僕なんだよ……お腹痛い……」
しかも、悠は足が遅い。というか運動が苦手だ。ゲーマーで機械には強いが、そういった人間が鬼ごっこで主人公になれないことは悠自身一番わかっている。水晶という鬼に対抗できるアイテムは嬉しいが、本音としては鬼の位置がわかるタブレットでもあった方が百倍嬉しかった。
そして何より、悠の勘が状況が最悪であると言っていた。小動物が姿の見えない捕食者を鋭敏に察知するように、悠も迫る『死』を敏感に感じ取る事ができる。それが悠が異変に気づいたにも関わらずひたすらに息を潜めていた理由であった。もし仮にすぐ出ていれば殺人鬼に刃物やら鈍器やら銃器やらなんだかよくわからない禍々しいアイテムで命を落としていたであろう。それを避け得ることができるあたり悠は間違いなくこの鬼ごっこに耐え得る能力を持っているのだが、そんなことは本人にとってなんの慰めにもならなかった。
「……もしかして僕以外も。葵はトイレだったよね。」
幸か不幸か、一緒に映画を見る予定だった宮原葵はここにはいない。自分だけ巻き込まれたのか二人がバラバラに巻き込まれたのか、判断のしようがない――否。
(!イケる!今なら、多分!)
悠の勘が感じ取る脅威が、下がった。
行くか行くまいか、ここが正念場。
【F-05/00時10分】
【桜井悠@絶望鬼ごっこ】
[役]:子
[状態]:健康
[装備]:『水晶』
[道具]:若干のお小遣いなど
[思考・行動]
基本方針:死にたくない。
1:鬼に警戒。
2:幼なじみが巻き込まれていたら合流したい。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。
人物解説……当企画のパロディ元である『絶望鬼ごっこ』シリーズのキャラで小学六年生。二巻の『くらやみの地獄ショッピングモール』からの参戦。ゲーマーで機械に強いが運動はダメダメ。ただし自分や周囲に迫る命の危機に関しては鋭い勘を発揮し回避する。この企画では今現在二人目のリピーターである。なお男だ。
最終更新:2018年04月29日 19:03