三白眼を悩ましげに歪める少女が一人。

「また変なヤツがなんかしたのか?」

 そう呟くとシャツに引っ掛けてあるオーバーオールを苛立たしげにイジる。吉永双葉は民家の玄関先で赤い空を睨んだ。
 彼女も他の子と同様になんだかよくわかんないうちになんだかよくわかんない所に連れて来られていたのだ。その上ポケットには謎の板状の機械――彼女がそれをスマートフォンと知ることはない――まで入れられていた。

「鬼ごっこってなんだよ。」

 バサバサとそこら中にバラ撒かれているビラから趣旨を理解すると握り潰して投げ捨てる。なんか見知らぬ町並みだが、とりあえず人に話を聞こう、まさかいきなり鬼ごっこのルール通りに突っ込んでくるバカはいないだろうしもしいたらとりあえず一発殴って黙らしてやる、そんなことを頭の中で言葉にすることもなく思いながらずんずん歩く。さっきまで普通に自宅の近くを歩いてたんだから少し歩けば見知った道に出るだろうという常識的な考え――即ちこの場での楽観もあった。

「で、アタシって鬼なのか?」

 彼女は極めてオーソドックスに、その行動を開始する。一人の怒れる猛獣は、こうしてごく普通に鬼ごっこへと足を踏み入れた。



【H-08/00時09分】
【吉永双葉@吉永さん家のガーゴイル】
[役]:子
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:『スマートフォン(子)』
[思考・行動]
基本方針:家に帰る。
1:とりあえず人と会う。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。
人物解説……短気・勝ち気・男勝りとどこに出しても恥ずかしくないお転婆少女。プロレス好きで運動神経がいい以外は特段の能力を持たないが、周囲にガーゴイルやら錬金術師やらがいるため超常現象には慣れている。ファミ通文庫版は絶版だがつばさ文庫版はまだ書店にあるかもしれない。
最終更新:2018年05月16日 16:12