手にしっくり馴染むのは、ドスだ。
 デイパックという容量の関係上ドスにされたのたのであろう、何か長いものを強引に詰め込もうとしたような変な癖のついたデイパックから取り出したそれは、自分がどこまでいってもアウトローであることを無言で告げているかのようだ。

「結局俺はヤクザだって言いたいのか……?」

 数秒じっとドスを見てから河島龍之介ことリュウは目を閉じる。思い出すのは、脱獄、逃避行、そして愛した女の元に向かう中で訪れた、死。福岡から東京まで走り抜けた最期の旅路を走馬灯のように頭に巡らせ――

「ラアッ!」

 気迫とともにドスを抜き虚空に一閃した。

「舐めんなよ。」

 そう言ったのを最後にドスを服の中に隠しデイパックを引っ掴んで歩き出す。
 自分は親で、鬼ごっこで子供を守り、24時間でケリがつく。それはわかった、わかったが、そんなものを信じる気は無い。これがかつての組長からやれと言われたのであれば、恋人である美咲との将来を考えて迷いもした。殺人の罪を被って自首する程度、やってみせた。
 だが今のリュウは違う。組からは厄介者として消されかけ、恋人は脱獄犯である彼の為に盲目でありながら京都から東京まで追いかけてきた。もう切った貼ったはウンザリだ。自首して足を洗い真っ当に生きようと考えていたところで死んだ彼にとって、彼の人生史上最もこの鬼ごっこは許容できないものであった。

「俺は犬じゃねえ……犬にはならねえ!」

 目に怒りの炎を燃やし、リュウは大股で地面を踏み締めた。



【F-01/00時08分】
【河島龍之介@ランナウェイ ��愛する君の為に】
[役]:親
[状態]:健康
[装備]:ドス@現実
[道具]:デイパック(不明支給品1)
[思考・行動]
基本方針:ゲームには乗らない。
1:生き残る。
※その他
自分の役・各役の勝利条件・制限時間を把握。
人物解説……ランナウェイにて脱獄した四人のうちの一人。元暴力団員で、盲目の恋人美咲との将来の為に組を抜けようとし、その結果組が起こした殺人事件の罪を被り出頭し逮捕収監されていた。二年半収監された後に脱獄、紆余曲折を経て五千万を手にするも、最期は凶弾に斃れた。享年29歳。筋者らしく性格は荒いが、一本筋の通った男。
最終更新:2018年05月27日 23:54